紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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アイディアが降ってこなかったんじゃ・・・すまぬぅ・・・すまぬぅ・・・


△ ヴワル魔法図書館の完成

 

紅魔館(こうまかん)、その地下室に存在する書庫。

スカーレット卿が・・・というより、スカーレット家の歴代当主やその血族がご趣味で集めた魔術本や、スカーレット家にまつわる書物、売れば大金が見込めそうなほどの貴重な本が収納されている場所だ。

けれど、東方紅魔郷(原作)において、そんな書庫は存在しない。代わりに出てくるのが、ヴワル魔法図書館という建造物(?)だ。紅魔館(こうまかん)の地下に存在し、ありとあらゆる本が収められていると言われている場所だ。・・・まあ、私もそこまで詳しくはないので、本当にヴワル魔法図書館が正式名称なのかは不明だ。あくまで呼びやすいのでヴワル魔法図書館と呼んでいる。

ともかく、そんなヴワル魔法図書館だけれど、どうやら近いうちに完成するみたいだ。

 

=====

 

ことの始まりは、ある日のパチュリーのため息から始まった。

傷がほとんど治り、一人で歩いても問題なくなったパチュリーだったのだけれども・・・ついに我慢の限界を迎えたのだ。

 

「レミィ、私もそろそろ働きたいわ。」

「えっ、急にどうしたのよパチェ・・・?仕事ならちゃんと与えてるじゃない、何が不満なのよ。」

 

「あのね、レミィ・・・いくらなんでも、あなたの執務室で、ただ本を読むだけが仕事というはずがないのよッ!!

 

どこから出しているのか疑うほど大きな声を出しパチュリーがレミリアお嬢様の執務机を叩いた。

「ふしゅー」と鼻息を荒くしてレミリアお嬢様に詰め寄るパチュリー・・・詰められているレミリアお嬢様は「ちっ、バレちゃったわ。」と言わんばかりの表情を浮かべていた。(ちなみに、この二人は相当相性がいいのか、もうすでに愛称を呼び合う間柄みたい。)

 

「しょ、しょうがないじゃない・・・実際、アナタだってその本・・・・えーっと、メイド長。なんて魔本だっけ?」

黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)です、レミリアお嬢様。」

「そうそう、そう言う名前だったわね。それでパチェ、その黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)の解読だけじゃ、ダメって言いたいの?」

ぐぅ・・・

 

ぐうの音が出た。

そう、先ほどパチュリーがローテーブルに放り投げた魔本は、私が管理・保管していたあの厄ネタ満載な魔導書だ。ブラウが言うに、形状記憶の魔法が施された全世界の魔法・魔術の詳細が記載されており、世界に一冊しかない都市伝説として噂されていた魔本、そして()()()()魔女・魔法使いが読もうとすると、黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)に魔力を操られ、魔力暴走を強制的に引き起こされたり、そのまま精神が発狂して廃人になったり死んだりするらしい。そんな黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)をパチュリーは解読していたのだが、それだけでは気が済まないみたいだ。

 

「いや・・・確かに、あの魔本(ベシュヴェールング)の解読なんて夢みたいなことで、すごくうれしい仕事なのだけれど・・・もうちょっと、レミィやフラン様に直接的な貢献ができる仕事をしたいって言うか・・・。」

「でもパチェ・・・アナタ、体力が人間並だからメイド隊にも警備隊にも入れないじゃない。」

「ぐぅぅぅぅぅ。」

 

・・・。なんでも知ってるブラウさんが言うに、普通の魔女や魔法使いなら、さすがに本物の人外には劣るものの、人間離れした身体能力や体力を持っているものらしい。けれど、パチュリーは東方紅魔郷(原作)で病弱でもあったし、この世界のパチュリーも病弱だから体力が人間並みなのだ。50mを全力疾走しても最大”9秒09”のタイムしか出せなかった。握力と腕力も、最近メイド隊に念のため支給しだしたブロードソードを振るどころか持ち上げられないし、体力だって7時間働ければいい方で、その後かなり休まないと動けなくなるほどだ。

そんな状態では、ただでさえ人外な身体能力ぞろいのメイド隊と警備隊について行けるわけでもなく、私も美鈴(メイリン)も目線を向けられた瞬間に首を横に振って拒否したぐらいだ。さすがにせっかく拾った命を過労で捨てさせるわけにもいかないよ・・・。*1

 

「け、怪我は一昨日に治ったから・・・だから、おねが―――」

「あっそう言えばお嬢様、昨日とあるメイド*2がお部屋で痛みに悶えるパチュリーを見たという話が・・・」

ぐぬぬぬぬぬ・・・

「なにが”ぐぬぬ”よ、ちゃんと安静にしてなさいよ・・・。」

 

強気にレミリアお嬢様に直談判していたパチュリーだけれど、段々と小さくなってゆく。

 

[執務室のドアのノック音]

 

『レミリアお嬢様~、アンナとマグちゃ・・・マグノリアっス!入室してもいいっすか~?』

「・・・いいわよ、入ってきなさい。」

「失礼するっす~」

「し、失礼しま~す。」

 

レミリアお嬢様とパチュリーの直談判の途中だったが、二人がレミリアお嬢様から直接の仕事を終えてレミリアお嬢様の執務室に入ってくる。見れば、随分と埃だらけでマグちゃんに関しては少しだけ疲れが見えている。(アンナは余裕そうにしている)

 

「例の書庫について、調査が終わったっすよ~。詳しいことは、マグノリアが報告するっす~。」

「は、はい!報告させていただきま~す!」

「よろしい、お願いするわ。」

 

「で、では・・・調査報告をしま~す。

 

紅魔館(こうまかん)地下室に存在する書庫ですが~、広さはちょうど紅魔館(こうまかん)メインホールから右側の客室棟にかけて存在しま~す。

そして~、肝心の本については、種類が別々に棚に収められていて~、なにがなんだか分からない状態で~す。適当に棚に入れたって感じで~した。整理整頓には時間がかかりそうで~す。それに~、長年放置されていた影響なのか、埃塗れでブラウさんたち清掃メイド隊が頭を抱えていましたよ~。以上、報告を終わりま~す!」

 

マグちゃんが語尾を伸ばしながらも、丁寧に報告をしてくれた。

それを聞いたレミリアお嬢様は満足そうに頷いておられ、

 

「・・・なるほど。アンナ、アナタの所のメイド隊で整理整頓はできるかしら?」

「やれと命令されればやりますけれど、上手くいく気がしないっす。」

「あら?」

 

アンナは苦笑いをしつつ、そう言う。

アンナ隊のメイドたちは夜の吸血鬼メイドたちを除けば、教育中でまだ頭の弱い妖精メイドが大半だ。ブラウの清掃メイド隊が目を光らせているとはいえ、イタズラ好きが多くてすぐに散らかすことが多い。

そうレミリアお嬢様に伝えると「うげっ」という表情を浮かべた。

 

「確かにそれは困るわね。だとすると・・・さすがにブラウ隊に仕事を任せるわけにもねぇ。」

「はい、ただでさえブラウ隊は広範囲の清掃を担当しているので・・・書庫もとなると暴動が起きかねないかと。」

 

・・・レミリアお嬢様がうんうんとうなりながら解決策を考えていると、パチュリーがソワソワとしているのを見かける。目をキラキラとさせて、気付いてほしいようだ。

 

「・・・パチェ、そのじゃっかん鬱陶しい動きをやめて。」

書庫の整理と清掃、私に任せてくれないかしら!?

「そんなに大きな声を出さなくても聞こえるわよ・・・そうねぇ。」

 

パチュリーの提案にレミリアお嬢様が静かに長考し始める。

確かにパチュリーなら今割り振られている仕事が黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)の解析のみで、ほとんどフリーだ。けれど、それと同時に問題点もいくつかある。第一に、まだパチュリーは完治していない。ただでさえ、意識を失って生死の境をさまようほどの大怪我から回復して歩けるようになったとはいえ、完全に傷口がひ下がったわけではない。第二に、地下の書庫にはスカーレット家にまつわる書物やスカーレット家の代々の当主が禁書指定し封印してある魔本すら存在する。それを一口に任せるわけにもいかないし、第三に人手の問題もある。パチュリー一人であの書庫を整理整頓と清掃を行うなら、一体何百年かかるのだろう・・・。考えただけでもぞっとする。

 

「・・・ダメかしら?」

「そうね・・・パチェがメイド隊と警備隊の手を借りずに、書庫を管理する人手を確保できるなら考えてあげ―――」

 

「―――()()()()()()()()()?」

 

レミリアお嬢様が諦めてもらおうと、難しい条件を言った途端・・・食い気味にパチュリーがレミリアお嬢様の言葉を遮る。

無自覚なのだろうが、パチュリーから魔力が漏れておりどこか威圧感すら感じる。対するレミリアお嬢様も咄嗟のことで驚いたものの、すぐさま自身の魔力を溢れさせ、パチュリーが漏らしている魔力に対抗し始めた。

 

「パチェ・・・いや、パチュリー・ノーレッジ。キミはその言葉の意味、分からないというほど愚かではないはずだ。」

「ええ、レミィ。悪魔からの血筋であり、かの吸血鬼の始祖とも呼ばれる”ヴラド三世”の子孫たるスカーレット家の名前を用いた契約。破ればもちろん、私が死ぬわね。けれど、私は言うわ。―――貴女の家名を使ってでも、その約束を守ると言える?」

「クククッ・・・こんなことに使うなんて正気?」

 

目を細め、瞳を光らせ、威厳のある言葉で呆れ気味にレミリアお嬢様が訪ねる。

けれど、パチュリーの目は正気だ。何なら、真剣な眼差しで・・・・あ、いや、ダメそうだ。よく見たら足が小鹿のように震えてる。ダメって言われそうだから咄嗟に言ったっぽいなあれ。でも言った手前引き下がれないから度胸のみでカリスマスイッチの入ったレミリアお嬢様と対峙してる。

 

「・・・ええ、貴女は”私が黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)を解読するのが仕事”とは言った。けれど、成果を出せとは言われてはいない、それに趣味を仕事にしていいと言われた気分よ。それはそれで、最高ね。でもね、私は貴女に命を救われた。そんなあなたにお返しがしたい。だから、家名に誓いなさい。」

 

あれ、コレ・・・パチュリーってもしかしてレミリアお嬢様の事好き(Love)なん?*3

何て私がふざけた思考をしていると・・・

 

「・・・ふふっ、そうね。家名を使ってまで誓う必要はないわ。そのかわり、約束通りメイド隊と警備隊の人手を使わずに・・・自分だけで、書庫を整理整頓する人手を確保すること。いいわね?」

「えぇ・・・そこは、家名を使って約束する流れでしょう?」

「そんなしょうもない事にいちいち家名を使って約束してたら、ご先祖様に叱られてしまうわ。」

 

=====

 

そんなこんなで、ヴワル魔法図書館は近いうちにできそうなのである。

ちなみに今日は、手伝いはしないけれどまだ怪我が完治していないため私が監視役としてパチュリーについてゆき、書庫の広間に居る。お仕事はアンナに押し付けて来たので多分大丈夫だろう。*4

 

「ふぅー・・・とりあえず、広間の掃除は完了ね。」

「お疲れ様パチュリー、本当に手伝わなくてよかったのかな?」

「いいの、いいの。私がレミィと約束したことなんだし、私が自分でやるわよ。」

 

パッパっと貸し出したメイド服からほこりを払いながら、パチュリーはテキパキと広間の整頓を進める。

本当なら手伝いたいのだけれど、レミリアお嬢様とパチュリーがした約束を破らせるわけにもいかないので、グッとこらえてパチュリーの作業を見守る。

 

「さて・・・広間の掃除はできたから、そろそろ人手を増やすわ。」

「・・・どうやって?」

「私は魔女よ、使い魔(サーヴァント)に決まってるじゃない。」

 

使い魔(サーヴァント)・・・ということは、ついに小悪魔ちゃんが?

なんて考えているとパチュリーは黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)を取り出しページを開きつつ、私に離れるようにジェスチャーする。

 

「―――闇より出でて負を司るものどもよ。夜の魔力に導かれ、我は汝らと契約を求めん。満たせ、廻れ、そして爆ぜよ。我が声に従い、我が命を守り、我が願いと望みを叶えんために、その姿を現せ!

 

黒無地の魔導書(ベシュヴェールング)を通してパチュリーの魔力が形を成し、一つの魔法陣を浮かび上がらせる。

血のように赤い光が、薄暗い書庫にあふれて、魔力の流れにより室内にもかかわらず暴風が吹き荒れる。パチュリーは何もないように平然と立っているけれど、私は飛ばされないようにするので精一杯だ。

やがて、光が視界を潰し、何も見えなくなった・・・。

 

 

 

・・・光が段々と収まり始め、魔力による暴風も収まり始める。今ので広間周辺の埃が舞い上がり・・・

 

「ごほっごほっ、うっ!? 傷がっ・・・・・・」

「このおバカ!ほら、はやく傷口を見せなさいッ!!」

「あっちょっと、や、やさしくしてぇ~・・・」

 

案の定、パチュリーがむせてそのまま傷が広がってしまった。二度とこんなことをさせないためにもわざと乱暴に扱い、メイド服を脱がせる。

その間にも光は段々と収まり、その光の中に一人の少女がというか容姿的に”小悪魔ちゃん”が立っているのが見えたが、()()()()()()()()()()()()()()のでパチュリーの開いた傷を見る。開いた傷は小さいものの、腹部の・・・それも血管に近い部分が傷が開いてしまっているので予断は許されない状況だ。

 

「はーい、木端悪魔の”グレムリン”。召喚に応じ・・・って、どういう状況!?」

「ちょっとそこの悪魔!召喚されてすぐで申し訳ないけれど今すぐ治療を手伝いなさい!!とりあえずこのおバカ魔女を抑えてッ!!」

「は、はい~!!」

「あ・・・あの大丈夫だから放し、こふっ!!(吐血)」

「大丈夫じゃないじゃないッ!あぁ、もう暴れないでっ!!」

 

 

 

 

 

 

後にパチュリーの処置が終わり、ゆっくりと自己紹介を無事に終えた小悪魔はポツリと独り言をこぼした。

 

「召喚に応じたの・・・早まったかなぁ・・・・・・。」

 

少しだけ苦笑いを浮かべて、小悪魔は与えられた仕事(書庫の整理整頓と清掃)を始めるのであった。

*1
まったくもってその通りです! by美鈴(メイリン)

*2
ネペタが見つけたのです! byネペタ

*3
違います、好き(Like)です。

*4
ひどいっす!恨むっす!! byアンナ





次回は、レミリアお嬢様とメイド長のイチャイチャです。
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