紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□&△ 紅魔館の戦い・後

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side:アンナ

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どれぐらい……どれぐらい戦ったのだろう。

もう数えるのが嫌になるぐらい、自決し(やり直し)て戦い続けている。正直、そろそろ精神が限界を迎えてしまいそうだ。

生き返るから死ぬことになれるのは当然だ、でも……死ぬときに感じる痛みだけはどうしても慣れない。

だからだろう、もう……私には

 

「ハァッ……ハァッ……。」

 

自決する力も、戦う力も残っていない。

自慢の脚はナイフで串刺しになって真っ赤になり、手に力が入らず愛用の双剣すら握る気力もない、ぺたんと大理石に座り込んで……目の前の小さな侵入者をにらみ続けるぐらいしか、できていない。

 

「やっと、諦めてくれた?」

 

人の形をした化け物、自然と目の前の子供のことをそう感じ取った。

アタシが人類最強だと思ったことはない、それに相手がどんなバケモノでも攻撃を当てて血を流させれば勝てると思っていた。

けれど、この目の前にいる子供は、アタシの攻撃に当たらないどころか息を切らしている様子すらない。

アタシがそこに至るには、どれだけ死ねばいいのだろう……だが、そもそも、アタシにはどうしてもこの子供に勝つことはできない。

アタシにできた事と言えば、かぶっていたフードを破いたぐらいだろうか。

 

「お前は、いいのか?」

 

息を整えながら、目の前の子供に問いかける。

子供は、きょとんとした表情を浮かべて、にらみつけている私なんて怖くないと言わんばかりに首を傾げた。

 

「教会の指示に従って、本当にここの住民を皆殺しにするのか?」

「…………。」

 

つづけた言葉に子供は、顔を背ける。

 

「殺してみろッ!ここのみんなを殺したら、アタシがお前を見つけ出して殺してやるッ!!」

 

感情に身を任せて怒鳴りつける。

もう戦う力も、自決する力もないにしろ、言葉を発する力だけはあったから……それが、子供には深く聞いたのだろう。

怯えた顔になったと思うと、大型ナイフを震わせながらアタシに向けて振り下ろそうとした。あと一回、あと一回……今から振り下ろされるナイフで頭を刺されて、もだえ苦しむような痛みと、深い水底に沈むような冷たささえ堪え切れれば、アタシはもう一回戦える……ッ!!だから、怖いだなんて考えるな……泣きそうになるな……。みんなを守りたいから、みんなと一緒に生きたいから……だからっ、だから……ッ、し、死ぬのなんて、こ……怖く…………怖くない……ッ。

 

そこまで!

 

……聞き慣れた声の怒鳴り声が、アタシの決意を崩壊させた。

 

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side:メイド長

=====

 

メインホールの2階部分から見下ろす光景は、多少信じられないけれど……納得のいく光景が広がっていた。

今にも泣きそうになりながら死に怯えているアンナと、アンナの怒鳴り声でおびえてナイフを振り下ろそうとした銀髪蒼眼の少女。

嫌な予感がして、騎士や兵士の相手をあまりせず速足で向かってきたかいがあったわ。もう、アンナはしばらく戦うことはできなそうだし……何より、銀髪蒼眼の少女にトラウマが出来そうになくて一安心する。

 

「め、メイド……長?ど、どうして……どうして止めたんっスか?」

「アンナ、今日はもう休みなさい?あなたは早退……そうね、しばらくずっと頑張ってくれたし3年ぐらいはのんびりしてもいいわよ?」

「な、なにを言って……?

「大丈夫、後は任せなさい?」

 

そうアンナに向けて言った後、有無を言わさずアンナの足元にヴワル魔法図書館に転移する空間のうねりを出現させて落とす。

銀髪蒼眼の少女が咄嗟に捕まえようとするが、さすがにアンナを捕まえさせるわけにもいかないので、黄金のナイフを取り出して銀髪蒼眼の少女にもあたらないように投げつける。銀髪蒼眼の少女は、投げられたナイフに刺さらないように手を引き、私に向けて大型ナイフを構えた。

 

「……紅魔館の総括メイド長。」

「あら、良く知っているわね。」

 

ニッコリと、優しい笑顔を浮かべると、少女は少したじろぐ。どうして笑顔を浮かべたのか分からなくて、ちょっとだけ怖くなったのだろう。

階段を下りながら、その少女をよく観察する。あぁ、見れば見るほど私の中で納得がゆき、彼女がとある人物であることの確信が近づいてくる。

 

「ふふふっ、少し痩せているけれど。それでもしっかり食べて、元気に育てば美人になれそうね。」

「……私を、どうするつもり?」

 

警戒しつつ、私に対して質問するその少女。

どうするつもりと言っても何も、私は彼女をメイドにする。それも、ただのメイドではない……ゆくゆくは、私のメイド長という立場を彼女に譲り……私は、レミリアお嬢様専属メイドを専念できるようにするだろう。

 

「温かく歓迎しようと……ダメかしら?」

「……そう言って、だまし討ちしてきた人外が居るから、信じられない。」

「そう、残念だわ。」

 

なんて口では言うものの、ちっとも残念なんて思わない。むしろ、歯向かってくれて嬉しいとも思う。むしろ、ここで歯向かわずに大人しくなるのなら、私はガッカリしてただろう。

 

「……あなたは、ここで浄化するッ。アナタの世界は、ここでおしまい!!」

「ふふっ、私の世界は私の物よ?あなたが好きにできるものではないわ。」

 

少女が叫び、私がそう返すと、いつの間にか少女は私の目の前でナイフを突き出していた。まるで、瞬間移動をしたかのようなその動き……けれどその動きはアンナやルージュ、そしてブラウと比べると随分と遅かった。

突き出されたナイフを、かわし突き出した腕を掴んで優しく放り投げる。少女は驚きながらも空中で態勢を整え天井に”着地”して、そのまま私に向けて飛び込んでくる。

落下エネルギーすら利用した攻撃を、ステップでかわし続けざまの斬撃をハルバードで防ぐ。攻撃のお返しに、彼女の死角に空間のうねりを出現させてそこから黄金の槍を複数本突き出す。けれど、瞬間移動をしたかのような動きでその突き出された黄金の槍をかわしている。少女が瞬間移動をした瞬間、一瞬だけ視界から色が抜け落ちるような感覚がした。

 

「……手加減を、してるんです?」

 

ギリッと、少女が歯軋りの音をさせたと思うと、そう問いかけて来た。

手加減も何も、私にとって少女と戦っている気はない。私にとって、今の攻防はちょっとしたお遊び程度だ。

 

「だって、あなたじゃ私には勝てないんだもの。アンナがあなたに勝てないように、ね?」

「……その余裕、すぐに崩しますから。」

「あら、こわ~い。」

 

煽るように、手のひらを口に当てくすくすと笑ってみる。

少女の眉間にしわが寄り、さっきよりちょっと長く視界から色が抜け落ちる感覚を感じると、次の瞬間には切っ先を私に向けているナイフが数えきれないほど飛んできていた。

そのナイフの嵐は、的確に私の急所のみならずフェイントも混ぜらえていて普通なら、どれが当たるナイフなのか分からずにアンナのようにナイフの山になって死んでしまうだろう。

けれど、私は冷静に私の体に当たりそうなナイフだけを空間のうねりで呑みこんで、そのまま地面に捨てた。

 

「ッ! それならッ!!」

 

また、視界から色が抜け落ちていく感覚……そして、少女が一歩駆けだすのを捉えるが、次の瞬間には私の背後にナイフを構えて突き出していた。

背後でナイフを構える少女に対して、回転しながらハルバードを振るう。また、視界から色が抜け落ちていく感覚と少女が構えを解いて、私の背後に立つのを見る。

 

回転しながらハルバードを振るい、一瞬できた隙を見逃さず、少女はナイフで私を刺そうとするけれど、私はそんな少女に向けて後ろ蹴りを放つ。

幸いにも反射神経は良かったのだろう、刺そうとしたナイフを引っ込め……顔を狙って繰り出した後ろ蹴りを、左腕で防いで吹き飛ばされた。身体強化で力を増幅させた蹴りだ。最低でも、折れてはいるかもしれない。

 

「……どうして、どうして私を認識したの!?」

「そうねぇ……私が、ここの総括メイドだからかしら?」

 

壁にクレーターを作ってずり落ちた少女は痛むだろう左腕を庇いつつ、立ち上がった。ちょっとやり過ぎちゃったかしら。

でもしかたないと、自分で自分を納得させる。いくら私が、余裕で……そして少女に対して絶対的でも、油断をすれば殺されてしまうのはこっちだ。

私の答えに、明確に怒りの表情をあらわにした少女は、また能力を使う……。

 

「これで、お終いっ!!」

 

……視界から、色が抜け落ちてゆく感覚。

 

 

 

「散々、私をバカにしていたけれど……これならっ」

 

 

 

 

声が聞こえる、呼吸もできる。騙すために体を動かしていないけれど。

やっと、やっと入ることができた。

 

これが、()()()()()()

 

メインホールにたどり着き、一目少女を見た時。私の前世の記憶は彼女に対して、あの少女こそ十六夜咲夜(さくや)その人だという確信を持っていた。

何をどう感じて、少女が十六夜咲夜(さくや)であると確信を持ったのかは、はっきり言って私にも分からない。何分95年も前の人間だったころの記憶だ……人間だったころの記憶を含めると、100年分になるが、それはまあ誤差でいいだろう。

ともかく、少女が十六夜咲夜(さくや)であるという確信を持つことができていたのだ。

 

じゃあ、十六夜咲夜(さくや)と戦うとき、何に注意をすればいいのか……それは間違いなくその能力”時を止める程度の能力”だろう。作品によって差異はあるのだけれど、その能力が強力かつ恐ろしいものであることには違いはない。

アンナはこの能力を見破ったまではいいものの、対策の方法なんて分からず無謀なやり直しを続けて限界を迎えてしまったのだろう。戦いが終わったら、ちゃんとメンタルケアしてあげないと……おっと、話がそれた。

アンナが”時を止める程度の能力”を突破できなかった理由は単純だろう、アンナはあくまでも人間で、止まった時間の中でどうやって動くかなんて知らないのだから。

じゃあ、どうして……私は時止めの世界に入りこむことができるようになったのか、それは単純明快、結局のところ時止めの世界も一つの()()なのだから、私が操れないはずがない。そう思っただけだ。実際、時止めの世界の空間を操ろうとして、何回かは弾かれてしまったものの、時止めの世界に細工をしたのだ。

なんて脳内で説明をしていると、動かないふりをしているだけだというのに無防備に近づいてくる少女。

 

ナイフを構えて、つきだそうとしたその瞬間に、動き出して大型ナイフをハルバードで弾いてそのまま少女を抱きしめて捕まえた。

 

「つかま~えた。」

「えっ……?ど、どうして……せ、世界は止まってるはずなのに?」

「あら、思ったより痩せてる……人間ってホントろくでもないわね。」

 

時が止まった世界で私が動いたことに理解ができていないのだろう、目を見開いてポカーンとしている。そんな彼女をしっかりと抱きしめて、頭を軽く撫でてあげる。触ってみるとわかったのだけれど、彼女の髪の毛は見た目ほどサラサラしておらず…ギトギトで随分と痛んだ髪である。よく見れば、土汚れで少しくすんですらいる。

抱きしめている体も、ボロボロの汚い麻の服で隠されているが…ガリガリで骨の感触がよくわかるほどだ。臭いも正直に言って、かなりキツイ。

 

「よしよし、今まで……よく頑張ってきたわね。」

「な……なにを?」

「もう、頑張らなくていいわ。私が、私たちが守ってあげるから。」

 

訳も分からず混乱している少女に対して、優しい言葉をかけてぬくもりを与える。

でも、やがて理解が追い付いてきたのだろ、じたばたと暴れだし抵抗を始めた。

 

「やめろ……やめてッ、や……優しくしないでっ!」

「……。」

「も、もう……騙されたくないっ。もう、痛いのも怖いのもやだッ!!」

「……大丈夫。」

「離してっ!こんなことしないで、ただ黙って、浄化されてよッ!!」

 

暴れて、力づくで私を引き離そうとしても非力で貧相な体の少女ではびくともしない。少女が唯一他者を傷つけるためのナイフ(武器)を取り上げたからなのだろう、ポコポコと……幼い妖精メイドたちより弱い力でしか、抵抗ができていない。

 

「やめて……わたしに、うそはやめてよぉっ……。」

 

ぐすん、ぐすんと・・・少女が泣き出す。

 

「嘘じゃないわ。」

「……ほんとぉ?」

 

さっきまでのはっきりした声ではなくて、悲しみで震えた舌足らずな声。久しくは聞いていなかった子供らしい、泣き声。

 

「ええ、これからは……私が守ってあげる。痛いのも、怖いのも……全部、全部ね。だからもう、誰も傷つけなくていい。誰も、殺さなくていい。」

 

「なぐらない?」

「絶対に。」

 

「おこらない?」

「悪い事をしたら怒るかも?」

 

「たべもの、いっぱいたべていい?」

「美味しい食べ物を一杯作ってあげる。」

 

「きれなふく、きてもいい?」

「あなたに似合う服を、いっぱい見つける。」

 

「もう……ひとりじゃない?」

「もう、ひとりじゃないわ。」

 

 

 

 

 

 

やがて、メインホールには一人の少女の大きな泣き声が響いた。

外の争いの喧騒も、竜の吼える声も、遠くで聞こえる悲鳴も……少女には聞こえておらず、ただ少女はこれまでの人生で耐えて来た涙を流し続けた。

 

~~~~~

 

やがて、少女は泣き疲れて……私に抱き着いたまま眠ってしまう。穏やかな寝息を立ててはいるものの、キュッと私のメイド服を掴んで甘えてくる。そんな少女の頭を優しく撫でて、床に置いたハルバードを手に取る。

 

「……さて。」

 

抱き着く少女を片腕で支えながら、立ち上がり……玄関ドアを壊して入ってきた人間どもを見る。

 

「ようこそ、いらっしゃいませ……侵入者の皆々様方。」

「メイド……って、貴様っ!!そのガキはッ!?」

「大変申し訳ありませんが、その汚らしい言語を発さず、比較的速やかに何の価値もない塵芥のようなお命をお絶ちになりますよう……お願い申しますわ。」

 

偉そうな司祭服を着た男が何かを叫びだそうとした瞬間に、入ってきた人間どもの足元にうねりを出現させ、そのまま黄金の槍を何本も突き刺し、即座に全滅させる。

最初に私が殺した兵士たちのように、何をされたのか分からず、私に対して警戒をしていたり、不気味だと言わんばかりの表情を浮かべたまま、そのまま物言わぬ肉塊に成り果てる。

 

「メイド長、こっちに人間が……終わったの?」

 

人間たちを始末した後、血まみれのルージュが壊された玄関のドアから覗き込み、死体の山を見てからそう言う。

 

「ええ、外の様子はどう?」

「ほとんど終わった。後は、逃げ出してる兵士や騎士を始末するだけ。」

「……そう、あとは警備隊に任せなさい。メイド隊は、後片付けの時間よ。」

「わかった、ブラウにもそう伝えておくね。」

 

ルージュは、私が抱きかかえている少女を見たのにもかかわらず、何も言わずに壊された玄関から離れていく。

ようやく、紅魔館での戦いが終わり……私は、ホッと一息をついた。

 

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