紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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○&□ アンナの日記

 

思うところがあって、日記をつけてみることにした。きっと、すぐに飽きて書かなくなってしまうかもだけれど、気持ちの整理を付けたくてメモ帳の片隅にかいてみることにした。

ついこの前、紅魔館に人間たちが襲撃してきた。それは別によかったのだ、アタシが忠誠を誓った相手は吸血鬼……古巣(教会)からしてみれば、仇敵ともいえる存在だ。アタシも、もしあの時助けられていなければ……そして、あの契約さえ持ちかけられていなかったら、レミリアお嬢様を……そして、フランお嬢様を、この手にかけ、双剣の錆にしていたのかもしれない。

 

あの日の契約で、この紅魔館に住み込みで働くことになり……メイド長、ブラウさん、ルージュさんにメイドとしての何たるかを教えてもらうことになった。

今の今まで、戦うことしか知らなくて、戦いにしか価値のない私だったけれど……ブラウさんとルージュさんも、そう言うタイプでメイド長には内緒で、三人で集まってはメイドとしてどうすればいいかを話し合ったこともあった。

そして、いっぱい失敗を重ねて、それでもめげずに頑張って。メイド長に本気で怒られた時、お手洗いでひっそりと泣いてしまったのも、今ではいい思い出だ。

 

それから、ようやくメイドとしての仕事にミスが少なくなり、美鈴がやってきて、毛玉メイドたちの部下ができて、副メイド長としての仕事も始まって。

……いろんなことがあって、襲撃前の紅魔館があった。

 

少しだけ忙しいけれど、それでも平和で楽しくて、なんていうか……教会に居た時よりも、いや戦場にいる時よりも満たされていた。

これが、普通の幸せなんだなって何度も思った。温かい場所があって、心許せる仲間がいて、やりがいのあることもあって……アタシは、この紅魔館が好きだ。

だからこそ、襲撃してきた元同僚や兵士たちは許せなかった。折角の居場所が奪われそうで、壊されそうで……でも結局は、弱いから大丈夫だと思っていた。

 

 

 

でもそれも、アタシの思い上がりだった。あの子供が、アタシを圧倒するまでは。

 

 

 

同じ人間を相手に、負けた。

その事実が、アタシの心をひどく締め付け痛めつける。

きっと、メインホールに居たのがブラウさんやルージュさん、美鈴やノワールさんであれば……きっと、苦戦はするけれど勝てはしたのだろう。

でも私は、負けてしまった。死に、痛みに、そして恐怖に。

 

それでも居場所を守ろうと、立ち上がろうとした。死んでやり直そうとした。

でも、できなかった。死ぬのが怖くなったアタシでは、勝てないと……そう思ってしまっていた。だからこそ、あの時、メイド長が声を出してくれた時、アタシは喜んだ……()()()()()()()

メイド長は、この紅魔館の中で重要な存在だ。本人はそんなことないと否定するだろう。けれど、きっと紅魔館は……いや、スカーレット家はメイド長が居なければ簡単に没落、もしくは滅んでしまうだろう。

メイド長が死んでしまえば、まずはメイドたちが混乱する。混乱して、きっと紅魔館から逃げ出してしまうだろう。次に、レミリアお嬢様とフランお嬢様が絶望してしまうだろう。メイド長は、お二方の親代わり……それに、まだ100歳ぐらいの小さな子だ。実母が失った幼少期とは違い、今の時期で失えば…………私には、恐ろしくて続きはかけそうにない。

 

でも、メイド長はあの人間に勝った。苦戦する様子も、チャンスを与える暇もなく……。あの人間を受け入れて、自分の部屋に匿った。メイド長なら、そうすると決まった事だった。

あの子供が……アタシを一方的に殺すことのできる子供が、アタシたちの仲間になる。きっと、紅魔館の誰もが受け入れるだろう、これは断言すらできる。だって、あのメイド長が受け入れたのだ。誰よりも賢く、美しく、優しく、全部一人でこなすことができるあの人が、それでも私たちを信頼してくれているあの人が……だから、きっと、みんなメイド長の思いを、考えを受け入れるだろう。

アタシも……反対というわけでもない。でも、頭はそう思えても、心はどうしても受け入れることができなかった。

 

アタシを何度も何度も殺せたあの人間が、この紅魔館に住む。そして何より……メイド長に面倒をみられること……愛を向けられていることが、気に食わなかった。

メイド長は博愛者だ。誰にでも平等に愛を与えて、誰にでも平等に優しさを与える。けれど、失敗すれば注意をしてくれるし、間違っていれば怒ってくれる人。聖母みたいな、本当のお母さんみたいな人だ。だからあたしの持つ、独占欲は……持ってしまってもおかしくはない。きっと、アタシの他に独占欲を持ってしまっている子は多いだろう。それだけ、メイド長は温かい人だ。

その温かさが、メイド長がいまはたった一人に向けて愛情を向けている。

 

あぁ、ダメだ……書けば書くほど、アタシが何を書いているのか分からなくなっているし、どんどんとマイナスな方向に思考が行ってしまう。

 

~~~~~

 

「……はぁ。」

 

日記を書いていたメモ帳を乱暴にベットの上に放り投げて、窓の外を眺めてみる。酷く青い空で、雲一つない天気だ。部屋に閉じこもっていても、あまりいい事はないのかもしれない。そう考えた私は、着崩したメイド服を直して中庭に出ることにした。

しかし、私は開けた部屋のドアの外に立っていた人物にちょっとだけ驚いて、すぐに表情を取り繕った。

 

「こ、こんにちわっす、メイド長。珍しいっすね、アタシの部屋に来るだなんて……」

「アンナが心配だったの。嫌な予感がしてね。」

 

そう言う、メイド長はいつも通り柔らかで優しい笑みを浮かべてくれる。

 

「これから、散歩に出かけるところだったの?」

「よくわかったっすね!メイド長も、いっしょにどうっすか?なーんて……」

「いいわ、一緒に行きましょう?」

 

メイド長が手を差し伸べてくれる、アタシは……少し戸惑いながらもその手を掴む。アタシが弱々しく握っていると、メイド長は少しだけ強く握り返してくれた。

きっと、メイド長には、アタシの心情もお見通しだろう。アタシの考えは、よくメイド長に読まれていることが多かった。でも、だからだろう……きっと、メイド長はアタシの事をどう思ってるのか、よくわからなかった。

頼りになる仲間と思ってくれているのだろうか、それとも手のかかるダメダメな後輩?一つ言えることは、アタシは……迷っているのもあるのかもしれない。

 

気が付けば、アタシはメイド長に連れられて紅魔館の庭園を歩いていた。

メイド長の手は小さくて、手袋越しの暖かさが少しだけ荒れた心を癒してくれている。

綺麗な薔薇の生垣は、水を与えられたばかりなのだろうか……水滴でキラキラと太陽の光を反射して、宝石のように輝いて見える。遠くで聞こえる、狼女たちの掛け声や、休憩中で騒がしいメイドたちの声も……しばらく忙しかった紅魔館に、平和な日々が戻ってきたという実感と嬉しさが沸く。この中に、きっと()()()の嬉しそうな声も混じるのだろう。少しだけ考えて、温かい気持ちになる。

やがて、最近できたガゼポにたどり着きそこにメイド長が座り、私も座った。そのガゼポから見える景色は、本当にきれいで……何より、メイド長が隣で同じ景色を見ているということが、どういうわけか嬉しいと思った。

 

「ねえ、アンナ。」

 

メイド長から声をかけられ、景色から目を離しメイド長を見る。

真剣な表情を浮かべていて、けれど私には決して怒っていなくて……むしろ、安心するような気がした。

 

「私は、アンナのことを娘のように思ってる。」

「……へっ!?」

 

言われた言葉に、思わず顔を赤くしてしまう。

 

「ブラウやルージュとは違って、あなたのことは娘のように思ってるわ。」

「に、2回も言わなくても聞こえてるっすよ!?」

 

娘……私が、メイド長の娘?多分、ニュアンス的には養子とかと思っても、おかしくはないはず。

ウへへ……悪い気はしない、それどころか嬉しいぐらいだ。でも、恥ずかしくて顔が熱い……今なら、その熱さでお湯でもわかせそうだ。

 

「だから……私のせいで、いろいろと悩ませてしまっていること、申し訳ないと思っているわ。」

「な、なんのことっすか?」

 

やっぱり、メイド長にはアタシがすでにあの子のことを知っていることが分かっていたみたいだ。一応、しらばっくれてみるけれど……多分、メイド長は確信している。

違う……メイド長が悪いわけじゃない。これは、アタシの問題であって……だから

 

「アンナ、聞いて……私は、あなたが悩んでることを―――」

 

「―――やめてください!!

 

思わず大声を出した。

 

空気がガラッと変わって、紅魔館が静かになった気がする。

メイド長の、びっくりして唖然とした表情が目に映る……あっ、あぁっ。

 

「あ、アタシは…………ッ!!」

 

メイド長に対して怒鳴ってしまい、それがどうも嫌で、逃げ出してしまう。

 

「あ、アンナ、待ってッ!!」

 

メイド長の静止の声を振り切り、庭園迷宮に……まだ攻略がされてない第3層へと逃げ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタシは……アタシは一体、何をしてるんすかね…………。」

 

 

適当な岩場に座り込み、顔を手で覆った。やがて……静かな洞窟に響く水滴の音だけが、アタシの気持ちを代弁するかのようにただ響いていた。

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