紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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□&△ 咲夜の見る未来()/マリアの見る過去()

 

side:咲夜

 

 

「はぁ……はぁ……うぅっ」

 

お母さまの熱にうなされる声が聞こえる。

ブラウさんがお母さまの病状を見てくれている間でも、お母さまは熱にうなされて、それがひどく悲しいと感じる。

メイド長の傍らには心配そうに見つめつつ、手を握るレミリアお嬢様に……私を安心させようと、後ろから抱き着いてきているアンナ姉さまも……ブラウさんの診断結果を待っていた。

 

高熱が出ているのに、私の能力には反応しないだと……?一体、何が……だが少なくとも、病気ではないのか?…………いや、まさかそんな……彼女のはずがない。しかし……もしそうだとして、原因はなんだ……?

「ブラウ……?」

「ッ……レミリアお嬢様、ご安心をメイド長はただの風邪です。パチュリーに伝えて、特製の風邪薬を処方してもらいましょう。」

「そう……。よかったぁ~」

 

へにゃへにゃと力なく椅子の背もたれに体重をかけるレミリアお嬢様。私もアンナ姉さまもブラウさんの風邪という言葉に安心し、お互いに笑顔を見せあう。

そのあと、ブラウさんからの説明が入る。なんでもお母さまはもとより働きすぎで、体が相当疲れておりそれでも働きづめだったから今回の風邪を拗らせ、うなされるほどの高熱を出してしまったみたいだ。確かに、お母さまが休んでいるところはあまり見ていなかった。朝もお昼も夜も、他のメイドさんたちよりも多く動いていたし、書類だって結構な量を処理していたはずだ。

 

「とりあえず、風邪薬を処方するためにもパチュリーに伝えてきます。レミリアお嬢様はいかがなさいますか?」

「そう……ね。しばらくはメイド長の側にいるわ。フランがユーリの散歩に行っていて、特にやることもないから。」

「かしこまりました。アンナ、そろそろ仕事に戻ろう。」

「了解っすー……咲夜ちゃんはどうするっす?」

「咲夜はメイド長の看病だ。それでいいか?」

 

ブラウさんが私の目を見て言ってくれる、私はそれにしっかりと頷きアンナ姉さまから離れてお母さまの側に控える。フンスと意気込んでみてみると、お母さまを除くみんなにクスリと笑われてしまう。それがちょっと恥ずかしくて、能力を使って時を止めて、水桶とタオルを取りに行った。

 

 

 

冷たい水の入った水桶と数枚のタオルを手にお母さまの部屋に戻ると、ブラウさんとアンナ姉さまはすでに退出しておりお母さまの眠るベットの側で椅子に座るレミリアお嬢様だけがお部屋にいらっしゃった。

 

「あら、お帰りなさい咲夜。」

「た、ただいま戻りました!レミリアお嬢様っ。」

「うん、元気でよろしい。」

「えへへ……」

 

レミリアお嬢様に褒められて少しだけ嬉しくなる……けれど、すぐに気を取り戻してお母さまが眠るベット横のテーブルに冷たい水の入った桶とタオル数枚を置く。数枚あるタオルのうち、一枚のタオルを濡らしてよく絞り小さくたたんでお母さまの額に乗せる。赤くなったお母さまの顔に手を近づけただけで、熱さが伝わり……相当な熱がお母さまを苦しめていることがわかる。

 

「いい手際ね、咲夜。それは誰から教えてもらったの?」

「えっと……プリムさんです!」

 

レミリアお嬢様のご質問に答え、私はお母さ……メイド長の側に控える。

少しだけ退屈だけれど、それでもそれが私に与えられた仕事だ。我慢してメイド長の様子をしっかりと見ておこう。

そんな事を考えながら、意気込んでいるとレミリアお嬢様がちょいちょいと手招きをした後、膝に座るようにご自身の膝をポンポンと叩く。

と、とても魅力的な提案だけれど、今の私はお仕事の途中だ。いくらレミリアお嬢様からの誘惑と言えども……

 

「雇い主命令よ、膝に乗りなさい?」

「はーい!」

 

当主命令であれば仕方がない。こればっかりは、お母さまやブラウさんでもしかりようが無いはずだ。レミリアお嬢様はお説教されるだろうけれども……。

トコトコとレミリアお嬢様に駆け寄り、負担にならないようにゆっくりとレミリアお嬢様のお膝に乗る。すると、レミリアお嬢様は私の体に腕をかけてそのまま抱きしめる。

 

「よしよし、咲夜は頑張り屋さんね。」

「えへへっ……でも、私なんてまだまだです。まだメイドとしては卵ですから!」

「そう……咲夜なら立派なメイドになれるわ。」

 

レミリアお嬢様のお優しい声がとてもうれしい。でも、レミリアお嬢様のお声は、少しだけ悲しそうだった。

 

「……ねえ、咲夜。咲夜には将来の夢はある?」

「将来の……夢?それは、何ですか?」

「っ……例えば、咲夜が大人になったらやりたい事とか、そう言うの。少しだけでもいいから考えてみて?」

 

そう聞かれて、考えてみる。

私が大人になったら、私は何をしてるんだろう。まだまだ半人前のメイドとしてみんなに扱かれているんだろうか……それとも、お母さますら驚くほどの完璧なメイドになれるのだろうか。

色々考えてみて…・・・・何も思い描くことができなくなった。仮に、完璧なメイドになってもそこから先の未来を思い描けないのだ。

 

「……分かりません。」

「考えてみた?」

「はい……完璧なメイドになる事を考えてみて、なった後の事も考えようとして…………なにも、思い浮かばなくって。」

 

私の答えがどうなのかは知らないけれど、レミリアお嬢様は少しだけ笑顔を浮かべる。

 

「その答えが聞けただけでも、十分だわ。」

 

ギュッと、レミリアお嬢様に優しく抱きしめられる。

何が何だか分からないけれども、レミリアお嬢様に抱きしめられたことがうれしくてつい笑顔を浮かべてしまう。

 

「大丈夫、咲夜の未来は……運命は安泰よ。」

「あん……たい?どういう意味ですか?まだ、オリビアさんの授業で習ってなくて……」

「心配ないってこと。」

「なるほどぉ……。」

 

そんなことを話しながら、ときどきお母さまの様子をみて……レミリアお嬢様と少しだけおしゃべりをするのであった。

 

~~~~~

side:メイド長

 

高熱の時に見る夢はたいてい不可思議で悪夢というにふさわしいほど嫌な夢を見る。

そう言った夢もまた、寝ている際に記憶の整理を行うための生理的現象なのだろう。けれど、今私が見ている夢は……それらとは当てはまらない不思議な夢だ。

白い世界で私と私に似た誰かが立っており、それ以外は何もない寂しい空間の夢を見ている。

 

「……あなたは、誰?」

「…………。」

 

私に似た誰か、私のような一人の妖精、衣服の違いこそあれど、髪の色から髪形に瞳の色までそっくりな誰か。けれど、その人物は決して声を発しない。

ただただ、私を見つめて、何もしてこない。時々思案するかのように目を瞑ることはするけれど、それだけだ。

 

「……ここは、どこなの?」

「…………。」

 

相変わらず、声を発しない。むしろ、喋る気が無いと見た。

まいった、これじゃあこの夢に囚われることになる。なんだか、血を求める人間もどきが頭をよぎるが気のせいだろう。

ともかく、私に似た誰かは私をじっと見ては、時々何かを思案するだけで何もしてこないし、何もする気が無いようだ。

 

「……いい加減、起きたいのだけれど?」

「…………。」

 

また目を瞑り、思案し始める私に似た誰か。その態度に少しだけイラっと来るものの、どういうわけかそこまで怒りが来るわけではない。

 

「……はぁ、降参よ降参。一体何なのよ、ここ。」

「…………お。」

 

……私に似た誰かは、私によく似た声でようやく言葉を発する気になったようだ。

しかし、お?”お”とはなんだろう。まさか、胸がない事を言うのだろうか。なんてやつだ!容姿が似ているし、胸も私と大差ないくせに胸をからかおうとするだなんて!

 

「なによっ、胸ならあなたもな―――」

 

「お前■、見ている。」

 

「――――――は?」

 

いま、私に似た誰かはなんて言った?

お前を見ていると言った気がする、お前と見ていると聞いた気がする、お前も見ていると感じた気がする・・・・・けれど、私の思考は私に似た誰かがどれを言ったのか特定できないでいる。

 

ぐるぐるぐるぐる

 

思考の中でその言葉が泳ぎだす。水を得た魚のように自由に動き出す。

 

ぐるぐるぐるぐる

 

泳ぎだした言葉たちが、私の脳を破壊し頭に痛みが走る。

 

ぐるぐるぐるぐる

 

咄嗟に、黄金の武器を取り出そうとして失敗する。私に似た誰かの襟元を掴もうとして、黄金の鎖に阻まれる。

 

「お……おまえはっ、誰だッ!!」

「…………。」

 

また目を閉じて思案顔。

 

ぐるぐるぐるぐる

 

白い世界が回る、コマのようにぐるぐるぐるぐる。

 

ぐるぐるぐるぐる

 

脳を壊す言葉が、増える。しない言葉が勝手に脳内に書き足される。

 

「なにを……私の記憶になにをしたぁぁッ!?」

 

頭の痛みをこらえ、黄金の鎖を引き剥がそうと悶え、私に似た誰かをにらみつける。

 

ぐるぐるぐるぐる

 

私に似た誰かは、思案顔をやめ……私のゴールドオーカーの瞳で、私を見る。

 

 

「……幸福を、見せろ。」

 

その言葉を最後に、私は夢から追い出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!?……はぁ……はぁ。」

 

目を覚ます、随分とうなされていたみたいで、寝間着が汗でびっしょりだ。

ぽとりと額から落ちたものを手に取ると、濡れて冷たいタオルで……安らかな寝息が聞こえて、その方向を見ると眠る咲夜を抱いて眠るレミリアお嬢様がそこに居た。

 

「……もう。」

 

二人の娘の微笑ましい姿を見て自然と笑みがこぼれる。その光景を見て、心を安らがせていると……やがて、自分がどんな夢を見ていたのか忘れてしまった。

高熱を出してみる夢は、たいていはしょうもなく訳の分からない悪夢だ。忘れた方が、私の身の為になる。夢を覚えていて、いい事など一つもないのだ。それでも、一つだけ……一つだけ鮮明に覚えていることがあった。

 

「……幸せになれ、ねぇ。」

 

どうしてその言葉を伝えられたのか、そして誰がその言葉を伝えたのか。まったくもって思い出せない。けれど、どういうわけか、それだけはしっかり覚えていた。

 

「言われなくたって、幸せになるわよ。」

 

そう独り言を零して、安らかにスヤスヤ眠っている娘たちを見る。

普段は立場上、絶対に娘なんて呼べないレミリアお嬢様……そして立場上娘として接する時間の少ない咲夜。二人とも、私の大切な娘だ。

レミリアお嬢様は、いつか大きくなったとき……きっとレミリアお嬢様が心から好きになった殿方と恋愛し、結婚する時が来るだろう。

咲夜は人間で、いつかは死に別れの時が来るだろう。けれど、その時まで咲夜には幸せな日々を送ってほしい。これまでつらい経験をこれまでの人生分味わってきたのだ。……熱が出ていたこともあって、考えが散らかっている。

 

(……寝よう。)

 

それになんだか、とても疲れた気分だ。

二人の娘の寝姿を堪能した後、疲れた体と頭を癒すために、再び眠りについた……。

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