紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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△ メイド長が猫になった日 その1

最近、パチュリーが自分の魔法工房に籠ることが多くなった。小悪魔ちゃんいわく、ロンくんが進化してからというもの考えることが多くなり、やがて工房に籠りっきりになったとのこと。

幸いにも寝食はしているみたいだけれど、お風呂には入っていないらしく、それにたまに爆発音が聞こえるため小悪魔ちゃんが私に相談してきたのだ。

 

「メイド長さん、こっちです。」

「案内ありがと小悪魔ちゃん。後でクッキーをあげるね。」

「やったー!」

 

と、私のクッキーが食べられると聞いて一気にテンションが上がった小悪魔ちゃん。どうやら私のクッキーは小悪魔ちゃんも気に入ってくれたみたいだ。それにしても私のクッキーは!これまでクッキー嫌いな子でも1度食べさせればハマらせるわけなのだが、もしかして私の作るクッキーには中毒作用でもあるのだろうか……?

ともかく、小悪魔ちゃんの案内でヴワル魔法図書館を進みやがて本棚に隠されるようにある鉄の扉を発見した。鉄の扉にはパチュリーの魔法工房と書かれた札が下げられている。試しに開けてみようとしたけれど、どうやら内側から鍵がかかっているみたいだ。

 

「……強敵みたいね。」

「メイド長さんでもそう思います?」

「壊せればそれでおしまいだけれど、周りの本棚にも被害が及ぶからね。」

「そ、それは困ります!」

 

どうしたものかと考えていると、小悪魔ちゃんが何かを感じとったのか伏せてください!と警告してしゃがんだ次の瞬間、鉄の扉が吹き飛び、中から飛び出してきた煙が私に襲いかかった。

……そして、私の意識は無くなってしまった。

 

~~~~~

 

意識を取り戻すと、私の視界が随分と低い位置にあることに気づく。倒れているのだから当たり前か、と考え立ち上がっても、変わらず視界は低い位置のままだ。

 

「けほっけほっ、もーパチュリー様め……これで何度目よ?って、あれ?ネコちゃんがいる。」

 

「にゃー。(……嘘でしょ?)」

 

小悪魔ちゃんが私を見ながら、私のことをネコちゃんと言った。それだけで、私は私に起きたことを把握し少しだけ焦る。

 

「……ん?もしかして、このネコちゃん……メイド長さん?」

「にゃ!(小悪魔ちゃんよくわかったわね!?)」

「やっぱり!どこか感じたことのある魔力が―――」

 

小悪魔ちゃんが私がネコになったことを理解してくれたその瞬間、けたたましい館内放送が拡声魔法によって響いた。

 

[「館内に侵入者!館内に侵入者!!侵入者はヴワル魔法図書館に反応あり!!繰り返す、侵入者はヴワル魔法図書館に居る!!」]

 

「あー、これってこの前決議で言ってた魔力探知式の警報機です?」

「にゃー。(ええ、そうみたい。それにしてもこのタイミングで侵入者は間が悪いわね。)」

「そうですね……。メイド長さん、私が運ぶので避難しま―――」

 

[「侵入者特定!侵入者は()()()()()()()()!!繰り返す()()()()()()()()ッ!!スパイの可能性があり!!戦闘員はただちに捕縛せよ!!」]

 

……拡声魔法が響かせた声に私も小悪魔ちゃんも顔を青くするしかない。というか、心当たりがありすぎて青を通り過ぎて真っ白になってるかもしれない。

 

「……にゃ。(小悪魔ちゃん、そういえば私の魔力はどうなってる?)」

「い、1部、変わってますね。魔法に詳しくないと分からないぐらいには……。」

 

シャーッ!!(侵入者って私のことじゃない!!)

侵入者ってメイド長さんのこと!?

 

~~~~~

 

「居たか!?」

「いやこっちにはいない!」

「一体どこに……あっちに行くぞ!」

「おう!」

 

……本棚からチラリと顔をのぞかせ、遠ざかっていく狼女の2人を見送る。パチュリーの魔法工房前から何とか移動したのだが、数分もしない間に何人もの武装した狼女たちがヴワル魔法図書館を駆け回っている。

 

「うぅ……いつもは頼りになる警備隊の皆さんがこんなにも怖いだなんてぇ……。」

「にゃー。(あんなふうにピリピリするのは仕方ないわ、私が敵だったら下手したらお嬢様方の命を狙うかもしれないのだし……。)」

 

私を優しく抱きかかえて、ヘナヘナと床に座り込む小悪魔ちゃん。

本来なら小悪魔ちゃんは、警報とはなんも関係の無いはずで、私を置いて逃げるように言ったのだが、「主のやらかしをフォローするのも使い魔の務めです!」と言って私を抱きかかえて警備隊から隠れつつヴワル魔法図書館から脱出しようとしてくれている。

 

「と、ともかく……早く逃げて元に戻る方法を見つけないとですね。」

「にゃー。(ええ、恐らくノワールならば元の姿に戻る方法も知ってるはずよ。)」

 

パチュリーですら時折魔法の相談をしている相手であるノワール。メイド隊の中でも随一の魔法使いである彼女であればあるいは……。なんて考えながら私の負担にならないように抱えてあまり体を揺らさずに、けれど急ぐ小悪魔ちゃんに身を任せる。

時々、近くで狼女の声はする者の小悪魔ちゃんしか知らない通り道だったり、時々デフォルメ小悪魔ちゃんを使って狼女たちを薄暗く見間違えやすい場所に導くなどの工作までして、ようやくヴワル魔法図書館の出入り口まで近づけたのだが。

 

「まだ見つからない?」

「も、申し訳ありません!」

「謝らずに報告を続けてください。」

「はっ!」

 

お仕事モードの美鈴(メイリン)が、ヴワル魔法図書館の出入り口に居たのである。

美鈴(メイリン)紅魔館(こうまかん)メンバーの中でも上位陣の強さを持つ。私でどうにか引き分けに持ち込めるかどうかの強さであり……本来ならヴワル魔法図書館の司書なだけである小悪魔ちゃんでは、勝負にならないだろう。

 

「ど、どうしよう……美鈴(メイリン)さんが居るなんて……。」

「にゃー……(真面目な美鈴(メイリン)は見たかったけれど、こんな形では見たくなかったわね。)」

 

私の魔力が一部だけ変わっただけなのに作動した警報器のように、美鈴(メイリン)が見て操ることのできる気までも変化していたら……間違いなく待っているのは死だろう。……このまま隠れていれば、やがてはどこかに行ってくれるのだろうか?

 

「…そう、捜索範囲をヴワル魔法図書館のすべてに変更。私は変わらず、ここで見張るわ。」

「了解ッ、直ちに伝えます……アォーーーーンッ!!

 

……ダメそうだ。どうやら美鈴(メイリン)はヴワル魔法図書館の唯一の出入り口を塞いで見張りを続けるみたいで、報告していた狼女が遠吠えで、おそらくヴワル魔法図書館の隅々まで調べることを伝えてそそくさと捜索に戻ってしまった。

けれど、美鈴(メイリン)だけは、闘気を滾らせ鋭い視線でヴワル魔法図書館を眺めている。どうにかして美鈴(メイリン)の目から隠れつつ、あの出入り口を通らなくてはいけない……しかし、美鈴(メイリン)は武術の達人だ。特に能力の関係で、気配察知能力は紅魔館(こうまかん)一と言ってもいいだろう。

狼女がかなり遠くまで離れたぐらいに、美鈴(メイリン)は唐突に真面目な雰囲気を解いてため息をついた。

 

はぁ……レミリアお嬢様のご指示とはいえ、部下をだますことになるだなんて気が引けるなぁ……。

 

「……えっ?」

「……にゃっ?(えっ?)」

 

「あー……小悪魔さんと、たぶんメイド長ですね。さっきの聞いちゃいました?」

 

てへっと言った感じで後頭部を掻く美鈴(メイリン)……もしかして最初から気付いてたの?

 

「も、もしかして……最初から感づいてました?」

「あー、いやっ、警報があった後レミリアお嬢様が私のもとに来て『パチェのやらかしだから、実戦的な訓練と思ってやりなさい。』と言われ……まあ、部下に嘘をついてるって感じですね。あと、お二方がそこに隠れたのは、さっきの部下が謝ったところから知ってはいましたよ?小声の独り言を聞かれるとは思えませんでしたが……」

 

照れくさそうにする美鈴(メイリン)……そこで安心感がやってきたのか小悪魔ちゃんがへなへなと座り込んでしまう。

 

「こ……こわかったですぅ……。」

「あわわ、だ、大丈夫ですか!?」

 

まあ、小悪魔ちゃんの腰が抜けてしまってしばらく立てなくなってしまった。ただでさえ、小悪魔ちゃんは戦い慣れなんてしていないし、これまで真剣な美鈴(メイリン)の雰囲気すら知らなかったのだ。腰が抜けてしまったとしても、それは仕方の無いことだろう。

 

小悪魔ちゃんはしばらく、美鈴(メイリン)に慰められ、その間も私は小悪魔ちゃんに抱きしめられていたのであった。





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