転生93年と1か月9日目(日曜日、日中:曇り、夜中:晴・新月)
美鈴が目を覚まし、そのまま紅魔館の警備隊隊長 兼 庭師になってから一日、美鈴の仕事ぶりは見事の一言だった。私とオリビアちゃん(と配下の毛玉たち)で手が回らなかった庭園の目立たないところの手入れや、倉庫の周りの生え散らかした背の高い雑草を刈り、胴体がずんどうの蛇を捕まえてそのままペットにしていたり、いつの間にか住み着いていた狼たちの群れを手なずけてそのまま番犬にしたりなど、活躍をあげるとキリがなかった。と言うか、私たちの確認不足と言うのもあるのだろうが、庭園に狼の群れが住み着いていたこと自体を知らなかった。そのことに対して謝罪すると、「人手不足なら仕方ないですよ!」と慰めてくれた。ありがとう・・・でも、それでも仕事は少なくならなかったよ。まあ、お察しの通り、紅魔館は中々に広い、ただでさえ大きな本館に、離れのそこそこ大きな家・・・そして、それらを取り囲むようにかなり広い庭園が広がっている。美鈴が言うに、庭園の中に誰も足を踏み込んでいない未開拓な場所もあるらしい。(いや書いてから冷静になったけど、どういうこと?)
ともかく美鈴が紅魔館の一人として加わったことで、さらにメイド隊にかかる負担は少なくなった。今まで私が、庭園の作業をしていたのだが、それをレミリアお嬢様の指示で美鈴がやることになったので、私はブラウのお手伝いを優先し、休憩時間までに本館の70%を清掃することができた。
休憩時間に美鈴をメイド休憩室に拉致って、いろいろ話を聞いてみた。彼女いわく、彼女の種族は自分でも分からないとのこと、ただ自分が人食い妖怪かも?と言うことは分かっているらしい、けれど今まで生きてきた中で、そういった種族特有の一定の周期が来ないため、人食い妖怪であることも、ほぼ自称のようなものだと笑いながら教えてくれた。そして、美鈴は中華武術におけるカンフーを習得しており、格闘では負けなしらしい。(メイド隊の近接戦最大戦力のルージュが目を輝かせたのはまた別のお話だ。)逆に格闘戦以外はからっきしで、アンナにからかわれていた。そのあと、私の作ったお菓子をごちそうしたら目を輝かせておかわりを要求してきたので、たらふく食べさせてあげた。
ちなみに美鈴が入ってからと言うもの、レミリアお嬢様はずいぶんと上機嫌だ。逆にフランお嬢様は、挨拶とかはするけどいつ本性を露わにしないか目を光らせている。
一人でも人手が増えた事がうれしい反面、紅魔館には不穏な空気が漂い始めていた。
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転生93年と1か月10日目(月曜日、日中:曇り、夜中:曇り・たぶん三日月)
今日もレミリアお嬢様のお散歩日和だ。紅魔館には不穏な空気こそ漂っている物の、フランお嬢様だって淑女の端くれだ。いくら美鈴が怪しいからと言ってすぐさま攻撃するような性格ではないことは、私が一番よく知っている。今は大人しく冷静な性格でも、根っこの性格は優しくて臆病なのだ。美鈴も、まだ出会って3日ほどだが一宿一飯の恩義・・・それどころか、衣・食・住・職の恩義を忘れるような性格ではないことは、間違いないはずだ。もしそれが間違っていたとしたら、それはレミリアお嬢様と私の目が節穴だったということだ。
―――閑話休題。
ともかく、今日は月曜日・・・レミリアお嬢様のお散歩の日だ。今日もレミリアお嬢様のお散歩のお付きメイドは私だ。私は戦闘能力こそ、メイドの中ではオリビアちゃんに並ぶ強さ(強くも弱くもない)なのだが、私の持つ能力である『空間を操る程度の能力』は便利だし、そもそも私はレミリアお嬢様の専属メイドだ。レミリアお嬢様からしてみれば”連れて行かない理由”はないし、私からしてみても”ついて行かない理由”はない、メイドとしての仕事も、みんながそこそこ優秀なため、私がお散歩のお付きになれる程度には余裕ができる。アンナは今日、過労死しながら割り振られたお仕事をしてたけど・・・不老不死だから問題ないはず。
レミリアお嬢様の気分のままにある程度は舗装された道を歩き、レミリアお嬢様の気分で休憩したり何かを観察したりと・・・ここまでは普通のいつもの散歩だ。「今日は落としモノがありませんように!」と祈っていたら、それがフラグとなったのかレミリアお嬢様が落としモノを見つける。思わず心の中で「OMG!」と叫んでしまったのは内緒だ。今回、レミリアお嬢様がお拾いになったのは、『黒無地の魔導書』と言うものでブラウが言うに魔法使い・魔女の間で空想話で有名なものらしい、”形状記憶”の魔術が施された世界全ての魔法・魔術が記されていて、魔法使いや魔女がもつと一瞬で暴走・発狂するらしい呪いの魔本、その為そっと私の能力で作った空間・・・特に危険物を投げ込んでおく場所に入れておく。レミリアお嬢様は不満げになっていたけれど、何とか説得して最近大好物になったキャロットカップケーキを3個ほど作ることになった。
さて、無事にレミリアお嬢様とのお散歩が終わり、紅魔館に戻ってきた。すると、紅魔館にあった不穏な空気は一切なく、元の静かで平和な紅魔館の空気が戻ってきていた。フランお嬢様と仲良く遊んでいた美鈴に話を聞くと、ちょっとしたことでお互いを知るきっかけになって、フランお嬢様は美鈴を警戒しなくなり、美鈴もフランお嬢様に対して敬意と親愛を持つことにしたらしい。
実は、お散歩の前にレミリアお嬢様に今の状態の紅魔館のまま、お散歩をしていいのかレミリアお嬢様に聞いてみたのだ。しかし、レミリアお嬢様は一言「大丈夫。」とだけ言い、私を強引にお散歩に連れて行った。今思えば、レミリアお嬢様は能力で未来の運命を少しだけ見て、それで大丈夫だと判断したのだろう。その結果が、フランお嬢様と美鈴の間にあった不穏な空気を無くすことになっていた。
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転生93年と1か月11日目(火曜日、日中:晴、夜中:晴、半月)
今日は普通の一日だ。なんてことはない普通の一日。しいて言うならば、アンナに休日を与えて一日ゆっくり過ごしてもらったぐらいだろうか、アンナが休日になりしばらく経つと、アンナの部屋から鎌を持った少女が飛び出してきて、寝間着姿でかなり怒っていて双剣を振り回すアンナに追い回されていたのは、鎌を持った少女・・・死神が
アンナの魂を回収しに来たのだけれど、運が悪かったらしく寝ているアンナに殺気をぶつけてしまったらしい。その為、アンナの怒りが限界に達し、死神の少女を追い回すとかいう状態が発生している。ああなったアンナは誰も止められないため、死神の少女が逃げ切ることを祈った。
さて、相変わらず紅魔館は人手不足で、美鈴は番犬の狼たちと一緒に紅魔館の庭園の未開拓部分の調査を進めている。美鈴の話を聞くに、入るたびに草むらの形が変わっているせいであまり探索は進んでいないとのことだ・・・ランダム生成ダンジョンかな?案外、近くにレアアイテムとか落ちてそう。話を聞き続けると、その未探索のランダム生成ダンジョンには、凶暴な獣や自然に生まれたゴーレムなどが蠢いていて危険だそうだ。そして、それを倒しながら進んでいるため、美鈴自身の鍛錬にも、そして番犬の狼たちの特訓にもなっているそうだ。美鈴が一番の気に入りの狼を紹介してくれたのだが、短期間だというのにかなり鍛えられ、お手入れもしっかりされているのかモフモフな体毛をしていた。美鈴が言うに、狼たちのお世話をしてくれているのはほとんどオリビアちゃんと配下の毛玉たちらしい、さすがメイド隊の末妹・・・。