紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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聖母(マリア)戦争 その2

数百年後の未来、ある国における吸血鬼の学者が語り始めた。

 

「吸血鬼の時代に起きた戦争の中で、最も謎に満ちたものを挙げるならば、『聖母(マリア)戦争』がそれだ。その理由がわかるだろうか?

聖母(マリア)戦争』は、確かに吸血鬼たちの戦争史に記されている。ラウル・スカーレットの手記とルヴェア廃城の遺跡がその証拠だ。だが、不思議なことに、それ以外の証拠は一切ないのだ。

戦争がなぜ始まったのか、どのような戦力があったのか、聖母(マリア)とはいったい何を指す言葉なのか、戦闘はどのように進行したのか、そして戦争はどのように終結し、何を目的としていたのか。

これらについては、ラウル・スカーレットの手記には一切触れられていない。手記にはただ、『聖母(マリア)戦争の勝利により、私は我が娘たちに絶対的な支配者の風格を見たのだ。』という一節のみが記されている。

これには、私たち吸血鬼研究学会も大慌て!なにせ、スカーレット家最後の当主と言われていたラウル・スカーレットには娘がいたと同時に判明したのだからね!しかも、複数形で記されていることから、間違いなく二人、もしかしたら三人以上の――――――――――――(早口すぎて判別不明)。」

 

学者の話は次第に熱を帯び、専門用語が飛び交い始めると、もはや一般人には理解しがたい内容となってしまった。

その様子を聞いていた「Usami」と名札を下げた記者(ライター)は、学者の話を流す一方で、どこか呆れた表情を隠せなかったのだった。

 

 

 

 

 

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聖母(マリア)戦争における、紅魔館(こうまかん)側の勝利条件とは何か。

まずは、『メイド長である十六夜(いざよい)マリアの奪還』。もちろんの事、連れ去られたメイド長を取り返すために戦いに来たのだ。彼女を忘れて帰るなど誰しも考えもしないだろう。

次に、『テリーの殺害』。落とし前を付ける意味でも、テリーがこれ以上支配領域を広げないためにも、そして何より、敵方の大将であるから当たり前のことだ。

最後に、『紅魔館(こうまかん)参加戦力の全員の帰還』。この戦いで言えることは、間違いなく妖精メイドや狼女たち、毛玉メイドたちはついてこれないということ……だからこそ、足手まといになってしまう戦力は紅魔館(こうまかん)の護りとして置いてきている。いまこの戦場に居るのは2桁にしかならない少数精鋭の戦力のみ。その全員の帰還が、この戦争の最低限の勝利条件だ。

 

間違いなく言えることは、フランの下したその判断とついていったメイドたちの判断は間違いではなかった。実際、テリーが使役する異形化した下級吸血鬼たちは普通の下級吸血鬼とは違い、ノロいがタフで力が強く、また数も多かった。

もしこの場に、妖精メイドや狼女たち、毛玉メイドたちがいれば間違いなく守り切れずに何人もの犠牲者を出していたところだろう。

故に、フランとついていったメイドたちは最初から全力……自身ができる最大限を発揮しているのである。

 

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フランの魔法により静かに眠るマリア……そんなマリアを守るようにフランとアンナと咲夜(さくや)は、それぞれ武器を構えてテリーと、テリーの力によって意識を奪われ操られている異形化吸血鬼たちを警戒していた。

そんな中、先手を取ったのはフランであり異形化吸血鬼たちを無視し、それらを飛び越えて魔法で複製されたレーヴァテイン……『レーヴァテイン・複製(レプリカ)』をテリーに向けて振り下ろした。

 

「くるなくるなくるな来るな来るな来るな!クルナクルナクルナァッ!!

 

テリーはそれを「来るな」と狂ったように叫びながら紙一重でかわしたが……腰を抜かしてしまったのか、そのままヘナヘナと座り込んでしまう。

 

「ぐ、ぐぐぐっ、グズドモォッ!!な、ななっ、なにをボサッと突っ立ってるんだ!?さっさと僕を守れェッ!!」

 

半狂乱になりプライドもくそもなく喚き散らすテリー……だが、その支配能力だけは本物なのだろう。テリーを守るように異形化吸血鬼はフランとテリーの間に割り込み、何匹かはフランに向かってとびかかる。

 

「二人とも、お願い。」

「すぐに排除します。」

「フラン様の邪魔はさせないッ!」

 

だがとびかかった異形化吸血鬼たちは、フランの指示によりアンナと咲夜(さくや)の二人がナイフまみれにしてしまう。さらに言えば、異形化吸血鬼たちに刺さったナイフは、急激にヒビが走り、そのヒビから光が漏れたと思うとそのまま爆発……ナイフが刺さっていた異形化吸血鬼たちはバラバラの肉塊になってしまった。

 

「アァアアアアアッ!!!クソックソックソォオオオオオオッ!!!死ぬならせめて役に立てよクソガァアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

自分の都合のいいようにならないからかテリーの怒りがさらにヒートアップする。これほどまでに自己中心的な人物を見たフランは怒りを、そして呆れすら通り越して、可愛そうなものを見る目になっていた。

その視線に気づいたテリーは怒りすら忘れ……茫然とフランを見上げていた。

 

「……は?お前、なんだその目は……?まさか、ボクのことを好きに――――――」

「ごめんなさい、あなたに興味ないし話したくもない。それと近づかないでください。」

 

勘違いしたテリーが腰を抜かしながらフランに近づき、甘い声で誘惑しようとした途端……フランから間髪入れずに拒否の言葉が出てくる。

それを聞いたテリーは、かつて自分が聞いた言葉を思い出す。一言一句、フランが言ったことと同じ文章……女性の認識が体つきしかないテリーにとって全く同じような声で聞こえたその言葉は……

 

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!ブッコロシテヤルゥウウウウウウウウウウッ!!

あのクソ女と一言一句まったく同じな事を言いやがってぇええええっ!!!ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!

僕は、ボクは()()()だぞぉぅっ!?前世も今も、世界は僕を中心にしか回っていないんだぁッ!なのに、なのにナノニなのにぃッ!!どぉしてボクの思い通りにならない!!どうしてボクが悪役みたいなタチバニナッテンダヨォオオオオオオッ!!この世界を書いている作者はナニヲカンガエテルンダヨォオオオオオオオオオオオオッ!!

 

と、先ほどよりも強い怒りと激しい憎悪を発しながら、意味不明なことを叫びだすテリー。

フラン、そしてアンナと咲夜(さくや)は、耳を劈くその叫び声に思わず耳を塞ぎ、身を強張らせてしまう。

それを見たテリーは、フラン……ではなく、咲夜(さくや)に向けて手を突き出した。

 

「まずはお前からぶっ殺す!テリーウルトラハイパースペシャルアルティメットデススーパーバレットッ!!」

「えっ?」

 

咲夜(さくや)は自分に、何かが迫ってきていることを本能的に感じ、大型ナイフを構えて防御の構えを取る。しかし、咲夜(さくや)の経験はすぐに自分が間違った判断を下したことに気付いてしまう。咲夜(さくや)の人生を代償に得たその経験は残酷なまでに”死”を咲夜(さくや)に突き付けて――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――嫌なほどに、赤い鮮血があたりを濡らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

場所は変わり、ルヴェア城周辺……テリー一派の兵力である異形化吸血鬼の足止めをしている最中のマグノリア……しかし、唐突に嫌な予感を感じ取りルヴェア城へと視線を向ける。

 

「……アンナ、さん?」

 

マグノリアの心がざわつき、身を震わせるような寒気が襲い掛かる。まとわりついた嫌な予感を振り払い、目の前の戦いに集中するために意識を切り替える。ここは戦場、迷えば……止まれば死ぬ。「それに、アンナさんは不老不死だ。だから、簡単に死ぬわけがない……そうに決まってる!」そう考えて、突進してきた異形化吸血鬼の群れに、仲間と一緒に立ち向かうのであった。

 







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