紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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△ 攻略戦前の静けさ

 

「むにゃむにゃ……おかぁさまぁ~、くっきー……おかわりぃ~……。」

「ふふっ……咲夜(さくや)ったら。」

 

明日の完全攻略戦に向けて、お昼のうちに十分な睡眠をとることになったのだけれど……普段からショートスリーパー気味な私は、早々に目を覚ましてしまい、つい聞こえて来た咲夜(さくや)の寝言を聞いてしまう。

幸せな夢を見ている咲夜(さくや)を横目に、私のメイド服に着替えて咲夜(さくや)を起こさないように静かに部屋を出る。

 

……普段、紅魔館(こうまかん)のメイド隊の仕事は日中に済ませることが多く、日の光が出ている間、紅魔館(こうまかん)は少しだけ騒がしい。

けれど、今日は明日の完全攻略戦に向けて、メイド隊だけでなく警備隊もほとんどが寝ているからだろうか……随分と静かだ。

 

(思えば、私一人だった時も……こんな感じだったわね。)

 

私がこの紅魔館(こうまかん)に連れてこられた当初を思い出す。

転生か憑依をした私の元に、レミリアお嬢様がやってきて……一目惚れで誘拐されたと思ったら、とんとん拍子にメイドになって……数日は一人で切り盛りしていたことが、ひどく懐かしく感じる。

それから、ブラウとルージュを見つけて、アンナがやってきて……オリビアちゃんが―――

 

そう思い出に浸りながら、静かな紅魔館(こうまかん)の廊下を歩いていると……ふと、前方に一つの絵画を見上げながら物思いにふけっているフランお嬢様を見つける。

 

「……フランお嬢様?」

「へっ……メイド長?」

 

私が声をかけると、フランお嬢様は少し驚きながらも私を見てポカーンとした表情を浮かべている。

ふと、フランお嬢様が見ていた絵画を私も見てみると……あぁ、フランお嬢様が物思いにふけるのも納得の絵画であった。

 

「スカーレット卿と、パメラ夫人の絵画をご覧に……?」

「……うん。この絵だけが、お姉さまがお母さまの姿を思い出して、私はお母さまの姿を知ることができる唯一の絵だからね。」

 

その絵は、スカーレット卿がパメラ様との結婚の3年記念の時に人外絵師に書かせた、写真にも劣らないほど正確に描かれた絵画であった。

厳格な表情ながらもどこか優しさを見て取れるレミリアお嬢様似のスカーレット卿、そしてとても優しげな表情を浮かべ微笑んでいるフランお嬢様似のパメラ夫人……。フランお嬢様の言う通り、レミリアお嬢様にとってパメラ様を思い出せる絵画にして……フランお嬢様が、パメラ様の姿を知ることのできる絵画……。

 

「でも、お姉さまはこの絵画が嫌いみたい。」

「……ええ、存じております。元々のこの絵画は、レミリアお嬢様の執務室……いいえ、スカーレット卿の執務室に飾られていたのですから。」

「そっか……この絵画を移動したの、メイド長だっけね。」

 

……そう、レミリアお嬢様はどういうわけかこの絵画を嫌っている。いや、正確には()()()()()()()()()()()と言う感情だろうか。

しかし、レミリアお嬢様がこの絵画を嫌っており……現に、(レミリアお嬢様方が)用事がなければ近寄らない、紅魔館(こうまかん)別館の廊下に移動させたのである。

メイドたちや警備隊の狼女たちは、この絵に何の興味も持っていない。しいて言うのなら、吸血鬼メイドたちがこの絵を見て幸せな結婚生活を思い浮かべるぐらいだろうか。

 

「私は、この絵画、好きなんだけどね……でも、見ると心がキュってなるの。」

「……やはり、受け入れても思うところがあるのですね。」

「…………うん。」

 

フランお嬢様はフラフラと壁際に移動し、そのまま座り込んでしまう。

絵画を見上げるそのお姿は、どこか寂しそうで……また罪悪感で押しつぶされそうだった。

 

「私がお母さまを殺した……なんてことはもう思っていないけれど、それでも、お母さまは私が原因で死んじゃった。その事実だけは消えないし、私も、よく覚えてる。」

 

心と、そして記憶の根底にあるフランお嬢様のトラウマ。生まれて間もないというのに、フランお嬢様に深く、深く刻まれた……母親の死。

フランお嬢様を蝕むそれは、レミリアお嬢様も深く頭を悩ませており……どうすればソレが和らぐかよく考えている。

 

「……クルムちゃんがね、教えてくれたんだ。」

 

ふと、フランお嬢様がそんな言葉を零す。

 

「あっえーっと……私がね、クルムちゃんにヒミツの命令を与えてたのは知ってる?」

「ええ、存じております。」

「私が、クルムちゃんにお願いしたのは……もし、お姉さまがお母さまの痕跡を掴んだ時に、お姉さまがどんなことを決めたのか、それを真っ先に私に教える事なんだ。

それでね……クルムちゃんがついさっき、私の部屋に来て、教えてくれたの。

 

―――お姉さまは、第7層にあるかもしれないお母さまの痕跡を徹底的に破壊するつもりだって。」

 

………………。

思考が、止まってしまう。

レミリアお嬢様が、せっかく見つけたパメラ夫人の痕跡を……破壊する?

だって、パメラ夫人は、レミリアお嬢様の実母で……今まで、遺体や遺品すら見つからなかったはずで……。

レミリアお嬢様も、パメラ夫人の死は悲しんで……ときどき、思いふけって……。

 

「……メイド長でも、驚くんだね。うん……私も聞いた時は驚いた。」

「事実、なのですか?」

「クルムちゃんが確かに聞いたみたい。」

 

……レミリアお嬢様は、そこまでパメラ夫人のことがお嫌いだったのであろうか。

いや、そんなはずはない。そのはずなら、この絵画だって移動させずに、早く燃やしてしまうはずだ。

では、なぜレミリアお嬢様は……パメラ夫人の痕跡を破壊しようと……?

 

「メイド長……私はね、お姉さまの気持ち……もしかしたらわかるかもしれない。」

「そう、なのですか?」

「……うん。

きっと、お姉さまは……怖いんだと思う。」

「……怖い?」

「結構昔に、お父様が紅魔館(こうまかん)に帰って来た時があったでしょ?その時に、私、お母さまの事を聞いたの……お母さまはね、”未来をすべて知る程度の能力”を持ってたみたいでね……私を産むとき、死んじゃうことも……受け入れてたみたいなの。」

 

……それは、母の愛と言えるのだろうか……それとも、母の狂気と言うべきなのだろうか。

自らの死を知っても、フランお嬢様をお産みになる事を辞めなかったパメラ夫人。そして、その遺品……

 

「ますます、意味が解りません……。それがどうして、レミリアお嬢様が、パメラ夫人の遺品を破壊しようと?」

「そこまでは分からないかな……。でも、これだけは分かる。―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

フランお嬢様が立ち上がり、絵画の中のパメラ夫人を見つめる。

私も、絵画の中のパメラ夫人を見つめるが……さっき見た時とは違い、パメラ夫人が浮かべている笑みが、少し薄気味悪く感じてしまう。

いったい、何が始まるというのだろうか……。





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