紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
side:レミリア
……私は、お父様とお母さまが描かれた絵画が苦手だった。
厳格ながらも優しい表情を浮かべるお父様と、どこか薄気味悪く感じてしまう優しい笑みを浮かべたお母様が描かれた絵画……。それにみられるという感覚が嫌いで、メイド長にお願いし、あの絵画を別の所に移してもらった。
私が、あの絵画の苦手な理由は、描かれたお母さまが、絵の中だというのに、こちらを見透かしたような目をするのが、苦手なのだ。
私が3歳の頃に死んだお母さま……しかし、フランを産む日であっても、愛おしそうに、お腹を撫でていた。
お母さまは、”運命をすべて知る程度の能力”を持っていた。その能力で、自分が死ぬことを分かっていたのに、お腹の中に居るフランに愛を注ぎ、そしてフランを産んで、死んでいった。
―――お母さまは、そこで、終わっていればよかったんだ。
メイド長も、フランも知らない机の中の引き出し……その中でも二重構造の引き出しから一つの手紙を取り出す。
『拝啓、私の愛しいレミリア・スカーレットへ。』
宛名として書かれた、それは……文字の並び、そして書き方から……私たちのお母様の物だと直感で分かった。
しかし同時に、私の直感は、この手紙におぞましさを感じていた。
手紙の封を再び切り、仲に収められている手紙を取り出し……目を通す。
『これを読んでいる時期は、おそらくレミリアが497歳、フランが492歳の頃でしょう。』
『まずは、レミリアを残して死んでしまったことを許してほしい。きっと、私はあそこで死ぬ運命だったということ。そしてその運命は、決して逃れられない世界のシナリオだったことを、理解してほしい。』
『そして、私は……レミリアが成長した姿を、そして大人になった姿を見れないことが悲しいです。きっと、素晴らしいレディになり、ラウルのように強い支配者として君臨しているのでしょう。』
『好き嫌いはしていない?孤独には負けていない?頼りになれる部下はできた?私はいろいろとレミリアのことが心配で、大人しく死んでしまうことができません。』
『そして、フランは元気かしら?たとえ、狂気に犯され、気が狂っていたとしても、フランは私の愛しい娘……そして、レミリアの妹なのだから。言葉は通じなくとも、たとえ嫌われてでも守ってあげてください。あと、たまには地下牢に行ってお話してあげて?姉妹がケンカをしてたら私も悲しいわ。』
『
ここで私は、ようやくこの手紙の違和感に気付いたのだ。
まず、この手紙ではフランは狂気に囚われたまま、今はパチュリーの倉庫となっている地下牢に閉じ込められているというのだ。まるで、それが正しいといわんばかりに……。
そして、私の家族のことも、
初めてこの手紙を見た時、ここで少しモヤッとしながら次の手紙を読み……
―――私は恐怖したのである。
『それとも、イレギュラーのせいで
『もしかして、ラウルに無茶を言って一人でお散歩して……とある洞窟で、妖精を拾ったのかしら?』
『だとしたら、レミリアはとっても悪い子ね。私が生きていたら、お仕置きしていたかもしれないわ。』
『とにかくレミリア、その妖精はダメよ。この手紙を読んだなら、すぐに殺しなさい。』
『そのイレギュラーは、あなたにより多くの幸せを与えてくれる。けれど、それ以上の不幸と悲しみをあなたに与えるわ。』
『だから、今すぐ心臓を穿ち、頭を踏み砕き、殺しなさい。そして、
『―――ソレも、ソレの元に集ったモノどもも、あなたに正しい成長を与えないわ。』
『だから、メイド長を、
……再び見ても、ゾッとするような内容であった。
それに、この2枚目の手紙には、私が読んだ際に作動し、私の意識を操り、メイド長を殺そうとする術式が魔力で書き込まれていた。
幸い、パチェから……洗脳魔術の対処法を知っていたし、あのクズのおかげなのか、洗脳攻撃に対して強い耐性を持つことができていた。
おかげで私は、正気を保ち……メイド長を殺さずに済んでいる。
……気を持ち直し、3枚目の手紙に目を通す。
『レミリア、もしソレがそんなに大事だというのなら……代わりに私が殺してあげるわ。』
『きっとあなたは、それを大事にしたいから……私に怒り、そしてソレを守ろうとするでしょう。』
『反抗期なのね、私はうれしいわ。でも、ダメよ?』
『ソレは、この手紙を見つけた年に、殺すことにしているの。』
『でも、レミリアを悲しませるつもりわないわ。少し、大切なものを隠すだけだから、安心して?』
『もし、ソレをそんなに気に入っているというのなら、私が意識と魂だけを殺し、あなたが自由に操れる人形にしてあげるから。私のことは、それで許してちょうだい?』
『人形にして操る方法なら、私もソレを許しましょう。後は、自由にしていいわ。』
『もし、ソレを慕うモノどもが反逆してきても私に任せて?』
『
『愛しているわ、私の愛しい……運命に愛された少女、レミリア・スカーレット。』
『それと、庭園迷宮の第7層に……正しい成長をしていれば、あなたにふさわしいものが。正しく無い成長をしているのなら、あなたを正しい成長にしてくれるものが置いてあるわ。』
『あなたがそれを、有効活用してくれること……空から見守っているわね。』
『ふがいない母親でごめんなさい、パメラ・スカーレット。』
化け物……いや、実に吸血鬼らしい上位的で傲慢な歪んだ愛。
もし、私がマリアにふさわしい主人になろうと、マリアを守れる存在になろうとしなければ、この手紙に簡単に操られ、今頃マリアを、パメラからの歪んだ愛のままに殺していただろう。
「……これは、フランには見せられないな。」
私に手紙があてられたように、フランにもパメラからの手紙があてられていた。
しかし、フランが見つける前にダーティちゃんを使い、見つけ出し……処分しようとしたものの、保護魔術がついており、燃やすことも切り刻むことのできない手紙を、厳重に保管しているのである。
『拝啓、狂気に囚われヤンチャな、愛しいフランドールへ』
見なくても分かる。きっと、私と同じように歪んだ愛が綴られた手紙が入っているのだろう。
パメラの言う
「……それが、正しい愛の形であるものか。」
フランは、パメラの死で自らの心に傷を作り、それで悩み、苦しみ、泣いているというのに……当のパメラは、フランが狂った姿こそが
「貴様のせいで、思い悩んだのに……それで狂うのが、正しい愛の形であるものかッ!」
激情に駆られ、手紙を破り捨てたくなる。
だが、どんなに力を込めて引っ張ろうが、斬り裂こうとしようが……いっそ燃やそうが……この手紙は、しわができる様子も、焦げ目を作る様子もなかったのである。
「……守らないと。」
ならばせめて、パメラの手から私の家族を守ろう。再び、そう覚悟を決め手紙を隠し戸の奥にしまい込む。
「私の……私たちの運命は、私たちで決める。」
その為に、強くなったのだから。