紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! 作:ライドウ
今回は、第三者視点のみ
庭園迷宮が入り口……庭園迷宮の名前の由来となった”庭園”。
早いうちに完全攻略がなされ、迷宮ながらも警備隊の手により整えられていた迷宮ではあるものの、その姿はパメラの魔術によるものか……それとも、元来の迷宮の効果なのか大きく様変わりしていたのである。
そんな迷宮を駆け抜ける一人の小さな影が……
「はぁ……はぁ……こ、ここまでくれば大丈夫……みんなはちゃんと逃げられたかな?」
その影の正体は、妖精メイド。
彼女は仲間たちと休憩室で談笑している際に、パメラの転移魔術により庭園迷宮内に迷い込んでいた。そして、何とか脱出しようという話になり、仲間と周辺警戒をしながら脱出口を目指していたのだが、メイドたちでは苦戦するロックゴーレムが強襲し、唯一戦えるメイドだったこの妖精メイドが、囮を買って出ていたのだ。
彼女は、この庭園迷宮生まれの妖精だ。少し様変わりしていようが、ここは慣れ親しんだ生まれ故郷。現に、あのロックゴーレムはキョロキョロとあたりを探している。
(とりあえず、アイツから早く離れないと―――)
妖精メイドがそう考えた途端、隠れていた生垣が音を立てて引き抜かれた。
妖精メイドは何が起きたのか分からずに硬直してしまい、ただ生垣を持ち上げた犯人を見上げた。
「ロックゴーレムが……もう、一体?」
その妖精メイドにとって、絶望がそこに居た。
ただでさえ、ロックゴーレムはメイドたちに支給されているショートソード程度では傷もつかない、だからと言ってパチュリーの下で習った初級魔法でも無理だろう。
しかし、彼女は恐怖を振り払い、勇気を振り絞ってショートソードを抜いた。
「き、来なさいよ岩のバケモノ!わ、私だって
ショートソードを構え、勇ましくそう叫ぶその妖精メイド。だが、恐怖は完璧には消せず……体を震わせ、へっぴり腰であった。
そして、そのロックゴーレムはそんな彼女の様子を知ってか知らずか、目の代わりの宝石を光らせると、巨腕を振り上げた。
「ひっ……」
小さな悲鳴と共にショートソードを落として、しりもちをつき、後ずさりするものの……生垣に阻まれ下がれず、瞳が恐怖で揺れ始めた。
「いやぁ……いやぁああああっ!!」
妖精メイドの悲鳴が上がり、ロックゴーレムは巨腕を振り下ろした。
妖精メイドが腕で頭を覆い、そのまま潰されるかと思いきや……
ズドン!と大きな音共に、土ぼこりが舞い上がる。
巨腕が振り下ろされた場所は、大きなクレーターにこそなっているものの……どういうわけか、潰された妖精メイドはそこに居なかった。
……むしろ、ロックゴーレムの背後にその妖精メイドが移動していたのである。
「……ふぇ?」
思っていた痛みが来ず、妖精メイドが縮こまることを辞めてあたりを見渡すと……。
すぐそばに、見慣れた青いメイド服を着た女性が左手に懐中時計を持って佇んでいた。
妖精メイドはその姿を見ると否や、目から涙を溢れさせながらその名前を呼んだ
「さ、さくやちゃぁ~~~ん!!」
「シェリーちゃん、もう大丈夫よ。」
びえぇえええっ、と大泣きしながら
だが、
刃物に対して強い耐性を持つロックゴーレムが2体、それが今
基本的に何も考えていないはずのロックゴーレムは、同時に巨腕を振り上げ
シェリーは再び、死の恐怖に怯えたが……
……直後
「セイリャッ!!」
「てりゃぁッ!!」
片方ロックゴーレムは頭を振り下ろされた踵により割られ、もう片方は燃え盛る炎の魔剣で硬い身体ごとゴーレムのコアを両断された。
音を立てて体を崩壊させる2体のロックゴーレム、それと同時に、
「今ので28体目……いつもより、ロックゴーレムの数が多いですね。」
「
「おそらくは……普通、ここまでロックゴーレムや原種マンドラゴラ、
周辺を警戒しながらそんな会話をする、
「さ、さくやちゃ~~~ん……っ!」
「大丈夫よシェリーちゃん……。」
「……こんな大きいの、
「いいえ、こんなのが出てたら間違いなく、
「つまり……
流石の大きさに全員が警戒を強める。
警戒を強めた
巨大腕が振り上がりきり、今にも振り下ろそうと土ぼこりが少しこぼれた次の瞬間……
ズシャァッ!!という、豪快な音共に一線の赤い閃光が走り、ビックロックゴーレムの胸部に大きな風穴があいた。
「
『ナイスよ、レミィ。今ので、コアを貫いたわ。』
ビックロックゴーレムが、騒々しい音を立てながら崩壊していく傍ら、レミリアは静かに
そして、敵がいなくなったからかシェリーが安堵のため息をついたと同時に、どうして自分がロックごれーむに追われていたのかを顔をあげる。
「あ、あの!みんなは……逃がしたメイドたちは無事ですか!?」
「大丈夫、シェリーちゃん。シェリーちゃんが逃がしたメイドたちは、全員、転移魔術でパチュリー様の所に帰還したわ。」
『シェリーちゃん大丈夫!?』
『こっちはみんな無事だよ~!』
『こ、こらっあまりくっつかないで頂戴っ、探知魔術がブレちゃうからっ……。』
『『ご、ごめんなさいパチュリー様!』』
と、レミリアが首から下げているペンダントから魔術で投影されたホログラムが出現しパチュリーの両脇からシェリーの友達の妖精メイドが顔を出したが、パチュリーに怒られてすぐに引っ込んでしまった。
それを見たシェリーは、さらに深く安堵のため息を零し、緊張がほぐれたのかそのまま気を失ってしまった。
よほどの極限状態で興奮状態だったのだろう、
フランが駆け寄り、拙い魔力操作ながらも丁寧に魔力で転移魔術の魔法陣を書き上げ、シェリーをパチュリーの元に送った
『……転移確認。目を覚ましたら連絡するわ。それにしても、迷宮内は大混乱……倒した魔物が即座に復活し、そしてメイドたちが魔物から逃げ回るから、救助も一苦労ね。救助対象もどれか絞らないと、マズいわ。』
パチュリーがそう呟き、ペンダントから投影された庭園迷宮のマップが表示される。
レミリアたちが駆け抜けてきた場所は白く表示され、現在地ではレミリアたちが青く表示され、そして通ってきたところにときおり赤い点や黄色い点が出現しては移動をしている。
「パチェ、探知魔術は変わらず。最優先は一般メイドたちの特に非戦闘員をお願い、警備隊と特別なメイドは、非戦闘員の人たちを除いて後回しでいいわ。」
レミリアが即座にパチェにそう指示する。
一度折れかけたレミリアだが、フランが発破をかけてくれたおかげですっかり立ち直り、指導者として……
『やってみるわ、けれど庭園迷宮全体で”魔物”が増えてるせいで魔力の流れがだいぶ荒れてる……。けれど、大きな魔力を持つ魔物を倒せれば、そのフロア全体に探知魔法を行き渡らせられるわ。』
と、再びパチュリーがペンダントから新しいウィンドウを投影する。
そこには、先ほど討伐したビックロックゴーレムの別個体、随分と巨大化している原種マンドラゴラ……そして、ワイバーンもどきが追い詰められて進化したのかグリーンシェル・ドラゴンの姿もある。
どれもこれも、パチュリーが警備隊の隊長クラスが出張るほどの強さを持つと思っている魔物たちだ。
「フロアボス……ですか?」
『惜しいわ
フロアボスとはその階層のヌシであり、階層全体を縄張りとする強力な存在。対して、ルームボスは、階層のヌシを怒らせない、もしくは護るために大きな迷宮ではよく生まれる存在で、フロアボスに変わりそのフロアを各々護っている魔物たちの事だ。
そして、ルームボスが出現したということは……
『……問題は、ルームボスがいるせいで庭園にもフロアボスが出現した可能性があるということ。』
パチュリーのその言葉に、レミリアたちは顔を引き締めた。
先ほど、
「これまで存在しなかったけど、
『そうね、フラン。けれど、あくまで推測の域を出ないわ。』
「アノアバズレェ……ッ」
「フラン、抑えて。今、狂気を再発すると、あの女が何を用意しているのか分からないわ。」
「っ……ごめんなさい、お姉さま。」
フランが再び、パメラ・スカーレットに対する怒りを露わにし、少しだけ狂気が顔を出そうとするが、冷静になっているレミリアがそれを抑えるように言ったことで、フランも少し落ち着きを取り戻すことができた。
『ともかく、フロアボスの情報収集は私に任せて頂戴。レミィたちの情報支援と合わせて、やってみるわ。』
「パチェ、無理はしないで。」
『もちろんよ……ただ、頑張ってるのは、パメラ・スカーレットが魔術で私を出し抜いたことを、後悔させたいだけよ。』
パチュリーがそう言うと、ペンダントのホログラムが消える。
「……さて、行くわよ!」
「もちろんだよ、お姉さま!」
「かしこまりました、お嬢様っ。」
「やりましょう、お嬢様!」
ついに、庭園迷宮の完全攻略戦が始まりましたね!
ぜひとも、レミリアたち攻略隊を応援し、
ちなみに、今現在の庭園迷宮はパメラによる強化魔術が施されており、普段の庭園迷宮と比べてだいぶ攻撃的になっています。
平時では、倒すとしばらくは復活しなかった魔物たちも即座に復活し、庭園迷宮のダンジョン部分が複雑化とランダム化していて、警備隊が作成した地図は役に立ちません。
さらに、パメラが策を弄している可能性もあるので、大変危険ですね!()