紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

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紅魔館(こうまかん)メイド隊 副メイド長補佐 オリビア

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side:オリビア

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走る。

 

「はぁ……はぁ、せりゃぁっ!!」

 

道の縋らに居たワイバーンもどきを、支給されたショートソードで斬り捨てる。

一匹のワイバーンもどきが大口を開けて、襲い掛かってきたのでショートソードで受け止め鍔ぜり合う。

獣の膂力と、少女の姿をしている私では、力の差は歴然だったが、ワイバーンもどきにはなく、私にはあるものがあった。

 

「特大毛玉!潰しちゃって!!」

<あいさ、お嬢!!どりゃぁああああっ!!>

 

ズドン!と、一番頼っている昔からの相棒の特大毛玉が勢いをつけてワイバーンもどきを押しつぶした。

元がただの毛の集まりだとしても、特大毛玉ほどの質量が高速で落下して、激突すれば……ドラゴンのなりそこないのワイバーンもどき程度なら、内臓と背骨を傷つけて殺すことだって可能だろう。

私の考えた通り、ワイバーンもどきは特大毛玉の落下攻撃に体を押しつぶされ、口から血交じりの泡を吹いて絶命した。

 

<お嬢!この先だ、この先にいる戦えない妖精メイドが、ワイバーンもどきに襲われてる!!>

「ッ……いくら殺しても、まだいるのッ!?」

<殺したそばから復活してるんだ!とにかくお嬢、行かないとまずいぜ!!>

 

大毛玉を先頭に、迷宮の奥へとさらに走り出す。

……今日は、メイド長から紅魔館(紅魔館)の留守を任されていたのだが、私が始業の挨拶をしようとした途端、足元に魔法陣が浮かび上がり、いつの間にか庭園迷宮の内部に飛ばされていたのだ。

飛ばされたのは、私だけでなく……戦える、戦えない、そんなの関係なく、紅魔館(こうまかん)に居た全員が飛ばされた。だから、いまこの庭園迷宮では悲鳴と戦闘の音があちこちから響いている。

どれだけ助けられる妖精メイドがいるのだろう、どれだけ倒れる魔物がいるのだろう……。

 

どれだけ、メイドが死んでしまうのだろう。

 

<お嬢、しっかりしろ!レミリアの姐さんが、いるんだ!こんなアクシデント、レミリアの姐さんならひっくり返せるだろ!?>

「っ、そうだ。レミリアお嬢様なら何とかしてくださる……それまで、戦える私たちが戦えない子たちを守らないとッ!!」

 

特大毛玉のおかげで、正気を取り戻し正面を見据える。

道中に居るワイバーンもどきも斬り捨てつつ、全速力で庭園迷宮の通路を駆け抜ける。

 

「こ、こないでー!」

「いやだー!しにたくないー!!」

「き、きてみろよ!ぼ、ボクが相手だ!!」

 

庭園迷宮内にある広場に出ると、そこには3人の戦いたくないと言っていた妖精メイドと普通のワイバーンもどきが2匹、そしてその2匹より一回り大きいワイバーンもどきが、今にもその妖精メイドたちを食べようと、口から舌をだしてよだれをダラダラとこぼしている。

 

<な、なんだアイツ!?何食ったらあんなにデカく!?>

「考えるのは後……フォーメーションCで行くよ!!」

<<<<<了解だー!!>>>>>

 

私の号令をもとに、20匹の大毛玉が集まり、ワイバーンもどきどもの周りを縦横無尽に動きだす。

ワイバーンもどきたちは鬱陶しそうにしていたが、構わず妖精メイドを食おうと大口を開けた。けれど、大毛玉たちが弾幕を発射し始めると、ワイバーンもどきたちは慌てて大毛玉たちを振り払おうと暴れはじめる。

 

「ダリア、ユーニス、パトリシア、こっち!!」

「お、オリビア先生!」

「た、たすかったー!!」

「ほら、二人とも逃げるよ!」

 

<くそっ、デカブツが倒れねぇ!!>

<血は出てんだ、死ぬはずだ。弾幕を浴びせ続けろ!>

<お嬢たちに意識を向けさせるな!俺たちが的に、ハッ!?――――――ぎゃぁあああああッ!!>

<指揮官がやられた!指揮権を継承する!!お嬢たちに視線を向けさせるな!!>

<クソッ!クソッ、クソォオオオオッ!!とっととくたばりやがれぇええええっ!!>

 

ダリア、ユーニス、パトリシアを私の近くまで避難させるものの……その間に毛玉たちの勇ましい叫び声と悲鳴が聞こえてくる。犠牲になった毛玉の悲鳴が耳を劈き、塞ぎたくなる。

けれど、ダリア、ユーニス、パトリシアを守るべく耳をふさがずショートソードを構え直し、大きなワイバーンもどきに向かって走り出す。

 

<ッ!お嬢が攻勢を仕掛ける!!攻撃の手数を増やし、タイミングと同時に攻撃を停止せよ!!>

 

指揮官の毛玉の号令で、大きなワイバーンもどきを襲う弾幕が一段と濃くなる。身を丸くし、護ることを優先した大きなワイバーンもどきは、視線を覆い隠している。

 

<今ッ……攻撃やめッ!!>

 

再びの指揮官の号令でぴたりと、毛玉たちが弾幕の嵐を止める。

攻撃が止まったので大きなワイバーンもどきが、鎌首を持ち上げ……

 

「ぜりゃぁああっ!!」

 

私を視界に入れたと同時に、その首を両断する。ブシャァ!と赤黒い血と鮮明な赤い血が噴きだし、首がボロンと落ちる。ゆっくりと、大きなワイバーンもどきの体がズズンと倒れるが、警戒を怠らずにショートソードを構え直す。

 

「被害報告!」

<負傷毛玉3匹、死亡毛玉1匹、重症毛玉1匹、軽症毛玉2匹、指揮官死亡!!>

「ダリア、無事です!」

「ユーニス、おひざすりむいた……。」

「ぱ、パトリシア、心臓がバクバクです……。」

 

毛玉たちに被害を報告させるために、叫んだのだが……3人にも通じてしまい、毛玉の報告だけでなく、3人の状態が報告される。

毛玉たちに周辺警戒をお願いし、ユーニスに近づいて怪我した場所を見せてもらうと、途中で転んだようで、膝から血がたらりとこぼれていた。

 

「痛い?」

「ちょ、ちょっとだけ痛いです。」

「回復魔術をかけるわ、ちょっと動かないでね。」

「あ、オリビア先生!ボクが、ユーニスの応急処置をしました!飲んでない水筒のお水で洗って綺麗なハンカチで拭いた程度ですけど……。」

 

パトリシアちゃんの報告を聞いてから、ユーニスの怪我をした膝に手をかざして魔力を流し込む、怪我した個所に触れないように空中に魔法陣を魔力で織り出し、丁寧に怪我の処置を行う。

 

「オリビア先生の回復魔術、温かーい!!」

「ふふっ、そう?なら、練習してよかったかも。」

 

パチュリー様曰く、回復魔術は行使する術者によって回復中の影響が変わるらしい。術者によっては、回復させる力はあるが代わりに激痛を走らせたり、まったく痛くない代わりにまったく回復しなかったり、ひどく冷たく感じさせたり、私のように温かく感じさせることがあるみたい。……そんなことはどうでもいいのだ、今はユーニスの怪我を治すことが先決だ。

幸い、ユーニスの怪我は転んでひざをすりむいた程度。パトリシアちゃんが清潔な水で洗い、清潔なハンカチで拭ってくれたからか、傷口に雑菌が入る心配はしなくて済みそうだ。

メイド長が率先して施行してくれた、メディーさんによる医療教室……口は悪かったけれど、習っておいて、そしてメディーさんに先生をしてもらって教えさせてもらってよかったと実感する。

 

「はい、これで大丈夫。気を付けてね。」

「ありがとう、オリビア先生!大好き!!」

「……!もう、ユーニスちゃんったら。私も好きだよ。」

 

ユーニスちゃんが立ち上がったと同時に、抱き着いてきたので、抱き返して頭を優しく撫でる。

ユーニスちゃんを守れたこと、そしてこうして親愛を向けられたことがうれしく……立ち上がる勇気を私にくれる。

 

「さて、ダリア、ユーニス、パトリシア。これから、毛玉にレミリアお嬢様の所に案内させます。アナタたちは、この毛玉についていきなさい。」

「りょ、了解です!」

「できるだけ敵にみつからないように気を付けます!」

「お、オリビア先生は一緒に来ないの?」

 

泣きそうになるユーニスちゃんの頭を撫でる。

 

「私は、アナタたちのように戦えない子たちを守りに行くの。ユーニスは、私がいなくてもちゃんとできるよね?」

「……うん、がんばる!」

 

なんとか、ユーニスちゃんはやる気になってくれたようだ。ユーニスちゃんは、私の教室に居た時でもこんな風に幼さが前面に出ていた子だ。今はまだ、成長できなくても……あと4年、長くて6年もすれば立派な紅魔館(こうまかん)の妖精メイドになれるだろう。

 

<お嬢、こいつらは必ず俺が届ける!お嬢も気をつけてな!!さて、嬢ちゃんたち、こっちだ!焦らず急いでついてきてくれー!!>

「わわっ、毛玉さんがいっちゃう!」

「行くよ、ユーニス!」

「うん、オリビア先生、頑張って!!」

 

それだけ言い、毛玉に先導されて、ダリア、ユーニス、パトリシアはこの場から離れた。そして、チリチリと感じていた嫌な気配が出現する。

 

紅魔館(こうまかん)メイド隊、統括メイド隊副メイド長補佐 兼 メイド隊教育長、毛玉妖精のオリビア。

随分、あなたのその毛玉による圧倒的な数的有利。ここでつぶさせてもらうとしましょう。』

 

いつの間にか置かれていた、蓄音機からそんな声が聞こえてくる。

その声が、どうして私の事を知っているのか、どうして私の種族の秘密を知っているのか、そして私の持つ毛玉軍団の指揮状況の麻痺を狙ってか、用意されたこの場所。

空中に魔術陣が浮かび上がったかと思うと光りだりだし……そこには、見ただけで身を震わせるほどのアンデッドの騎士がそこに居た。

 

『いかな毛玉でも、この死者騎士(デスナイト)を突破することはできません。

アナタの得意な特大毛玉の質量落下による圧殺でも、この死者騎士(デスナイト)を倒すことは叶わないでしょう。そして、レミリアとフランの救助隊も間に合いません。

 

―――さあ、死を受け入れなさい。』

 

「ゴギャァアアアアアアアアアアッ!!」

 

蓄音機から死の宣告を受け、死者騎士(デスナイト)が本能的な恐怖を呼ぶ雄たけびを上げる。

……体が震えるものの、咆哮に負けずにショートソードを構え直す。

蓄音機が死者騎士(デスナイト)によって無造作に壊され、死者騎士(デスナイト)が私を睨む。

 

「レミリアお嬢様が来てくださるまで……耐えて見せるッ!」

<お嬢、俺もいるぜっ。いざって時は、俺を盾にしなぁッ!!>

 

決死の覚悟で、死者騎士(デスナイト)を迎え撃つことにした……。

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁッ!!」

 

「グゴギャァアアアアアアア……。」

 

「…………?

 

()()()()()()()?」

 

<おいおい、いくらなんでも冗談…………じゃねぇのか?

 

…………()()()()()()()()()。>

 

決死の覚悟で死者騎士(デスナイト)を迎え撃ち、死力を尽くす力戦になると思われたその戦いは、機動力と特大毛玉の防御力で勝る私の呆気のない勝利という形で終わる。

正直なところ、死者騎士(デスナイト)は、これまでに経験してきた第2次紅魔館(こうまかん)戦争の人間たちや、聖母(マリア)戦争の強化吸血鬼たちと比べて、単調な動きと大振りすぎる攻撃だから隙も大きすぎて反撃が余裕だったし、能力自体もひどく劣っているように感じてしまう。

 

<おいおい……相手はアンデッドだぜ?こっから復活するとかあるよな?>

「……あっ、崩壊が始まってる。」

<………………うそだろぉ?>

 

復活する兆しも見せずに、死者騎士(デスナイト)の体がサラサラと灰になってゆく。

強さ自体はあったので、おそらく死者騎士(デスナイト)になる前は強い騎士だったのだろう……その敬意を表し、崩れ行く死者騎士(デスナイト)に向かって、元シスターの吸血鬼メイドさんに教えてもらったやり方で十字架を切る。……すると、ぽわりと死者騎士(デスナイト)の体から光の玉が浮き出し、お礼を言うように何度か動き……そして天へと昇って行った。

 

<どーなってんだ、あの蓄音機の声の奴は、お嬢の事を確実に始末するつもりだったはずだろ?>

「……それは間違いないと思う。だからこその死者騎士(デスナイト)召喚だろうし……」

<でも、お嬢は死者騎士(デスナイト)を倒しちまった。それに、こうして無駄口叩いてるが、倒された場合の予備策も発動してる様子もねぇ……。>

「メイド長と比べて、随分と詰めが甘いね。」

<メイドの大姐さんが今回の騒動の主犯だったら、俺もお嬢もとっくに死んでるな……。>

「……考えることはいろいろとありそうだけれど、それはパチュリー様とかに任せよう?」

<それもそうだな……それよりも、戦えないメイドの嬢ちゃんたちを助けようや>

 

そう言った特大毛玉の上に乗り、移動を任せてその場から離れる。……追撃も、トラップもなくすんなりと移動できてしまった。

…………まあ、考えていても仕方がない。

今は、一人でも多くメイドを独自に助けることにしよう。

 

 

 





キャラクター一人一人にスポットライトを当てるため、個別の物語を書くわけですが……。
もちろん、一人一人書いていけばその分、庭園迷宮の完全攻略に時間がかかるわけです。
そこでアンケートを募集したいと思います!

皆さま、ふるってアンケートのご協力もお願いします!!

内容はコチラ
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お話の進め方

  • 長くなってもいいからこのまま
  • ただでさえ長くなりそうだから短くしてくれ
  • レミリアお嬢様が合流する方で
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