紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!   作:ライドウ

99 / 161

今回は死神メイドちゃんのお話となりますが、レミリアお嬢様視点でお送りしたいと思います!


□ レミリアお嬢様と死神メイドちゃん

side:レミリア

 

「レミリアお嬢様、庭園迷宮第1層に転移させられたメイドと警備兵の救助、ほぼ完了しました!」

 

咲夜(サクヤ)が、頭を下げながら私にそう報告してくれる。

けれど、私はちょっと首をかしげることになった。

 

「……ほぼ?ってことは、まだ助けてないメイドか警備兵がいるの?」

 

私がそう言うと咲夜(サクヤ)は、少し気まずそうな顔をしながら頭をあげて、右手の人差し指を立てた。

 

「……メイドが一人だけ。ですが、救助したメイドや警備兵たちの話によると……ただ一人、ルームボスの足止めに向かって、そのまま行方が分からなくなっています。」

「そのメイドは、一体誰?」

 

私の家族を、私の仲間を、誰一人とてパメラの策謀で失いたくないため、咲夜(さくや)にそう聞いてみるが……咲夜(サクヤ)は少し言いづらそう。それどころか、それを聞いていた美鈴(メイリン)も少し気まずそうな顔をしている。

 

「えっと……お嬢様、そのメイドの事なのですが救助しなくても大丈夫かと……。」

「……咲夜(サクヤ)それは、自分の仲間を、そして私の家族を見捨てろという事か?」

 

今の咲夜(サクヤ)の言葉には、苛立ちを隠せなくなる。

しかし、咲夜(サクヤ)は怒りを露わにした私に臆することなく、堂々としている。

どういうことだ?本当に見捨てさせるつもりなのか?

 

「あの、お嬢様……そのメイドと言うのが、死神メイドさんなんです。」

「えっ……あー、なるほどね。」

 

咲夜(サクヤ)が頬を掻きながら教えてくれると、苛立ちが無くなってしまう。確かに彼女なら、放置でも問題はないだろう。むしろ、私たちが心配するだけ無駄だ。

なにせ彼女は……

 

「あっ、居た居た。レミリアお嬢様~、こちらです~!」

 

と、生垣をかき分けて来たのは件の死神メイドちゃん。

戦鎌を片手に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を持ってやってきていた……そう、死神メイドちゃんはメイド隊の中でも上位の強さを持つメイドだ。

戦闘の中での強さで言うのなら、アンナと4メイド長、美鈴(メイリン)やベナミと言った戦闘特化のメイドたちや隊長クラスの警備兵の方が強いが、単純な種族としての強さとしてはこの子が一番強い。

なにせこの子は、死神……本来なら、神の種族に属する死を与える神だ。そんな存在が弱いはずないでしょう?

 

「お疲れ様、ルームボスを足止め……と言うより、討伐したのは、報奨に値するわ。今回の一件が終わったら、何か欲しいものを利かせて頂戴?」

「いえいえ、レミリアお嬢様。私も紅魔館(こうまかん)がメイド、そのような贅沢はもっとすごい事ができたらお願いしますね!」

(ルームボス*1を倒したことは、すごいに入らないのかしら?)

(レミリアお嬢様、死神メイドさんの”すごい”は、モーゼが海を割るとかの”神の御業”とかのレベルですから……)

(あー……種族間の”すごさ”のズレね。)

 

この子はそう言うところがあるから、働きすぎるのでどうにかしないとな……。

……コホン。ともかく、庭園迷宮の最後のメイドを見つけて安堵したその時……

 

『はぁー……本当に本当に、レミリア……アナタはなんて悪い子に成長したのかしら。』

「ッ……パメラ・スカーレットッ!」

 

パメラ・スカーレットの声が蓄音機から聞こえだし、私たちは警戒を引き上げる。

蓄音機から聞こえるパメラ・スカーレットの声は、随分と落胆したもので、ひどく私に失望した声だった。

その声にどうしても折れそうになってしまうけれど、フランがそばに居て、私を見て頷いてくれたことで気をしっかりと保つことができる。

 

『よりにもよってそんな……本当に本当にあなたにとってダメな存在をメイドにするだなんてね。』

「……これ、死神メイドちゃんのことを言ってない?」

「フランもそう思うわよね……?」

『レミリア……どうして、疫病神をメイドにしてるの?』

「「えぇっ?」」

 

蓄音機から聞こえてくる声に、私もフランも思わずポカーンとしてしまう。

咲夜(サクヤ)は思わず吹き出してしまうし、美鈴(メイリン)も笑いをこらえようと下唇を噛んでいる。通信魔術の向こうに居るパチュリーは、笑ってしまい魔力操作が上手くいっていないのか通信が少し上手くいっていない。件の死神メイドちゃんですら、笑いそうになって頬を膨らませている。

救助したメイドたちや警備兵たちの話を聞いて思ったのだけれど、実はパメラ・スカーレットが見た未来と、私たちが生きている今はだいぶズレているのだろうか。それをパメラ・スカーレットは知らずにドヤ顔でメイドや警備兵たちを抹殺しようと、コロっと倒せちゃう弱い相手をあてがうんだから、笑いそうになってしまう。

 

「そっ……そりぇが何だっていうのよ!」

(お姉さまっ、声、こえがわらってますわよっ……ぷぷっ!)

(そ、そう言うフランもじゃない!)

 

笑いそうになり思わず噛みかけたが、幸いパメラ・スカーレット(哀れな舞台装置)にはそれがバレていないようだった。蓄音機の向こうから、特大のため息を感じる。さっきまでの、不思議と気落ちる効果はなかった。

 

『まあいいわ、そのメイドは今ここで始末する。』

 

蓄音機からそう聞こえてきて、空中に魔術陣が出現する。

パメラ・スカーレットの策略や召喚する魔物に関しては、確かに私たちにとって脅威成りえないとはいえ……この美しさすら感じる精密さの魔術陣の作成術、そしてそれを可能とする魔力操作と魔力量には驚かされる。時代と性格さえが違えば、神代の魔術師として名をはせて、私たちの誇りある亡き母だったのではないかと思うぐらいだ。

魔術陣が光りだし、その中心から現れたのは、私とフランにとっての天敵……天使だった。

 

『て、天使の召喚ですって!?こ、こんな魔術、聞いたことがないわッ!?』

「でも、意思があるように感じれないわ……まるで人形みたいね。」

「レミリアお嬢様、天の使いっていうのは総じてこんな感じです。この天使、ブラックな仕事で心壊れてます。」

「どれだけブラックなの……?」

 

死神メイドちゃんの言葉に、フランが思わず呆れてしまう。

そう言えば、堕天使のメリーさんが「365日24時間休憩なし」って言ってたっけ……それは確かに、心壊れても仕方ない。

 

「でも心壊れても強いので、私にやらせて下さい。」

 

と、死神メイドちゃんが胸を張りフンスと鼻息をだしながら、そう提案してきた。

……確かに、吸血鬼である私とフランでは天使の相手は厳しい、だからといって咲夜(サクヤ)美鈴(メイリン)に任せるにも、実力的に厳しい。パチュリーの支援魔術による攻撃なら、チャンスはあるだろうけれど、『黄金核火(エルドラド)』クラスの魔術でないと無理だろう。

……せっかくだし、

 

紅魔館(こうまかん)が主、レミリア・スカーレットが当主命令をもって命じる!死神メイド、”アリス・マカブル”よ、能力を持って一撃で敵を葬り去れ!!」

 

声を張り上げ、死神メイドちゃん……アリスちゃんにそう、命令する。

アリスちゃんは、一瞬だけ驚いて目を丸くしてかわいくアワアワしたけれど、瞬きをした次の瞬間には、凛々しい顔つきになっていた。そして、私の一歩前に移動し、戦鎌を構えながら、私に向けて頭を下げる。

 

「御意。」

 

アリスちゃんは、私の命令に了承すると、戦鎌を両手で保持し、召喚された天使に殺気を向ける。

 

「申し訳ないけど、我が主からの命令だ。天使と言えどその魂……刈り殺させてもらうッ!!」

 

さっきを向けられた天使は、さっきを受けたのにもかかわらず、無防備にまっすぐアリスちゃんい突進する。けれど、それは、アリスちゃんを相手にして、最も愚策……自殺行為である。

 

「なんだ、最も愚かな行動をとったな。では、死ねッ!!」

 

アリスちゃんの顔つきが凶暴になり、戦鎌が振るわれる。ただ一瞬、見える程度の高速で振るわれた戦鎌は、確かに突撃してきた天使に当たった。天使は防御をして、何事も起きていない自分の体に驚きつつ、再びアリスちゃんに攻撃をくわえようとする。

 

……自身が、すでに死んでいるにもかかわらず。

 

ブブブと、天使の体がぶれる。

その異変を感じ取った天使、気付いた瞬間、天使の体がゆっくりと崩壊して行く。

 

「我が能力は、”魂を斬り裂く程度の能力”。相手が概念の定義にて生物であれば、無条件で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。たとえ、圧倒的な格上であったとしても、魂までは守れないだろう?

そして、この攻撃を受けた存在は、魂が壊され、輪廻の輪から廃棄される。分かるか……?我が主に敵対者に与した貴様は、二度と生き返ることはないだろう。」

 

ボロボロと崩れ去ってゆく、天使の身体……天使は最後に、瞳に光を取り戻し、私に助命を願おうとするが……残念なことに言葉を発する前に完全に崩れ去ってしまう。

できる事なら、助けたかったが……パメラ・スカーレットが呼び出した以上、敵対者は確実に潰さねば、パメラ・スカーレットの策謀によりこちらが傷つくかもしれないのだ。

 

「許しは請わん、恨めよ。」

 

……私よりカリスマがあるんじゃないかと思うアリスちゃん。

けれど、天使だった塵が風に乗って消えると同時に、いつものアリスちゃんが戻ってくる。

 

「レミリアお嬢様のご命令、しっかりと完遂いたしました!」

「ありがとう、アリスちゃん。今回の一件が終わったら、やっぱり無理やりにでも報奨を渡させてもらうわ。」

「うっ……謹んでお受け取りいたしますぅ……。」

 

流石に、私が無理やり渡すぞと脅すと、アリスちゃんはしょぼくれながら受け取ってくれるみたいだ。

さて、これで……庭園迷宮第1層のメイドたちは全員救出できた。

あとは……

 

『レミィ、第1層のフロアボスが動き出したわ、気を付けて!』

「……ありがと、パチェ。みんな、聞いたわね!」

「もちろんだよお姉さま!」

「はい、レミリアお嬢様。」

「こちらも、大丈夫ですレミリアお嬢様!!」

 

パメラへの反撃の一手として、まずはこの階層を完全に攻略してしまおう。

 

 

 

*1
警備隊の隊長クラスが出張るレベルの強さ。





なんだかんだ言ってもうすぐ100話行きそうですね。
これまでのご愛読とご声援、ありがとうございます!
お気に入り登録者数も1000人を突破したのもめでたいです!
特別編などはありませんが、拙作「紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!」のこれからのご愛読とご声援、ぜひともよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。