リトライ!    作:荒星

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一年生編 「最高の一年を」
第一話 「始まり」


 僕の名前は高月嶺二《たかつきれいじ》。この名門私立氷花高校に運よく入学でき、これからの高校生活に胸を弾ませるだけの極々普通の人間……のハズだった。

 

 ――初めての高校生活。

 

「おーい」

 

 ――初めての出会い。

 

「おーいってば」

 

 ――初めての青春。

 

「ありゃ、返事がない」

 

 そんな事に期待を膨らませながら、朝靴箱を覗くと入っていた可愛らしいピンクの封筒のラブレター(仮)。

 

 ――こんなの、僕の時代が来たッ! とか思うじゃん? 

 

『ずっと貴方の事が気になっていました。放課後四時に、旧部室棟三階。サブカルチャー研究部と書かれた、ドアプレートの掛かっている正面の教室までお越しください。時間厳守でよろしくお願いいたします。』

 

 ――ええそうですとも。確かになんで呼び出し場所が、恐ろしい噂しか聞かない旧部室棟なの? とか。いや、そもそもこれラブレターかな? とか突っ込みどころはあったさ。けど思うじゃん、来た! 遂に僕の時代が来た! ここから僕の青春ラブコメが始まるんだって……。

 

「ねえねえ、いい加減面接始めたいんだけどー?」

 

 そうさ。恋愛経験ゼロな僕が勘違いして、舞い上がってもおかしくないハズだ。

 

 そして一日中放課後の事で頭が一杯だったせいで、中学の頃の悪友から。

 

『おい嶺二。お前今日一日中ニヤニヤしてて、死ぬほどキモかったぞ。死んで顔面リニューアルしてくるか、熱でもあるんなら風邪薬か睡眠薬でも大量に飲んで人生リニューアルしてこい』

 

『僕に死ねと?』

 

 なんてやり取りの後。隣の席の超絶美少女に、今日の自分はそんなに気持ち悪い顔をしていたか? と聞いてそっと目を逸らされて、砕かれたメンタル諸共、悪友を道連れに人生をリニューアルしてやろうかとも思ったけど耐えた。

 

 ――わかってる……余りにも都合のいい妄想ばっかりしていた事を。

 

「だけどッ! どうして! どうしてッ!! 目の前にいるのが美少女でも、なんなら普通の人でもなくてッ! 某魔法少女の仮面付けた、デスボイスな黒づくめの不審者なんだよッ!」

 

 僕がそう叫ぶと、目の前の不審者はこつんと頭に手をやり、ボイスチェンジャーで出しているだろうそのデスボイスを発した。

 

「てへっ」

 

「てへっ。じゃなくて!! ああァァ! どうしてこーなった!?!?」

 

 

 

 

 

 

 高校の入学式を控えた朝。

 

「起きて」

 

「起きてってば!」

 

 ――ううん……。うるさいなぁ。

 

 どうやら、妹が僕のことを起こしに来たようだ。しかし時計を見ると、起きる予定の二時間前。午前五時を指していた。

 

「紬。実妹の人生相談とか面倒事でしかないから、他を当たってくれないかな……。もしくは義理の妹になって出直して来てくれ。」

 

 妹の名前は紬《つむぎ》、高月紬《たかつきつむぎ》だ。高スペックで、性格良し器量良しで、学校でもクラスの中心。僕と違って、キラキラした学校生活を送っている。

 

「お兄ちゃん……。寝ぼけるにしたって、何気持ちの悪い事言ってんの??」

 

 ジト目でこちらを見る紬を尻目に、布団を被った。

 

「……まだ五時だよ。紬と違って部活なんてないし、というか今日入学式だし僕もうちょい寝たいんだけど」

 

 僕は、早起きは三文の徳なんてクソくらえだと思う派の人間である。土日なら平気で午後まで寝過ごすし、早起きは健康に良いとか抜かす人間はキュッと絞めた上、布団と一緒に天日干ししてやる所存だ。

 

 そんな決意を固めながら不機嫌に言葉を返すと、紬は怪訝そうな顔をしてこう言った。

 

「私も今日は部活ないし……というかもう7時半すぎたよ、寝ぼけて気持ち悪い事言うのはいいけど、入学式遅刻はまずいんじゃない?」

 

 目覚まし時計はまだ5時だ。不安に駆られてスマホを確認すると、なんと時刻は7時42分。大寝坊だ。

 

 僕はそのまま慌ててベットを飛び降りると、支度を始めた。

 

「なんで早く起こしてくれなかったのさ!」

 

「お兄ちゃんが料理できないから、毎日メシ使い化してる私に言う? お兄ちゃん。それに昨日目覚まし合わせるって言ってたじゃん」

 

「申し訳ございませんでした……」

 

 ハイ、妹には勝てません。高月嶺二、所詮ヤツは家庭内ヒエラルキー最弱よ……。

 

「全くもう……。じゃあ私、学校行ってくる。朝ごはんちゃんとテーブルに置いてあるから、昼に回してもいいけど少しは食べて行きなよ。後ゴミは出しといてあげるから、頑張れー」

 

「ゴメンナサイ、アリガトウゴザイマス……。」

 

 と言い残し紬は家を出た。へへっ、ダメな兄貴でゴメンナサイ……。

 

 

 

 僕は支度を終えて家を飛び出すと、パンを加えながら全速力で走り出す。

 

 ――ぬあ、靴ひもほどけた。

 

 しかし構っている余裕はない、なのになんとなく

 

 ――あれ? なんだろうこのシチュエーション。何かが始まりそうな予感!

 

 と馬鹿な事を考えながら角に差し掛かった瞬間、靴ひもを踏んずけ思いっきり転んだ。

 

 すると、なんと角の先から猛烈な勢いで人影が飛び出してきた。

 

 ――これはまさか! 伝説の美少女がパン加えて遅刻遅刻! って走ってる所に突っ込んじゃってそこから物語が始まるパターン!? 遂にバラ色の高校生活がはじm……。

 

「グエッ」

 

「グオッ」

 

 ――あれ? なんか今やけに男らしい声が聞こえたような。いやいやいや、気のせいだ! 顔を上げればそこには美少女が居たりするんでしょ? それになんか顔に柔らかい感触が……まさか!!

 

 そして僕が顔を上げるとそこには……。

 

 頭に僕の咥えていたパンを張り付けた、金髪のスカしたイケメンがいた。しかもどうやら先ほどまで、僕はその男の股に顔を埋めていたらしい。

 

 僕は男の股に顔を突っ込んでいた上に、その感触をあらぬモノに勘違いした事実と、さっきまで想像していた自分の理想の学校生活が急速に遠ざかっていく感覚のせいで、心が急速に冷えていくの感じた。

 

 ――神様、僕が何かしましたか? アニメとかラノベで出て来る神様って、痴女みたいな格好してるよな。これ現実世界でもそういう格好してたんじゃ? とか思った事がいけなかったんでしょうか? それとも、一部の神様達のドン引きエピソードから、その一部の神様にコレは神様じゃなくてダメ人間or犯罪者じゃあ? とか軽蔑したからでしょうか……。なんにせよ、こんな最低な奇跡が起こるんだ。神様なんてクソくらえだ……。

 

「たく、前見て走れよ!! って嶺二じゃん」

 

「滅びろ世界……。消えろ、顔に残った感触ごと、神も仏も世界も全て消し飛んでしまえ」

 

「何朝からブツブツ言ってんだお前」

 

 そうちょっとドン引きながら僕に話しかけたのは、金髪のスカしたイケメン改め僕の中一からの悪友。石川竜也《いしかわりゅうや》だ。

 

 僕が再び死んだ魚のような眼で神を呪っていると、目の前のフラグを粉砕した怨敵は頭に張り付いたパンをよけ、声を掛けてくる。

 

「なんだ、お前も寝坊か?」

 

「アア、ウン。ソウダヨ、リュウヤモ寝坊シタンダ」

 

「いやーヤベぇヤベぇ。昨日徹夜でトランプタワーの新記録に挑戦してたらよ、気がついたら寝ちまっててすっかり朝になってたぜ」

 

 もう皆さんはお気づきだろう、この竜也という男。実は結構バカなのである。

 

 ――そうかぁ、トランプタワー作ってたんならしょうがないね。次作ってるところ見たら完成寸前まで待ってから崩してやる。

 

 なんて八つ当たりめいた現実逃避をしていると、竜也はスマホを取り出して時間を確認しながら、焦った声で僕を現実に呼び戻した。

 

「お、おい! マズイぞ嶺二! 集合時間まで後10分しかねぇ!」

 

 僕たちは頷きあうと、高校まで全力疾走する。

 

 

 尚、普通に遅刻した。

 

 

 

 そして入学式。

 

「……もう嫌だ」

 

 僕は、へこんでいた。何せ間に合わなかった上に、校門にて体育教師にお説教。その後、突き刺さる視線を感じながら教室に入る羽目になったからだ。静まった教室で、自分の座席を確認しながら皆の前で注意される恥ずかしさと言ったら……。

 

「まあまあ元気出せって、な?」

 

 体育館に移動した後、同じく遅刻して怒られた筈の竜也が慰めてくる。

 

「どうして竜也は平気なんだよ……」

 

 その時、水に打ったように場が静かになった。どうやら生徒会長の挨拶のようだ。

 

「見ろよ、あれがこの高校の生徒会長らしいぜ! なんだあれ! 滅茶苦茶美人じゃねえか! この高校入って良かった!」

 

 そして、僕は顔を向けた瞬間。彼女の、生徒会長の余りの美しさに目を奪われる。

 

 凛とした佇まいに綺麗な顔立ち、サラサラしていて腰まで伸びた輝くような銀髪。

 

 まるで物語の中のヒロインが飛び出してきたような、そんな絶世の美女がそこには居た。

 

「うららかな春の日差しが心地よいこのごろ、我が校の桜の花も今を盛りとばかりに咲き誇っています。

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、歓迎の意を表したいと思います。

 高校生活の三年間、勉学や部活動に励み、時折肩の力を抜いて楽しみながら、悔いのない学校生活を送れるように頑張ってください。

 この高校は他の高校とは違い、独特でそれでいてユーモアに溢れたイベントが沢山あります。

 きっとこの高校での生活が、この先の人生でふと思い出して笑えて元気をもらえるような、最高の高校生活になる事を願い、私もその手助けになれるよう微力ながら力添えをさせていただきます。

 最後に、新入生のみなさん今後のご活躍を祈念申し上げて祝辞とさせていただきます。

 本日はご入学、誠におめでとうございます。生徒会長、花園燐《はなぞのりん》」

 

 生徒会長は挨拶を終え、壇上から降りる。その所作一つ一つ取っても気品に満ち溢れていて、僕は生徒会長が挨拶を終えた後も、目を奪われていた。




 お久しぶりの人はお久しぶり。初めましての人は初めまして! 荒星です! えー、今回小説投稿再開させていただきます! ただ、暫くはあんまり頻度高くは書けないのと、小説投稿始めるきっかけになった、この作品の投稿を優先するので、ラスティアの方を待ってくださっている方はごめんなさい! ちなみに作者は俺妹の推しは桐乃だったりする。だ、だって俺の妹じゃないしですし?
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