リトライ!    作:荒星

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第3話 「旨いだけの話はない」

「その……災難だったね、嶺二君」

 

 そう夏美さんが話しかけて来てくれたので、勢い良く起き上がると引きつった顔をされた。恐らく憎しみの余りとんでもない顔になっていたのだろう。慌てて顔を降り、表情を元に戻す。

 

「う、うん。目覚まし時計が止まっちゃっててさ、妹がご飯用意してくれてたんだけど食べきる時間がなくてね。食パンだけ咥えて走ってたんだけど転んじゃってさ。それで……それで……あんな事に……」

 

 まさしく偶然が重なりあって起こった奇跡だとは思う、こんな奇跡を起こす神など死んでしまえばいい。

 そんな事を死んだ目で考えていると、夏美さんが急に吹き出した。

 

「ヴふぉ!? な、なんだその顔は!? なんで急に顔文字っぽく……。そ……それは災難だったね」

 

 そう言うと、夏美さんはプルプル震える。いや、なんか前半は小声で聞こえなかったけど、どっちかというと話よりも僕の顔を見て笑ったらしい。

 

 ――そんなに僕の顔はおかしいだろうか。へッ、ははッ……。

 

「ごめんね! 人がひどい目に遭ったのに笑っちゃダメだよね」

 

 一通り笑い終えると、笑いすぎて出てきた涙を拭きながら夏美さんは謝罪した。

 

「う、うん! 良いんだ。我ながらもし傍から見てれば、きっと大笑いしてただろうなって思うし」

 

 ――色んな意味で無様過ぎて。

 

「ご、ごめん! もう一回! もう一回だけさっきの顔してくれないかな?」

 

 さっきの顔……。きっと夏美さんが吹き出した時の顔だろうか?

 

 ――こう、かな?

 

「ブフォッ!? あ、ダメ! その顔反則!」

 

 いやホント、どんな顔してるんだろう。けどこんな美人さんと親しくなれるなら、いくらでも笑われてやる! ……僕はそんなに変な顔してるんだろうか。

 

 ――ちょっと変顔っぽくしてやろう。

 

「ヒ、ヒィ……もうダメ! ギブ! ギブアップだってば!」

 

「ハ、ハハ……」

 

 僕が変顔を解除すると夏美さんは体勢を立て直し、今度は僕の顔を少し親しみの籠った笑みで見つめてきた。

 

「嶺二君って面白いんだね」

 

 ――待って、急にそんなドキドキするような事言わないでください……。勘違いしちゃうでしょうがッ!

 

 そう僕たちが和気あいあいと話していると、クラスの女子から夏美さんが呼ばれた。

 

「夏美ちゃーん!」

 

「ごめんね、嶺二君。呼ばれたから行くね? また今度お話しよ?

 

「う、うん。また今度」

 

 ああ、ヤバい。今、絶対顔赤いぞ……。

 

 と悶々と夏美さんの背を見送っていたその時だった。

 

「なあ嶺二君よ、どうやら君は相当な策士みたいだな」

 

 僕が肩を叩かれて振り返ると、にこやかな笑みを顔に浮かべた男子が数名、腕を組んで立っていた。

 

「ちょっとお話したいんだけどさ、時間あるよね?」

 

 ――殺されるッ!?

 

「お断りします」

 

「いやいや、遠慮しなくて結構」

 

「そうそう、俺たちと熱い友情を育もうぜ?」

 

「御冗談を……ハハハ」

 

 僕たちは互いに顔を見合わせ、笑った。

 

「「HAHAHAHAHAHA」」

 

 ――助けて竜也! 直樹! 

 

 僕は藁にも縋る思いで竜也と直樹に視線を向け、助けを求めた……。

 

 だけど帰ってきたのは、親指を下に向けながら、これまたにこやかな笑顔でこちらを見る二人の姿だった。

 

 ――バカなッ! 見捨てるのか? 僕と言う親友をッ!?

 

 その瞬間、肩や両手をがっちりと掴まれて、僕は教室の外へ引きずられていく。

 

「やめろッ! 話せば分かるッ! 話せば分かるッ! 僕たちは同じ人間だろうッ! 分かり合えるはずだッ!」

 

 そして僕は、引きずられていく僕を見て某売られていく子牛の歌を口ずさむ二人を睨みつけ、あらん限りの声を振り絞って呪詛を吐いた。

 

「覚えてろよ! 僕はこの仕打ちを忘れない! これから枕を高くして眠れると思うなよ!? 絶対に! 絶対にだッ!」

 

 

 

「アァァァァァァァァ!?!?」

 

 

 

「ひどい目に遭った……」

 

 場所は変わり、僕は廊下で竜也と直樹の二人と談笑していた。

 

「あんだけいい思いしたんだからいいだろ」

 

 僕がいけしゃあしゃあとそうのたまう竜也を、ジト目で睨みつけていると直樹がふと思い出したように言った。

 

「そうそう、そう言えば生徒会が新入生向けに色々説明してくれるらしい。行ってみないか?」

 

 直樹曰くどうやらこの後、生徒会が部活やこの学校の施設を紹介してくれるそうだ。

 

「そうだね……じゃあ行ってみようか」

 

「だな、そんじゃ行きますか」

 

 

 

 僕達は、体育館で行われている生徒会主催の説明会に参加していた。

 

「おい見ろよ! この学校スゲーな、マジで女子のレベル高けぇ……」

 

 若干一名。スカした金髪イケメンヤローは、説明など関係ないと言わんばかりに、参加している女子達を眺めてるけど。

 

「あれ! あの子滅茶苦茶可愛いんだけど! ほら嶺二も見てみろよ!」

 

 竜也に肘でつつかれ、僕は渋々と竜也の指さす方向を見る。

 

 そこに居たのは、どこか勝気そうな赤髪ツインテールの美少女だった。

 

「ふむ、あれは隣のクラスの柊雪奈《ひいらぎゆきな》ちゃんだな。SSランクの超級だ、流石は竜也。目の付け所が良い」

 

「確かに可愛いね」

 

「だろ?」

 

 その少女は、僕達が自分を見ていることに気が付くと一瞬僕達を睨みつけ、また説明をしている生徒会の人達の方に視線を戻した。

 

「つれないねぇ……」

 

 と竜也が言うと、直樹は前を見ろとジェスチャーしながら注意した。

 

「おい、これから副会長のカレンさんが喋るから静かにしてろ」

 

 どうやら司会役がバトンタッチするらしい。

 

「はい! 大山君に代わりまして、これから説明をさせて頂く副会長のカレン・フローレンスです。新入生の皆さん、よろしくお願いしますね!」

 

 先ほどまで説明していた真面目そうな眼鏡君と交代したのは、金髪碧眼で、まるでどこかのお姫様のような可憐な人だった。

 

「うおっ! マジでか! 生徒会ってもう一人S級の美女居んのかよ!?」

 

「あの人はカレン・フローレンス、副会長で眉目秀麗成績優秀。外国の大手企業の令嬢でアメリカ人と日本人のハーフらしいぞ。ちなみにあの人も、俺のランク付けではSSランクだ」

 

「さっきからなんでそんな事知ってるのさ」

 

「ふっ、紳士の嗜みさ。ちなみに今の所半数位の女子の格付けを済ませてある」

 

 ――一体何処にそんな時間が?

 

 まあきっと、突っ込むのも野暮ってやつなんだろう。……というかめんどくさい。

 

「俺生徒会入るわ!」

 

 その後、竜也と直樹が馬鹿な会話をしたり。たまにウトウトしている内に、説明会はお開きとなった。

 

 

 

「じゃ、俺中学時代に世話になった先輩のところに挨拶行ってくっから」

 

「俺もやる事がある」

 

「了解、じゃあまた明日」

 

 そうして竜也と直樹とは別れた。

 

 なんとなく中庭を見学していると、先ほどの説明会で見かけた赤髪ツインテールの子を見つけた。

 

 ――なんだろう、黙りっぱなしも気まずい……。

 

「その、こんにちは」

 

 僕がそう話しかけると、彼女は胡乱気な目を向けたのち口を開いた。

 

「ああ、さっきの三バカの」

 

「僕の名前は高月嶺二、君は?」

 

 僕は苦笑しながら思う、一応こっちが一方的に知ってるって言うのも気持ち悪いし建前上聞いたけど、もっと上手い会話の切り出し方はなかったものかと……。

 

「私は柊雪奈、なんか用?」

 

「い、いや。何となく気になったから。そうだ! なんか入ろうかなって部活あった!?」

 

「ない」

 

 取り付く島もなく返され、僕は額に汗を流しながら内心で思い悩んだ。

 

 ――どうやら僕のコミュニケーション能力じゃあ、ここまでらしい……。話しかけておいてなんだけど凄く気まずい、助けて神様!!

 

 そんな事を考えていると、僕の祈りが天に届いたのか一筋の風が吹いた。

 

「キャッ!?」

 

 ――な? バカな!? 見え……。

 

「水色……」

 

 僕はあまりのことに気が動転して、うっかり目に焼き付いた色を口に出していた。

 

 

 

 その瞬間、僕の目の前は真っ暗になる。最後に目に映ったのは水色と、高速で振りぬかれる柊さんの足だった。

 

「ほげッ!?」

 

 ――神様、美味しい思いをさせていただきありがとうございます。……いや。やっぱり滅びろ、神。




 とりあえず一名以外は大体のヒロイン出そろいましたねぇ……。後二話くらいは導入で普通のラブコメしてもらいますが……。嶺二君や、まさかマトモな学校生活を送れるとは思うまいな? ちなみに嶺二は夏美との会話中に(T ^ T)みたいな顔や、(。 △ 。)みたいな顔してました。どんな身体構造してるんだろうね(すっとぼけ)ちなみに最初の不審者登場に追いつくのも後二話です。


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