シーダ王女が何か言おうとしたタイミングで賊たちが武器を片手に向かってくる。
狙いはまずは王女。
ここでオレが動かなければ結果はわかりきっている。
物語を次へ進めるためにオレは半歩ほど踏み込んで、神肌縫いから連続突きを放つ。
「なっ、に、が……」
レイピアと言っても、それはあの
彼らの持つ粗悪な斧とはリーチが違う。
その上で、速度も違う。
一息で再び数人が血しぶきをあげて倒れる。
「が、ガザック様に報告だ!!」
攻撃の範囲に入らなかった賊たちが引き返していく。
ゲームでは脳停止で突っ込んできた彼らだが、現実ともなれば流石にそうはいかないらしい。
「シーダ王女、何をくれるかは後でってことでいいか」
それにこくりと頷く。
ただ、マルス王子の亡骸からは離れがたいようでもある。
しばし悩むが、死体を持ち歩くわけにもいかない。
かといって、いい言葉を思い浮かべれるわけでもない。
オレは何も言わずに賊たちが走り去った方へと歩き出す。
少し歩いて振り向くと、諦めたように背についてくる彼女の姿を見ることができた。
そういえば、シーダ王女といえばペガサスであるが、その姿がない。
だが、彼女たちのことを知らないという体を取った以上は突っ込むこともできなかった。
暫く歩くと村、そして更に奥には城が見える。
村が滅ぼされている様子もない。
シーダに休んでいくかと聞くとかぶりを振る。
いち早く城に行きたいのだろう。
村に行ったところでここでは……いや、ここでジイさんが仲間になった気がする。
回復アイテム代わりの……僧侶リフだ。
「歩き通しで城に向かって、戦いの中で倒れられるわけにもいかんな
村で一休みしていこう」
その言葉に不承不承頷くシーダ。
村へと入るとシーダを心配する村人たちの歓待を受ける。
「海賊どもが暴れまわって、どうなるかと思いましたが……」
「彼が……倒してくださいました」
そういってオレを紹介する。
「このまま城を解放されるのですかな?」
「そのつもりだ」
「であれば、私も同行させてくださいませんか
このリフ、老いぼれではありますがきずぐすり程度の役割は果たせますぞ」
「では城まで頼む。
いや、きずぐすり程度のといったな」
「ええ、杖によって傷を癒やすことができるのでございます」
「では王女を頼む」
「私は──」
「ここで休んで、城を解放したあとで迎えに来るでもいい
だが、見たいのではないか」
性根の曲がったことを発する。
だが、善良なままで一癖も二癖もある戦乱を生き残れるとも思えない。
ここはファーストインプレッションを貫くべきだ。
「賊の頭領が討たれる様を」
王女の整った顔が苦渋に歪む。
「いくら城の者の仇であっても王女殿下にそのような」
リフが苦言を呈そうとするも、シーダ王女はそれを制するように言う。
「リフ殿、私に治癒を」
それは討たれる様を見たいと彼女が言ったのと同義だった。