エルデンエムブレム   作:yononaka

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夜の騎兵

 リーザ、リーザ……リーザってマルスのママか?

 アリティア王国の王妃、モーゼスに引き裂かれたって原作でナレ死してた、あの?

 

 この人エリスじゃないの?

 え?

 めっちゃ潤んだ瞳でオレのこと見てるけど。

 見られるから見返すよ、そりゃあ。

 

 ……うん、再確認したけど美人だ。

 この人が二児の母?このお体(ボディライン)が経産婦だっていうのか。

 どう見ても二十代中頃。

 こういう言い方は失礼かもしれないけど、多く見積もったって三十路入るかどうかくらい。

 ちょっと気合でもいれようものなら二十代前半でも通じるんじゃないのか?

 ただ、ここでその話をしている暇はない。

 

「呼び方なんてなんでもいいよな?」

「ええ、お好きに」

「そんじゃあリーザ、捕まってろよ」

「は、はいっ」

 

 オレは呼び出したトレントに乗り、自分の前に引き上げたリーザを座らせた。

 

「多分めちゃくちゃ怖い思いするから目を瞑っててくれ」

「え?それは──」

 

 管楽器の大演奏の如き悲鳴。

 わかるよ。

 オレも最初、トレントアスレチックタイムをやったときは同じような声を上げたからな。

 まあ、オレの場合は管楽器なんて言えた音じゃあなかったが。

 

 ────────────────────────

 

 アリティアを駆けるトレント。

 ここまで来れば隠れる必要はない。

 

 片手には手綱を、そしてもう片手にはベンソンの遺品(ナイトキラー)を構える。

 

「死にたくない奴は道をォーッ!!開けろォ!」

「な、なんだあの騎兵は……!?」

「開っけろォーーーッ!!」

 

 敵意が感じられずとも進路に居るものはナイトキラーの餌食にする。

 敵意があるものは思い切り振ったナイトキラーの餌食にする。

 

 とはいえ、闇を駆け抜ける騎兵を目視し続けることは難しい。

 電灯なんかの明かりでもあれば別だが、この世界にそんなものはない。

 少し街道をそれれば闇に包まれる。

 だが、闇の中であろうと褪せ人の視力が見通せぬわけでもない。

 追手を走らせてこないであろう場所までトレントに進んでもらった辺りで止まる。

 

「疲れただろうが、下馬はさせてやれない」

「いえ、若いときは乗馬も嗜んでおりましたので」

「今も若いだろ?」

「……!」

 

 もじもじとするリーザ。

 二児の母には失礼な物言いだったのか、それとも嬉しい言葉だったのかはオレにはわからない。

 

「ただ、問題はこっからだ

 選択肢にもならんが、一応道は二つ

 一つはグラ国境近くにある街まで逃げる

 そこなら休むことができるが、アリティアが放っておきっぱなしになってしまう」

「もう一つは?」

「短時間で可能な限り兵を集め、アリティア主城に寄せる

 今なら大将のモーゼスも、城を守るホルサードもいない

 兵士だけを破るなら簡単だが……どうやって兵を集めるかが問題になる」

 

 リーザも少し考えるように俯き、

 

「アリティア北に砦があります」

 

 増援出現しますよって感じで四つ並んでる、あそこか。

 

「そこにアリティア王家に忠義を持っているものがいます、レウス様の力になってくれるはず」

「様はいい」

「ですが」

「妻になった人間から様呼ばわりされるなんておかしいだろう」

「妻……」

 

 娶るって話をして、それを受け入れた以上はそういうことだろう。

 が、夫を無くした彼女にそれを真正面から向けるのはまずかったかもしれない。

 

「はい、あなたの妻として、そう望まれるのでしたら」

 

 そうでもなかった。

 どういう結婚生活だったんだ、コーネリアス。

 それとも王族ともなればやっぱりシステム的に婚姻しているだけだったんだろうか。

 でもマルスもエリスも原作で触れた感じではよく育てられてた感じもあるしなあ。

 

「北の砦に向かおう

 ああ、でも、四つあるよな?」

「東の橋を渡ってすぐにある砦です」

 

 すらすらと答える。

 話していてなんというか、不安になるというか、

 世俗やら勢力のことがわからないパーフェクト箱入り娘なのかと思っていたが、

 案外そうではないのかもしれない。

 シーダやレナと違って、リーザのことをオレは何も知らない。

 情報の先回りができないってのは何とも不安なものだ。

 


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