『霊呼びの鈴』を使いたいところではあるが、多数の味方を前にして正体不明の亡霊みたいなものを呼び出すのは戦後に禍根を残しかねない。
いいさ。
トレントと
「貴様、何者だッ」
パラディンが馬首をこちらに向けて投げかけてくる。
「レウス、
「参るぞ、レウスッ!!」
銀の槍を振り、構え、パラディンが突き進む。
迷いのない突撃。
グルニア騎兵が優れているのは知っているが、その練度を目の当たりにすると驚かされる。
そして同時に思う。
馬と馬が交差する。
銀の槍はオレの頬を掠め、オレの大剣は下から上へ昇り竜のように奔った。
「お、みご……と」
落馬しながらパラディンがオレを称賛する。
これほどの騎兵をここで失うなんて勿体ない、それが同時に思ったことだ。
その後ろでジェネラルが指揮を掛けている。
囲んで殺せ、と。
そりゃあ土台無理な話だ。
トレントは羽があるかのように飛び、包囲を抜ける。
ジェネラルが追え!追え!と命じているが、それは悪手ってもんだ。
「随分と余裕だな、鎧騎士よ」
アランが猛然と橋を突き進む。
獲物を定めた獰猛な肉食獣を思わせる気迫を纏っている。
騎士らしい立ち振舞を忘れぬ、礼の人といった印象だが、戦場では一変するものだ。
手に持っているのは分厚い装甲には不利とも考えられる
だが、ジェネラルがアランの言葉に気が付き振り返ると同時に、その首が宙を舞った。
装甲が分厚かろうと、可動部は守れないということを見せつける。
見せつけたところでそれを誰が真似できるかと思うが、周囲の兵士を恐怖させるには十分だったようだ。
オレは他の四侠の活躍も見たくもあったが、仕事を放るわけにもいかない。
残りは当人か吟遊詩人に聞くとしよう。
────────────────────────
戦場が切り裂かれている。
いや、それでは生ぬるい。
「ほんとに撹拌してる……」
それは鉄塊の暴風だった。
レウスが疾走る度に、そこかしこで敵部隊が撃滅されていく。
敵が逃げようとしても、主城に辿り着かせまいと前進させられる味方の兵士が邪魔で逃げることすらできない。
「騎士様が味方で良かったあ」
ノルンはのんびりとした口調で矢を番える。
他の四侠や部隊と異なり、彼女はたった一人である。
理由は単純だ。
弦を引き絞り、矢を放つ。
風切り音が遠く、遠くへと消えていく。
常人では気が付かないような赤い飛沫を彼女は見ていた。
彼女が兵を連れ歩かない理由は一つ。
その射程距離に合わせられる射手が存在しないからだ。
「他の三人は大丈夫かなあ」
今や兄弟姉妹よりも強い絆を結んでいる四侠を心配しながら、彼女はまた一矢を放つ。
主城防衛軍はどこから飛んでくるかもわからないその矢を見えざる死神の鎌だと捉え、
恐怖している事を当の