編集版 転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~   作:ドラゴンネスト

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二十一話目

「な、なんだよ、これは……」

 

その日、空から世界を照らす熱い夏の太陽の輝きとは対照的に、彼、兵藤一誠の心は深い絶望の闇に沈んでいた。

この世界にファントムとか居たら確実に生み出して居ただろうと言うレベルで。

 

「どうやら、うまくいった様だな……」

 

そんなorzな姿で項垂れているイッセーを眺めながら、実験結果を確かめている科学者の様な目で見下ろし、その実行犯である四季はそう呟く。

 

「天地ぃ、お前の仕業かよ!? なんで……なんでこんな酷いことをするんだよ!?」

 

「当然だろう? オレがお前に相応の対処をするのは」

 

悲しみと怒りを抱いたイッセーの言葉に四季はそんなイッセーを見下ろしながら何処までも冷酷に言葉を返す。

 

「記憶出来ない、見えない……女の子の……女の子の水着姿が!?」

 

「こっちの女子三人からお前に水着を見られたく無い、記憶されたく無いって言われたんだよ。だから、暫くの間脱着不能の認識阻害効果のある水中メガネを作ったんだ」

 

そこに誰がいるのかは分かるが、誰がどんな水着を着ているのかが分からないのだ。生徒会から渡されて要着用と言われた四季制作の水中眼鏡を着けてから。

 

四季にしてみればルパンレンジャーの変装用のアイマスクの認識阻害機能を応用して作った即席の水中眼鏡だが、意外と生徒会の女性陣には好評であった。

 

今のイッセーの目には其処に誰がいるのかは分かってもどんな水着を着用しているのかは分からない。

ついでに言うと、生徒会では今後プールの授業の際にはイッセーにはこのゴーグルの着用を義務付けようか、いっそ学園生活の間は着けさせようとも話し合われたほどだ。

 

なお、だったら外せばいいと思うのは当然の事なので、一度つけると最低三時間は外れないようにしてもいる。リアスの消滅の魔力ならば破壊は可能だが、頭に密着してる物だけを消すなどと言う精密な制御は、今のリアスならレベルでは流石に無理だろうし。

 

「……終わった。オレの夏は終わった……部長の、朱乃さんの、クリスちゃんの水着姿が……」

 

「随分短い夏だったな」

 

そもそも女の子の水着姿を見ることがイッセーの夏ならば、クリス以外の二人の水着姿を見る機会さえも、表向きには罰が与えられない代わりのリアスの実家での眷属教育で夏休みは消えているのだから、正真正銘此処でイッセーの夏は終わったと言って良い。

別に同意の上なら好きなだけ見れば良いが、特に好みにヒットしたらしいクリスは本気で見られるのを嫌がってるのだ。

 

「効果は少なくともプールを使ってる間は続く上に、効果の持続時間の間は外れないようにもしてある」

 

外そうともがいた挙句に痛みでのたうち回っているイッセーを眺めながらそう宣言する。

 

「チクショー!!!」

 

イッセーの絶叫が夏の日差しの下に響き渡るのだった。

なお、水中眼鏡は木場が聖魔剣で切らないかと模索していたが、頭を絞め殺さんばかりの勢いでフィットしている為、下手に切ったらイッセーにも怪我させてしまいそうで出来なかった。リアスの魔力も同様である。

 

完全に密着させることで着用者を盾に破壊を防ぐのも四季の設計の一つだ。なお、外れないようにもなっているが、それもプールから帰る頃には解除される予定だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、リアス達からの接触禁止は飽くまで悪魔としてのもの。変に抜け道を探されても迷惑なので、一箇所わかりやすい抜け道を用意しておいたわけだ。

 

そんな中で契約前から決まっていた合同でのプール掃除。

ソーナ自体、リアスと四季の賭けを知らなかったこともあるが、手の空いてる対外的に実績の無い部活がオカ研と出来たばかりの軽音部しか無かったのもある。

 

イッセーにとっては夏は冥界のグレモリー家に於いて、エクスカリバーの一件で勝手な行動をした木場とともに眷属教育を基礎から学ばされることとなっている為、これが学校指定のものではないリアス達の水着姿を目にする唯一のチャンスだったのだ。

しかも、今回は軽音部との合同。一年生の美少女である詩乃と雫、三年生に転校してきた小柄だがスタイル抜群のクリスに二年生に転校して来たゼノヴィアと合法的に彼女達の水着姿を拝めるのならば神でも魔王にでも祈りを捧げていいと思っていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 

掃除が終わった後はオカ研と軽音部が優先的に使用できるプール掃除。そんな訳でイッセーは全力でプール掃除をしていた。

 

「張り切ってるな……」

 

もうイッセー一人で良いのではと思えるペースでブラシがけを物凄い速さで行なっている彼を見ながら呆れた様子で呟くのは四季だった。

彼が張り切る理由はわかる。だが、その希望は近い未来に砕かれる事が分かっているだけに憐れみさえ感じてしまうのだ。

 

(拝啓、天国のお祖父様へ。初夏となりました。爛々と輝く太陽は暖かな陽光を届けてくれます。オレはこれから訪れる幸福に涙が止まりません)

 

歓喜の涙を流しながらプール掃除を終え水着に着替えたイッセーは心の中でそんな事を呟いていた。

 

プール掃除は終わり、後は優先的に使えるプールで自分達が遊ぶ時間だ。

詩乃達も折角掃除したのだからと水着に着替えてプールを楽しむとの事に、我が身に起こった幸運に感謝していた。

 

イッセーへの軽音部の女性陣への接触禁止の契約だが、この状況なら仕方ない。視界に入ってしまう程度なら問題ない。そう考えながら自身の幸運に感謝する。

 

(オレ、生きてて良かった。悪いな、松田、元浜。お前達の分まで皆んなの水着姿を堪能させて貰うぜ)

 

そう考えながらプールを使う間は着用する様にと生徒会から渡された水中眼鏡を着ける。

本人はそれを普通の水中メガネと勘違いして、ラッキーとばかりに受け取ったのだが。

 

「あれ?」

 

水着に着替えた詩乃が更衣室から出て来た時に初めて異変に気が付いた。

 

「な、なんだよ……? なんなんだよ、これはぁ!?」

 

そこに誰がいるのかは分かる。だが、見えていない、認識出来ない。

 

「ウソだろおおおおおおおおぉ!!! 誰かウソだって言ってくれよぉ!!!」

 

残酷だがそれは現実の光景である。

初夏の日差しの下にイッセーの絶望の叫びが響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだ、見えない、部長のも、朱乃さんのも、記憶出来ない」

 

そう、詩乃達だけでなく四季制作の水中メガネを通したイッセーの目には、リアスや朱乃の水着姿もイッセーには見えていなかった。

 

爛々と輝く日差しの下、イッセーの周辺だけが絶望の闇に捕らわれていた。

 

「外してくれ、外してくれよぉー!!!」

 

「生徒会から許可は貰ってるから文句はそっちに言ってくれ」

 

幽鬼の如く四季に縋り付きながらそれを外す事を懇願するイッセーだが、四季は取り合わない。

そう、イッセーにその水中メガネを渡したのは飽くまで生徒会側。使わせるか否かの判断はソーナ達生徒会側に委ねたのだ。

 

「安心しろ、飽くまで水着姿の女子を認識出来なくなるだけだから、プールから出れば時間切れまで支障はない」

 

「支障ありまくりだぁ!」

 

どっちにしても三時間経たなきゃ外れないように作ってあるので四季に懇願したところで意味は無い。

 

後は物理的な破壊だけだが、実はかなり丈夫に作ってあるので一、二回の倍加した力で全力で殴らなければ破壊出来ない。……顔面に密着した物を。

 

なお、リアスの滅びの魔力や木場の魔剣での破壊を防ぐ為の対策でもあったりする。頭の上に乗せた薄布一枚だけを傷付けずに切る事は木場のレベルでは無理だろうとの判断だ。

 

唯一の例外は四季の雪蓮掌と巫炎による急激な温度変化を利用した破壊なのだが、それについては教える義理もないので黙っていた。

 

「お兄さん、ナイス」

 

「これで安心して遊べるな」

 

「ああ」

 

雫とクリスからの称賛の声にそう答える。水の中からイッセーに覗かれてると思うと落ち着いて泳いでいられないと言うのがクリスの意見だ。

記憶と認識が出来なければそれも問題ないだろう。仮に自分の視力に力を譲渡したとしても、認識と記憶の阻害に対しては意味は無い。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか!?」

 

「イッセー、しっかりして!」

 

真っ白に燃え尽きたイッセーに向かって安否確認をしているアーシアとリアスだが、イッセーに反応はない。

イッセーの夏は過去最短で終焉の時を迎えたのだった。

 

 

 

***

 

 

 

さて、リアス、朱乃、アーシア、子猫の水着を見ても認識も記憶もできない事実に完全に空を仰ぎながら真っ白に燃え尽きていたイッセーだったが、リアスに言われた一言で復活した様子だった。

 

まあ、その後もなんとかしてゴーグルを外そうと悪戦苦闘しているが、残念ながらそう簡単に外せるような仕様には作ってはいない。

 

「ホント、凄い技術だな」

 

「一応これでも、天才物理学者、なんでね」

 

クリスからの称賛の声に四季は軽い感じでそう返す。

そのゴーグルは元々ルパンレンジャー時の認識阻害用の変装用アイマスクの応用なので然程難しい技術ではなかった。

 

だが、エロを力に変えるイッセーにしてみれば認識も記憶もできないのなら最悪のイッセーキラーとも言える武器になるだろう。

 

そんな中、子猫は四季達の方に歩いて来る。

 

「……先輩、お願いがあるんですが……」

 

「お願い?」

 

子猫からの四季へのお願いとは泳ぎの練習に付き合って欲しいとの事だった。

 

子猫としても始めて四季の力を見た時から聞いてみたい事もあったのも手伝っていた。

姉と似た力を使う、金色のドラゴンの様な気を纏う四季の力の事も。

 

「……先輩、付き合わせてしまって、ゴメンなさい……」

 

「別に良いよ。後輩の面倒を見るのは先輩の務め……らしいからな。でも、オレで良かったのか?」

 

ふと視線を向けるのは例によって認識阻害水中眼鏡をつけたイッセーの方だ。

 

「……アーシア先輩も泳ぎを見てもらいたかったそうでしたから」

 

まあ、アーシアがイッセーに好意を持っているのは分かっているから、子猫は聞きたい事もあった四季に泳ぎの練習を頼んだと言う訳だ。

 

コカビエル戦の時に改めて見た四季の力。本物のエクスカリバーに目を奪われてしまっていたが、四季の力は魔力や神器の物とは違う、仙術に似た力。

いや、四季だけではない、詩乃も雫の力もそれと同じ物だ。

彼らの中でそんな力を持っていないのは子猫が見た所新しく転校して来たクリスだけだ。

 

己の中の力への恐怖と己の弱さへの悩み。どうすれば彼の様に力を使えるのか、聞けば答えてくれるのかは分からないが、己の中の力への恐怖心が四季に対してそれを問う事を戸惑わせていた。

 

「まあ、相談したいことが有るなら相談にくらいはのるから、決心がついたらいつでも聞いてくれ」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

俯きがちにそう答える子猫とそんな子猫の頭を撫でる四季の図。別に後輩の悩み相談くらいならはわ構わないし、下手に力に対して怯えや恐怖心がある方が危険だろうし。力への恐怖や不安は精神に影響される力にとって暴走へと繋がるのだ。

 

四季としてはリアスの眷属はイッセー以外素質こそあれ、それ以上に何かしら抱えている者が多いと思う。木場が良い例で、同時にそれが大きな壁となって成長の妨げになっている。

 

特に問題があるのは朱乃だろう。

使う決意さえ有れば使うことはいつでも可能。圧倒的な格上のコカビエルは兎も角、ライザー戦では十分に切り札(ジョーカー)になれたにも関わらず、だ。

 

なお、現状木場は壁を超えた瞬間に壁から滑り落ちた感じだが。

死んだ仲間達の声で禁手に至ったのは良いが、それによって作り出した聖魔剣も真のエクスカリバーには勝てなかったのだから無理も無いだろうが。

壁を超えるか超えられないかのところで引っかかっている感じだろうか、例えれば。

 

まあ、それはそれ、飽くまでリアス達グレモリー眷属の問題だ。

一番考えなければならないのは王であるリアスであり、問題解決はグレモリー眷属内でやるべき事だろう。頼まれれば相談には乗るが部外者である自分の出来ることはその程度だ。

 

そんな事を考えていると水に潜っていたイッセーがまた真っ白になって、土左衛門の如く浮かび上がってきた。そして、そのまま仰向けになり太陽を見上げると、

 

「やっぱり、オレの夏は終わった……」

 

「……変態先輩」

 

先ほどまでリアスや朱乃やクリスが泳いでいた事や、片手に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を着けていたので何をしていたのかは大体見当がつく。

そんなイッセーの姿を見ながら子猫は、呆れた様子でそう呟くのだった。

そもそも、神器の力も考慮した上で作った品なのだから、効果切れか外す以外に解除法などない。

 

さて、泳ぎの練習も終わり休憩している子猫と疲れて眠っているアーシア。そんなアーシアにタオルをかけてあげた後、リアスにサンオイルを塗っているイッセーを他所に四季達軽音部のメンバーも休憩していた。

 

疲れたのか昼寝しているクリスと雫の二人を他所に四季は持ってきている麦茶を詩乃に渡す。

 

「やっぱり、貸し切りのプールってのはいいな」

 

「そうね」

 

用意しておいた麦茶を飲みながらそんな会話を交わしている四季と詩乃の二人。

 

そんな中、爆発音が聞こえてきた。

 

「「っ!?」」

 

目の前には何故か胸を丸出しにして悪魔の翼を広げて空中戦をしているリアスと朱乃。二人の会話からイッセーを取り合ってガチバトルをしている様子だ。

 

「「……」」

 

そんな姿に顔を見合わせる四季と詩乃。

 

「「はぁ……」」

 

「用具室から、ウィザードライバー取ってくるか」

 

「間に合わないようならクリス先輩を起こして鎮圧して貰うわ」

 

溜め息をつき、戦闘が広がらないようにする為の行動に移る二人。

イチイバルを身に付けているクリスは現在遊び疲れて雫と共に昼寝中の為に詩乃がクリス達を起こし、その間に四季がウィザードライバーを取りに行く。

 

主に、バインドの魔法で被害が来る前に止めるという平和的な解決法と、クリスのMEGA DETH PARTYによる強制鎮圧(アフターフォローの雫の回復術付き)という手段の実行のため。

 

そんな会話を交わして四季は荷物を置いていた用具室へと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや? ……天地四季か。どうした? 外が騒がしい様だが?」

 

四季が用具室の中に入るとそこには水着姿のゼノヴィアが居た。

 

「あぁ、ゼノヴィアか? 今外でちょっと騒ぎが起こっててな。急いで止めるか……クリス先輩に強制鎮圧して貰う前に止めようかと」

 

そんな会話をしていると近くで爆発音が聞こえた後、何かがプールに落ちる音が聞こえた。

 

その後、爆発音をかき消す様に静かだが怒りの込められた歌声が聞こえた。

 

 

 

『テメェら! いい加減にしやがれぇ!』

 

 

 

最後にクリスの叫び声と共に爆発音が響く。……怒ったクリスによるMEGA DETH PARTYでの強制鎮圧が行われた様子だった。

 

「「……」」

 

思わず顔を見合わせる、プールで何が起こったのか大体察した四季とゼノヴィア。

 

「はぁ、手遅れだったみたいだな。まあ、これで外に出ても大丈夫そうだ。それで何でこんなトコに居たんだ?」

 

考えてみれば、プール掃除の後からゼノヴィアの姿を見て居なかった事を思い出す。

 

「初めての水着だから、着るのに時間がかかった。似合うかな?」

 

「いや、ここは更衣室じゃないから。あと、よく似合ってる。水着、初めてなのか?」

 

「今まで規則の厳しい教会に居たのもあるけど、私自身こういう物に興味がなかったんだ」

 

その言葉に確かにそうだと納得する。教会の規律の厳しさと本人の興味のなさもあって縁が無かったと言うのならば仕方のない話だ。

 

「だけど、私も身の上が変わった以上、多少なりとも女らしい娯楽を得たいと最近思い始めた」

 

「そうか、それはいいことだと思うよ」

 

新しい世界が開けたのならば、それが本人にとって不快でないのならば、それはいい事なのだろう。

 

「天地四季、折り入って話がある」

 

「いや、四季で良い。同じ部活の仲間だからな」

 

「そうか。では、四季……」

 

何か頼りたい事があるのなら乗るつもりだったのだが、

 

「私と子供を作らないか?」

 

「は?」

 

予想外の言葉に思わずは受けた声が出る。

 

「悪い、もう一度言ってくれ」

 

「聞こえなかったか? 四季、私と子作りしよう」

 

「はぁ!?」

 

予想外すぎる発言は聞き間違いではなかった様子だった。

 

「ゼノヴィア、お前な……何でいきなり」

 

「うん、順を追って話そう」

 

いきなり子作りしようなどと言われた事に思わず問いかける。

 

「私がこれまで人生を教会に、神に捧げてきた事は知っているね?」

 

「ああ」

 

それは知っている。と言うよりも教会所属の聖剣使いなどと聞けば、これまでの日々は大体想像がつく。

 

「でも、悪魔となった今……私は……目標や夢がなくなってしまった」

 

それはそうだろう、今までの決して短くない人生を賭けて行ってきた事が全て否定されてしまったのだから。

……そこまで聞いても先ほどの発言に至る理由は分からないが。

 

「いや、それは分かるけど、なんでそこで子作りなんだ?」

 

そう、それは分かるが何故突然そんなぶっ飛んだ発言が飛び出してきたのかは分からない。

 

「ああ、何をすれば分からなくなった……。今仕えるソーナ会長にそれを尋ねたら、先ずは好きに生きてみれば良いと、そう答えたんだ」

 

自由に生きる事を知らないが故に、自由に生きる事を勧められたのだ。そればかりは他人が教えて行動して良いものではなく、自分の意思で行動しなければならない。それが自由と言うものなのだから。

 

「だから、私は封印していた物を解き放ち、堪能しようと思う」

 

確かに、先ずは今まで抑えて居た物を存分に楽しむのも悪く無いだろう。

 

「その為には男を知る必要もあるのだけど、丁度いいだろう?」

 

「は、話は分かったけど、なんで真っ先に男を知るから入るんだよ?」

 

「不服か? これでも女性としての身体はそこそこ自信があるのだけどね」

 

そう言って水着姿のゼノヴィアは自分の体を抱きしめる様な仕草で不安げに呟く。

 

「胸もクリス先輩ほどは無いが、詩乃や雫よりも大きいぞ?」

 

「まあ、確かにゼノヴィアも魅力的だけどな」

 

「……っ!?」

 

内心、さっきの台詞は間違いなく二人が聞いたら怒りそうだと思いながらも、逆にそんな切り返しでゼノヴィアを赤面させる。

詩乃の事を思うとそう簡単に誘惑に乗る気など無いのが本音だ。

 

転生前の自分が望んだ事とは言え、裏切らないと言う可能性を上げる為に高い好感度を与えられてしまった詩乃の事を思うと複雑な心境なのだ。

自分との積み重ねでは無く予め与えられた好意によって成り立ってしまった関係は。

 

「ところで、何でオレなんだ? 相手なら他にも居るだろう、イッセーとか」

 

寧ろイッセーなら最初は悩むだろうが最終的には誘惑に負けそうなイメージさえある。

 

「……君は私の事を何だと思ってるんだ。私は四季が良いんだ。イッセーはドラゴンのオーラを纏って居るが、それは赤龍帝を宿してるからだろう」

 

心外だと言う表情を浮かべてそんな言葉を続けられる。

 

「私は子供を作る以上、強い子になって欲しいと願ってるんだ。父親の遺伝子に特殊な力、若しくは強い力を望む。そこで、神器に頼らない強い力を持った四季が適任だと思った」

 

「あー……」

 

ゼノヴィアの言葉に妙な納得を覚えてしまう。間違いなく四季との子には力の一部は受け継がれるだろう。

次代の黄竜の器には菩薩眼の娘と当代の黄竜の器の子供だと言う話なのだし。

 

「神器とは違って生まれついての力なら力は受け継がれるだろう。これは好機なんだ」

 

「ちょっと待て!」

 

この力はガチャで貰った力とは言えある確信はある。間違い無くこの力は受け継がれる。

恐らく相応の鍛え方をすれば力を持てるだけの素質を持った子供は生まれるだろう。

 

「……ん? ああ、子供は基本的に私が育てるから気にしなくて良いよ。ただ、父親の愛を子供が望んだら、その時だけは遊んでやって欲しい」

 

「もう、そこまで未来へのシナリオを描いてたのか? でも、ちゃんと両親揃って子供は育てるべきだと……って、違う」

 

既に其処まで立てて居たゼノヴィアの未来予想図に頭を抱えてしまう。

 

どうやって思い留まらせるかと頭を悩ませて居ると、

 

「四季?」

 

静かだが怒気を感じさせる詩乃の声が後ろから響いて来る。

恐る恐る後ろを振り返ってみると、其処には目が笑って居ない笑顔を浮かべた詩乃が居た。ドアは開いて居るので気付かないうちに後ろに立って居たのだろう。

 

「……中々戻って来ないから呼びに来たんだけど……。ねぇ、子作りってどう言うことかしら?」

 

「いや、オレにやましい事は無いぞ! って、何処から聞いてたのか知らないけどさぁ!」

 

「雪音先輩が吹き飛ばした後、直ぐに呼びに来たんだけど、どう言う経緯が有ればそんな話になるのか存分に聞かせて貰えるわよね? 二人も交えて」

 

誰かが言っていた、笑顔とは本来攻撃的な物である。と。そんな事を思いながら、詩乃に連行される。

 

「なるほど、先ずは詩乃や雫、クリス先輩に勝たなければならないのか。これは至難の技だね。しかし、ライバルが多いほど燃えるものもある」

 

まあ、そんな四季の姿に一人闘志を燃やすゼノヴィア。

 

「四季! 隙あらば私は君と子作りをするから、覚悟を決めておくように」

 

「話をややこしくするなぁ!」

 

更に燃料が投下されてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、四季達四人の姿があった。流石に詩乃への自体の説明に時間は取られたが、無事に理解してくれたことには助かった。

 

「ごめんなさい、ちょっと私も混乱してたみたい」

 

「いや、分かってくれたなら良い」

 

事情を説明すると比較的簡単に事態を分かってくれたのは助かったが、流石にイキナリあんな話を聞いたら混乱するのも無理はないだろう。

 

「まあ、あんな事を聞いたら慌てるのも無理ないだろうけどな」

 

「元々掴めない所が有ったけど、拍車がかかったな」

 

クリスの言葉にそう言って同意しながらも、今は初めての自由に空回ってるだけだろうと思う。

教会のエクソシスト等下手したら聖女以上に外の事に触れてないのだろうから、誰かから命令されての行動では無く自分の意思で楽しむ事を知って行く、それを知って行くのはこれからだ。

 

「…………私もあれくらい大胆に行った方が良いかしら」

 

ふと、詩乃のそんな言葉が聞こえて来たがスルーしておいた。

歩きながらそんな会話をして居ると妙に疲れた顔のイッセーとばったり会ってしまう。

 

「おお! 詩乃ちゃん達! …………と天地」

 

会えてラッキーとばかりの表情を浮かべた後、何でお前まで居るんだと言う態度が現れて居る顔を四季に向ける。

 

疲れてる理由も大体想像できるし、四季の所為で水着姿を見ても記憶できなかったのだから恨みも増していると言う事だろうか?

 

「お兄さん、あれ」

 

そんな中、ふと、雫が校門前に誰かがいる事に気が付いた。

彼女が指差す先には明らかに学園の生徒では無い格好の男が校門の前に立っていた。

 

「やあ、良い学校だね」

 

「えっと、まあね……(誰だ?)」

 

男は校門に近づいたイッセーにそう話しかける。

 

「ここで会うのは二度目だね、『赤い龍(ヴェルシュ・ドラゴン)』。赤龍帝の兵藤一誠」

 

『っ!?』

 

その言葉に反応して臨戦態勢をとる四季達。イッセーを赤龍帝と呼ぶのは裏関係者しか居ない。

 

「コカビエルの時の、白龍皇か?」

 

「察しが良くて助かるよ、『龍の魔法使い(ドラグ・ウィザード)』、天地四季。俺はヴァーリ。白龍皇、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』だ」

 

目の前の男がそう名乗った事でイッセーの表情にも驚愕が浮かぶ。

 

(こいつが、白龍皇……!?)

 

イッセーの左手が反応を示した事が、目の前の相手が本当にあの時の白龍皇だと告げている。

 

(左腕が反応している? おいおいドライグ、こいつマジものかよ?)

 

宿命の相手が目の前に現れた以上起こる事は一つ。

無言のままに後ろにいる詩乃達に下がる様に指示を出す四季。

 

プレッシャーは感じないがイッセーは戦ったら無事では済まない、死を予感させられていた。

 

「そうだな、例えば……俺がここでキミに魔術的な物をかけたり……」

 

「その辺にしておいて貰えるか?」

 

冷気を纏った手刀をヴァーリの首筋に突き付けながら四季はそう告げる。

 

「何をするつもりか分からないけど、冗談が過ぎるんじゃ無いかな?」

 

同時に木場も四季と同様に自身の作り出した聖魔剣を首筋に突きつけながら告げる。

 

「止めておいた方が良い。天地四季は兎も角、君は切っ先が震えてるじゃ無いか」

 

「他所でやるなら兎も角、こんな所でドラゴン紅白戦なんてやられたら困るんでな」

 

其処で一息ついて、

 

「そっちが冗談のつもりでもな」

 

「矢張り、君の方が面白そうだ。是非とも戦ってみたいよ」

 

四季はヴァーリの言葉に動じる事なく手刀に込めていた冷気を強める。

 

 

 

「祐斗、剣を納めなさい。四季、貴方もよ」

 

 

 

そんな時、その場にリアスの声が響く。

 

「部長!」

 

「白龍皇、何のつもりかしら?」

 

イッセーが振り返ると其処には他の眷属を連れたリアスの姿があった。

 

「誇って良い。相手との実力差がわかるのは強い証拠だ。だが、彼は兎も角コカビエルごときに勝てなかった君たちでは俺の相手にならない」

 

軽く笑みでも浮かべながらヴァーリはリアスの言葉に返す。

 

「今日は戦いに来たわけじゃ無い。アザゼルの付き添いで来日していてね。ただの退屈しのぎさ」

 

退屈しのぎで宿命のドラゴン大決戦の火蓋を切りかけられるのは勘弁して欲しいと思う四季は間違っていないだろう。

 

「兵藤一誠、天地四季、キミ達はこの世界では自分は何番目に強いと思う?」

 

「さあな、オレには強さランキングには興味ない」

 

四季はヴァーリの言葉をそう切り捨てる。

そもそも、その強さランキングも当てにはならないだろう。場合によっては純粋に相性の差でトップ10の実力者が100位以下にも負ける事もある。

 

「やれやれ、君は中々ノリが悪いな。まあいい。兵藤一誠、未完成の禁手(バランスブレイカー)状態とした君は上から数えて1000から1500……。いや、宿主のスペックから考えてもっと下かな? そして、天地四季、あの力にはまだ上が有るんだろう? それを考慮すると何れはトップ10も狙えるんじゃないか?」

 

(……こいつ)

 

オールドラゴンやインフィニティスタイルの事を知っている。いや、知らないと言っても気付いているのだろう。

無限の魔法使い。

この世界における夢幻と無限の上位の存在に比類する第3のムゲンだ。間違い無くトップ10に入る可能性はある。

 

「……何が言いたい?」

 

イッセーの言葉にヴァーリは笑みでも浮かべそうな態度で言葉を続ける。

 

「『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』サーゼクス・ルシファーでさえトップ10には入らない。だが一位は決まっている。不動の存在が」

 

「自分とでも言いたいのかよ」

 

「いずれ分かる。ただ俺じゃ無い」

 

「ああ、その不動の存在はそれが誕生した時から変わってない。……赤の龍神、真の赤龍帝、赤龍神帝だろ?」

 

「なんだ、君は知っていたのか」

 

「ああ、そして、現状では二位も不動ってこともな」

 

四季の言葉にヴァーリは感心したように言葉を返す。

 

「兵藤一誠は貴重な存在だ。十分に育てた方が良い、リアス・グレモリー。だが、過去に二天龍と関わった者はろくな生き方をしていない。貴女はどうなるんだろうな」

 

そう言い残してヴァーリは立ち去って行く。

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