そうして、あれから暫くの時が流れました。
コヤンスカヤ
(御主人様、私は元気ですわ)
私は今、再編されたカルデアでスタッフをしています。
けれど、今でもあまり御主人様以外の人間の事は好きになれませんの。
コヤンスカヤ
(ですが御主人様の事だけは正しく伝え続けていきますわ)
御主人様の成した偉業はあまりに大き過ぎて、それなのに記録以外は何も残ってなくて。
御主人様の偉業を信じる方はほとんど居ません。
逆に僅かに信じる者の中には、ただ世界を救う為だけにその身を捧げた聖人。
あるいは魔法使いに届きかねない程の優れた魔術師だったかのように言う方も居ます。
コヤンスカヤ
(冗談じゃありません)
決して、貴方はそんな方ではありませんでした。
むしろそんな存在からは何よりも遠い、魔術師らしくなんてない方でしたわ。
異常な環境にその身を置きながら、染まる事無く在りのままの自分で居続けた。
コヤンスカヤ
(ただ日常や平穏を愛しただけの方でしたわ)
きっとそれは本当は歪で。
何よりも異常で。
そんなところが誰よりも素敵な方でした。
コヤンスカヤ
(だから私は貴方のイメージが狂う事無く伝わるよう、語り継いでいきたく思いますの)
そうして。
そうして正しく語り継いでいけば。
貴方はいつか、サーヴァントとして呼ばれる日が来てくれますでしょうか?
そんな再会への希望を抱いて、コヤンスカヤは生きていますわ。
――また、あれから暫くの時が流れました。
コヤンスカヤ
(御主人様、最近、和食を覚えましたのよ)
元々、料理は出来なくはありませんでしたわ。
ですが御主人様の国の料理も作れれば、喜んで貰えるのではないか。
そう思い、和食とやらの勉強も始めたのです。
慣れない料理で戸惑いましたが、それなりに美味しく作れるようになりましたのよ。
コヤンスカヤ
(後は御主人様の好みが知りたいですわね)
薄味か濃い目か。
どういった味がお好きなのでしょう。
お聞きしたいものですわね。
コヤンスカヤ
(そうして、喜んでくれる御主人様の姿を想像する事が最近の楽しみですの)
ですから御主人様。
また私の前に姿を現してくださいまし。
コヤンスカヤは貴方の事だけを想っています。
――また、あれから暫く時が流れました。
コヤンスカヤ
(御主人様、どこに居られますか?)
あれだけの偉業を成し遂げたのです。
きっと英雄として座に居られる筈でしょう。
けれど――
サーヴァントが召喚されたと聞く度に出向いていますが。
一度も貴方様の姿を見た事はありません。
もしやとは思うのですが――
コヤンスカヤ
(偉大過ぎて英霊では収まらなかったのですか?)
国どころか世界を救い続けたのです。
その功績だけを見れば英霊どころか神霊にさえ届いても不思議ではない気がしますわ。
コヤンスカヤ
(もしそうなら召喚は絶望的――)
いいえ、諦めては駄目ですわ。
ですが、最近、そんな不安がコヤンスカヤの頭を何度も過ぎりますの。
せめてどこに居られるのか。
どのような状態なのか。
それだけでも知りたいものですわ。
――あれから、随分と長い時が流れました。
コヤンスカヤ
(申し訳ありません、御主人様……)
語り尽くせない程、色々な事がありましたわ。
御主人様に喜んで欲しくて、好かれたくて。
善行に励んだ時もありましたわ。
御主人様に叱ってほしくて、見付けてほしくて。
それでも嫌われたくなくて。
ほんの少しだけ悪い事もしましたのよ。
コヤンスカヤ
(ですが、もうコヤンスカヤは限界のようです)
御主人様の命令だから。
たった一つ、私に下さったものだから守りたくて。
どうにか騙し騙し生きてきました。
御主人様への再会を希望に。
ただそれだけの為に生き続けてきました。
ですが――
コヤンスカヤ
(ここまでのようですわ……)
何千年、数える事さえ忘れるほどの時は。
希望を摩耗させ、諦めや絶望に変えてしまうに十分な時間でしたわ。
コヤンスカヤ
(たった一つの命令も守れない愚かなコヤンスカヤを、どうかお叱り下さいまし)
心折れ絶望に囚われた日から、急速に身体が弱っていくのを感じていましたが。
それもここまででしょう。
もう霊基を保つ事すら出来そうにありませんもの。
コヤンスカヤ
(もう一度だけ、もう一度だけでいいからお会いしとうございました)
……。
…………。
〇 〇
エピローグ
ぐだお
「…………」
コヤンスカヤ
「――――――」
座から呼び出された世界で。
追い求めていた筈の人の姿を目にしました。
ぐだお
「えっと、コヤンスカヤ……だよね?」
その姿も。
声も。
話し方も。
記憶と何一つ違いなんてなくて。
コヤンスカヤ
(――ああ、もう諦めた筈ですのに)
コヤンスカヤ
(二度とお会い出来ないと割り切った筈ですのに)
どうして。
どうしてこの方は、私の予想を裏切り続けるのでしょう。
コヤンスカヤ
「いえ、失礼。予想外の見知った顔だったので驚いてしまいましたわ」
泣き出しそうになるのを必死で堪えて。
私は努めて普通に言葉を絞り出します。
コヤンスカヤ
「超敏腕美人サーヴァント、貴方のアサシン、コヤンスカヤ。参上致しましたわ」
ええ、妲己ではありません。
貴方と戦い、貴方を殺そうとし――
貴方が死ぬまで、貴方を求めていた事にも気付かなった愚かなコヤンスカヤですわ。
コヤンスカヤ
「好きな男性のタイプは私の思い通りに愉快に踊ってくれる方」
コヤンスカヤ
「嫌いな男性のタイプは――」
そして何よりも愛しい方は――
コヤンスカヤ
「最後の最期まで、何一つ思い通りになんてなってくれない意地悪な方ですのよ」
コヤンスカヤ
「精一杯尽くしちゃいますので、あまり虐めないで下さいましね、御主人様」
という訳で完結です。
実装前のほとんど何も情報ない時に書いた作品ですので、大分齟齬があったり解釈違いも多いと思います。
それでも少しでも楽しんで頂けたり、これはこれで良かったと思う方が居てくれれば嬉しいです。
それでは別作品でまたお会い出来る事を楽しみにしています。
ちなみに誤解されてそうなので最後に書いておくと、最推し鯖はアタランテ・オルタです。
勿論、最推しというだけでコヤンスカヤも凄く好きです。
何か言いたい事があれば
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ぐだおの解釈がよかった
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コヤンスカヤの解釈がよかった
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途中辛かった
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最後の纏め方がよかった
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面白かった
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コヤンスカヤ好きなんだと思った