透き通る様な世界観にいる一般呪術師   作:半ライス大盛り

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おはこんばんにちわ。
どうにも前回、9月21日に投稿した話のクオリティ的なのが気に食わなかったので、前回のモノを削除して、修正&加筆をして投稿し直しました。文字数も増えてます。

今後はこんな事がないように気をつけてたい所存でございます。

次話が投稿されたと勘違いさせてしまったらすみません。
“ここすき”機能を利用してくれた人にも申し訳ないです。

閲覧、評価、感想、お気に、毎度ありがとうございます。

 
 


眠そうな人 おはようでやんす(再掲)

 

 

 呪力を練り上げる。

 肺の中の空気を空にするように息を吐き、一息で大量の酸素を血中に取り込む事で、血管や筋肉を強化する。

 

 充填。

 膂力にものを言わせた豪快な一撃。

 

 なんの抵抗もなく、剛腕が吸い込まれるように突き刺さる。一瞬にしてスクラップへと姿を変えたオートマタから腕を引き抜く。糸の切れた人形のように動かなくなったそれを端へと蹴り飛ばして視界から退ける。

 

 

 「数だけは一丁前に多いな……」

 

 

 思わずため息が漏れる。

 そして遠くからガチャガチャと、特徴的な駆動音と共に慌ただしく響いてくる足音からこちらに向かって来ている存在を凛太郎は感知する。

 

 

 「……ん〜。なーんかやりづらい、生物や呪霊と違ってロボット(こいつら)の気配を捉えづらいと言うか。ま、ぷちぷち潰してゴミ掃除しながら慣れていくしかないか」

 

 

 欠伸が出る。

 情報を聞きプロの軍隊とやらが持つ武力がどの程度のもかと少し期待していたのだが、拍子抜けというか期待外れもいいとこだった。これなら二級程度の呪霊と戯れていたほうがまだ楽しめる。

 

 まあ、だからと言って油断はしない。

 呪力で強化もせず生身の状態で頭や喉をぶち抜かれたら普通に死ぬ。流石にそれは勘弁……もう一回死んでるけど。

 

 

 「───いたぞ! 対策委員会だ!」

 

 「はっ、雁首揃えて団体客のご登場だ。いらっしゃいませ、お帰りはあちらになりますよお客さま」

 

 「無駄な抵抗はするな!」

 

 「そりゃ、こっちのセリフだっての。死にたくなかったら失せろ、逃げる奴をわざわざ追うなんて面倒な真似はしないからな……ま、お前ら鉄屑に“死”なんて概念があるのかは知らんが」

 

 「……総員! 構え!」

 

 「そうかい。そっちがその気なら……遠慮なく粉々にしてやるよ」

 

 「撃てぇ!」

 

 

 視界に映るのは、自身に向けられる銃口の数々。

 構えたアサルトライフル、そのトリガーに指が掛かり発射される寸前に動く。()()()()()()()()()()()()、あとは出力を調整すればいい。

 

 銃口が火を噴く。

 

 放たれる弾丸の雨。

 全身に浴びせられんばかりの銃撃を前に、ただ静かに凛太郎は片腕を前へと突き出す。

 

 再現するのはかつて戦った事のある人型で頭部には目玉は4つあり、ケタケタと気持ち悪い笑みを浮かべる“宿儺の指”を取り込んだ呪霊が披露した()()()()

 本音を言えば実際にこれが高度な技術と呼べるものかすらわからないが、当然ながら呪力の制御は一朝一夕にはいかないものだ。それなら、呪力のコントロールの末の高度な技術と呼んでも問題はないのではないだろうか。

 

 銃撃の波に晒される。

 息をつく暇も与えんばかりに叩き込まれる銃弾。銃火器から発せられる耳を劈くような銃声、そして鼻につくような火薬と硝煙の香りが辺りに充満する。

 

 やがてマガジンは空になったのか、耳障りなほど響いていた銃声が収まる。銃撃に飲まれた標的の姿を確認しようと煙が晴れるのを待つ事数秒、カイザーPMCは自分の目を疑う光景が存在した。

 

 

 「じゃじゃーん! どーよ、その名もなんちゃって無下限バリア!」

 

 「な、なんだ!? 弾が空中で……!?」

 

 

 弾丸がなにもない空間に阻まれ、空中で動きを停止させた後 軽い金属を響かせながら地面に転がっている。

 

 

 「すげーっしょ。ま、実際はただの呪力のバリアなんだけどね! 並の術師相手ならまだしも、腕っぷしのいい奴なら普通にぶち抜いてくるからあんま使えないけどさ〜」

 

 「くっ! 構うな撃ち続けろッ!」

 

 「けど、使い勝手は良いわけよ。例えばこいつの範囲を広げれば、呪力をぶつけて文字通り()()()()()()()()()()()

 

 「……っ! 退避───っ」

 

 「遅えよ。警告はしたんだ、なら───仕方ねえよなあ!!」

 

 

 押し留めていた呪力を解放する。

 呪霊や呪力といった“負のエネルギー”を視認する術を持たないオートマタたちは困惑することしかできない。

 

 凛太郎の近くにいたオートマタたちは彼が歩みを進め近付くほどにまるで見えない何かに───呪力による不可視の壁によってギチギチと圧力を加えられ仲間が一人、また一人と不可視の壁と壁面に板挟みとなり派手な爆発と共に潰されていく。

 

 

「ほら次」

 

「く、くそっ! どうなってる!?」

 

 

 距離を取れば良いと判断して、不可視の壁の範囲から抜け出したオートマタが狂った様に乱射するが、意味はない。

 

 軽いステップと共に壁を蹴り付け、側転するかのように頭を下にして空中に身を躍らせ、弾丸の雨の僅かな隙間を掻い潜り接近する。

 

 そして機械仕掛けの顔面を蹴り上げ、そしてその足をそのまま踵落としとして叩き込む。

 

 蹴りの威力のあまり、もげた頭部が地面に転がる。

 

 

 「な、なんだ……なんなんだ貴様はッ!?」

 

 「おいおい、つまんねえ質問すんなよ。とっくにごぞんじなんだろう!? オレは地球から貴様を倒すためにやってきたサイy……じゃなかった、あっぶね遊んでる暇はないんだった」

 

 「くそ、ふざけるな!」

 

 「あぁ? ふざけてんのはカイザー(そっち)だろ。んじゃご苦労さん、粗大ゴミの日には綺麗に並べておいてやるよ」

 

 

 腰を落として、上段から叩き落とすように拳を打ちつける。

 拳撃は胸部を容易く貫通して、コンクリートブロックもろともに砕き潰す。

 

 絶命。

 機能を停止させた鉄の塊を冷めた目で見下ろしながら、ズルリと拳を引き抜く。このキヴォトスという世界において存在する、オートマタのような人型のロボットに命や魂という概念が存在し当て嵌まるモノなのか、わからない。

 

 だが、もし仮に当て嵌まったとしても、凛太郎の胸の内に罪悪という感情はきっと存在しないだろう。何せ今まで呪霊や人間を相手にしてどれだけその手を汚してきたかなど、わざわざ数えてなんていない。今更それが増えたところでなんだというのだ。

 

 とうの昔に自分は呪術師(ひとでなし)なのだから。

 

 

 「……ふぅ」

 

 『リンタロー、聞こえる?』

 

 「お! シロコちゃーん。感度良好、バッチグーよ」

 

 

 装着された耳掛け型のイヤホンから、ここ数週間で聴き慣れた少女の声が聞こえてくる。スピーカー越しとは言え聞こえてくる声音がなんとも心地いい。翳る自分の心を洗い流してくれるような気分になる。

 

 

 『ん、よかった。そっちの様子はどう?』

 

 「無問題(モーマンタイ)。こっちにいるカイザーの奴らはあらかた片付けたよ。そっちは大丈夫そ?」

 

 『こっちも大丈夫。少し数は多いけど、私たちだけでなんとかなる』

 

 「了解。ならこっちもカヨコちゃんの作戦(プラン)通り、()()()()()()()()()を急ぐとするよ」

 

 『あー、あー、マイクテストマイクテスト! リンタロウ聞こえてる〜?』

 

 「うるさっ!? おま、もうちょい音量下げろバカ! 鼓膜が死ぬっ!」

 

 

 これから会話に花を咲かせようというタイミングで割って入ってきた空気の読めない男の声が聞けてきた。しかも音量調整を明らかに間違えているであろう爆音。

 

 凛太郎は思わず反射でイヤホンをぶっ壊すところだった。

 

 スマホで曲を聴いている時に間違えて音量をMAXにしてしまった時くらいに音がデカい。ついイヤホンを外してマイクに向かって叫ぶ、あとちょっとで鼓膜がオシャカになるところだった。

 

 

 『あ〜、ごめん。ってそれよりも、報告! いまリンタロウがいる位置から8時の方向。接近してくる部隊がある! 恐らくカイザーの増援!』

 

 「マジ?……ほんと数だけは多いな。了解、速攻で潰してから行く」

 

 『……やり過ぎ注意だからね?』

 

 「あー、なんも聞こえない。なんか電波悪くなってきたわ、んじゃ通信終了〜」

 

 『いや本当に加減してね!?』

 

 

 なにか言っていたが無視して通話を終了する。

 

 加減をしろと言われたところで、充分に加減してやっているんだからあーだこーだと文句を言われる筋合いはない。寧ろ邪魔するなとか、脆すぎるだとか、こっちが文句を言ってやりたいくらいだ。

 

 思わず本日二度目のため息が漏れる。

 

 ───瞬間、不意打ち対策の保険として纏っていた()()()()()()()()()。それは御三家に伝わる対領域秘伝術の触れたものを自動で呪力で弾く呪力操作のプログラム。

 

 「簡易領域」のように自らは領域を展開せず、必中の術式が発動し触れた瞬間にカウンターで呪力を解放し身を守ることができるという優れもの。

 

 その名も秘伝『落花の情』

 と言っても本場の『落花の情』と比べればもどきもいいところだ。何せ見よう見まねで習得し凛太郎が自己流でアレンジを加えている代物だ。

 

 それ故にどちらかというと、性能でいえばシン・陰流 簡易領域のフルオートの迎撃に近い。

 

 『落花の情』によって呪力の膜に触れた物体を呪力が自動で迎撃する。呪力の膜に触れた物体、およそ手のひらサイズ鋭利な弾丸は爆ぜるように砕けた。

 

 

 「っ……。(頭部狙いの狙撃か。ちょっと危なかったな、気ぃ抜き過ぎた)」

 

 「対策委員会の一人を発見した」

 

 「うげ〜。ガキ一人にこんな大人数連れてくるなんて、ちょっと大人気ないんじゃない?」

 

 「ふっ、そうか? お前を相手にするなら、これくらいは必要だと思うが」

 

 

 気づけば包囲されている。

 いや、気づけばというのは間違いか。忍び寄る気配に気づきながらも、あえて包囲されたというべきか。向こうからこっちにやって来てくれるなら、わざわざ出向く必要もなく手間も省けるというものだ。

 

 周囲にはカイザーPMCのオートマタ、そしてカイザーPMCに傭兵として雇われているであろうどこかの学生だった子供。

 

 聞いた話によれば、退学した生徒や不良の生徒たちを集めて、企業が私設兵として雇っているとかなんとか。

 

 噂話程度だったらしいが、どうにもマジらしい。

 凛太郎は顔を顰めて気怠げに息を吐いた。

 

 

 「あんた、アビドス対策委員会の津上 リンタロウだろ?」

 

 「あれ? 俺ってもしかして有名人? いや〜、困っちゃうなー!」

 

 

 この部隊のリーダー格ともいえばいいのか。

 こちらを見下ろすように高台に立ち、まるで友人に挨拶でもするみたいに気さくに話しかけてくるカイザーPMCの雇われているであろう兵士。全身をゴテゴテとした鎧のようなもので覆ったロボット。

 

 デカい。

 熊のように太く、身長も自分が見上げるくらいにはありそうだ。壁に張り付いたり、隠れたりせず、堂々と仁王立ちして構えている。その立ち姿は貫禄すら感じるくらいだ。

 

 なんだこいつ、馴れ馴れしいな。

 なんて考えながらもとりあえず言葉を返す。

 

 

 「ああ。あんたの噂をいくつか聞いた事がある」

 

 「へえ……それってどんなやつ? イケメンがいる的な?」

 

 「いや。なんでも、アビドス高校にはヘルメット団や賞金首を相手に全裸で襲い掛かってくるヤバい男子生徒がいるらしいじゃないか」

 

 「ちょっと待て」

 

 

 どうしても聞き逃せない一言があった。

 

 え、なにその噂?

 いやまあ、確かにキヴォトスに来たばかりの頃に凛太郎はフルチン状態でヘルメット団を相手に戦ったことはあるがその一回きりだ。だというのになぜそんな噂が広まっているのか。

 

 話だけを聞けば、まるで露出狂の変態趣味を持ったヤバい奴が見境なく相手を襲っているようにも聞こえてしまう。どう考えたって悪意のある噂の広め方だ。

 

 え、その噂はどこまで広まってるわけ?

 場合によっては噂の出所をしらみつぶしに突き止めた際には、実力行使も厭わないつもりである凛太郎。え、マジでなんなんだその噂は。

 

 

 「さて、無駄なお喋りはこれくらいにして」

 

 「全然無駄じゃないんだが? ちょ、噂の出所はどこなんだよマジでさ」

 

 「強いんだって? 相手してくれよ」

 

 「おうこら、頼むから話聞け?」

 

 

 もうこの際、戦闘とかどうでも良く、その場に座り込んで頭を抱えたくなるくらいだった。いったい全体、なにがどうなってそんな噂が広められたのか、アビドス在住の全裸の男子生徒とか不名誉にもほどがある。

 

 ───因みにこの数ヶ月後、トリニティ総合学園に在籍しているネジの外れた好色家の女子生徒への誤解を必死に解く事となるの凛太郎はまだ知らない。

 

 意識を切り替える。

 とんでもない話を聞かされて気が緩んでしまったが、これ以上この場で時間を浪費することはできない。凛太郎は呪力を練り上げながら眼前の(あいて)を睨みつける。

 

 

 「はぁ、くそ……んじゃルールを決めよう」

 

 「ルール?」

 

 「ついさっき先公から釘を刺されたばっかなんだ。やり過ぎて怒られたくないからな……そうだな、泣いて謝れば殺さないでやるよ。これがルールね」

 

 「……調子に乗るなよクソガキがっ」

 

 「うっせーえな。さっさとかかって来い、たった今お前のせいで機嫌が悪くなったんだ。八つ当たりさせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 「えっと……聞き間違いじゃなければホシノちゃんを囮に使うって言った?」

 

 「うん。多分それが一番手っ取り早い」

 

 「そっか〜。聞き間違いじゃなかったか〜」

 

 「ちょ、ちょっと待ってください! ホシノ先輩を囮にって、一体どういうことですか!?」

 

 「大丈夫。ちゃんと説明するから落ち着いて」

 

 

 時刻は約半日ほど前まで遡る事となる。

 場所はアビドス高校の対策委員会本部、便利屋68のメンバーを含め凛太郎たちはカイザーの思惑に対して作戦会議を行っていた。

 

 対策委員会の面々がアビドス砂漠の片隅でカイザーPMCの理事と一悶着あった後、PMC理事の嫌がらせによって9130万円という馬鹿げた数字にまで引き上がった利子。

 

 そして9億円の借金に対する補償金として一週間以内にカイザーローンへ3億円を預託する事なった詰みと言っていい現状に、打開する為の策が出ないでいたところに突然、カヨコが小さく呟いたのだ。

 

 そんな彼女の発言に理解できないと身を乗り出そうとしたアヤネを凛太郎はドードーと落ち着かせる。

 

 

 「そんで、ホシノちゃんを囮にって話……詳しく聞いてもいい?」

 

 「うん。けどカイザーの目的がなんなのか、まずはそこを改めて理解しなきゃいけない」

 

 「カイザーの目的? あいつらアビドスで宝探ししてるんじゃないの。そうなるとカイザーって意外とロマンチスト?」

 

 どんな時でも童心は忘れるべきじゃないよねー、なんて場違いな発言。

 

 記憶を放り起こせば、カイザーがアビドスの土地を買った理由はアビドスのどこかに埋められているという”宝物“を探しているとか何とか、そんなでまかせで眉唾染みた話を聞かされたと凛太郎は皆から耳にしていた。

 

 カヨコの言う、カイザーの目的とやらに首を傾げるばかりだ。

 

 

 「私もその宝探しとやらがどこまで本当なのかはわからないけど、それだけじゃない事は確かだと思うよ」

 

 「まあ、そーかもね」

 

 「情報を共有してもらった中で出てきた“スカウト”の話や、カイザーPMCの理事……それとリンや小鳥遊ホシノに取引を持ち掛けた『大人』の存在。どれも一筋縄じゃいかない話だけど」

 

 「ふむふむ」

 

 「もしかしたら、カイザーを潰すっていうリンの目的も、アビドス対策委員会の抱える借金……というよりも無理に挙げられた利子に関してもどうにか出来るかもしれない」

 

 

 深く考え込んだ様子で話を切り出した彼女の言葉に全員が驚いた。

 

 まず第一に、ホシノに“スカウト”の話を持ち掛けた『大人』とカイザーは別の企業また組織である可能性が高いとのこと。そもそもカイザーからの9億という借金をカイザーの人間がその半分を肩代わりするというのもチャンチャラおかしい話だ。

 

 借金の肩代わりが仮に本当だとするならばアビドスとカイザー、そしてそこに加わった関係のない第三者と考えた方が自然だ。

 

 そして第二に、ホシノが彼らの“スカウト”の話を呑んで自主退学した場合に起こりうる事態の話。

 

 現状このアビドス高校には生徒会が存在していないともいえるが、生徒会が存在した頃より在籍し、所属していた最後の生徒会メンバーとも言えるホシノが学校から去ってしまえばアビドス生徒会は完全に存在しないも同然となる。

 

 学校の資産の議決権などは、その学校の生徒会にある。

 だが公的な部活も、委員会も、生徒会も、自治区すらもない。

 

 そんなアビドスは学園都市の学校として自立・存続が不可能だと判断され土地の所有者であるカイザーコーポレーションにこのアビドス高校までもが吸収されてしまうのがオチだ。

 

 カヨコの口から語られる、充分にあり得る可能性の話に口を開けて驚くしかない。

 

 

 「なるほどね。大体わかった、説得力もある……けどそれがどうして囮の話に繋がるの?」

 

 「要は、そこを利用する」

 

 「というと?」

 

 「さっき言ったように小鳥遊ホシノがスカウトに応じたとして、学校から生徒会が消えれば実質的にここもカイザーの自治区になる。そうなれば退去命令が対策委員会にも出されるはず、現に街の住人たちにも退去通知が出てる」

 

 

 その時、カイザーはきっと実力行使に出る筈。

 なにせ生徒会のメンバーも消えてアビドスの自治区全てがカイザーのモノとなれば私有地に入り込んだ侵入者や居座り続ける余所者を追い出す為という大義名分だってあるのだから。

 

 だからそこを利用しようと、カヨコは言う。

 

 簡単にいうとこっちもホシノの救出という大義名分で凛太郎に存分に暴れて来いと言っているのだ。これには脳筋思考の凛太郎もニッコリの作戦である。

 

 

 「オッケー。力づくってのはわかりやすくて大歓迎だ。やはり暴力が全てを解決する……!」

 

 「……カヨコさんの作戦の概要は大体理解出来ました。けど、借金の利子の方はどうやって?」

 

 「そっちに関しては……ごめん。正直に言って確実とは言えないかもしれない」

 

 「そんなっ!?」

 

 「けど、カイザーローンのブラックマーケットでの不法な金融取引の証拠をアビドスが持ってる」

 

 

 そういえば、銀行強盗した時にゲットしてたな。

 危うく記憶の彼方へと葬り去られるところだった。みんながカヨコの話に聞き入る中、凛太郎は神妙な顔をしながら証拠とやらの存在を今しがた思い出していた。

 

 

 「それなら連邦生徒会の調査がブラックマーケットに入る筈なんだけど……問題は今の連邦生徒会が動けるかどうか。一応私のゲヘナの風紀委員会の知り合いに掛け合ってみるけど」

 

 「それについてなら、考えがある。協力してくれそうな子にもアテがあるよ」

 

 「先生が?」

 

 「……なるほど。そっか、シャーレなら」

 

 

 そんなこんなで救出作戦の決行が決まった。

 囚われのお姫様役となったホシノも、自分に出来ることがあるのならと作戦の概要に快諾してくれた。

 

 

 「……決まった後で言うのもなんだけど、良かったのホシノちゃん」

 

 「んー、何が〜?」

 

 「あの黒服とやらのところに行って、囚われのお姫様役をこなすの」

 

 「うーん、囚われのお姫様っていうのはガラじゃないかもだけど。まあ大丈夫でしょ。黒服の人に一杯食わせるっていうのも面白そうだし……それに、タローくんを頼りにさせてもらうからね」

 

 「!……了解。頑張っちゃうよ〜、カイザーの私有地とか更地にするレベルで」

 

 「そ、それはちょっと頑張りすぎかなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 疾走する。

 視界から得られる情報、景色の全てを置き去りにするような速度で加速する。踏みしめた地面が脚力によって罅が入る。

 

 術式は既に使用していた。

 凛太郎は基本的に倍率(ギア)を4段階に分けて術式を使用している。術式“呪力強化”は一時的に呪力総量と出力を増幅させる事ができる、少ない呪力消費(コスト)で膨大なリターンを得る事ができたとしても上昇した倍率に応じて消耗も激しくなる。

 

 よって現在は最もコストパフォーマンスの良い1段階目のギアを主軸にしていた。

 

 

 「アヤネちゃん。後どんぐらい?」

  

 『この速度のまま街を抜けてアビドス砂漠の方へと出てもらえれば、ホシノ先輩を乗せた車が向かった場所へと10分も掛からずに到着する筈です!』

 

 「了解! ちょっとしつこいかもしれないけど、そっちは大丈夫なんだよね?」

 

 『はい。問題ありません! カヨコさんの言っていた通り、ホシノ先輩が相手の取引に応じたと思われるタイミングで襲撃してきたカイザーPMCの撃退も完了しています!』

 

 「ひゅー! 流石だね対策委員会ッ! んじゃこっちも、街で暴れてる鉄屑を処理しながら住人の救助とホシノちゃんのお出迎えでいいんだよね?」

 

 『お願いします! 私たちも相手を無力化しつつ便利屋68のみなさんとは別ルートでそちらに向かっていますが、リンタロウさんは一足先にホシノ先輩の救出を!』

 

 「んじゃ、またあとで!」

 

 

 通信を切り上げ、市街地通路を走り抜ける。

 既にカイザーPMCが街で暴れているのか、周辺の建物からは黒煙が上がりどこもかしこも火の手が上がっているように見える。

 

 

 「うわあああぁぁっ!?」

 

 「早くっ、早く逃げろッ!」

 

 「……この自治区には、既に退去命令が下っている!」

 

 

 アビドス砂漠への入り口、市街地と砂漠への境界線が目と鼻の先まで来た。時間が惜しい。更に速度を上げようとした瞬間、凛太郎の耳に悲鳴が聞こえてきた。

 

 踵を返す。

 向かう先はカイザーPMCから逃げ惑っている動物の姿をした住民たちの元。一息で踏み込む。

 

 勢いを殺さず、そのまま最高速度でブチ抜く。

 片手に呪力を集中させて、手首かから先の全体を包み込みように30cm程度の長さを持つ呪力の刃を作りあげる。呪力出力にモノを言わせれば、鋼鉄を切り裂くことなんて造作もない。

 

 

 「───邪魔だッ」

 

 

 まずは一体、すれ違いざまに首を落とす。

 続けざまにその隣にいたカイザーPMCのオートマタを胴体から真っ二つにして泣き別れにする。凛太郎の接近に気づいた相手が銃口を向けて構えるが引き金を引く前に、ライフルの先端が切り落とされる。 

 

 膝に蹴りを叩き込み、体勢を崩して下がってきた頭を切り離す。ロボットの残り数は三体。そちらも抵抗する暇も与えずに、カイザーPMCの部隊を全滅させる。

 

 時間で言えば約40秒。

 カイザーPMCの兵士を瞬殺する。

 

 

 「……へ? あ、あれ?」

 

 「んじゃ、先急いでるからもう行くぞ」

 

 「ま、待ってください! せめて助けてくれたお礼を……!」

 

 「それならアビドス対策委員会の子たちに頼むよ、俺はそういうの求めてないから。それと怪我したくなきゃ隠れてな」

 

 「え、ま、待ってくださ……早っ!?」

 

 

 安全なところまで避難誘導をするべきなのだろうが、生憎とこれ以上時間を無駄にすることはできない。

 

 ここに来るまでの道中、遭遇したカイザーPMCの兵士は潰してきた事と、対策委員会のメンバーも向かって来ているので彼女たちがどうにかしてくれるだろうと、住民をその場に残して凛太郎は再び走り出す。

 

 一瞬の出来事でなにが起こったのかわからなかったが、状況から判断して助けてくれたであろう人物へ礼を伝えようとするも、既にそこには凛太郎の姿はなく呆然と佇む犬の姿をした住民だけが残された。

 

 

 「……相変わらずひでぇ場所だな」

 

 

 それから更に走り続けること数分。

 市街地を抜ける。かつては賑わっていたであろう街並み、今では砂嵐に襲われ砂漠に埋れてしまったゴーストタウンに到着した。

 

 ここに来る途中で、恐らくホシノを乗せて来たであろう車の走行した痕跡を見つけて追いかけたが、それも既に砂塵に隠されて見失ってしまった。

 

 アヤネやシャーレの先生にナビゲートしてもらおうにも、通信状況が不安定なのか応答はなくイヤホンからはノイズのみが聞こえる。

 

 

 「人の気配もない……こんな事ならホシノちゃんに俺の残穢を残せるようなモノでも持たせておくべきだったか?」

 

 「───敵発見!」

 

 「兵力を集結させろ! これ以上好き勝手はさせるな!」

 

 「チッ、またお前らか……(けどこいつらがここにいるって事は、場所は合ってるってことか)」

 

 

 本日何度目の邂逅か。

 いい加減、カイザーPMCのロボットたちの量産機のような姿を視界に映すのも飽き飽きしてきた。とりあえず手っ取り早く片付けてここら周辺を探索してホシノを見つけ出そう。

 

 凛太郎が術式のギアを上げようとした瞬間。

 

 

 「なんだ……ッ!」

 

 

 地面が揺れた。

 カイザーの兵士たちによる攻撃か、凛太郎は警戒するがどうにもそうではないらしい。向こうにとっても予期せぬ事態なのか、突然の地震に驚き慌てふためいていた。

 

 立っていることも難しくなるほどに激しさを増し揺れ動く。

 

 地震とは今も動き続けている地球の表面、地下で起きる岩盤の「ずれ」により発生する現象。

 しかしいま味わっている激しい揺れは地震というよりは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような、そんな感覚に襲われる。

 

 

 「……! なにか来るッ」

 

 

 ()()()()()()()()

 いちはやく察した凛太郎は全力でその場を飛び退いたが、対応に遅れたカイザーPMCの兵士たちはそのまま砂の波に襲われて地面に飲み込まれていく。

 

 

 「……マジ? キヴォトスってなんでもありか?」

 

 

 思わず渇いた笑いが込み上げて来た。

 

 凛太郎は見上げる。

 自分を見下ろす巨大な双眸。頭部に存在するヘイロー。まるで特撮の怪獣映画の中から飛び出して来たかのような、圧倒的な存在感を放つ巨大なその図体。

 

 

 

 『■■■■■■!!!』

 

 

 

 

 ビナー降臨。

 

 

 

 

 

 

 




・鬼方 カヨコ
「……ねえ、その、リンの噂って本当なの?」

・砂狼 シロコ
「?……リンタローの噂って?」

「そ、それは、その……ゴニョゴニョ」

「あ、んー……ん、恐竜がぶら下がってた」

「……!??」


一方その頃

・ビナーくん
「ギャオオオン!(おどれなにワシの寝床に毎度ビーム撃ち込んでくれとるんじゃ!)」

・津上 凛太郎
「……つ、ツチノコだ!」オメメキラキラ


今後の展開。※参考程度

  • 時計じかけの花のパヴァーヌ編
  • エデン条約編
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