透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
誤字報告にはいつも助けられてます。
これにて一応アビドス編は完結。
次回からはちょっとだけ番外編を入れつつ、時計じかけの花のパヴァーヌ編に突入する予定です。
シロコにがっつりヒロインやらせるか〜、なんて思ってたら気がつけばその場所にホシノが立ってましたね。ちょっと想定外ですわ。
a月★日
我、帰還の王なり。
色々とごちゃついたが、無事に帰還。
前に日記を書いた時から、だいぶ日が空いてしまった気がする。忙しかったから仕方ないと思いたいが、これは3日坊主になってしまうのか気になるところ。
……まあ、ほんと色々あったね。
結果からいうと、作戦は成功だ。
ホシノちゃんを救出した後、シロコちゃんたちの元に辿り着いたのだがどうやらまだカイザーPMC理事が率いる部隊と交戦中だったようで、ホシノちゃんと一緒に戦いに参戦した。
彼女もカイザーに思うところがあったのだろう。
鬱憤を晴らすかのように暴れていた。いや〜、容赦なくてちょっとびびったね。盾でぶん殴った後に怯んだ相手の顔面にショットガン叩き込むとは思わないじゃん……ヒェ。
とりあえずカイザーPMC理事もしばいておいた。みんなで一発ずつ殴りました、はい。まあ俺は手が滑っちゃって何発も殴ったが、手が滑っちゃったから仕方ないよね。
スクラップにされないだけ感謝しろ。まあ、色々と強請っておいた。今度はお前が搾り取られる番だぜ……なんて思ってたけどホシノちゃんに怒られてやめた。
それとあれだ、シャーレの先公が公的な認証してくれたおかげで対策委員会がアビドス高等学校の正式な委員会として承認された。それに伴いアビドス対策委員会が生徒会としての役割を担う事になった。はい、拍手ぱちぱちぱち。
対策委員会が非公認だった所為で割と酷い目にあっていたので、これで一安心だろう。
アヤネちゃんはホシノちゃんに生徒会長になって欲しかったみたいだが、ホシノちゃんはそれを断固として拒否していた。そのやりとりは側から見ていて中々面白かった。
そういえば、柴関ラーメンも復活していた。
店は潰れたが、屋台という形で再開していた。客も結構来ているようでセリカちゃんもバイトとして復帰している。犬の大将も元気そうで安心したよ。
俺もつい先日小腹を満たす為にラーメンを食いに行き、セリカちゃんを揶揄って遊んでいた。揶揄い過ぎて危うくセリカちゃんから出禁認定される所だったざます。
アビドスの借金に関しては、未だ9億円という馬鹿みたいな数字のままだ。アビドス自治区の土地に関しても大半がカイザーが所有したままとなっている。
これに関しては、まあそうだよなといった感じだ。アビドスとカイザーの取引は自体は違法ではなかったようだし、仕方ない。
とはいえ、あの無理に上げられた利子に関しては前よりも遥かに少ない金額で利子の支払いが済むようになった。これには思わずアヤネちゃんと手を繋ぎ二人でおおはしゃぎしてしまった。
なんでもカイザーローンはブラックマーケットでの不法な金融取引バレて連邦生徒会とやらの調査が入るとのこと。その際に引き上げられた利子が問題として上がって利子の支払いが少なくなった。
それと今回、協力してくれたカヨコちゃんたち。便利屋68はアビドス自治区を出て、どこかに事務所を設けたみたいだ。それがゲヘナの自治区なのか、はたまた別の自治区なのか、場所は詳しくわかっていないがこの前カヨコちゃんたちから写真入りの手紙が届いた。楽しそうにやってるみたいで何よりです。
……借金の問題が消えたわけじゃないが、以前のような重苦しい雰囲気もなく和気藹々とアビドス対策委員会のみんなが定例会議をしている姿を見て、誰一人かける事なく障害を乗り越えられた事に嬉しくなる。
ま、“シャーレの先生”にも感謝だな。体力もなく、へなちょこなモヤシ野郎だが……生徒の為に頑張る姿は間違いなく先生として認めるべきだろう。
よかったよ、本当に。
a月♫日
そういえば打ち上げしてなくね?
俺のそんな一言で急遽、ホシノちゃんの救出成功とカイザーの借金の利子が常識的な範囲内に減った事を祝して打ち上げが決行される事となった。
これにはみんなもニッコリ。無駄使いはいけませんとアヤネちゃんやセリカちゃんから怒られるかと思ったら結構ノリノリだった。
という事で今回の功労者たちを募ろうと思ったのだが、アビドスの問題が一応解決したからと帰っていったシャーレの先公だけしか来れなかった。
あいつの連絡先は知っていたので連絡したが、なんでお前だけなんじゃい。俺にもアロナちゃんとお喋りさせろ。
以前連絡先を教えてもらっていたので、カヨコちゃんに連絡してみたのだがどうにも新しく設けた事務所の方で仕事が舞い込んで来たみたいで忙しいらしくパスになってしまった。残念。
その代わり今度一緒にご飯にでも行こうと誘われた。うれちい。
それからゲヘナ風紀委員会の方にも連絡してみた。どうにもカイザーとやりあった時に先公が助っ人として呼んでいたらしい。なにそれ、俺は知らされてないけど。
カヨコちゃんから風紀委員会宛の連絡先を聞いて電話してみたのだが、窓口の電話に出たのがアコちゃんだった。しかし電話の相手が俺だとわかると問答無用で即切りされてしまった。その後も何度かかけてみるが即切りされる。なんでやねん。
おうこら、なんのつもりだあの横乳。今度遊びに行った時マジで覚えてろよ横乳。ヒナちゃんにチクるからな、震えて眠れこの横乳が。
トリニティの方でも、ヒフミちゃんが色々と協力してくれていたみたいだから誘おうと思ったのだが、連絡先がわからなかったので誘えなかった。今度トリニティに遊びに行って個人的にお礼を言いに行こうかと思っている。
というわけで、打ち上げ参加はシャーレの先公のみ。
なんというか、以前とあまり変わり映えしない光景になった。
それから、どうせなら盛大に打ち上げをしようという事になり焼肉ぱーちーをする事になった。どっか店でも予約するのかと思ったが、アビドスの教室でやる事になった。
というか先公がお家用のデカい焼肉プレートを持参して来やがった……なんだこいつ。
食材の買い出しはこっちでする事になったのだが、なんと先公が金を出してくれた。やるやんけ、これが大人の余裕というやつか……高い肉買って財布に悲鳴上げさせてやった。
んで、買い出しに行く為のメンバーが選ばれたのだが……それが俺とホシノちゃんだった。いや、めっちゃ気まずっ……。
他のメンバーは準備してたりして手空きになった俺とホシノちゃんで行く事になったのだが、いまこのタイミングでホシノちゃんと二人っきりにされるのは俺の心が持たないって。
ホシノちゃんは何事もなかったかのように振る舞おうとしてくれるのだが……ふとした瞬間にこっちを見てボッと顔を赤らめたり、一人でニマニマと笑っていたり声のトーンが妙に高くなったりと、声をかけてみれば慌てふためいたりしているのだ。
ホシノちゃんめっちゃかわいい(食い気味)
死ぬ。
可愛さで殺されるかと思った。
今思えばふざけてほっぺにチューなんて言ったはいいものの、一瞬だったのと動揺してて気が付かなかったが、あれってほっぺじゃなくてくちびるだった
よし変な事考えるのはやめだ。これ以上深く考えたら頭がおかしくなりそうだ
俺は別に気にしてない。
そう、俺はべちゅにあばばばぶーん。
ダメだ!
脳みそおかしくなる!!
いつもの自分の調子を保てない。
こう、なんていうか、こういうのは俺のキャラじゃないって。そういうのは可愛い系の顔してる憂太のほうが女子受けいいって! 里香ちゃんだって絶対そういってるよ!
とりあえず買い出しはお互いにギクシャクしながらも、なんとか無事に乗り越えられた。シロコちゃんたちは不思議そうにこっちを見ていたがニヤニヤしながら眺めてたシャーレの先公は許さん。その場で足四の文字固めを喰らわせておいた。
焼肉パーチーも無事成功、楽しかった。
肉を焼く係は俺がやった。よく猪野さんとかにも連れて行ってもらってたし、猪野さんとナナミンが二人で飲みに行ってるところに乗り込んだりしてた。こっそりお酒を飲もうとして、「成人してからです」ってナナミンに言われたこともあったな。
五条先生とかにも任務帰りに連れて行ってもらった事はあったが、妙に高い店とかに連れてかれるから流石に遠慮が勝る。そういや五条先生って酒飲めないから結局二人でファミレス行ってドリンクバーで遊んでたなぁ。
……本当に楽しかった。
結構遅い時間まではしゃいでいて、そのせいで先公がアビドスから郊外に出る為の終電もなくなってしまうという事態に襲われたのだが……。
なんと布団セットと寝巻きまで持参して来てやがった……なんだこいつ(二度目)。
どうやら最初からお泊まりするつもりだったらしい。なんでそんな学生気分なんだよお前。
そして唐突に始まった全員集合のお泊まり会(2回目)。
はしゃいでたとの事もあって早めに寝たかったのだが……どんだけ恋バナしたいんだこの野郎。しつこく話を聞いてこようとする先公がウザかったので顔面に枕を叩きつけてやった。
そしてそのまま、枕投げが開始。
意外と肩が強いのか、割といい投げ方をしてくる先公に腹が立って俺も全力で応戦してしまった。その結果、物音を聞きつけたシロコちゃんたちが様子を見に来てしまい遊んでいるのはバレてしまった。
遅い時間になにをしているのかとアヤネちゃんからお叱りを受けてしまったが、そんな彼女の顔面にシロコちゃんが枕でダイレクトアタック。そして悪ノリし出したホシノちゃんやノノミちゃんが俺や先公に、いつの間にか持って来ていた枕を投げつけてくる。
状況に流されたセリカちゃんも参戦して、若干キレ気味のアヤネちゃんもシロコちゃんの顔面に枕を投げつけてやり返していた。
まあ、楽しかった。
気がつけば遊び疲れて全員寝落ちしていた。朝起きたら全員同じ部屋で泥のように眠ってるんだからびっくりしたね。
a月▶︎日
シャーレの先公からスカウトを受けた。
「ううぅぅ……シロコちゃん寂しくなるよぉぉ」
「ん、寂しくなったらいつでも戻って来ていいよ」
「ううう……じゃあ明日には戻ってくるから」
「……う、うーん。それはダメだよ。自分が決めた事ならちゃんとやり通さないと、こっちは大丈夫だからリンタローも頑張って」
「つらいッピ」
翌日。
アビドス高等学校の校門の前で、凛太郎は駄々を捏ねる子供のようにシロコへとしがみついていた。そんな凛太郎の様子にシロコはどうすればいいかわからず若干困りながらも、元気付けるように彼の跳ねた黒髪を撫でている。
「おーい! リンタロウ、準備できたー?」
「じゃかあしい! ぶち殺すぞ貴様ァ! 俺とシロコちゃんの仲を引き裂こうってのか!? てめえの
「うわ怖。ていうか、大声でそんな事叫ぶんじゃありません」
「地獄見せてやるぅ!」
背後からヒョイ、っと現れたシャーレの先生に凛太郎はシャー!っと威嚇する猫のような姿で先生を睨みつけている。そんな彼の姿に呆れるように息を吐いた後、つい苦笑いを浮かべてしまう。
視線の先ではセリカに首根っこを掴まれた凛太郎がシロコから引き剥がされている。「イヤッ、イヤ、イヤ!!」とまるで保育園に通う園児が母親から引き剥がされているのかと勘違いしそうな情けない姿を晒している凛太郎。
───なぜこのような状況になっているのか?
それはつい先日の出来事が原因だ。
打ち上げが終わり、はしゃぎ疲れたアビドス対策委員会の面々がまだ眠っている昼下がりの時間帯。目を覚ましたシャーレの先生と凛太郎は打ち上げで出たゴミや教室の後片付けを行なっていた時だ。
『……は? 俺をシャーレに……なんで?』
『アビドスのこれからの事とか考えて提案してみたんだけど……どうかな?』
『え、やだよめんどくさい』
『め、めんどくさいって……』
『シャーレってあれだろ? 自分から面倒ごとに首突っ込みに行くやつだろ?……なんでそんなダルい事を俺がやんなきゃならんのじゃい。んな事わざわざやってられねえーっての』
ゴミ袋を纏めていた凛太郎にシャーレの先生がそう言った。
なぜそんな話を急にして来たのか、それはアビドスの借金の問題を解決するために先生が出した提案だった。カイザーと派手にやりあい、カイザーローンに連邦生徒会の調査が入った事で月々の利子が格段に安くなったが借金の問題自体は解決していない。
そこで先生は凛太郎に住み込みでシャーレの仕事をしてみないかとお誘いをかけたのだ。キヴォトスでは学生の部活動などでも給料がもらえることがある。
そこで現状無所属の凛太郎にシャーレに所属してもらい、他校の生徒と交流を交え仕事をこなしながらアビドスの借金問題の解決の為に力になれればと、先生は提案していた。
『あとお給料はこれくらい出ます』
『へ〜……ん?……??……ぜ、ゼロの桁多くないか?』
『そう? これでも最低賃金よりは少し高いくらいだけど』
『……嘘だろ』
『因み他の学校の生徒とかも仕事を手伝いに来てくれて……あと可愛い子も多いよ』
『───やりまァす!』
欲望には正直な凛太郎だった。
そんなこんなで話はトントン拍子で進んでいき、凛太郎のシャーレに所属する話が決まった。
いま思えば早計な判断だったかもしれない、なんて後悔してももう遅い。ニッコニコで凛太郎を出迎えに来た先生の姿が囚人を迎えに来た看守の姿にも見えて来た。
その場のノリで引き受けたが、これから面倒ごとに巻き込まれていく事になると考えると気が進まない。
シャーレへの引き抜きに、アビドスのみんなからは渋られるものかと凛太郎は思っていたがそんなことはなかった。信用されてるのか信頼されてるのか、暖かく見送り出してくれるみんなの姿に違う意味で涙が出そうな凛太郎である。
「ううー、セリカちゃん。オデは寂しいよぉ……」
「しれっと私にも抱きついてこないでよ。ちょ、コラ放しなさいってば!」
「……セリカちゃんいい匂いする。なんかフローラル、洗剤変えた?」
「キモい!? ぶっとばすわよあんた!」
「ごめん。今のは自分でもキモいと思った」
もう少しセリカ成分を堪能して起きたかったが、横からジッとこちらに視線を向けるホシノの姿が尻目に映り冷や汗を流しながら離れる事にした。なんだが最近彼女の笑顔に圧を感じてビビっている凛太郎。
重く長い溜め息を吐いて、軽く荷物を纏めたリュックを肩にかける。元々、そこまで私物は多くなかったので荷造り自体は数時間も掛からずに済んだ。持っていくものとしても、数着の私服や、シロコからもらった寝袋、がっこうぐらしをする上で使用していた消耗品くらいだ。
学校の空き教室を自由に使わせてもらってはいたが、そこまで大きな買い物もしていなかったのでその程度で済んでいた。
「はぁ〜……かったるい。俺の楽園生活が……」
「そ、そんな重い溜め息をしないでくださいリンタロウさん」
「これから毎朝、アヤネちゃんの制服姿を眺められなくなると思うと……俺はっ……!」
「な、泣くほどのことですか!?」
「アヤネちゃんはもう少し自分の可愛さを自覚した方がいい。じゃないと怒るよ」
「ええ!? す、すいません……っ」
理不尽な謂れを受けた気がするが、あまりの凄みについ謝ってしまう。ちなみにそんな凛太郎の発言に、ホシノと先生が納得するように後方腕組み彼氏面で頷いている。
「すみませーん! お待たせしました〜!」
「お、ノノミちゃん。来てくれないんじゃないかとヒヤヒヤしてたよ」
「ふふ、リンタロウくんへのプレゼントを受け取りに行ってたら遅くなっちゃいました」
「……へ? プレゼント?」
この場に唯一居なかったノノミが少し慌てた様子で走って来た。
ちょっと遅れるかもしれないと、言伝をシロコたちから聞いていたが出発のタイミングになっても姿を見せなかったのでこのまま会えずに終わってしまうのかと若干焦っていた。
そして遅れて現れたノノミのプレゼントととやらに、凛太郎は首を傾げて疑問符を頭に浮かべていた。
手に持っていた大きな紙袋を漁るノノミの姿に、なにも聞かされていなかった凛太郎は袋から飛び出て来るのかワクワクしている。そんな彼の様子にノノミは笑みを深くして、勢いよくプレゼントを取り出した。
「じゃーん♪」
「………ぇ」
「えへっ、どうですかリンタロウくん☆」
彼女が袋から取り出したプレゼントとやらに凛太郎は思考が止まる程の衝撃を受けた。思考が乱れて完結しない、まるで無量空処でも喰らわせられたかのような凄まじい衝撃だった。
「……は……え?……
「えっと、実はこっそり回収してたんですよね」
彼女が袋から取り出したのは
それは宿儺との戦いを経て、自分がこのキヴォトスに訪れた際には、既にボロ雑巾のような姿になってしまっていた呪術高専の制服だった。
記憶の中では右腕の袖は消し飛び、どこもかしこも切り裂かれた傷があり、血と泥で汚れきっていた制服。
もはや着るに着れないような状態だったそれを、凛太郎はゴミ箱に突っ込んでいたはずなのだ。自分がこの地に持ち込んだ数少ない私物、別の世界からやって来た呪術師だという事を証明する衣類。
凛太郎は過去や未練でも断ち切るかのように、キヴォトスに訪れて数週間の間にこれを廃棄していたはずなのだ。
それが今、凛太郎の目の前にあった。
染みついていた血と泥は綺麗に落とされ、穴だらけで失くなった部位は修繕されており、新品同然と言っていいような状態で目の前にある。
「ほらほら! 着てみてくださいリンタロウくん!」
「えっ……あ、うん」
ノノミに促され、制服に袖を通す。
一年以上は愛用し続けて着慣れた感触、廃棄してから数週間ちょっとしか袖を通していなかっただけだというのに、ひどく懐かしく感じた。
そっくりそのまま、レプリカを用意したのかとも思ったがそうでもないようだった。
本人にしかわからないような、小さな傷の入った見覚えのある呪術高専の校章を模ったボタン。一眼見ただけではわからないが、僅かに修繕した痕跡のある箇所。
それは紛れもなく自分がこの世界に持って来た制服だった。
「どうですか、リンタロウくん。派手に破けてた箇所なんかはちょっと違和感があるかもしれませんけど……」
「………グスッ」
「……え、リンタロウくん?」
「やばい……泣きそう……ウゥ……これ直すの結構高かったでしょ」
「あ、そ、それは私の実家の方でどうにかしてもらったので気にしなくていいですよ……?」
「……誰かティッシュ頂戴、は゛な゛かみたいぃ」
「ちょっと、ガチ泣きじゃない!」
「ほら、タローくんお鼻ちーんして」
あまりのサプライズにガチ泣き寸前、というか泣き出した凛太郎の様子に周りも慌ててふためいてしまう。そんな生徒たちの様子に先生は嬉しそうに笑っている。
「……うし、メンタルリセット」
「ん、リンタロー目が赤いよ」
「それは気にしないでシロコちゃん。目にゴミが入っただけだから」
「ガチ泣きだったじゃない……」
どうにか持ち直した凛太郎だが、今更何事もなかったかのように振る舞おうとする姿に周りから温かい視線が向けられてしまっている。それを凛太郎もわかっているのか、気恥ずかしそうにしながら視線を逸らしている。
空気を変えるかのように、パンッとノノミが手を叩いた。
「うふふ、実はプレゼントはこれだけじゃないんですよ」
「え、まだあるの……これ以上はちょっとお兄さんもたないかも」
「ほらほらそんな事言わずに、こっちに来てよタローくん」
「うっ……ホシノちゃん」
「うへ〜。流石にそんな反応されるとおじさん傷ついちゃうよぉ」
「いや、その、ごめんなさい」
手招きされるまま、凛太郎はホシノの前に立つ。
凛太郎の身長は179cm、それに対してホシノの身長は145cmと両者の間に圧倒的な身長差が生まれている。だからか、ホシノは身を屈めるようにジェスチャーを送る、それを理解した凛太郎も素直にそれに応じた。
自分を見上げている様子に内心で、ちっちゃいなぁなんて凛太郎はほっこりしている。
「タローくん大きいから、おじさんの身長じゃ一苦労だよ……ちょっと動かないでね〜」
「はいはい、了解ですっと」
なんだか距離の近いホシノに少しドギマギしながらも、言われた通りに大人しくしておく。そしてホシノが懐から取り出した何かが凛太郎の首にかけられた。
それはアビドスの校章が刻まれた学生証だった。
実は以前からアビドス対策委員会の面々が、凛太郎の為にこっそりと用意していたアビドスの生徒である事の証。これには凛太郎も目を見開いて驚いた。
「うん……これでよし、っと」
「マジか」
「大マジ。離れた場所にいても、タローくんはアビドスの仲間だからさ。いつでも顔を見せに来てよ」
「……ははっ、それなら毎日来るよ」
「ん〜、それならおじさんも毎日お出迎えしないとねぇ」
顔を綻ばせるホシノの姿に、つい自分の頬も緩くなってしまう。
アビドスのみんなの暖かさに、凛太郎はつくづくそう思った。だからこそ名残惜しいのだが、そのアビドスの為にも頑張らなければならないと自分に喝を入れることができる。
「───うん。それじゃ、そろそろ俺も行くよ。先公準備バッチリだ!」
「え……もういいの?」
「ああ。これ以上は、本当に離れたくなくなっちまうからさ……それに会いに来ようと思えばいつでも戻って来れる、そうだろ?」
「……わかった。それじゃあ行こうか」
荷物を抱え直して、先生の後に続く。
振り返れば、アビドス対策委員会の面々が笑顔で手を振って送り出してくれている。凛太郎も笑顔で手を振りかえして、その光景を目に焼き付ける。
「サボるんじゃないわよー!」
「ん、今度遊びに行くから」
「お身体には気をつけてください!」
「いつでも遊びに来ていいですからね〜!」
「……うへ〜、またねタローくん」
───因みにこの後、先生が忘れ物をしたとの事で一度アビドス高等学校へと戻り早すぎる再会を果たす事になる。
津上 凛太郎
「みんなただいま!(ヤケクソ)」
シャーレの先生
「ご、ごめんて。そんな怒んないでよ……」
アビドス対策委員会
「あ、あはは……」
ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?
-
07:00くらい
-
19:00くらいやな
-
21:00くらいやでー!!