透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
やばい、予定して話数よりも多くなりそうで震えてる…。
追記
漏瑚VS宿儺をアニメで見ました。アニメーション表現で色々とやばいことになってましたね……え、凛太郎こんなやばい奴と戦ってたの?
(なんで、こいつが……ここにいるんだ……ッ!?)
視界が揺れる。
心臓は痛いくらいに激しく鼓動して、知らず知らずのうちに呼吸何荒くなる。
困惑を隠せない。
凛太郎は目の前にいる男の姿に、自分は幻覚でも見せられているのかとすら考えていた。偽物? それとも変身の術式? 頭の中で様々な可能性を考慮して、情報を完結させようと思考が渦巻いている。
答えが出ない。
しかし、凛太郎の中で眠りかけていたドス黒い炎が夏油 傑という男を前にして息を吹き返した。
そしてそのドス黒い殺意の炎が、目の前の男は紛れもなく本物であると肯定していた。この男の姿を、魂を、どれだけ精巧に偽物を作り上げようと、自身に刻まれた怨嗟が宿敵を見間違える筈がないのだから。
「えっと……店主殿? それにリンタロウ殿も、どうかしたんですか?」
「…………」
「…………ッ」
重たくて苦しい雰囲気だった。
状況を飲み込めずに不思議そうにしているイズナの言葉に答える余裕は凛太郎にはなかった。いや、そもそも彼女の言葉が聞こえてすらいなかった。
彼の意識が向けられているのは、ただ一点。
呆然と、驚いたような顔でこちらを見ている男にだけ意識が集中していた。明らかに自分を知っている人間の反応、疑惑は確信へと変わる。明らかにこの男は自分が知る夏油 傑本人であると。
間合いを図るように、靴底を床に擦る。
切り替える。
意識が研ぎ澄まされていく。
それは普段のおちゃらけた凛太郎としてではなく、仮面を脱ぎ捨て呪術師としての凛太郎が顔を見せてハッキリと意識を切り替えていく。静かに、それでいて荒々しく、予備動作を悟られぬよう最低限の呪力を練り上げて肉体を強化させた。
「─────」
静寂。
互いに相手の出方を伺い、身構えている。
次の瞬間、カラン!と小さな鐘の音が響いた。それはイズナと凛太郎がこの店に入った際に開きっぱなしになっていた扉がゆっくりと元の位置へと戻っていき、そして重い扉が閉められた音だった。
その鐘の音を合図に、凛太郎が弾かれるように飛び込んだ
「───シッ!」
「───……っ!!」
一瞬で懐に入り込んだ凛太郎が上段回し蹴りを放つ。
凛太郎の攻撃に瞬時に反応した夏油は身を屈めることで蹴りを回避したが、すぐにそれが悪手であったことを悟った。続け様に放たれた二撃目の蹴りを視界に捉える。
今の一撃はフェイント、本命はこっちだった。
軸脚にしていたもう片方の脚で宙へ飛び上がると、回し蹴りを放った勢いを殺さず利用することによって放たれた後ろ回し蹴り。当たる、そう確信してインパクトの瞬間に練り上げた呪力を乗せて威力を増加させる。
直撃する寸前、夏油はどうにか滑り込ませた両腕で防御するが堪えきれずに押し飛ばされた。押し出されて衝突した衝撃で奥の部屋へと続く扉が無惨な姿になっている。
「ええっ!? リンタロウ殿いったいなにを!!」
「……イズナちゃんはここから離れてろ」
「ま、待ってくださいリンタロウ殿!?」
突然の事態に状況を飲み込めず困惑しているイズナ。そんな彼女を無視して、舌打ちを溢しながら自分の想定以上に吹き飛んでいった夏油の後を追うように突き破られた扉を潜り抜けて奥の部屋へと入った。
(チッ……あの野郎、蹴られた瞬間に自分から後ろに跳んでダメージを最小限に抑えやがった!)
男の姿はすぐに見つかった。
奥の部屋は厨房となっていたのか、キッチンや大きな冷蔵庫。そして部屋の中心には大きな作業台があった、作業の途中であったのか作業台の上には専用の調理器具や紙パックの食材が並べられていた:
それらに視線を向けた後、凛太郎は男の方へと視線を戻す。
眼前には予想通りにあまりダメージを受けた様子もなく、なんて事のないように衣服についた埃を払いながら立ち上がる呪詛師の姿がある。
無意識のうちに、爪が深く食い込むほど拳を強く握っていた。
「いてて……まったく。ひどいな〜、何もいきなり仕掛けてこなくたっていいじゃないか」
「………」
「やれやれ、店がめちゃくちゃだ。これから営業時間だというのに、これじゃあ今日は臨時休業かな「オマエさ」……ん?」
「もっと言葉を選んだ方がいいんじゃないか?───ま、遺言がそれでいいのなら話は別だがな」
「ッ!!」
肌に突き刺さるような鋭い殺気。
その強烈な殺気は、
凛太郎もその変化に気がついて、警戒心を引き上げた。
───夏油 傑。
日本に4人しかいない特級呪術師の1人にして、百人を超える一般人を大量に呪殺して呪術高専を追放された最悪の呪詛師。 現代最強と言われる五条 悟の高専時代の同級生にして親友であり、凛太郎にとっては自分が呪術師として呪いの世界に足を踏み入れることになった要因の人物である。
(ッッ……凄まじい打撃だ。咄嗟だったとは言え、呪力で防いで威力も殺したというのに腕にダメージが残ってる……呪力込みの単純な殴り合いでも分が悪いか)
(どういことだ……? こいつの十八番は呪霊操術での物量攻撃だろ。なのになんで、未だに呪霊を呼び出そうともしない? いや、
「ま、関係ないか。だからなんだっつー話だ、やる気がないならそのまま死ねばいい」
「できれば、お手柔らかにお願いしたいところなんだが……それも無理そうだね」
両者は腰を落として構える。
互いに相手の一挙手一投足を見逃すまいと鋭い視線を向けた。
ジリジリと間合いを詰めて、喉元に手が届く距離まで接近する。相手の動きを誘うようにゆっくりと腕を伸ばす、凛太郎の動きに合わせるかのように夏油も腕を伸ばした。
「………」
「………」
ゆっくりと伸びた腕が、両者の手の甲に触れた瞬間。
それを皮切りに、素早く動き出す。
目にも止まらぬ驚異的な速度での加速、風を切って繰り出した拳がぶつかり合う。
「くっ……!」
「オラァ!!」
拳が弾かれる。
力比べに押し負けた夏油の体が大きくのけ反り、その隙に凛太郎が拳を振りあげ、更に加速して突っ込んでいく。しかし、夏油も吹っ飛びそうになる自分の体を必死に押さえ込むと、強引に姿勢を立て直して凛太郎を迎え撃つ。
凛太郎の頬に夏油のパンチが喰い込む。
だが凛太郎は怯むことなく、僅かに顔を傾けただけで拳を受け止めた。そのまま固めた拳を夏油の腹へと打ち込んだ。
「かぁっ……!」
「その程度かよッ……あ゛ぁ゛!?」
一瞬、動きの止まった夏油に凛太郎の重い蹴りがまともにヒットする。そのまま吹き飛ばされ、背後の壁へ激突した夏油が壁に背をつけて沿うようにズリズリと下がっていき尻餅をついた。
叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が無理矢理押し出された。どうにか息を整えようとした夏油だが、追い討ちをかけようとする凛太郎の姿が視界に映ったことですぐさま横に転がって回避する。
次の瞬間、凛太郎の膝蹴りが壁に直撃して大きな穴が空いた。
止まらない。
息をつく暇も与えず、まるで全ての怒りをぶつけるかのように、呪力を乗せた拳を床を転がって回避する夏油目掛けて連続で振り下ろす。連続で叩きつけられる拳によって床に穴が空き、無惨な姿へと変わっていく。
「逃げるなよ……ッ!」
「これ以上、暴れないでくれると助かるんだけど……ねっ!」
「ガッ!……ぐ、おおアアアッ!!」
「おいおいマジか……グゥ!」
夏油は体勢を整えてネックスプリングの要領で飛び上がると、その勢いのまま凛太郎へドロップキックを喰らわせる。それに反応できなかった凛太郎は腹部へともろに蹴りを喰らった。
しかし、凛太郎は吹き飛ばされる直前に蹴りを放った夏油の足を掴むと、吹き飛ばされた勢いを利用して夏油の体を弧を描くよう反対方向の床へと叩きつけた。
まさかあの体勢から反撃をされるとは考えてもいなかった。抵抗する間もなく、片腕でそのまま持ち上げられ夏油は床へと激突する。
どうにか受け身をとった。
凛太郎の追撃を警戒してすぐさま身を起こしたが、自身の目に映った光景に目を見開いた。ゾクッ、と全身の産毛が逆立つ。
そこにはピンポン球サイズにまで
その
(……まさかっ!?)
「───“穿血”!」
「───やっぱりか、容赦ないなッ!」
圧縮された呪力が解放された。
“穿血”とは名ばかりの呪力放出。加茂家相伝の術式である赤血操術から繰り出される本家の『穿血』のように、音速を超えるような事は決してない。
しかし、その威力は直撃すれば人間ひとりの命を軽く奪う事など造作もない。見様見真似の“穿血”。貫通力を高めた呪力放出、いわば凛太郎が使う魔貫光殺砲の簡易版であった。
(速いッ!)
防御という選択肢は捨てる。
いくら呪力で固めたところで、それを容易く貫通してくるであろうことを夏油は凛太郎の圧縮された呪力出力からそう判断した。そして何より、本場の穿血ほどの速度はない事を見抜いていた。
速いが、それでも見切れない速度ではない。
発射された穿血もどきを身を屈めることで回避すると、穿血の構えをとったまま動かない凛太郎の懐へと入り込む。そしてガラ空きとなった凛太郎の腹部目掛けて掌底を叩き込む───!
「───そうだよな、撃った直後の隙を狙う……俺だってそうする」
「───……ッッ!!」
「馬鹿が……わかってんだから対処してない訳がないだろ」
───誘われた。
そう気づいた瞬間には、
空気が吐き出される。
いったい何が起きたのか、夏油には理解できなかった。だがしかし、今この瞬間に自分とっては致命的であり、凛太郎にとっては好機である状況が生み出されたのを理解した。
「はぁっ!」
「がぁっ……!!」
よろけた夏油に腹部に凛太郎の拳が突き刺さる。
一瞬の静寂。
次の瞬間、溜めに溜めた力が解放され炸裂する。
確実に芯を捉えた重い拳。夏油の体がくの字に曲がり、そして勢いよく吹っ飛んだ。腹に呪力を集中させて拳を防いでいたが、凛太郎の拳はその防御を容易く打ち砕いてきた。
背後の壁を突き破って隣の部屋まで吹き飛んだ。
───何が起きたのか?
答えは
凛太郎が放った穿血が
赤血操術の穿血は所謂ウォーターカッターだ。
圧縮した血液を一点から解放して撃ち出す、それが本来の赤血操術にて最大火力を誇る穿血という技。しかし凛太郎が放った穿血は、どこまでいっても“もどき”であり“贋作技”である。
本来の赤血操術のように自分の血液とそれが付着した物体を自由に操ることなどできやしない。
凛太郎の放つ“穿血”は呪力によって
だが、
簡単に言えば、穿血のフリをした繰気弾といわけだ。
「………」
ゆっくりと歩く。
大きく崩れた壁を入り口にして、隣の部屋へと入る。部屋の中にあった置き物や棚などが衝撃で散乱している。そして壁に背を預けて、ぐったりと座り込む男の姿があった。
手応えはあった、故にそれが演技ではないことを理解していた。
呪力を拳に纏わせて近づく。
「ぐっ……はぁ……っ、まったく……本当に容赦がないな」
「………言い残す事はそれだけか?」
「本気で、私を殺す気かい?」
「……寧ろ、お前を殺さないでおく理由があるか?」
「ははっ、それもそうか。そうだね……それを実行に移すだけの理由も資格も君にはあるか」
弾丸で撃たれたところで「痛い」程度で済む超人が集まるキヴォトスであろうと、殺人は重罪だ。どこの世界であろうと、命を奪う事は等しく悪だ。だが凛太郎にとってそんな事はどうでも良かった。
そもそも、
元々、自分と彼女たちとでは住む世界が文字通り違うのだから。
「……ッ!」
ボッ!と拳に呪力が迸る。
「……ひとつ聞きたい」
「ッ……はぁ、何かな?」
「どうして、術式を使わなかった? お前の十八番があれば逃げるくらいはできただろ」
「ん?……ああ、そうか。くくっ、悪いね……私は呪霊操術は使わなかったんじゃなくて、
「───は? それってどういう……いや、もういい」
これ以上、言葉を交わすつもりはない。
練り上げた呪力を拳に集中させる。せめて安らかに、なんて慈悲をかけるつもりはない。そんな情けをかけるくらいなら、凛太郎はできるだけ苦しんで死んでもらえるように努力するつもりだ。
アビドスのみんなになんて言い訳しようかな、そんな事を頭の片隅で考えながら固めた拳に殺意と呪力を乗せて振り下ろした───。
「そこ、退いてくれよ……
「ぜ、絶対にイズナは退きません!!」
命を奪う一撃が叩きつけられるその寸前、拳を止めた。
凛太郎の視線の先には両手を広げて、夏油を守るように立っているイズナの姿があった。声は震え、凛太郎を見る瞳には明らかに怯えの色が混じっている。
それでも彼女は凛太郎の前に立っていた。
そんなイズナの姿に、どうするべきかと凛太郎は鬱陶しそうに溜め息を吐いた。
夏油 傑
「ヘイヘーイ! ピッチャービビってるぅ!」
津上 凛太郎
「デッドボールで沈めてやるよォ…!」
ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?
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07:00くらい
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19:00くらいやな
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21:00くらいやでー!!