透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
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ブルアカの周年が近づいてきててますね。
とりあえず、1天井分は何とか用意できましたわ。
周年キャラは誰になることやら。
「あ、
「……ダメです」
「限界なんだ……もう、無理なんだよッ」
「リンタロウ。諦めてはダメです……っ」
凛太郎は己の無力を悔いるように蹲っていた。
そんな彼の嘆きに寄り添うように、傍には一人の少女が立っていた。
床に引きずってしまう程に長い濡れ羽色の髪。長い前髪の隙間から少年を見つめる青く無機質な瞳。白いジャケットとミレニアムの制服に身を包んだ少女───天童アリスは心が折れてしまったかのように膝をつく凛太郎を再び立ち上がらせんとしていた。
無力さに打ちひしがれる少年の姿に、彼女の小さな瞳が揺れ動く。
「っ……ダメなんだよ。アリスちゃん」
「否定……貴方はこんなところで、立ち止まったりしないはずです!」
「俺は、もう……っ……戦えない……ッ!」
「そんな! 目を開けてくださいリンタロウ!」
「クソゲーオールナイトなんて、俺には無理だったんだ!」
「コラそこッ! 製作者の前でなんて発言するのさ!!」
「じゃかあしい!! この諸悪の根源めが!!」
「んな!?」
人間には「三大欲求」と呼ばれるものが存在する。
「三大欲求」とは、生きていく上で重要な3つの欲求の総称とされている。一般的にそれは『食欲・性欲・睡眠欲』のことを指している。欲求の程度、度合いは人それぞれ違うものだが、誰しも持っている欲求だ。
睡眠は生命を維持する大切なもので、食欲は食べて栄養を摂取しなければ死んでしまう。また、性欲は子孫を残すために必要な、動物としての本能と言われている。この3つの根本的な欲求が働くことで、生命活動が成立しているのだ。
食欲は存在する。
同級生から「お前の胃袋はブラックホールか」と言われるくらいにはよく食べる方だ。テーブルの上に並べられた料理の数々をペロリと平らげ、空き皿の山を作り上げてしまうくらいには食欲は旺盛だ。
それでいて腹が飛び出て太ったり、体重の増加や体型維持に気を使ったりすることもないので後輩ちゃんズの紅一点に「この女の敵が!」なんて恨めしそうに睨まれたりなんて事もあった。
当然、性欲だって存在する。
なにせ年頃の男子高校生だ。魅力的な女性がいれば目を引かれてしまうものだ、かといって盛りついた猿のように飛び込んで行ったりはしない。だってカッコ悪いし、それに必要以上に踏み込む度胸もない。
何より、自分の気持ちに折り合いがつけられていない中途半端な状態で“一線”を超えるつもりは絶対にない。「君と一緒にいるのは楽しいけど、お友達で」なんて、そんなポジションでいればいいかなんて立ち回ってもいた。
そして睡眠欲。
この睡眠欲こそがいまの凛太郎には喉から手が出るほどに求めているものであった。
「三大欲求」というものにも順位が存在するらしいが、ピラミッド形式で言えばもうてっぺんがこれだった。順番で言えば、睡眠、食欲、性欲、といったところだ。いや、もう、睡眠、睡眠、睡眠、ですらよかった。
「なんで王道RPGやってたはずなのに、急に学園シミュレーションが始まってんだ! というかこのクラスメイトでツンデレヒロインの幼馴染ってなんだ、こいつ勇者の始まりの村にいなかっただろ!? どっから生えて来たこのぽっと出幼馴染!?」
「た、多様性だよ! それにこのキャラは第二の幼馴染なんだって!」
「そんな伏線今までなかったやろがい! というか多様性の一言で済まそうとするな製作者! もはや世界観がまるっと変わってるんだよ! 魔王と勇者の設定どこいった!?」
「う、うるさーい!!」
「うるさくなぁーい!」
なにゆえこのような状況になっているのか。
ここに至るまでの状況を振り返ろうとすれば頭が痛くなりそうなくらいだった。経緯を振り返れば、隣にいる少女 天童アリスとの出会いまで振り返ることになるだろう。
この天童アリスという少女は、ゲーム開発部が「廃墟」と呼ばれる場所で出会った謎の多い少女だ……厳密に言えば少女の姿をしたロボットなのだが。
「廃墟」の探索に向かい、文字通り転がり落ちるよう辿り着いた奥底で彼女、天童アリスこと『AL-1S』は電源が切れた人形のように眠っていた。生まれたままの姿で眠る少女の姿に一同はビックリ仰天と言ったところだったが、予備の衣服を持ち歩いていたミドリがそれを着せることでどうにかなった。
服装を整えて入る間、男性組の凛太郎とシャーレの先生は少し離れた場所そちらに視線を向けないようにしながらあっち向いてホイをしてたりした。
不意に「あっち向いて、ホイッ!」のタイミングで毎度書類整理を押し付けられる怒りを乗せたマジビンタを繰り出して来た凛太郎に先生は一瞬死を覚悟したとかしてないとか。
因みにビンタをギリギリで避けられた凛太郎はガチめの舌打ちをしてた。
その後、先生の接触によりなぜか目を覚ました少女を「廃墟」に置き去りにするわけにもいかず。
なんやかんやあって、アリスをゲーム開発部の部室まで連れて帰って来たのだが……目覚めた直後の彼女は自我も記憶もなく、機械的な受け答えしかできない状態であり、ゲーム機を口に含むなどまるで赤子のような状態だったのだ。
まだ非公式の部活であり部員が規定人数に達していないゲーム開発部だが、モモイの案によりゲーム開発部が廃部を免れる為にアリスをミレニアムの生徒として偽装して部員を増やす事によって、規定人数という条件を満たした。
そして今現在、機械的な受け答えしかできないアリスにゲームを用いた『会話』と『話し方』を教える為の英才教育の真っ最中でもあった。「エラー発生! エラー発生!」と困惑し叫びながらゲームをプレイするアリスと、その横でアリスを応援するモモイとミドリの微笑ましい様子を眺めていた凛太郎だったが。
その時の彼はまだ知らなかった。
大人しく途中で帰っておけばよかったなどと、後悔するハメになるだなんて。
「ダメだ。もぅマヂ無理……お兄さんはもう眠いって、アリスちゃんの膝枕で俺を癒して」
「癒し……なるほど、HPの回復ですね。それなら任せてください。アリスは既に回復魔法も覚えています!」
「ありがとう。とりあえずちょっと休ませてくださいほんとお願いします……起こすなよモモイ」
「なぜ名指した?……って、なんでうつ伏せで顔を突っ込んでるのさ!? アリスもそんな簡単に受け入れちゃダメだからね!」
「やわらかい……」
「おいコラ! アリスから離れろ変態め!」
「ヤダーッ、イヤッ、イヤ!!!」
うつ伏せの状態で正面からアリスの膝に顔を埋めている凛太郎を引き剥がそうとするモモイだったが、そうはさせないと言わんばかりに凛太郎はアリスの細い腰をガッチリとホールドして抗っていた。
とうのアリスはそんな二人を気にせず、コントローラーを握りしめてゲームに夢中になっている。側から見ればだいぶヤバい状況なのだが、凛太郎も長時間に及ぶクソゲー耐久によって精神力を擦り減らされてもはや正気を失ってすらいた。
なにせ彼がプレイしていたゲームはゲーム開発部が開発したRPG作品のひとつ。シリーズ1作目にして大爆死した上にクソゲーランキング1位にまで登り詰めてしまったある意味伝説のゲームなのだ。
それだけではなく、シリーズ2作品目を制作する為の構想段階のデモ版をプレイしたり、ゲームというものに取り憑かれてしまったかのようにアリスに付き合い連続で色々なジャンルのゲームをプレイしている最中である。
その結果、彼は全く悪意のないゲーム開発部がオススメした大量のソフトたちに囲まれて徹夜でのゲーム漬けになった。
「俺はっ、弱い……ッ!」
「そ、そんな情けない姿でカッコつけられても」
「まさかただのゲーム耐久がここまでキツいだなんて、五条先生たちとやった桃鉄100年もだいぶキツかっけど……あ、さっきアイテム回収し忘れてたよアリスちゃん」
「うわ、本当です! すっかり見落としてました!」
「しかもちゃっかりアドバイスしてるし」
「腹減ったから焼きそばパン買ってこいよモモイ」
「はあ? んだとこら〜!」
アリスのを膝枕に顔を埋めたまま動かないでいる凛太郎へと馬乗りになってポカポカとその背中を殴り始めるモモイ。もはや抵抗する気力すらない凛太郎はなすがままとなっており殴られることを受け入れてすらいる。
それどころか「最近、肩こりが酷くてよ〜。もうちっと強めで頼むわ〜」とリクエストする余裕すら見せていた。その言葉に「ぬぬぬっ! コケにしおってからに!」とモモイは鼻息を荒くしている。
「ふぁ〜……んぅ、お姉ちゃんたち朝から元気だね」
「よっす。おはようミドリちゃん」
「おはようござ……どういう状況ですかそれ」
「ふっ、アリスちゃんがまた一つ世界を救う直前なのさ」
「い、いや別に、ゲームの進行度は聞いてないです」
「ちょっと聞いてよミドリってば」
「お姉ちゃん朝からうるさいよ」
「うぇえ!?」
凛太郎とモモイの騒々しさに、その隣で横になっていたミドリがムクリと起き上がる。夜遅くまでゲームコントローラーを握り薄暗い空間で画面を見つめていた筈なのに、気がつけば寝落ちしてしまっていた彼女は目を覚ましたと同時に飛び込んできた光景に目を丸くしてしまう。
アリスの膝に顔を埋めたまま微動だにしない凛太郎。そんな彼の上に馬乗りになって拳を振り下ろしている自分の姉。そしてそんな状況でも気にすることなく画面に食いつきゲームに夢中になっているアリス。
情報量が多すぎて寝起きで上手く働かない頭では処理しきれそうにはない。もうこのまま二度寝するのが正解なのではとすら思えて来ていた。
チラリと横に視線を向けて見れば、そこにはまだ気絶したように眠っているゲーム開発部の部長である少女、花岡ユズがスヤスヤと寝息を立ててクッションの上に頭を乗せて伏していた。
「あ、ユズちゃんは起こさないであげてね。2時間前くらいに寝落ちしたばっかりだから」
「あ、はい。わかりました」
「それから俺も今から眠りにつきたいと思いますので起こさないでくだちい」
「いやダメだからね!? アリスとリンタローにはミレニアムを案内するって約束したじゃん!」
「嫌じゃい嫌じゃい! 俺はアリスちゃんの膝枕に包まれて眠るんだい!」
「年上の癖に情けなく駄々を捏ねてどうするのさ!」
「年齢は関係ないやろがい! なんじゃその言い方、こちとらまだピッチピチの17歳やぞ!」
「お姉ちゃんも駄々捏ねる時はこんな感じだよね……?」
「す、少し静かにしてようかマイシスター!」
朝から騒がしい二人の姿にミドリは苦笑いしてしまう。
凛太郎は朧げな意識を掘り起こしながら「そう言えばそんな事言ってたっけな」なんて、全員でパーティーゲームをやっていた時にモモイがそんな事を口頭で伝えていた事を思い出していた。
モモイの言うミレニアムの案内とは、どちらかと言えば凛太郎の為ではなくアリスへの為の提案である。
なんとこのモモイという生徒、住所不定無所属であるアリスの為に知り合いのハッカーたちにお願いしてアリスの生徒としての身分証を偽造して、ミレニアムの新入生としてでっち上げたのだ。彼女の手際の良さに感心を通り越して呆れてしまうくらいだ。
そしてキヴォトスの生徒はみな、それぞれが自分の武器を持っている。調達する方法は様々だ。アリスの為にこのミレニアムで手っ取り早く、それでいてちゃんとした武器を見繕う為に、『エンジニア部』の元へと向かわなければならない。
「というわけで、さっそく行ってみようか!」
「おー、いってら〜。お土産よろしく」
「リンタローも来るんだよ! アリスと一緒に武器をゲットしに行かなきゃ!」
「いや、武器はいらんて。この鍛え抜かれた肉体こそmy favorite weapon……なのさ」
「無駄に発音がいいのがムカつく……って、『外』の人が素手で武装したキヴォトスの生徒に勝てるわけないじゃん!」
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」
「ぐぬぬ、力強ッ!? ほら、アリスもリンタローを冒険に連れて行くのを手伝って!」
「ッ!……冒険、行きましょうリンタロウ! 新たな出会いがアリスたちを待っています!」
「うごごっ……お、おま、アリスちゃんを使うのは卑怯だぞ!」
「全然卑怯じゃないですぅ〜!」
モモイの言葉に刺激されたアリスが彼女の側に立った事によって、凛太郎とモモイの間にあったパワーバランスが崩壊する。必死に抗っていた凛太郎だったが、抵抗虚しく両手両足を掴まれたまま持ち上げられ引き摺られるような形で連行されていった。
一部始終を側から眺めていたミドリは「意地でも外に出ようとしない引き篭もりの子供を力尽くで引っ張り出したみたいだ」もしくは「捕まってしまった迷子の宇宙人が連行されているみたい」なんて、何とも言えない感想をつい抱いてしまった。
ひとまず、スヤスヤと眠るユズを起こさないように気をつけながら凛太郎を引き摺ったまま部室を出て行った二人の後を追うことにしたミドリであった。
凛太郎
「……(カチカチッ」
モモイ
「あー、あっ、ちょっ、無言で即死コンするのは、やめっ…ヤメロォー! あ、あー!!?」
ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?
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07:00くらい
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19:00くらいやな
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21:00くらいやでー!!