透き通る様な世界観にいる一般呪術師   作:半ライス大盛り

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便利屋イベントも終了ですね。
カヨコとアルは無事天井しました。
マジでどうなってんだアロナ、石がもうないぞアロナ!

とりあえず、夏までガチャ禁します(鋼の意志)



戦闘突入は次回かも…




アイツ…頭高くない?

 

 

 

 「あははっ、何が何だかわからないけど……私たちが優勢って感じ!」

 

 「ううっ……!」

 

 「あ、あとちょっとで、もう少しで保管庫まで辿り着けるのに……アイタタっ! どうして後ろを振り返らずにこっちが撃てるの!?」

 

 「え? うーん、なんとなくそこかな〜、って……直感ってやつかな!」

 

 「い、インチキだ! いくらなんでもそれはズルでしょ!?……アダっ!」

 

 「ほらほら! 足が止まってるよー!」

 

 「くぅ、おのれデカパイメイドめぇ……! そんなデカいのぶら下げてたらうちのミドリが黙ってないんだからね!」

 

 「ちょ、お姉ちゃん!? 変なこと言わないでよ!」

 

 

 ミレニアムタワー最上階。

 そこでシャーレの先生を含めたモモイとミドリは、生徒会の警備ロボットを退け、お目当ての「鏡」がある保管庫を前にして苦戦を強いられていた。

 

 シャーレの先生の指揮、そして双子の息のあったコンビネーションをものともせずに、2対1という不利な状況であっても抑え込めないほどの戦闘能力を秘めた相手に足止めを喰らってしまう。

 

 『Cleaning&Clearing』

 

 通称『C&C』

 ミレニアムサイエンススクールで活動するセミナー直属の組織であり、凄腕のエージェント集団であり戦闘力は同校でトップクラスという、ゲーム開発部からしたら化け物集団もいいとこだった。

 

 C&Cのエージェントの1人。

 コールサイン「ゼロワン」の名を持つ少女、一之瀬アスナ。彼女はミレニアム随一とされるC&Cのリーダーに次ぐ戦闘力を持つと言われるほどの実力者である。

 

 そんな戦闘能力とずば抜けた直感で戦場を駆ける彼女にモモイたちは手も足も出せずにいた。

 

 

 「……ふーん」

 

 

 冷静に分析する。

 両者には実力差はあった。

 

 拮抗するわけでもなく、個々での戦闘力であればどれだけ足掻いたところで覆せないようなパワーバランス。

 

 それでも諦めることなく喰らいついてくる精神力とチームワークには、この状況下であろうと敵味方問わずに素直に感嘆の声を掛けてもいいと思えるくらいに。

 

 

 (うーん。思ってたより、全然悪くない。お世辞にも戦闘能力がすごいとは言えないけど……チームワークっていう点においては間違いなくベテラン級)

 

 

 視線の先。

 息も絶え絶え、この状況を覆すだけの手段も力もない。しかし双子の目はまだ死んでいない。その様子にアスナは目元を緩め口元に弧を描く。

 

 

 「双子パワーってやつかな。うん、いいじゃんいいじゃん!」

 

 「くうぅ、まさかここでアスナ先輩と出くわすなんて……おのれデカチチ……っ!」

 

 「お姉ちゃん。一旦退こう……あと、恥ずかしいから歯軋りしながら相手の胸元を睨みつけないで」

 

 「いやだ! 持たざる者の憎しみを今ここでぶつけてやるんだ!」

 

 「も、目的が変わってるからっ!?」

 

 「えー、大っきくても肩が凝るだけだよ?」

 

 「ぶっとばしてやるぅ! うわーん!!」

 

 

 鼻息を荒くし、己の愛銃を掲げながら悲痛な雄叫びを上げるモモイの様子にアスナはケラケラと笑っている。

 

 

 「せ、先生……?」

 

 「“の、ノーコメントで……”」

 

 

 暴走気味な姉をどうにかしようとするが、当然止まるはずもなくミドリはシャーレの先生に助けを求めるかのように視線を向けるが先生は気まずそうに目を逸らすだけだった。

 

 普段から奇行が目立つ先生だが、そういうデリケートな話題には男性は中々踏み込めないものなのだ。

 

 ため息が出る。

 ひとまず、状況を冷静に見極めるミドリが姉の襟首を掴んで一時退却を図ろうとするが、そう簡単にはいかない。

 

 突如として響く、耳をつんざくような大きな銃声。

 窓ガラスをぶち抜いて数cm横の壁に直撃した大口径弾にミドリとモモイは悲鳴を上げる。

 

 

 「うひゃ!?」

 

 「きゃあ! こ、これって()()()先輩の……!?」

 

 「え……ってことはウタハ先輩は……っ」

 

 「“拘束されちゃった……ってことだろうね”」

 

 

 冷や汗が流れた。

 対物スナイパーライフルにてC&Cの後方火力支援を担当するエージェント、コールサイン「ゼロツー」。エンジニア部のウタハとヒビキの2人が妨害し足止めしていた筈のエージェントの援護射撃、それがここに来て息を吹き返してきた事に表情が引き攣る。

 

 それと同時に、そのエージェントが行動を再び開始したという事は対峙していたウタハが拘束されてしまったという事を意味している。

 

 

 「あっ、マキから連絡!」

 

 「それっていい知らせ?」

 

 「……む、寧ろ悪い知らせかも。()()()()()がシャッターを爆発させて脱出したみたい」

 

 「……っ!」

 

 「それだけじゃなくて、同時にすごい数のロボットもこっちに向かってきてるって……!」

 

 「ええっ!?」

 

 「“はは、私たち人気者だね”」

 

 「笑い事じゃないですよ先生!」

 

 

 それだけではなく、モモイたちにとって不幸な知らせが立て続けに届けられた。

 

 相手の戦力を分散させる為、そしてモモイたちがミレニアムタワーの中を自由に動き回る為に、ヴェリタスが手の施したセキュリティシステムを利用して別フロアへと隔離したC&Cのエージェントが隔離シャッターを爆破して脱出してしまったという、この状況で聞きたくない情報が次々と耳に入ってくる。

 

 

 「お、落ち着こう。クールになるんだ妹よ、ここまではまだ()()()()……私たちが派手に動けば動くほど警備は手薄になるんだから」

 

 「……お姉ちゃん冷や汗がすごいよ」

 

 「それに……もしこのタイミング私たちが捕まっても、謹慎ぐらいだろうし。部室でこっそりG.Bibleを見ながらゲームが作れる……よね? だ、大丈夫だよね?」

 

 「うーん。なんの相談かなー? ちょっとずつ必死さが無くなってきてる気がするけど……まさか、諦めたわけじゃないよね?」

 

 「───この状況なら、諦めた方が賢明だと思いますけどね。」

 

 「“そ、その声は……うげぇ!? ユウカ!?”」

 

 「う、うげ??……っいま“うげ”って言いました!?」

 

 

 モモイたちに追い打ちを掛けるように立ち塞がる人影が増える。

 

 それは先生もよく知る人物であった。

 もはや袋の鼠といってもいいほどに追い詰められたモモイたちの前に、ミレニアムサイエンススクールのセミナー会計担当であり、何度かシャーレにも当番として仕事を手伝いに来てくれていた早瀬 ユウカがしてやったりといった表情を浮かべて立っていた。

 

 

 「うっ! ユウカ……」

 

 「ッホン! 久しぶりね。とりあえず、ここまで状況を引っ掻き回した事については褒めてあげる。それについては素直に驚いたわ」

 

 「じゃ、じゃあ……」

 

 「でもそれはそれ、これはこれ……こんなありとあらゆる方法を使って生徒会を襲撃するなんて、やり過ぎよ。ちょっと甘くしすぎたかしら、もうイタズラじゃ済まされないわよ」

 

 

 ユウカの言葉にモモイたちは、サッと気まずそうに視線を背けるしかない。そんな3人の姿に、ユウカは呆れたように息を吐いた。

 

 

 「無条件の1週間停学、もしくは拘禁くらいは覚悟した方がいいわよ」

 

 「て、停学!? 拘禁!?」

 

 「驚く事じゃないでしょ。それくらいの事はやってるのよあなたたち」

 

 「そんな、1週間だと……ミレニアムプライスが終わっちゃう!」

 

 「アリスちゃんも、今は反省部屋に入ってもらってるわ。1人だけで可哀想そうだったけど、あなたたちがくればきっと喜ぶでしょう」

 

 

 そこまでの罰を与えられるとは思っていなかったのか、ユウカの言葉にモモイとミドリは動揺を隠しきれない様子で驚愕している。若干涙目になりつつある彼女たちを見て、ちょっと楽しくなってきたユウカは笑みを浮かべ嗤っている。

 

 まるで悪の女王。

 どっちが悪役かわからなくなりそうな構図に先生は苦笑するしかない。

 

 捕まっても大丈夫だろう、なんて楽観視していたモモイだが想像以上に自分たちが追い込まれている事に気がつき、その表情はとても険しいものとなっていた。

 

 既にアリスは捕えられている。

 というのも今回の作戦の一端として彼女が第一手として陽動を担っていたからだ。

 

 保管庫に続くエレベーターの「指紋認証システム」を突破するのは困難だ。そこヴェリタスが手を加えたセキュリティシステムと交換させる為、アリスは正面からの強行突破でセミナーの指紋認証システムを破壊した。

 

 その際、彼女は派手に暴れてユウカたちに捕えられてしまっているのだ。

 

 

 「お、お姉ちゃん……!」

 

 「このままじゃ、たとえ『鏡』を奪えたとしても……」

 

 

 ゲームを作る為に必要な道具を奪えたとしても、ここでモモイとミドリが捕まってもしまってはゲーム作りどころではない。ミレニアムプライスまでの時間は多く残されてはいないのだ、だというのに1週間も停学や拘禁などされてしまってはどうしようもない。

 

 捕まるわけにはない。

 どうにかしてこの状況を打開しなければ。

 

 息を整え、相手を睨むように構えたモモイ。

 しかしそんな彼女に追い打ちを掛けるかのように、困難は収束してきた。

 

 

 「ここを突破しないと!」

 

 「突破? へえ、()()()を相手に?」

 

 「───ふう、やっと着きました」

 

 「……うええ!?」

 

 「あ、アカネ先輩!? それに警備の戦闘ロボットまで!」

 

 

 モモイたちの後方、挟み撃ちにするかのよう警備ロボットを引き連れて現れた新たな人影。

 

 C&Cのエージェント。

 C&Cのブレーン担当であり、敵陣に潜入し爆薬で全て綺麗に掃除を行う、「掃除のプロフェッショナル」という二つ名で知られる人物。

 

 コールサイン「ゼロスリー」

 

 室笠アカネ

 彼女がたった今、この場に到着してしまった。モモイたちが想定していたよりも速く現れたメイドの姿に、思わず思考が止まってしまいそうになった。

 

 

 「ふふっ、今度こそ本物みたいですね。あらためて自己紹介といきましょう。初めまして……モモイちゃん、ミドリちゃん」

 

 「え、あ、初めまして……」

 

 「ヴェリタスについては、ギリギリ許せる範囲かもしれませんが……ここまで入り込んでしまった()()()()()に、弁明の余地はありませんよ」

 

 「それから……先生も、シャーレに抗議文くらい送らせて頂きますので。ご承知くださいね!」

 

 「“あ、あはは、ですよねー”」

 

 

 

 ミレニアムの生徒会に大規模な襲撃を仕掛けたゲーム開発部とヴェリタス。そしてそれに嬉々として加担したであろうシャーレの先生をムッとした表情で先生を見つめるユウカ。

 

 大の大人が、自分の学校で問題行動に加担したなど彼女からしたら堪ったものではない。

 

 

 「うっ……!」

 

 「ど、どうしようお姉ちゃん……!」

 

 

 失敗。

 その二文字が脳裏に色濃く浮かび上がった。

 

 あとちょっとだというのに、ここで本当に終わってしまうのか。先生やエンジニア部、ヴェリタスの面々が助けてくれたというのに、自分たちの力不足のせいで計画が失敗に終わってしまう。

 

 目尻に涙が浮かぶ。

 まるで足元から全てが崩れていくような感覚。

 

 

 「……え?」

 

 「せ、先生……?」

 

 「“大丈夫。まだ諦めないで”」

 

 

 優しく、頭に手を置かれる感覚に振り返る。

 もはやどうしようもない、そんな絶望的な状況で諦めないでと笑いかける先生の姿にモモイとミドリは悔しそうに表情を歪めるしかない。

 

 

 「そうしたい、けど……もう無理だよ」

 

 「“どうして?”」

 

 「どうしてって……前にはC&Cのエージェント、後にはミレニアムの生徒会。ミレニアムでもトップレベルに強力な二大勢力だよ。こんな状況でどうしたら!」

 

 「“でも、こっちにも()()()は残ってるよ”」

 

 「……!」

 

 「“……そろそろ、かな?”」

 

 「先生、相談は終わりましたか。大人しく投降するのなら情状酌量の余地があるとして……ま、まあ、少しくらいは多めに見てあげます」

 

 「“あー、ユウカ”」

 

 「?……なんですか」

 

 「“先に謝っておくね。多分、うちの()()って手加減とか苦手だろうし……派手に壊れたりしたらごめん”」

 

 「はい?……それはどういう……?」

 

 

 先生の言葉にユウカは首を傾げる。

 

 そんな時だった。

 ドンッ!っと大きな音が響いたかと思えば、まるでミレニアムタワー全体が震えるかのように足元が揺れた。いったい何事か、なんて考える暇はなかった。

 

 次の瞬間、ビシッ!と近くの壁面に大きな亀裂が入ったかと思えば、まるで爆発したかのような衝撃が走り轟音と共にボールのように壁面が吹き飛んでいったのだ。

 

 突然の事態に周囲の視線が一点に集まる。

 

 

 「───おお! ようやく広そうなとこに出たな!」

 

 「パンパカパーン! 勇者パーティが目的地に到着しました!」

 

 

 土煙が烟るその先、そこには黒髪の少女アリスを担いだ状態のまま片手で気絶したミレニアムの制服に身を包む()()()()()を抱え瓦礫の上に立つ男の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 「やっほー。今どんな感じ〜、もうブツは回収できたん?」

 

 

 ポカン、と皆が口を揃えて呆然としていた。

 しかし目の前の男、凛太郎は自分に向けられる視線など気にも止めずに、まるで散歩中に知り合いでも見つけたかのような軽いテンションでモモイたちのほうへと何事もなかったかのように歩いていく。

 

 目の前で声を掛けているというのに反応のないモモイに対して訝しむような視線を向けた後、変な空気感となっている周囲を見渡した後にアスナやアカネといった初めて見る生徒とその姿に目を輝かせる。

 

 

 「うおッ! メイドだ! マジでメイドさんだ!!……あれ、ユウカちゃんもいるじゃん。やっほー!」

 

 

 返事はない。

 呆然としまま、反応のない相手に首を傾げる。

 

 とりあえず、担いでいたアリスを下ろして近くにいるモモイの前にしゃがみ込むと顔の前で手を振ってみることにした。

 

 

 「おーい。生きてっか〜?」

 

 「……はっ! え、な、なんで!?」

 

 「は? なんでって、何がだよ」

 

 「いや、なんでリンタローがここにいるのさ!? それにアリスまで……え、どういうことっ? 2人とも捕まってたんじゃないの!?」

 

 「いや、アリスちゃんはともかく俺は別に捕まってないが。なんでそうなった」

 

 「だ、だってリンタロウさんってば通信には返事がないし……てっきり」

 

 「……あー、なるほどそういうことね」

 

 

 信じられないと言わんばかりに驚くモモイ。

 

 モモイがどうしてそこまで驚いているのか理解できず、そんな彼女の様子に「耳元でうるさいなこいつ」なんて一瞬思ってしまった凛太郎だったが、隣にいるミドリの説明でなんとなく理解した。

 

 それなら、モモイが驚いているのも納得だった。

 

 

 「無事だったなら返事くらいしてよ!」

 

 「それはすまん。けど、ちょっとトラブルがあってだな」

 

 「と、トラブル……ですか?」

 

 「うん。渡されてた通信用のインカム壊されちゃった☆」

 

 「え、えー……」

 

 

 見せられるのは無惨な姿になった通信機。

 あははは、なんて笑う凛太郎に呆れて言葉が出てこない。

 

 いや、それよりも凛太郎が抱える女性の姿に目を惹かれ驚きのあまり声が震えそうにもなった。思わずといった様子でミドリが訪ねてしまう。

 

 

 「と、というか……なんで()()()()を抱えてるんですか?」

 

 「……え、もしかして知り合いだった?」

 

 「ハッ……ちょっ! リンタロウさん、ノアになにしたの!? 返答次第じゃ……!」

 

 「うえ!? いや、誓って怪我はさせてないです!」

 

 

 凛太郎が抱える気絶した女性。

 なぜか気絶している自分の知人の先輩を抱えて登場したことに対しても疑問が出てきてしまう。いったいどうしてそんな状況になっているのか。

 

 放心状態から戻ったユウカが悲鳴にも近い叫び声をあげていることから、「やべ、もしかしてやらかしたか」なんて思い慌てて弁明し始める凛太郎。

 

 

 「いやいや! 怪我はさせてないから、こう……花京院みたいにあて身って感じでトンってやっただけだから! だよねアリスちゃん!」

 

 「かきょういんって誰さ……?」

 

 「え、はい!……恐ろしく速い手刀、アリスでなければ見逃してしまうところでした! 」

 

 「ほらね!」

 

 「でも、アームギア越しだったのですごい音がなってました!……わぷっ」

 

 「余計なことは言わなくていいんだよアリスちゃん!

 

 「“うわぁ……“」

 

 「うわっとか言うな!」

 

 

 なんだか口を滑らせそうなアリスの口元を押さえ込む。

 とりあえず、抱えていた少女を降ろして床に横たわらせる。地べたにそのまま放置するのも考え悩むものなので凛太郎は自分が着ていたパーカーを脱ぐとそれを折り畳んで簡易的な枕を作ると少女の頭の下に敷く。

 

 紆余曲折というべきか。

 

 エレベーターが使えないことはわかっていので、ミレニアムタワーの壁面を駆け上がり直接最上階へと侵入した凛太郎。

 

 タワーは結構な高さがあったが放出した呪力にモノを言わせて、ちょっとした空中への飛翔が可能である為そこまで苦ではなかった。

 

 アームギアに搭載されたアンカーを飛ばして、空中をスイングしながら蜘蛛のスーパーヒーローにでもなったような気分で遊ぶくらいの余裕もあった。

 

 しかしここに来るまでに色々とあったのだ。

 といっても、凛太郎がミレニアムタワーの最上階で方向音痴すぎて迷子になりかけていたと言ってしまってもいいくらいだ。その道中で、反省部屋を抜け出してきていたアリスと合流してことなきをえたが問題はその後だった。

 

 セキュリティシステムが作動して道を塞ぐ隔離シャッター。それのせいで通ろうとしていた道が進めなくなっていたりして、来た道を引き返す羽目になったりしたのだが流石に面倒になった凛太郎。

 

 ならば「道がないなら作ればいいや」なんて思い始め、とりあえず壁をぶっ壊しながら進むことにしたのだ。

 

 そんな時、隔離シャッターによって閉じ込められていたセミナー所属であり『書記』を担当している少女、生塩ノアを発見して彼女を救助した。

 

 

 

 『……はっ!』

 

 『?……どうかしましたかリンタロウ』

 

 『近くで女の子が助けを求めてる気配がする!』

 

 『で、でも今は急いでモモイたちの元に……!』

 

 『何ってるのさ! 可愛い女の子……いや、力なき一般人を助けるのも勇者の役目でしょうがアリスちゃん!!』

 

 『勇者の役目……っ! はいアリスは勇者です! ならばどんな状況であろうと、救うべき命を見捨てません!』

 

 『よっしゃ、行くぞ勇者アリス!』

 

 『はい!』

 

 

 助けに向かった結果、自分たちの仲間が問題事を起こしてその対処にあたろうとしていたセミナーの1人だったとは知る由もなく、凛太郎とアリスは鼻歌交じりに隔離シャッターをぶち壊してノアを助け出してしまった。

 

 その後、彼女と一戦交えそうになったが隙をついた凛太郎がノアを気絶させた事でなんとかなったのだが、気絶したノアをそのまま放置していくわけにもいかず、ここまで連れてきたことで現在に至る。

 

 

 「てなわけよ」

 

 「“なるほど。遊んでたってわけだ”」

 

 「ちゃうねん。そこに可愛い子がいたからであってだな」

 

 「“アビドスのみんなに報告しておく?”」

 

 「すいませんでした。それだけは勘弁してください

 

 

 

 真顔になる凛太郎に呆れてため息が出る。

 なんだか予定していた時間よりも遅い到着に対して、なんとなく予想はできていたがおおかた予想通りだった為、頭を抱えてしまいそうになる。

 

 しかし、それでも()()で現状を打破できる可能性を秘めたカードが手元に現れたことは変わらない。

 

 

 「“リンタロウ。任せて大丈夫?”」

 

 「問題なし。時間稼ぎだろ? とりあえず、俺が隙を作ったら目的地まで突っ走れ。そっちの用事が終われば、俺も適当に脱出する」

 

 「……ええ!? リンタロー1人でどうにかするつもり!?」

 

 

 凛太郎とシャーレの先生の会話にモモイが驚いたように声を大きくする。そんなモモイの反応に、「()()()()」と聞き飽きた反応に少しゲンナリとした表情を浮かべる凛太郎。

 

 神秘を宿さない『外』の人間がキヴォトスの生徒に敵うわけがない。それがこのキヴォトスでの生徒たちの共通認識、もちろんモモイたちにとってもそれは変わらない。

 

 『廃墟』を訪れた際に凛太郎が戦えることは知っていたが相手はC&Cの凄腕エージェント集団、いくらなんでも無謀だ。モモイだけではなくミドリも同じ考えであった。

 

 

 「いくらなんでも無理だって! ここはみんなで協力して切り抜けた方が……」

 

 「だから、問題ないって! 余裕のよっちゃんだから!」

 

 「へえ? 随分と余裕なんですね。確かにあなたはアビドスで腕が立つという情報は入っているけど、1人で私たちを相手に勝つつもりですか?」

 

 「そりゃもちろん。勝つさ」

 

 「……本気なんですね」

 

 「あははっ……よくわからないけどラウンド2ってことでいいんだよね!」

 

 

 拳を構える凛太郎の姿にユウカも武器を構える。

 それに続くように、アスナやアカネも武器を構えて臨戦態勢となった。

 

 一触即発。

 互いの一挙一動を見逃すまいと視線を尖らせる。のしかかってくるような重苦しい威圧感(プレッシャー)の中、何か思い出したかのように凛太郎は手を上へと突き出してストップをかけた。

 

 

 「あ、ちょっとタンマ! さきに一個だけどうしてもお願いしたいことがあります!」

 

 「……へ? お願い?」

 

 「そこのメイド服のお嬢さん。ちょっといいですかね」

 

 「えっ、私?」

 

 「こんなタイミングで言うのもあれかと思ったんだけど、一緒に写真撮ってもらってもいい?」

 

 「……写真をいま?」

 

 「うん。実はメイドさんとツーショット写真撮ってみたかったんだよね」

 

 「……ぷっ、あはは! うん、それくらい全然いいよ!」

 

 「ありがとうございます!じゃあ俺が片手でハートマークを作るから、そっちはサムズアップでお願いしていい?」

 

 「んと、こういう感じ?」

 

 「そうそう! この写真撮りたかったのよ」

 

 

 突然何を言い出すのかと思えば。

 これから戦闘が始まるというタイミングで一緒に写真を撮り始めたアスナと凛太郎に周りはポカーンと口を開けて固まっている。しかし、そんなことを気にもせず凛太郎はアスナにポーズをお願いしてよくわからない写真を取り出す始末だ。

 

 1〜2分くらいだろうか、凛太郎が取り出したスマホからパシャパシャとカメラのシャッターを切る音が響く。

 

 そして何枚か写真を撮り終えて満足したのか、凛太郎は撮った写真を確認するとスマホを懐へと戻して何事もなかったかのように構える。

 

 

 「よし、お待たせ!」

 

 「いやいやいや! ちょっと待ってなに今の!?」

 

 「なにって、メイドさんと写真撮っただけだけど……あ、今風で言うとチェキっていうの?」

 

 「いやそんなこと聞いてないって!?」

 

 

 急に叫んでどうした、とでも言いたげな凛太郎に一部始終を見ていたモモイが状況を飲み込めずに悲鳴に近い雄叫びをあげている。

 

 

 「“……もしかしてメイドさん好き?”」

 

 「はあ?……そりゃお前、好きに決まってんだろ。けどメイド服はロングスカートだともっと好き!」

 

 「何言ってんの?」

 

 「“わかる”」

 

 「先生もなにいってんの!?」

 

 「それから金髪青目の美少女だと俺の性癖にはドストライク」

 

 「そんなこと聞いてないから!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






〜多分数日後〜

凛太郎
「ふぁ〜、ねむ……あれ、色んな人からモモトーク来てる…?」イマオキタ
 
 シロコ
『リンタローはメイド服が好きなんだね……ん、覚えておく』
 
 凛太郎
「……ん?」
 
 ホシノ
『メイド服か。うへー、タローくんも男の子だねえ。お、おじさんはちょっと恥ずかしいけどぉ……うん』
 
 凛太郎
「……んん??」
 
 カヨコ
『そっか。メイド服、好きなんだ……だったら、その……いやなんでもない』
 
 凛太郎
「……(宇宙猫状態)」
 
 アキラ
『メイド服、素敵ですよね』
 
 凛太郎
「……二度寝すっか」
 
 
※犯人はシャーレの先生。
※なお、怪盗は盗聴のもよう。

ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?

  • 07:00くらい
  • 19:00くらいやな
  • 21:00くらいやでー!!
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