透き通る様な世界観にいる一般呪術師   作:半ライス大盛り

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感想、ここすき、お気に入り登録ありがとうございます。
誤字報告もありがたいです…!

……え?
呪術廻戦あと5話で終わってしまうん? 嘘やろ?……俺たちの冒険はまだまだ続いていく筈じゃないか…!? ただでさえヒロアカ終わってロスってるのに、なんでこんな最悪なタイミングでそんな残酷な告知をしてくるんだ?

 そんな、俺はただブルアカの新イベPVで山海経の新キャラの女の子おっぱいでけー!かわいいー!なんて思いながらXくんを覗いていただけなのに……!


 ところでほんとに後5話で終わらせきれるでござるか?
 それに裏梅はいつまでパチ屋に籠ってるんだ。そろそろ帰って来なさい、宿儺様が泣くぞ。









人間は毎日頑張ってはダメなんですよ

 

 

 ───勇者になりたい。

 いつからか、少女の胸のうちにはそんな感情が生まれていた。

 

 そんな感情が芽吹いたのはいつからだろう。

 

 きっとそのきっかけは彼女が目覚め、ゲームをこよなく愛する少女たちと共に様々なゲームをプレイして、その世界の物語を目の当たりにした事によるだろう。

 

 ゲームをプレイすればするほど、自分が別の世界に飛び込み主人公として旅をしているような気分になる。壮大で特別な、そんな夢を見ているような感覚を味わうことができた。

 

 “初めて触ったゲーム”は、ストーリーも世界観も何もかもがめちゃくちゃだった。思考を止めてしまうような怒涛の急展開に何度もトライアンドエラーを繰り返して、開発者の助けを借りながらも物語の真の結末、あるべき終わりへと辿り着くことができた。

 

 何度もゲームの理不尽さに襲われたが、それでも“初めて触ったゲーム”は少女の心に刻まれ終わってしまった事に涙を流す程に面白い物だった。

 

 それからも、もう一度あの感動を……そんな風に寝る間を惜しむように暗い部屋の中で視線をモニターへ釘付けにされたかのように色々なゲームに熱中していた。

 

 美しい光景に胸を打たれた。

 少女の仲間たちであるゲーム開発部のメンバーと共に歩みを進めて、いつしかそんな感情が育まれて行ったのだ。

 

 気がつけばその憧憬は彼女の瞳に焼きついてた。

 自分も仲間たちと共に旅に出て困ってる人を助けて悪い魔王を倒す、その為にクエストと称して人助けやお手伝いを行い少女は自分の勇者としてのレベルを少しずつ上げていった。

 

 美しいと感じた。

 自分もあの勇者のように冒険の旅に出て誰かを助けられたら……そんな風に生きられたら、どんなにいいだろうと。

 

 

 「……ぁ、………ぇ───?」

 

 

 ───“意識を取り戻した”少女が目にした光景は、目を疑うものだった。

 

 直前までの記憶は曖昧だった。

 まるで糸が切れたかのように意識が暗闇に飲み込まれたことだけは覚えている。そんな彼女は寝ぼけた目を擦るように───“意識を取り戻した”少女が目にした光景は、目を疑うものだった。

 

 派手に争った痕跡がある部室。

 吹き抜けになったかのように壁や天井は吹き飛んでおり、辺り一面は大きな瓦礫の山と化していた。

 

 なにが起きたのか少女には理解できなかった、友人たちの無事を確認しようともなぜか自分はメイド服の彼女たちに取り囲まれていた。

 

 ()()()()()()()()()()

 

 思考が追いつかない。

 意識を取り戻した自分の姿にメイド服の彼女たちは驚いたような、安堵しながらも憐れむような、言い表すのが難しい……そんな表情を浮かべていた。

 

 悲鳴が聞こえた。

 それは友人であり冒険を共にする仲間の声だった。

 

 

 「───モモイ……?」

 

 

 呆然と、彼女の名を呟く。

 怪我をしたのか、頭からは血が流れている。瓦礫の下敷きになった彼女を引き摺り出して、意識を失った彼女に友人たちが必死に声をかけている。

 

 状況に理解が追いつかない。それでも彼女の安否を確認しなければと駆け寄ろうとして()()()()()、少女は気がついてしまった。

 

 自分の手に握られた「光の剣」がたったいま攻撃を終えたかのように、駆動して排熱処理を行っていた。

 

 いつの間に自分は武器を握っていたのか、そんな疑問もあったがそれよりも少女は自分を起点に周囲への爆発が広がり被害が大きくなっている事に気がついてしまった。

 

 思考が止まる。

 自分を囲うように立つメイド服の彼女たち、そしてその指揮を取るシャーレの先生、自分の射線上に立つ仲間たち。意識を取り戻した直後の、彼女たちから向けられた視線を覚えている。

 

 

 「───ぁ……あ、りす……アリス、の……せいですか……?」

 

 

 この惨状を作り出したのは紛れもなく自分だ。

 

 足が震えた。

 耳鳴りと眩暈が止まらなかった。

 

 視界が滲み、時が止まったかのように感じた。

 目の前の光景に、なぜと理解ができず呆然とその光景を眺めていた。

 

 

 「…………ぁ」

 

 

 ───心に罅が入ったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 “…………”

 

 

 モモイが倒れた。

 アリスが原因不明の暴走を引き起こした日、幸いにも騒ぎに気付き駆けつけてC&Cのメンバーのおかげで事態は落ち着いた。

 

 だが騒動に巻き込まれたモモイは意識を失った。急いでモモイをシャーレ医務室に連れてきたのはいいものの、あの騒動から丸2日経過したというのに未だにモモイの意識は戻らない。

 

 このキヴォトスで活動する生徒たちの頑丈さは知っている。だが意識を失い眠りについたままのモモイの姿を見て、もしもこのままこの子が目を覚まさなかったらどうすれば……なんて嫌な考えばかりが頭をよぎってしまう。

 

 ───気合いを入れ直す。

 先生である自分が、生徒のことを信じないでどうするのか。ネガティブな感情を吹き飛ばすように、自らの頬を叩いて意識を切り替える。

 

 状況が収束したからといって、全てが終わったわけでない。あの事件は数々の疑問と望まぬ傷痕を残していった。アリスの暴走とも言える謎の行動は、あの奇怪なロボットと接触したことが原因だろう……この先生の意見とハレの予測は一致していた。

 

 そしてミドリがいうには、アリスの雰囲気が変わったあの直後にモモイが持っていたゲーム機が今までうんともすんとも言わなかったのに急に起動したらしい。

 

 モモイのゲーム機は廃墟で見つけたコンピューターから〈Key〉という謎のデータフォルダをダウンロードしていた。アリスが暴走した理由や、あのロボットとアリスの関係性の秘密はそこにあるとシャーレの先生は予測している。

 

 そう考えてモモイの持つゲーム機を調べて見たものの、あのゲーム機は電源すら入らなかった。まるで最初からそうであったかのように、中身自体が空っぽになってしまったかのように……疑問だけが残ってしまった。

 

 何も答えが見つからないまま、思考だけが渦巻いていく。

 

 だが、今は答えの見つからない疑問に思考を囚われるよりも、解決しなければならない目先の問題があった。

 

 

 “……アリス、入ってもいいかな?”

 

 

 部室の扉を叩く。

 声を掛けても答えは返ってこない、一言だけ入れた後ゆっくりと部室の扉を開く。

 

 ───シャーレで思考の渦に悩まされていた時に、ミドリやユズ、ゲーム開発部の少女たちから連絡が入ったのだ。それはアリスが塞ぎ込んでしまい、ご飯も食べずに部室に閉じこもったまま顔を見せてくれないという連絡だ。

 

 その相談を受けて、シャーレの先生はアリスに会いに来たのだ。

 

 

 “こんにちはアリス”

 

 「………」

 

 

 返事は返ってこない。

 膝を抱えたまま座り込んでしまった少女の姿には、あの天真爛漫な勇者を目指す少女の面影は見る影もなく、そんな彼女の姿に胸が痛くなる。彼女の心中を察する事は出来ても、その胸の内に抱える痛みがどれほどの物なのか理解しきることは出来ない。

 

 こんな時、あの()()ならこの少女にどんな言葉を掛けるのか。この場にいない悪友のような生徒の姿が脳裏にチラつく、どこか彼に頼りすぎてしまっていたのかもしれない。

 

 自分の方が年上だというのに情けないな、なんて自嘲笑みを浮かべながら寄り添うように少女の側に腰を下ろした。

 

 

 “みんな、心配してるよ。顔だけでも見せに行ってあげよう”

 

 「……アリスには、できません」

 

 “……それは、どうしてかな?”

 

 「アリスは……アリスには、アリスの……せいで」

 

 

 膝に顔を埋めて蹲っていた少女がゆっくりと顔を上げる。その顔は泣きはらしたかのように赤くなっていた。瞳は揺れており、今にも泣き出してしまいそうな少女の姿が先生の視界に映る。

 

 

 「アリスの、せいでッ……モモイは、怪我をしました」

 

 「モモイが怪我をしたのも、部室がめちゃくちゃになったのも……ミドリやユズが泣いていたのも……ぜんぶ、全部アリスが……やった事なんです」

 

 「どうしてこうなったのか、アリスにも……わかりません、わからないんですっ」

 

 「でも、あの時何かが……まるで、まるでアリスの知らない“セーブデータ”が、アリスの中にあるかのような……だからアリスの体が反応しました。動きました」

 

 

 ぽつり、ぽつりと、少女は言葉を紡いでいく。

 その現象に先生は覚えがあった、以前にも似たような体験があったのだ。それはゲーム開発部の面々と廃墟に行った時のことだ。

 

 右も左もわからないような場所だったのだが、アリスが似たようなことを呟いて廃墟にあったあのコンピューターの前まで慣れた道を進むかのように案内したことがあったのだ。

 

 

 「あの時、アリスが何をしたのか……何も、思い出せません。だけど、それでも一つ確かなのは、アリスが……アリスが、モモイを傷つけたんですッ……!」

 

 “……アリス、落ち着いて”

 

 「先生っ、アリスは……アリスは一体どうすれば……!」

 

 

 掛ける言葉が見つからない。

 今の彼女にどんな言葉を掛けても、きっと気休めにしかならないだろう。この優しい少女の心にはこの先ずっと、この心の傷が残ってしまうのかもしれない。

 

 それはダメだ、そうわかっているはずなのに今の自分にはただ寄り添う事しかできない。無意識のうちに、己の無力感からシャーレの先生は拳を強く握ってしまう。

 

 

 「───そう、貴女が彼女に怪我を負わせた。それは逃れられない事実よ」

 

 

 突然、この場に居ないはずの第三者の声が部室内に響いてきた。声に驚いた先生が振り返れば、そこには記憶にない生徒の姿があった。彼女を引き止めるように部室の前に立っていたミドリとユズを振り払い、ズカズカと部室内に入ってくる。

 

 

 「やはり、危惧していた通りになってしまったようね」

 

 “……君は?”

 

 「貴方が、シャーレの先生?……先生との記録的な出会いがこのような形になってしまったのは残念だわ」

 

 

 纏う雰囲気は大人びており外見も併せて生徒というより教師にも見える、それがシャーレの先生から見た彼女への第一印象だった。

 

 ゲーム開発部の部室に現れた生徒───リオは自己紹介を必要最低限で軽く済ませると、自分がこの場に現れた目的をシャーレの先生やゲーム開発部のミドリとユズ……そしてアリスに視線を向けながらゆっくりと語り始める。

 

 ───自分は貴方たちに『真実』を教えに来たのだと。

 

 ミレニアムの生徒会長である調月リオは語る。

 まるで教師にように教え、授業でもするかのように、彼女いう『真実』とやらを教え聞かせるかのようにゆっくりとこの場に居る全員に言葉を紡いでいく。

 

 今まで友人だと思っていたものは、そうではないのかもしれない───そういってリオはアリスに視線を向けながら話を切り出したのだ。向けられた視線に、アリスは怯えるかのように肩を跳ね上げて身を震わせていた。

 

 天童アリスという少女の姿をしたソレの正体は人間ではなく、未知から侵略してくる『不可解な軍隊(Divil:Sion)』と呼ばれるう存在の指揮官であり、「名もなき神」を信仰する無名の司祭が崇拝した『オーパーツ』であり、古の民が残したとされる遺産『名もなき神々の王女AL-1S』……それはアリスの正体であると。

 

 アリスはこの世界を滅ぼす為に生まれた『魔王』なのだとリオは語る。

 

 リオの言葉に、ミドリは「一方的に脳内の独自設定を語らないでください!」とアリスを守るように立ち、噛み付かんばかりの勢いでリオに鋭い視線を向けていたが、そんな彼女の様子に何処吹く風といった風にリオは話を進めていく。

 

 貴女たちも直接目の当たりにした筈だと。

 あの奇怪なロボット、『不可解な軍隊(Divil:Sion)』とアリスが接触した事によって()()()()()()()()()

 

 本来ならあんな事にはならないはずだった、自分がC&Cと共に『不可解な軍隊(Divil:Sion)』を追跡していたが監視網を掻い潜った個体とアリスが接触する事など予期していなかったと。

 

 その不手際を謝罪しながらも、不幸中の幸いと言うべきか……そのおかげで自分の()()は証明されたのだとリオはそう言った。

 

 アリスたちが接触したアレは『廃墟』から溢れ出した『災禍』であり、キヴォトス全土に終焉をもたらす悪夢。その全てはアリスという存在が「廃墟」からヤツらを呼び寄せているのだと。

 

 この事態を解決するには、それら全ての元凶であるアリスが消えればいいと彼女は告げた。

 

 その解決法こそが、アリスのヘイローを破壊して()()()()()()()()事だと、なんて事のないように口にした。

 

 

 “───ダメだリオ。それ以上の言葉は、許せないよ”

 

 「……私の言動が不愉快に感じたのならば、謝罪するわ。でも理解されなくてもいいわ。()()()()()()()()()()()()

 

 “……リオ”

 

 「さあ、貴女の出番よ───美甘ネル」

 

 「え……ネル、先輩?」

 

 

 リオの背後から、ゆっくりと小さな影が姿を現した。

 それはここ数日でよく知る相手となったメイド服姿の先輩。街中で顔を合わせれば、引き摺られるように一緒にゲームセンターへと行き遊ぶこともあった、親しくなった先輩と言える人物であった。

 

 そんなネルの登場にアリスとミドリ、ユズは絶望を滲ませたような声音で喉を震わせていた。どうして、そう言いたげな先生の顔にネルは気まずそうに視線を逸らしている。

 

 

 「あまり悪く思わないでやって。元々C&Cはセミナーの、正確には私直属のエージェントなのそこに私的感情はないわ。私の命令に彼女たちは粛々と従うだけ」

 

 

 いくら戦況を指揮する先生であろうと、ゲーム開発部だけではC&Cのリーダーであるネルを相手に抵抗はできないでしょう。リオはそう言い放つと、側に控えていたネルへとアリスを回収するように命じる。

 

 その言葉に従うかのように、ネルはアリスたちに向かってゆっくりと歩みを進める。

 

 

 「ネル、先輩……っ!」

 

 「───」

 

 

 ゆっくりと距離が近づいて行く。

 アリスはネルを見つめたまま怯えるように体を震わせて動くとこが出来ないでいる。

 

 そんな彼女を守るように、ミドリとユズが立ち塞がり武器を構えた。C&Cのネルが相手となれば、自分たちなのでは歯が立たないと理解している。

 

 だがそれでも、そんな言い訳は今この場で友達を守らない理由にはならない。

 

 ネルの愛銃である「ツイン・ドラゴン」の銃口がゆっくりと持ち上がり、その照準が標的に対して向けられる。

 

 それはアリスにではなく、自分の背後に立つ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「───ぇ?」

 

 「……どういうつもりかしらネル」

 

 

 アリスを守るかのように立つネルの姿に、ミドリたちは瞳を揺らして驚愕する。

 

 ネルの愛銃から放たれた弾丸を、リオが操作するロボットAMASが盾となり攻撃を受け止める。冷静にリオは睨むようにネルへと視線を向けるが、そんな視線にネルは鼻で笑うかのように息を吐いた後、その表情を大きく歪ませた。

 

 

 「あ〜! クソが、やってられっかよ!」

 

 “ネル……っ!”

 

 「……ネル先輩?」

 

 「今まで依頼内容を気に入った事はあんまなかったけどよォ。同じ学園の生徒を、ましてや何もわかってねえガキを誘拐しろってのか?───んな依頼やってられるかよ!」

 

 「ネル、ここで裏切るつもり?」

 

 「裏切る?───ハッ、もうテメェに付き合う義理はねえって言ってんだよリオ!!」

 

 「───そう、それが貴女の答えなのね……()()出番よ」

 

 「!……ネル先輩っ!」

 

 

 ネルが味方についた事で少女たちの顔が明るくなったのも束の間、リオはまるで彼女の裏切りを予期していたかのように、静かに()()の名をつぶやいた。

 

 その瞬間、ゲーム開発部の部室の窓ガラスを突き破りながらもう1人のメイド服の少女が姿を現す。リオの方へと気を取られていたネルは一瞬、反応が遅れてしまう。

 

 

 「ネル、貴女はいつもそう……気分次第で命令を違反するその姿、いつ爆発するわからない癇癪玉のような側面が長所であり、一番厄介だった……だからこの状況だって、全て想定の範囲内でもあるのよ」

 

 「その為に、C&Cのメンバー全員ではなく……()()()()を呼び出しておいたの」

 

 

 そのまま、窓ガラスを突き破って現れた少女───トキが繰り出した飛び蹴りに反応ができないまま、吸い込まれるように蹴りが直撃する。もろに蹴りを喰らったネルが吹き飛ぶように地面を転がった後、すぐさま反撃に移り飛び込もうとするが。

 

 

 「───なっ……チッ!!」

 

 

 既に自分の飛び込んだ軌道上には手榴弾が放り投げられたいた。

 回避は間に合わない、両手で身を守るように防御(ガード)する。直後、響いた爆発音と衝撃によってネルの体は部室の外まで転がるように吹き飛んでいく。

 

 地面を転がったネルの前に、華麗に着地したトキがスカートをつまみながら頭を下げて優雅な挨拶を見せる。

 

 

 「初めまして先輩、そしてシャーレの先生。C&C所属、コールサインゼロフォー。ご挨拶を申し上げます……あ、イエーイ、ピースピース。以後お見知り置きを〜」

 

 「……は? 誰だテメェ、奇襲とは舐めた真似してくれるじゃねえか!」

 

 「む、どうやら()から教えられた挨拶の仕方は失敗してしまった様子……難しいですね。私個人としては中々気に入っているのですが」

 

 「なにをゴチャゴチャと言ってんだ後輩ッ!」

 

 「申し訳ありません。私も最初から全力で行かせていただきます、既に()()は頂いておりますので」

 

 

 ───2人のメイドが地面を蹴って、戦闘を始める。

 

 無数とも言えるAMASがトキを援護するように一斉に攻撃を仕掛ける。ネルはその弾幕の鬱陶しさに舌打ちを溢しながら、先にAMASから片付けけるべきかと、一瞬だけトキを視界から外してしまった。

 

 ───トキはその隙を逃すようなメイドではない。

 AMASの影に身を潜めて隠すように、ロボットの隙間を縫う様に疾走する。そして隙だらけとなったネルに向かって畳み掛けるように攻撃を繰り出す。

 

 

 「ぐぅ……ちょこまかしやがって……! どこ行きやがった!」

 

 「後ろです」

 

 「なっ───、ぐっ!?」

 

 「と言いつつ、本当は前です」

 

 

 声に反応して振り向いたネルの背に銃撃が撃ち込まれる。

 

 ヒットアンドウェイ。

 隙を作り攻撃を繰り出して、反撃の動きが見られれば素早く後退する。正面からまともにやり合えば、ネルの脅威的な爆発力で押し切られてしまうと理解しているトキは相手のペースを崩して着実にネルを削っていく。

 

 だが、翻弄され続けるネルではない。

 トキの攻撃を受け止めながらも銃弾をばら撒いてAMASを蹴散らし数を減らしていく。そして攻撃のテンポを掴んだそのタイミングで、相手を沈めるべく反撃に出る。

 

 

 「見えてるんだよ───ッ!」

 

 「……それは私も同じです」

 

 「なっ……ぐあっ!?」

 

 「───先輩の動きは速いですが。速度だけで言えば、あの時の彼のほうが脅威的でした」

 

 

 トキの脳裏に過ぎるのは、少年を取り押さえようとした時の記憶。気絶した生徒を抱えたままだというのに、自分を圧倒するような速度で走り回り翻弄しながら逃げ回っていた少年の姿だ。

 

 その逃走劇は、彼が突然体を壊して倒れるまで続いた。あの時の脅威的な速度と比べれば、動きを制限され直線的な動きしかできないネルの行動は止まって見えているようなものだった。

 

 カウンターにカウンターを合わせたトキの体術がネルに突き刺さる。

 

 相手の動きを察知した彼女の回し蹴りがトキの胴体に叩き込まれる寸前、それを予期していたかのように脇で押さえ込むように受け止められていた。

 

 そのままガラ空きとなったネルの腹部に肘打ちが刺さり、畳み掛けるようにトキが握る愛銃によって顔面を強打され殴り飛ばされる。床に倒れた彼女を組伏せて動きを完全に止めてしまう。

 

 

 “ネルがあっという間に……!”

 

 「気づいたら、突然現れて……」

 

 「あ、あうぅ……」

 

 

 その一部始終を見ていた先生たちは、ミレニアム最強の戦闘力を持つと言われるあのネルが一瞬で押さえ込まれてしまった事実に驚愕を隠せなかった。瞬く間にと言えばいいのか、気がつけば戦闘そのものが終わってしまっていた。

 

 

 「クソが! 離せ!? ぶっ壊されてぇのか!?」

 

 「落ち着いてください。そんなに暴れたら可愛くない方向に腕が曲がってしまいますよ、先輩……皆さんも、下手に抵抗はしないでくださいね。無駄な抵抗はおすすめしません」

 

 

 ネルの救助に向かおうとしていたミドリとユズに視線が向けられる。その視線に彼女たちの足は地面に縫い付けられたかのように動けなくなる。

 

 

 「……さあ、AMAS。アリスを回収しなさい」

 

 “やめるんだリオ……!”

 

 

 その言葉にハッとして、慌てて視線をトキたちの方から部室にいるアリスの方へと戻せばそこには部屋の隅で縮こまったままのアリスへAMASの武装が向けられていた。

 

 その進行を遮るように割って入る。

 

 

 「───それは私のセリフよ。私も対立などしたくないわ。貴方と敵対する気も、憎まれる気もない。寧ろ貴方に聞きたいくらい。こういった事態に於いて、シャーレの先生……“大人”である貴方が真っ先に動くべきなのではなくて?」

 

 

 アリスを守るように立つシャーレの先生の姿に、リオは心底不思議だと言わんばかりに首を傾げている。そんな彼女の言葉に、先生はなにを言ってるんだと聞き返してしまう。

 

 

 “……それは、どういう意味?”

 

 「子供より感情に支配されず、冷静に状況を判断できる……真っ先にそういった大人である貴方が動くべきだったのでは?」

 

 “だからと言って、生徒を傷つけるのは話が違うッ……!”

 

 「───いつまでそんな寝言を吐き続けるつもりなの!

 

 “何を言って………!”

 

 

 “冷静沈着”と言った言葉が当てはまるような、リオのような生徒が声を荒げて自分を睨むように視線を向けてくることに驚いて、つい動きが止まってしまう。

 

 そんな先生の様子を気に求めず彼女は続ける。

 

 

 「勘違いしないでちょうだい先生。“アレ”は生命体ではないの、貴方が背負うべき生徒でもない。もしそう感じるのであれば、それはただの“エライザ効果”に過ぎない」

 

 

 ───ELIZA効果とは。

 簡単に言えば、人工知能に対して「人間のようだ」と錯覚してしまう現象のことだ。リオはシャーレの先生がアリスに対して思いやる感情も、彼女が培った経験や人柄の優しさもただの勘違いだと言っているのだ。

 

 アレは先生が守るべき生徒ではなく、その皮を被った世界を終焉へと至らせる恐るべき兵器だと。そんなものとキヴォトスの全生徒を秤にかけろ問われたら、その答えは明白だろうと。

 

 その問いに先生は無言を貫く。

 そんな彼の姿に、それでもなお先生が動かないのであれば自分がやるというのだ。

 

 その時、先生たちの背後に立っていたアリスがすり抜けるようにリオの元まで歩いていく。

 

 

 “……アリス?”

 

 「ぜんぶ……アリスが、いるから……?」

 

 “違うよアリス……!”

 

 「アリスが『魔王』だから……おきた、ことですか……?」

 

 

 アリスの問いにリオは何も答えない。

 否、その沈黙こそが答えであるとアリスには理解出来てしまった。

 

 自分がここに残ればまた同じことを引き起こしてしまうと、モモイだけではなく、ミドリやユズ、シャーレの先生や仲良くなったエンジニア部、ミレニアムの友人たちにまで危険が及んでしまうと少女は理解してしまった。

 

 自分は「勇者」ではなく「魔王」なのだから。

 

 

 「そう、ですね……アリス、すべて理解しました。だから……アリスが消えるとします」

 

 「ダメだよアリスちゃん!」

 

 「アリ、ス……ちゃん……ダメ」

 

 “アリスがそんなことをする必要はないよ”

 

 

 先生の言葉にアリスは首を横に振って答える。

 仲間たちを安心させるかのように笑う少女の眼には涙が流れていた。

 

 

 「アリス、先生に怪我させたくないです……!」

 

 「ミドリやユズも、ネル先輩も、他のみんなも……リンタロウにも怪我をさせたくないんです……モモイが怪我をした時は、胸がすごく痛かったです。苦しかったんです……」

 

 「どうして……なんでこんなことになってしまったのか、アリスにはよく分かりません。でも、それでも……その話を聞いて、やっと理解しました」

 

 「すべては、アリスのせいで起きたということを……アリスがここにずっといたら……いつか、みんなが怪我をしてしまう」

 

 

 まるで自分の罪を告白するかのような少女の言葉に、先生たちはそんなことはないと答えるが、アリスはその優しさを首を振って遠ざけてしまう。だって既に自分は仲間を傷つけてしまっている、その過去も罪も消えることはないのだ。

 

 

 「そんな顔をしないでください。大丈夫です、アリスは生命体ではないのですから。アリスは……ミレニアムの生徒ではないから、いなくなっても、大丈夫です」

 

 「アリスは勇者、ではないんです……だから、消えても……だい、じょうぶです……。先生、みんな……アリスと一緒に冒険してくれて、ありがとうっ、ございました」

 

 「アリスは……本当に幸せ、でした……っ!」

 

 

 そういって少女は涙を流しながら笑顔を浮かべていた。その痛々しい笑顔を前に、痛いくらいに拳を握り込んでしまう。

 

 少女に掛ける言葉が見つからない、いやいくら声を掛けても、みんなの為に消える覚悟を決めてしまった優しい少女が止まることはないだろうと理解してしまったのだ。

 

 背を向けたアリスがリオの元へと歩み寄っていく。

 

 

 「それでは、失礼するわ。もしも……先生が、私の行動や言動に傷ついたのであれば……すべてが終わった後に、改めて謝罪をさせてちょうだい。ではまた………っ!」

 

 「───……ぇ?」

 

 

 ここにはもう用はないと言わんばかりに、足音が遠ざかっていく。

 

 そんな彼女たちの後ろ姿に……誰かが驚いたように声を漏らした。

 ───その瞬間、リオの隣にいた筈の、AMASによって回収された筈のアリスの姿が()()()()()()()

 

 アリスが立っていた筈の場所には、身に覚えのない()()()()()()()()()()()()AMASの残骸らしき物体が足元に転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「───いくらなんでも、年下のガキを虐めて泣かすのは趣味が悪いんじゃない?」

 

 

 トキが奇襲を仕掛ける際に突き破った窓ガラス、その窓枠に彼は立っていた。

 

 夜空に浮かぶ雲の隙間から差し込む、星の光に照らされるように少年はそこに存在していた。

 

 姿を消したアリスは、いつの間にか彼の脇に抱えられている。

 彼女は何が起こったのか理解できず、目を見開いて驚いたような表情を浮かべて自分を抱える少年に視線を向ける。そんな少女の反応に、彼は微笑むように優しい表情を浮かべて返していた。

 

 そしてゆっくりと視線をリオへと向ける。

 

 

 「それで───俺の妹を泣かせたんだ。覚悟はできてるんだろうな?

 

 

 少年は……凛太郎は苛立ちを露にするかのように、前髪を掻き上げると首を鳴らして睨むように鋭い眼光を向けた。

 

 暗闇の中で、()()の左目が火を灯すように輝く。

 

 ───少年の左目の瞳孔は四芒星に似た形状へと変化しており、そしてその四芒星を中心に照準十字線を重ねて十字線を円で繋げたような、そんな模様へと変化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 

  “入れ替え”の術式
 東堂 葵の術式「不義遊戯」のような入れ替えが行える術式。
 しかし、東堂 葵のように範囲内にある一定以上の呪力を持った物体の位置を入れ替えるのではなくなく、呪力の有無は関係なしに効果範囲内もしくは視界に映る生物と物体の「空間と座標」を置換させ、入れ替える術式。その応用で“空間を繋ぐ”ことも可能。
 
 術式の発動条件はなく凛太郎の意識一つで発動することができるが、術式発動中はわかりやすく目元に変化が起こる。

 入れ替える物体の大きさや距離によって消費する呪力量が変化する。連続での使用には回数制限のようなのがあり続け様で“入れ替え”を使用した後は数秒のインターバルが必要となってしまう。



 ぶっちゃけ能力の参考は置換魔術と天手力もどき…。
 そして目の模様は律者キアナと同じおめめ。





ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?

  • 07:00くらい
  • 19:00くらいやな
  • 21:00くらいやでー!!
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