透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
本誌感想。
信じてたぜ、オッパピーしてくれるってよ!
パヴァーヌ編ですが、原作とはちょっと流れ変わると思います。原作の設定が難しくてちょっと試行錯誤しながら変にならないように話を進めてますが、ここおかしくね?って箇所があっても多めに見て貰えると助かります。
ちなみにワシはケイが好きです。
ゲーム開発部と一緒にわちゃわちゃして欲しかった…!
C月P日
レッツ、近況報告〜!
ひとまず、一時的にとはいえ事態は終息したというべきか。といっても、根本的な問題の解決には至っていないのでマジで束の間の平穏と言ったところか。いやほんとに、何も解決してないんだから頭が痛くなるよ、マジでさ。
アリスちゃんが抱える問題も、強引な手段とはいえそれをどうにかしようとしていたリオちゃんも、まだまだ問題だらけで何も解決していないから嵐の前の静けさでございます。
あー、本当にダルい。こうさ、殴って暴れてそれで終わり!……みたいに解決しない感じの問題ごとは俺マジで苦手なんだって、呪術師として任務こなしてた時はそういう面倒なのは補助監督の人にぶん投げてたし……あー、つらいンゴ。
伊地知さんってば今からでもこっち来てくんない? というか、俺がどうにかして迎えに行くからマジで、そっちで待ってくれ。もう面倒ごとはこりごりだっぴ。
あ、リオちゃんとトキちゃんに関してだが一時的に拘束させてもらった。あの後、ミドリちゃん&ユズちゃん&ネルちゃん+俺とアキラちゃんというその場限りなドリームチームで取り押さえさせてもらった。
お前がおれに!!! 勝てるわけねェだろうが!!!ドンッ!
とまぁ、冗談はさておき。
トキちゃんを取り押さえるのは割と手こずった。なんというか彼女、未来でも見えてるんじゃないかってくらいこっちの動きに対応してくるし。
でも俺の“入れ替え”に対応出来てなかったところを見るに、なにかしら仕掛けがあるんだろうが、それでもヤバかったね。
そりゃネルちゃんもやられるわけだと納得した。
それはそうと、どうしてミニスカートのメイド服になってるんです?
ゴタゴタしてて最初は気づかなかったが、トキちゃんのメイド服がミニスカになってる事に思わず悲鳴を上げてしまったくらいだ。
つい『ミニスカも可愛いけどロングスカートのトキちゃんのほうがもっと可愛いでしょうが!』と戦闘中に叫んでしまった。周りからは急に何言ってんだお前、みたいな顔をされたがそのおかげで相手の不意をつけたということで許してほしい。
俺の叫びにちょっと照れてるトキちゃんも可愛かったです……その後、なぜかアキラちゃんのほうから戦闘中に俺への誤射が増えた気がしたが……多分気のせい、ちょっと視線が怖かったが気のせいったら気ノセイ。ヨクワカンナイナー。
まァ、そんなこんなで、多少強引とはいえリオちゃんを俺たちとの話し合いの席に引っ張って来れた。
拘束されているリオちゃんの姿を見るなりヒマリちゃんが『あら、お似合いですね。随分と変わったファッションですが今の流行りですか?』とかとても良い笑顔で煽り散らかしてたが、気にしないでおこう。
多分、彼女もあの監禁生活はなんだかんだで堪えていたのだろう。オンナノコッテコワイナー。
そんなバチバチの彼女たちを横目に、俺はお高めの肉を拘束された彼女たちの前で先公の焼肉セットを使って焼いてましたね、はい。オラ、この肉が食いたかったらこっちに寝返るんだよ! おすすめのタンとカルビもあるぞ! なんなら白米だってセットで付いてくるぞ!!
何やってんだこいつ、と周りからは見られていたが関係ない。古今東西から食欲の前には皆無力だと決まっているのだ。俺が団扇で仰いだ肉の香りと煙を浴びながらリオちゃんは白けた目を向けていたが、トキちゃんには効果的面だったようですね。
『ケケケケ、今なら大盛りの白飯も付いてくるぞ!』
『……あなたは一体何をやってるの?』
『美味そうだろう、でも俺が食べちゃうもんねー!』
『………ジュルリ』
『……トキ? あなたまさか、トキこっちを見なさい。ちょっ、トキ!?』
てなわけで素直なトキちゃんには焼肉を食べさせてあげました。買収完了だぜ! おらっ、もっとうまいもん食べるんだよ!! アーンしてあげるからもっとお食べ!!
あ、それとついでにリオちゃんはセミナーの予算を横領したことをユウカちゃんからしっかりと怒られてもろて。ユウカちゃんの説教はそりゃも怖いぞ(経験済み)。
だがしかし、ユウカちゃんの正面で正座した時にしか見れないあの太ももが喋ってる光景だけでもお説教を受ける価値はあります。
因みに狭い室内で焼肉をしたせいでリオちゃんではなく俺がユウカちゃんからお説教を食らいました。おいこら、先公だけじゃなくてチビ共もなにちゃっかり俺の肉食べてんだ!
おっと
問題解決の為にも、アリスちゃんの事について天才ちゃん2人が知ってることは洗いざらい吐いてもらった。なんかこう、俺ってば当人たちだけが意味深なことだけ呟いて回収されない伏線的なやつ苦手なのよね。
暇を持て余した神々の遊びだか、無名のなんちゃらだか知らんが(というか忘れた)。そういう難しい話は理解できるだけの脳みそを持ってそうな先公とかを交えながらバカにもわかるよう噛み砕いて教えてほしい。
んで、アリスちゃんが暴走した原因だが、なんでも無名の司祭?の「オーパーツ」である稼働させる為のトリガーAIである〈Key〉という存在が暴走ともいえる状態の原因らしい。
アリスちゃんが不可解な軍隊とかいうロボットと接触したことで条件を満たしてしまったようだ。
なんのこっちゃという感じだが、このトリガーAIとオーパーツであるアリスちゃんをセットにすることで初めて正常に稼働する、らしい。ヒマリちゃん曰く、アリスちゃんと〈Key〉という存在があってようやく彼女は魔王になれる、とのこと。
ほーん、なるほどねよくわからんという事がよくわかったぞ。
じゃあその原因である〈Key〉とやらを壊しちゃうか、どっか隠しちゃうかしちゃえばよくね? なんて思ったが、どうにもそれは出来ないようだ。既に〈Key〉はアリスちゃんの中に取り込まれてしまっているようで、無理! だって。
現状、自分たちに打つ手は無し。
ここぞとばかりにリオちゃんがアリスちゃんを破壊すべきだと切り出したが、やめなされやめなされ。俺の背後でユウカちゃんとミドリちゃんが大型犬みたいなすごい威嚇の仕方してるから。みんなリラックスなはれリラックス。
だがしかし、流石は我らの超天才美少女ハッカー!
ヒマリちゃんが言うにはアリスちゃんの人格が〈Key〉という人格に完全に置き換えられてしまえば自らの役割を全うしようとするとのことだが、それを
その意見にリオちゃんが危険過ぎるし現実的ではないと真っ向から反論していたが、そこまで話を難しくして考える必要はないんじゃないかというのが俺の意見だ。
もっと簡単に話を噛み砕いてくれ。要はキヴォトスが滅ぼされる前に魔王モードのアリスちゃんを止められればいいわけだ。
それが武力行使なり、〈Key〉という存在に人格が存在するなら対話なりと、それができるならばリオちゃんはアリスちゃんを殺そうとする必要はないし、彼女が生徒たちを守りたいという希望も叶える事が出来るわけだ。
俺が『じゃないの?』と言ってみれば、ポカンとしたような顔をしていた。俺の意見に先公はウンウンと頷いていたが。
ま、もし武力行使となった場合は相手がどれだけやばいかはわからんが……俺が死にかけるぐらいでなんとかなるでしょ、多分。これは口には出さなかったが。さ、流石に宿儺とか五条先生レベルの化け物は出てこない……よね?
出来るわけない、とそんな感じの事をリオちゃんが言っていたが、なら誰も傷つかずに終わらせられる他の案を出してくれと言う話だ。
寧ろ、俺としては犠牲を払わなければ維持できない平和なんてクソ喰らえという感じだ。そんなんじゃ滅ぶのも時間の問題だろうに。
ふぅ……やっぱ難しい話は苦手だね。甘いもの食べたくなってきた。
とりあえず、ヒマリちゃんたちとの話し合いである程度の作戦が練られた。作戦名は『今日の敵は明日の友、アリスちゃんを真の魔王系勇者として覚醒させようぜ作戦』だ、ちなみに作戦名は俺が考えた。
その作戦の内容に、リオちゃんが『嘘でしょ、ありえない…』みたいな顔してたが、まあなんとかなるでしょう。もし失敗したとしても、その時は
その作戦の決行までの期限は1週間ちょいという感じになった。
とりあえず今日はもう遅い時間なので解散。
c月e日
パンパカパーン!(腹から声出してる)。
本日はちょっとリオちゃんとお話しした後に今後の動きを伝える為も、マイシスターであるアリスちゃんに会いに行きました。暗い顔してないで元気出せオラッ、お兄ちゃんが遊びに来たぞ! そんなしょぼくれた顔してちゃ救える世界も救えねえってばよ!
アリスちゃんの様子だが、メンタル的な部分は数時間前と比べてちょっとずつ回復してると思う。魔王云々の話をされたり事故ったりで精神的に相当参ってたみたいだが、完全に回復しきるのも時間の問題だろう。
アリスちゃんを勇気づけようと、俺の高専時代の話や悠仁とかの話を面白いおかしく話したがそれだけでは彼女を再び立ち上がらせる為のトリガーとしてはちょっと足りないみたいだ。まぁ、これに関してはわかっていた事だ。
あ、因みに呪術の事とか殺し殺されは流石にぼかした。
単純にアリスちゃんと似たような後輩かつ境遇という事で悠仁の話を俺がしただけだしな、今思えば俺が勝手に彼女と後輩の姿を重ねて余計な呪いを残した罪滅ぼしでもした気になってたのかもしれないが…。
てなわけで、彼女の感じる罪悪感を手っ取り早く取り除く事の出来る方法としてモモイをここまで引きずってきました!自分のせいで、とかいうパターンの罪悪感は被害者である本人の口からガツンと言ってもらった方が効果があるからな!
モモイが怪我をしたまま2日間目を覚ましてないと先公から聞いて、流石に心配になって様子を覗きに行ったのだが……いつの間にか目を覚ましていた上にゲームのログインボーナス回収してやがった。
顔を合わせるなり『あ、リンタロウってば久しぶりじゃん!』とか元気に挨拶して来たから、俺も挨拶がわりにこのチビにマジデコピンを叩き込んでやった。このチビ心配して損したわ。
とりあえず現状を何も把握してないようなので、カクカクシカジカと説明したらマルマルウマウマと内容を把握してくれた流石だぜ桃太郎。『リオ会長に文句言ってやるんだから!』とフンッとモモイは意気込んでた。
というわけでモモイを担いでアリスちゃんの元まで来たという感じ。
そしてその効果はあったようだ。
ゴチャゴチャ考えてる相手には、そういうの気にしてない真っ直ぐなバカ(褒め言葉)を正面からぶつければ良いのだから。
その甲斐あってか、わんわん泣いて謝ってるアリスちゃんと、なぜ謝られてるかわかってないが元気付けようとしているモモイという構図が完成した。
とりあえずアリスちゃんが泣き止むのを待ってから、もう一度現状確認の説明とアリスちゃんというより〈Key〉とやらの今後の対応と考え、今のところ話合っている
魔王云々の話をした時にモモイが『まさかリンタロウもそっち側なんじゃ!?』とマイシスターを守るように抱きしめてたりしてほっこりしたが、そうじゃないので落ち着いて話を聞いてくれ。
じゃないと話が進まん。
ま、作戦という作戦ではないのだが、その内容としてはこうだ。
まずアリスちゃんを前回と同じ状況を再現、故意に暴走させて深層意識内の〈Key〉を表舞台に引き摺り出した後に、〈Key〉の起動によってデータベースの深部へと隔離されるであろうアリスちゃんの意識を叩き起こし、精神世界でアリスちゃんが〈Key〉を叩きのめす。
もしくは対話により〈Key〉をこっち側に引きずり込むというシンプルなものだ。知ってるか最近の魔王はテイム出来るんだよ(ドラクエJ脳)
ヒマリちゃんから精神世界云々の話とそれを実行する為のダイブ設備とやらの話を聞いた時はなんのこっちゃという感じだったが、このダイブ設備とやら簡単に言うとちょー進化したVRゲームみたいなやつだ。
これ知ってる!リンクしてスタートするタイプのあれだ!ログインしたらクリアするまでログアウト出来ないやつだ!
すげー、こっちの世界だとそんなに技術が進歩してるんすね。しかもそれを使ってアリスちゃんの意識下に接続するらしい。
いや、アリスちゃんが相手だからこそ出来る方法か。
その作戦を聞いて、リオちゃんが『そんな事、現実的に出来るわけ……! 下手すれば二度と戻ってこれなくなってしまうのよ!』と声を荒げていたが、これは精神世界なんて科学的に不確定なものに対しての意見なのだろう。
だが、話を聞く感じ俺は行けるんじゃないかとも思った。
だって精神世界ってことは要は「生得領域」と同じようなものだろう。人間が生まれながらにして持つ、言わば心の中の具現化した“心象風景”ともいうべき「生得領域」。
これは呪術師のみならず非術師も有している。
こっちの常識とアリスちゃんにもそれが当てはまるかはわからんが……神秘とか呪力とか似通ったモノもあるし、呪霊とか呪骸のパンダにだってそれがあるんだろうから多分いけるだろ、というのが俺の考えだ。パンダの中にはお兄ちゃんゴリラと照れ屋なお姉ちゃんがいるらしいし。
そんな俺の作戦謙説明を聞いていた2人の反応だが、ポカーンとしていた。そりゃそうだよな、いきなりどういう話しとんねんって感じだろうし。
〈Key〉を宿すアリスちゃんにこの作戦を伝えてもいいいのか、という疑問もあった本人の了承もなしにこんな大事を勝手に進めるわけもいかないので流石に本人には相談しなきゃならんだろう。
それにいくら〈Key〉がアリスちゃんの中に居るとはいえ、アリスちゃんの思考やこっちの情報が全部筒抜けになっているとも思えん。その証拠に、とは言わんがアリスちゃんは〈Key〉の思考を読んだりはできないみたいだし。
……いや、もしかしたら宿儺みたいに外の情報を一方的に知ることとかも出来るのか? ま、バレたところで何の問題もないだろうし大丈夫だろ。
とりあえず、いまはゆっくりして、モモイもみんなに顔を見せてこい。それから作戦への返事は今すぐじゃなくて後日でいいと伝えておいた。
恐らくこの作戦の要となるのはゲーム開発部のメンバーだろう。俺も出来る限りの手を尽くそう、作戦決行まで猶予はあまりないがそれまでにやれることはやっておきたい。
ミレニアム近郊にある謎の領域「廃墟」。
そこで凛太郎は待ちぼうけを喰らっていた、
遅えよアイツしばき倒したろか、なんて廃墟を彷徨っていた人型ロボットたちをサンドバック代わりにど突き回した後、イライラした様子で瓦礫の上に腰を下ろしていた。
暇だからこのままモモイにスタンプ爆撃でもしてやるか、なんてスマホを弄っていれば見知った気配を感じて視線を向ける。
そこには上下を黒いジャージ姿で身を包み、変な前髪に長い髪をお団子ヘアで纏めた胡散臭い笑顔の男性がレジ袋片手に挨拶でもするかのように手を上げて立っていた。
凛太郎が呼び出したその男性の正体は夏油傑である。
「やぁ、待たせたかな?」
「遅えよボケ。俺が連絡したら3秒で飛んで来いや」
「いや、無茶言うなよ。百鬼夜行からここまでどれだけ距離があると思ってるのさ」
「知るか。気合いでなんとかしろエセ坊主」
「おいおい、それにここって立ち入り禁止区域じゃないのかい? これでも周りの目を掻い潜りながら入ってくるのにも一苦労したんだから」
「何言ってんだ。コソコソやるのはお前の得意分野だろうが」
ケッ、凛太郎は道場に落ちていたガムでも見るかのような目で夏油を睨むと拾った小石を顔面目掛けて投げつける。それに対して夏油は焦る事なく回避すると、持って来たビニール袋を凛太郎に投げ渡した。
凛太郎は袋をキャッチして中身を確認する。
「おうコラ、俺は“おにぎりとお茶買ってこい”つったんだよ。なんで中身がコーヒーとパンなんだゴラァ!」
「いや、ちょっとコンビニに寄るのが怠……近くになくてね。それにウチのパンを廃棄処分するのも勿体無いから、どうせなら食べてもらうかと。味の保証はするよ」
「あ゛!? しかもこれテメェんとこの廃棄品かよ! ったくせめてコーヒーじゃなくてお茶にしろ、お茶に! 後で喉乾くだろうが……あむ、美味えなこのメロンパン腹立つわ」
「あ、因みにドリンク代を合わせて1200円になりますお客様。お買い上げありがとうございまーす!」
「シバくぞ廃棄処分で金取るなカス」
前に突き出したその手はなんだ。
人差し指へし折るぞゴラ、と凛太郎はメロンパンを咥えながらとりあえず中指を立てておく。
そんな彼の様子に「はぁ〜、これだから最近の若い子は嫌になっちゃうわね〜」なんてオカマ口調になりながら夏油は戯けたような身振りと共に凛太郎の隣に腰を下ろす。
「は? なんで隣に座るんだよこっちくんな。そっちの泥水の上にでも座ってろ」
「仕方ないだろう。座れそうな場所ここくらいしかないんだから、嫌なら君が向こうの地面に座ればいい」
「お前、面の皮厚いなびっくりだよ」
「だって君、変に遠慮したような空気感は嫌がるだろ。だからほら津上、もっとそっちに詰めてくれ。このままじゃ私の尻が変に擦れて痛い」
「なんかキショい!? こっち来んなよマジで!」
やいのやいのと騒ぎながら、遅めの昼食で腹を満たしつつ話を切り出した。これ以上、男子特有のおバカなノリで話していたら日が暮れてしまう。
「それで、私を呼び出したわけは?
「おう、テメェを呼び出した理由だが一つ目は……フッ、聞いて驚くな。なんと俺の術式が3つに増えた」
「………はい?」
「だから術式が増えたんだって。だからお前をその実験だ……サンドバックにしようかと」
「言い直せてないから、そのつもりがあるならもう少し取り繕ってくれ……というか自分が何言ってるのかわかってる?」
「?……おう、お前をこれからサンドバックにする」
「違う。そこじゃない」
マジで何言ってんだオマエ、みたいな顔をして凛太郎に視線を向ける夏油。本気で自分の言葉の重大さを理解してなさそうな凛太郎の姿に「悟…やっぱり君の生徒ってば頭がおかしいよ…」なんて頭を抱えて上を見上げている。
そんな姿に若干イラッとしながら凛太郎も言葉を返す。
「お前が言いたい事はわーってるよ! けどマジなんだから仕方ねえだろうが!」
「……はぁ、待て待てマジのマジ?」
「マジのマジだよ」
「体に変な異常とかは?」
「特にない。むしろ頗る快調だな」
こいつマジでなんなんだ?
夏油が頭を抱えたまま、化け物でも見るかのような顔で凛太郎を見ている。しかしそれも仕方のない事だろう、何せその身に刻まれた生特術式は一人もしくは呪霊一体につき、一つが原則であるのだから。
乙骨 憂太の「模倣」や今は機能していない夏油 傑の「呪霊躁術」によって術式持ちの呪霊等、何にかしらの方法で複数の術式を所持する術師も存在するが、それでも“とある特級呪術”師曰く、二つから四つまでが限界らしい。
何せ
「はぁ〜、深く考えるのはよそう。頭が痛くなってくる……それでその術式は?」
「見せた方が早えだろ。ちょっとそこに立ちたまえエセ坊主くん」
「え怖っ……ここでいいのかい」
凛太郎の指示に従い、彼が指をさした場所に夏油が待機する。
そんな彼を横目に凛太郎はどこからか引っこ抜いてきた朽ちかけの標識のポールを槍投げの選手のように構える。そんな彼の姿に夏油は首を傾げていたが、とりあえず成り行きを見守る事にした。
僅かに助走をつけて加速した後、ポールを握った腕を勢い良く振り切って投擲すると、凛太郎が投げたポールはグングンと飛距離を伸ばして風を切るように飛んでいく。
「それで、どうするんだい?」
「今からお前が
「………え?」
「よし飛んで来いクソ坊主。翼はなくても人間は飛べるって証明してこい」
「ちょっと待───!」
ニィ、と悪魔のような笑みを浮かべる。
何やら嫌な予感がした夏油がその場から逃げ出そうとするが、もう遅い。空を飛ぶポールも逃げ出そうとする夏油の姿も、そのどちらも凛太郎の
次の瞬間、音もなく夏油の姿が消えると同時に彼が居たはずの場所には投げ飛ばした筈のポールが勢い良く突き刺さった。
そして視界の隅にはロケットのように宙を舞うエセ坊主の姿があった。そしてその数秒後、コンクリートを粉砕するような爆発音に近い音と共に少し離れた場所で落下地点に砂埃が立ち上っていた。
「……やっぱり人間は翼がないと空を自由に飛べないのか。哀れなクソ坊主よここに眠れ」
派手に落下したことによってもう夏油は無事とはいえないだろう、凛太郎はそう心の中で決めつけて落下地点に向けて十字を切ると最後に中指を立てて祈る。だがしかし、数秒後には瓦礫の中から顔を出した彼の姿に舌打ちをこぼすこととなる。
「───痛っ、津上ィ……事前に言ってくれ! 普通なら死んでるぞッ!?」
「ケッ、生きてやがったのか」
「こんのクソガキ……! 悟よりもタチが悪いぞッ」
「いや〜、ないない。まだ五条先生の方がレベル高いって、というかアレと一緒にされても困る」
「いやほんとに、悟の生徒なだけあるよ……!」
「そんな褒めんなって!」
「全然褒めてないから!」
こちらを睨みつける夏油の姿にどこ吹く風と言ったようで凛太郎は頭を掻いて笑っている。反省の色が見えないその姿に、間違いなく目の前のクソガキは自分の親友の生徒だと苦虫を噛み潰したような顔の夏油。
先生として生徒に教育が行き届いているようでなりよりだよ、内心で舌打ちを溢す。
「はぁ、それで……いまのは?」
「お前、東堂 葵って奴わかるか?」
「……面識はないが、情報としては知っている。京都高にいる一級術師の子だろう?」
「そ、あのアイドルオタク。勝手は違うがアイツの術式と似たような感じだ。簡単にいえば“入れ替えてる”……こんな風にな」
「……っ! なるほどね。随分と厄介な術式だ」
説明を交えながら、こちらに歩いてきていた夏油と自分の位置を“入れ替えて見せる”。音もなく一瞬で入れ替わったことに目を開いて驚いている様子だった。
“入れ替え”の術式。
これが凛太郎に突如として発現した一つ目の術式。
東堂 葵の術式「不義遊戯」に近い術式。
「不義遊戯」ように範囲内にある一定以上の呪力を持った対象の位置を入れ替えるのではなく、呪力の有無は関係なしに効果範囲内の対象の「空間と座標」を置換させ、入れ替える術式。その応用で“空間を繋ぐ”ことも可能だと判明している、その代わり脳への負荷はやばい。
現状、この術式にまだ慣れきっていない凛太郎は使いやすくする為に自身の視界に捉えた対象に術式を行使している。
入れ替える物体の大きさや距離によって消費する呪力量が変化し、連続での使用には回数制限のようなのがあり続け様で“入れ替え”を使用した後は数秒のインターバルが必要となってしまうことが慣らし運転でも確認できた。
「こんな感じ。で、もう一つの術式なんだが……」
「………どうぞお構いなく」スッ
「なに身構えとんじゃ。流石に
「いや、君ってばこういう時の悟と似たような性格してるから信用できない……とりあえず私から離れた位置でやってくれると助かる」
「くくく、安心しろ。既に俺にとって距離は関係ねえんだよ、手を伸ばすだけでお前に届く」
「……ヒェ」
「いや冗談だよ」
ウルトラマンのようなファイティングポーズで身構えている特級呪詛師の姿に呆れながらも、そっちに被害が行かないように少しだけ距離をとってもう一つの術式を起動させる。
バチバチと手のひらで赤い電撃が小さく迸る。
そしてそのまま廃墟のレンガ造りの家の壁に手をつけば、一瞬放電するかのように赤い電撃が壁に向かって広がるとその線に沿うように亀裂が入り、大きく広がって行く。
そして最終的には十数秒ほどの時間を掛けて建物が瓦礫の山となって崩れ落ちた。
「これがもう一つの術式、能力は“分解”ってところだな……多分」
「……強そうだけど、なんか地味じゃないか?」
「そうか?───ま、これだと
「……というと」
「
「それ……もしかして、
「ぶっちゃけヤバい、もうちょっと離れとけエセ坊主」
術式の出力を上げる。
手のひらで暴れるように放電していた赤雷が
それは
炎を握り込めば、拳が水墨の黒炎によって包まれる。
場所を変えて一つ隣の建築物に向かって凛太郎は拳を構える。数回の慣らし運転は済ませているが、それでもこれはまだ制御しきれていない。
意識を集中させ、凛太郎が拳を振り抜く。
「───は?」
その光景に夏油は驚いたように声を出していた。
凛太郎が拳を壁に叩きつけた次の瞬間、
傷口とも言える箇所から覗く鉄筋の一部が砂となって崩れている。
「分解術式」
その「分解」という能力を強化した「崩壊」の性質を宿した力。ニュートラルの分解が徐々に削る能力だとすれば、こちらは一撃で“削り取る”能力。その効力は一発ずつの着弾後のみだが、“傷口に崩壊は付着する”。
この「崩壊」の能力は燃え広がらせるように崩壊を“接触面から伝播”し続ける。
凛太郎が停止させない限り、もしくは崩壊の黒炎が対象を蝕み塵にし尽くすまで“消えることなく広がり続ける”のだ。
「とまぁ、こんなところだな。因みに俺はこれを順転『
「いや、こんなところだなじゃないが……影響受けまくってるし」
「因みにこれ撃って飛ばせる。その分、火力はちょっと落ちるけどな」
「君の術式殺意高くない?」
「あとこの『黯』を“入れ替えて”ぶつけるというほぼ必中攻撃の極悪コンボを思いついてやってみたんだが、これやるとめちゃくちゃ頭痛くなるからあんまりやりたくない」
「……うわ」
その極悪コンボとやらをやった結果、眼と鼻から血が出てきたので相当負荷の掛かる合わせ技なのだと凛太郎は推測している。反転術式が使えれば問題ないのだろうが、現状は条件付きで使えるだけで反転術式を習得していないの無理だ。
「……はぁ、とりあえず反応するのも疲れたから私を呼び出したもう一つの理由を教えてくれ」
「お、おう。そっちは単純にいま俺が抱えてる面倒ごとにもしかしたらテメェを巻き込むかもしれないって話だな。こっちの生徒と合わせて戦うよりも、
「はい?」
「俺の術式の慣らしがてら、鈍ってるお前の錆落としってところだな」
「………はい?」
「あ、因みになんだが……お前って反転術式使える?」
「いや、使えないな。呪霊操術を扱えた頃は傷を癒す呪霊なんかもいたからそっちで補ってたね。それに呪霊操術を術式反転で使うメリットもなかったから」
「け、使えねえな。まぁヒューとやってヒョイとかほざかないだけマシか。あの説明じゃなにも伝わらないんだって……!」
「君の場合反転術式なら条件付きとは言え、使えるんだ……急いで習得する必要はなさそうだが」
「まぁ、そうなんだが……どっちかというと
凛太郎
「やほー、リオちゃん。あ、飲み物持って来たけどいる?」
リオ
「……何をしに来たの? それともあなたもヒマリのように私を笑いに来たのかしら」
凛太郎
「まっさか〜、気になった事があってちょっとお話しに来ただけだよ。因みにコーラと天然水どっちが良い?」
リオ
「気になったこと?……ジュースより水がいいわ」
凛太郎
「ほいっ。気になったことだけど……リオちゃんはみんなを守りたいって言うけど、その中に“リオちゃん自身”は含まれてないのかなって思ってさ。本当ならその中にアリスちゃんも含めて欲しいけど」
リオ
「……え?」
凛太郎
「君が本気で守りたいって気持ちで行動しようとしてたのは理解出来たけど、それを他人に理解してもらうつもりはないって突き進むの寂しいじゃん。“誰かの為に”って頑張った結果、君が一生恨み言や後ろ指を刺されて生きていくとか……俺は嫌だな」
リオ
「!………っ、私を憐れんでるとでもいうつもり?」
凛太郎
「そんなんじゃない。俺は基本ハッピーエンドが好きなだけだよ、だって頑張ったやつには報われてほしいもん。……それに誰か1人を犠牲にするんじゃなくて誰も犠牲にすることなく、ってやりきって胸張った方がカッコいいじゃん?」
リオ
「それは、ただの綺麗事よ。もうそんな簡単な問題じゃないの……!」
凛太郎
「……自分の命賭けて実践することなら、呪い合うよりも誰かの為にできる綺麗事の方がマシでしょ。それに自分の意思で誰かを殺めるってのは、結構最悪な気分だよ」
リオ
「……ぇ」
凛太郎
「あ、んじゃ俺アリスちゃんのとこ行かなきゃならんから、また今度ね。今度はお菓子とか持ってくるからーっ!」
リオ
「………私、だって……!」
ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?
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07:00くらい
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19:00くらいやな
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21:00くらいやでー!!