透き通る様な世界観にいる一般呪術師   作:半ライス大盛り

50 / 56

 閲覧!お気に入り!感想!ここすき!高評価!誤字報告!
 本当にありがとうございます!

 ようやく応募の200%茈の五条のフィギュアが届いてウハウハ状態です。フィギュアはあまり持ってないんですが、応募してよかった。とてもかっこよきです。










泣かぬなら そういう種類の ホトトギス

 

 

 

 「………マジで新宿だ」

 

 

 歩きながらどこか変わり果てた姿となってしまっている街並みを目に焼き付ける。()()()()()は未だに燻っている、しかし自分の記憶の中にある友人や後輩たちと何度か訪れた事のあるその街並みは確かに記憶と重なっていた。

 

 幻覚ではない。

 確かにここは自分が知る世界、はちゃめちゃなキヴォトスではなく呪いが蔓延り懐かしさすら感じる日本だ。

 

 あの日、渋谷での戦いで命を落とした凛太郎。彼がキヴォトスで目覚めて向こうで過ごした時間はたった数ヶ月ほどだが、様々な出来事に見舞われたその数ヶ月は彼にとって短いようで長くも感じた。

 

 そして、そんな日々の中で少年は心のどこかで諦めかけてもいた。

 

 なんの偶然か運命か、死んだはずの自分が別の世界とも言える場所で目を覚ました。そんな理解が追いつかないような状況に置かれながらも、彼はもしかしたらキヴォトスを出て自分がいた場所へ帰ることが出来るのでは?……そんな風に考えていたが、その手段も方法も全くと言っていいほどに見つからなかったのだ。

 

 だが、どういうわけか自分は再びこの場所へと帰ってきたのだ。しかしそれは自分にとっては最悪なタイミングでもあり、キヴォトスでやり残してきた事がまだ数多くあるのだ。

 

 喜ばしくもあるが、それを素直に喜べず不安が残る。

 なんとも言えない感情が彼の胸の内で酷く渦巻いていた。

 

 

 「……()()()()()()()()()()

 

 

 我が物顔で歩いていた()()を祓いながら、1人呟く。

 

 自分がこの不可解な現象に見舞われた原因は何となく特定できている。それは間違いなくあのミレニアムの『廃墟』にあった謎の『施設』に置かれたあのSFチックな謎の機械が原因であろうと。

 

 故に、いま凛太郎の思考を埋め尽くす疑問はそれではない。

 

 ───()()()宿()()()()()()()

 

 そんな疑問が凛太郎を思考の渦に引き込もうとしている。

 

 凛太郎は視界に映る()()に静かに表情を歪める。

 

 嫌な感覚だ。

 恐らく、年齢は自分よりも上だろうと推測できるスーツを着た青年の姿。()()()()()()()()()()()()()()()()()()でできたであろう裂傷の酷いの傷口から溢れ出た血液が真っ赤な血の水溜まりを作り出していた。

 

 赤黒い水溜りで怯えた表情のまま固まり眠った、この名前も知らない青年が()()()()()()()()()()()()であろうと凛太郎は理解していた。

 

 そんな悲惨な光景に懐かしさすら感じてしまう自分自身に吐き気がする。狼狽えるわけでもなく、危惧すべき状況をそんな風に受容してしまう自分はやはり普通の人間としてどうしても()()()なのだと再認識させられる。

 

 

 「………」

 

 

 ただそれでも、この名も知らぬ青年がこのままここで腐っていくのはあまりにも哀れだと感じでしまった。

 

 凛太郎は血で汚れる事も気にせずにしゃがみ込む、そして誰にも看取られる事なく路地の影で尽き果てたであろう青年に手を添える。

 

 看取る事はできずとも弔ってやる事はできる。

 

 ───水墨の炎が青年の身体を優しく包み込んだ。

 

 

 「悪いな。こんな事くらいしかできなくて……たぶん、すげー怖かったよな。もう、大丈夫だからゆっくり休め……おやすみ」

 

 

 『崩壊』の黒炎が瞬く間に物言わぬ青年を“分解”して粒子へと変えて行く。そして数秒後には塵すら残さず青年の姿は消えていき、そこには血溜まりの上で静かに手を合わせる凛太郎だけが残された。

 

 これが()()()()()()()()()()()()()()()事はすぐに理解できた。

 

 いくら鈍い凛太郎であろうと、いまこの新宿の状況がどうしようもないほどに異常事態が発生しているであろう事も予測できた。それに彼がここに来る道すがら何度か似たような現場を目撃している。

 

 そして何よりも、この新宿には呪いの気配が嫌なほど色濃く感じ取れてしまうのだ。

 

 呪霊や呪術師が、被害を考えずにそこかしこで好き放題暴れている……様々な疑問は残るが、その事実に知らず知らずのうちに舌打ちがこぼれる。

 

 それはかつて体験したあの渋谷での出来事のように大規模なものであろうと。呪術界はいつだって人手不足だ、今回も現場での対応が遅れているのだろう。

 

 そして恐らく、あの青年は非術師の被害者であろうと予測している。現場には“残穢”が複数残されており、そして青年は呪術師に一方的になぶり殺されたのだと凛太郎は直感していた。

 

 それが凛太郎の癇に障る。

 

 死の間際、青年がどれほどの恐怖を感じながら果てて逝ったのか。それは眠りについた彼の表情からひしひしと伝わってきてしまった、その事実に痛いくらいに握る拳に力が入る。

 

 

 「上等だ………ぶちのめしてやる」

 

 

 ───敵討だなんてつもりはない、ただ気に食わないから潰す。

 

 この世界に帰還してから、凛太郎の第一の目標として高専へ行き仲間たちの無事を確認することと、封印された五条 悟や渋谷での一件はどうなったのか。ことの転末を聞き出しながら再会を喜ぶつもりであったが事情が変わった。

 

 自分が死んでから、日本は随分と様変わりしたらしい。

 

 それもこれも、渋谷での一件が原因となっているだろうという事はなんとなく予想できた。そしてその対応が遅れているのも、どうせ口先だけで偉そうに踏ん反り返ってる上の人間の所為だろうと決めつける。

 

 凛太郎は目標を変更して、いまこの場で対応できるものが居ないのであれば自分が足を運んでやろう。ならば、その手始めとしてまずはこの“残穢”の辿り着く先、その相手から片付けると決めた。

 

 立ち上がった凛太郎はこの場に残された“残穢”を、呪力の痕跡を追うように静かに歩き出す。

 

 

 「………っ」

 

 

 “残穢”を辿る道中で、荒れ果てた新宿の姿に心を痛める。

 

 その光景が、今はもう記憶の中にしか存在しない自分の故郷とどうしようもなく重なってしまう。新宿といえば、無駄に人が多くそして活気にあふれたような街だったと凛太郎は記憶している。

 

 だが、そんなものは見る影もなく。

 ただひたすらに死と呪いの気配や香りで充満している。

 

 僅かな不安が募る。

 

 それは高専の仲間たちの無事や、この新宿の被害がここだけで収まっているのか、もしも新宿だけに収まらず日本全体がこれだけの被害に遭っているのだとしたら……なんて想像はしたくない。

 

 そして高専に入って以来、疎遠となってしまっている自分の()()の安否も気になってしまう。何せ()()()は1人ではろくに()()()()()()()()()()

 

 

 「───」

 

 

 思考を区切る。

 そして、凛太郎がたどり着いた場所は池袋近くの要町のマンション。

 

 ここが呪術師の拠点となっている事は気配で理解できた。それから、向こうも自分の存在に気がついているだろうという事も。

 

 凛太郎は既に入り口として機能していないマンションのエントランスを通り抜けると、まだ動かすことのできたエレベーターに乗り込んで気配を強く感じる階のボタンを押した。

 

 凛太郎は静かに稼働するエレベーターの中で、凛太郎は腕に装着していたアームギアを解除した。手首付近に隠されたスイッチを押せば、装甲が折り畳まれていき、肘の近くまで覆っていたアームギアが手袋サイズまで縮小する。

 

 ここから先は、呪術師として醜い争いをすることになる。そんな戦いに、エンジニア部のみんなが作ってくれたモノを持ち込みたくはない。血で汚れるのは自分の拳だけでいい。

 

 やがて、目的の階へと辿り着いたことを知らせる音と共に扉が開く。

 

 

 「お、見ない顔だ。てっきり()()()が連れてきた次の“カモ”かと思ったけど……そうじゃないみたいだね」

 

 「へぇ、“カモ”か……で? 一応確認だが、テメェ呪術師だよな」

 

 「なんだか怖い顔してるねぇ。なら自己紹介といくかい? 俺はレジィ、レジィ・スター……それで、少年くんはどういうつもりでここに」

 

 「───ごちゃごちゃうるせえよ。テメェの名前なんざどうでもいい」

 

 「……おほ、怖いなぁ。しかし妙な気配だ、()()()()()()()()()()()()()()……そういう術式?」

 

 

 マンションの渡り廊下。

 エレベーターを出た先で凛太郎を待ち構えるように立っていた奇妙な男の姿に、視線を鋭くする。

 

 そして瞬時に理解する。

 目の前の男は呪術師であり、そして自分が嫌悪する類だと。その気配、戯けるような態度が神経を逆撫でる。

 

 こいつは自分の都合のいいように弱者を利用して、必要がなくなれば切り捨てて嘲笑うタイプの人間だ。

 

 

 「それで───君は()()()かな?」

 

 「……あ゛ なんの話だ、その質問に意味あんのかよ」

 

 「もちろんあるさ。どうやら、その反応を見るに俺とは違うみたいだね。君、現代人術師だろ」

 

 「……は?」

 

 

 ()()()()?。

 

 質問の意図が理解できず凛太郎は睨むようにレジィと名乗った男に視線を向けるが、その反応だけで満足したのか何かを理解したかのように笑うレジィの姿に苛立ちが募る。

 

 そんな彼の姿に、珍しいものを見たと言わんばかりにレジィは言葉を続けた。

 

 

 「わざわざ俺の所に来たって事は、何か理由があるんだろ? 君がどこまでできるのか見てあげるよ、強ければ合格って事で仲間になろう」

 

 「……それ、不合格ならどうするんだ」

 

 「弱けりゃカモって殺すだけさ、この『死滅回游』で後々の為に強い仲間以外は必要としてなくてね。見込みがないなら、せいぜい(ポイント)になって終わってくれ」

 

 「───そうか、安心したよ」

 

 

 レジィの言葉に、凛太郎は心底安心したような表情を見せてに笑う。なぜ彼がそんな表情を見せるのか理解できず、レジィは訝しむような顔で凛太郎に視線を向けるが、すぐにその表情は崩れ去ることとなる。

 

 なにせ次の瞬間、術式を起動させながらも抑え込んでいた凛太郎の膨大な呪力が解き放たれた事による威圧感(プレッシャー)に息を飲み冷や汗を流す事となった。

 

 既に術式のギアは2nd状態に入っている。

 表情を削ぎ落としたような顔で鋭い双眸を輝かせた。

 

 

 「テメェみたいなカスが相手なら、俺も遠慮なく()()でぶちのめせる。殺すつもりで行くから……死にたくなきゃせいぜい頑張ってくれ

 

 「っ……交渉決裂ってわけかい」

 

 「何言ってんだ、こっちはゴミ相手に仲良くしようなんてハナから思ってねえよ」

 

 

 少年が一歩踏み出す。

 瞬間、凛太郎が立つ渡り廊下。

 

 彼の背後、マンションの一室の扉が音を立てて蹴破られる勢いで開かれた。そこには凛太郎を背後から狙い飛び出してくるもう1人の男の姿。

 

 

 「───シャァ!!」

 

 

 肩越しに振り返る。

 長い髪を一房にまとめた眉毛が太い上裸の男の姿。突き出した左手の爪が鋭利な刃物のように変化していることから、恐らく術式によるモノだろうと冷静に推測する。

 

 上裸の男、針 千鈞(はり ちづる)の攻撃が凛太郎の背にヒットした。

 

 変化した左手の鋭い爪から繰り出す高速の刺突。

 避ける素振りすら見せない凛太郎、あまりにも動きの鈍い彼の動作に自らの攻撃が直撃したことに呆気ないなと笑みを深くするが。

 

 

 「───なんだ、その程度かよ」

 

 「……なっ!?」

 

 「不意打ちするんだったら、しっかりキメろ。じゃなきゃカウンターの餌食だぞ……こんな風になッ!」

 

 

 しかし、その指先が凛太郎を貫く事はなかった。

 まるで自分よりも巨きな岩石に拳を叩きつけたような感触に驚愕する。その硬さに寧ろ自分の腕のほうが痺れダメージを負っている、その事実に呆然としている針だがそんな隙だらけの姿を凛太郎が見逃すはずもない。

 

 腕を突き出した体勢のまま動かない針の左手を掴み上げると、そのまま遠慮なくガラ空きとなったボディに膝蹴りを喰い込ませる。咄嗟に呪力を腹に集中させたようだが、そんなモノ凛太郎には関係ない。

 

 防御を容易く打ち砕く。

 見えない砲弾に撃ち抜かれたような衝撃に、針は膝をつき吐瀉物を撒き散らす。

 

 

 「ぎぃっ……ヴォェ……!?」

 

 「汚ねえな……おい何へばってんだよ。もっと気合い入れろ、これじゃ俺が弱い者いじめしてるみたいじゃねえか」

 

 「て、テメ……ガッ!」

 

 「悪りぃ、なんか言いかけてたか? 声が小さくて聞こえなかったわ」

 

 

 そして止めと言わんばかりに、凛太郎は相手の頭部を掴むとマンションの渡り廊下の外壁に勢い良く叩きつけて文字通り沈み込ませる。

 

 並の人間なら今ので確実に意識を飛ばしているが男の意識がまだある事に、相手の頑丈さに感心する。だがそれでも暫く動けないだろうと判断して、呻く相手を蹴り飛ばして転がしておく。

 

 次はお前だ、そう言わんばかりにレジィを睨みつける凛太郎。

 

 だが一瞬で自分の仲間がやられたと言うのにレジィは焦るそぶりすら見えず、寧ろ瞬殺された針の姿に呆れたように息を吐いていた。

 

 所詮その程度の関係か。こいつらに仲間意識などなかったのかと、倒れた男を憐れみながら拳に呪力を迸らせながらゆっくりと距離を詰める。しかし、レジィが取った行動に目を見開き驚く事になった。

 

 降参するかのように両手を上げたかと思えば突然背を見せて走り出した。

 

 

 「……は?」

 

 

 凛太郎を迎え撃つのではなく、逃げだすかのように近くの扉を開け放つとマンションの一室に駆け込んだのだ。何のつもりだと警戒しながらも、凛太郎もレジィを追い走り出す。

 

 だが渡り廊下の外から投げ込まれた物体、抉り取った()()が視界の隅に入り込んできたことにより動きが止まる。

 

 

 「───ッッ!!」

 

 

 なぜ、なんて疑問は浮かばない。

 

 凛太郎の磨き積み上げてきた戦闘経験と直感が瞬時に、それが敵による攻撃であると判断させた。放り投げられた眼球に込められた呪力が膨れ上がる、込められた呪力量からそれが広範囲に及ぶ攻撃だと予期して舌打ちをこぼす。

 

 ()()()()()()ならば、急激に術式のギアを上げる事によって回避することより防御に専念していた。だが、それは以前までの彼ならば、という話だ。

 

 ───すぐさま第二の呪術を起動させた。

 

 一瞬、視界がモノクロに染まる。

 彼の瞳に四芒星と照準十字線を重ね円で繋げた模様が浮かび上がる。

 

 “入れ替え”の術式。

 入れ替える対象は、先ほど蹴って地面に転がした男と自分の立つ場所を空間ごと入れ替えた。

 

 “入れ替え”による、僅かな浮遊感。

 視点が切り替わり、置換したことにより先程まで自分が立っていた場所には男の姿があった。直後、放り投げられた眼球が大爆発を起こして爆風に肌が晒される。

 

 爆発に巻き込まれた針は何が起きたか理解できない様子で、それでも慌てて回避しようとするがもう遅い。

 

 白目を剥き、肌を焼け焦がしながら煙を纏って吹き飛んでくる。いまの爆発でその程度のダメージで済んでいる事に驚き、その頑丈さに感心を通り越して呆れてしまう。

 

 

 (っ……やっぱ居たのか3()()())

 

 

 薄々気配は感じていた。

 だが姿は見えず仕掛けてこないなら、眼前の敵を優先して後回しにするつもりだった。しかしいまの攻撃で相手の位置は割れた、上の階層から投げ込まれた攻撃であるなら話は早い。

 

 現在凛太郎が居る階層から上となれば、屋上しかないだろうと予測をつける。

 

 

 「グッ……て、てめえ、何しやがった……!」

 

 「知るかよ、避けねぇお前が悪い。そんじゃ、いっちょ俺の為に()()()()()()()

 

 「あ!? ちょ、待ちやがれ……クッソ!」

 

 

 徐にマンションの一室、()()()()()()()()()()()()

 

 そしてダメージが抜け切らず、満足に動けないでいる針の首元を掴んで持ち上げると凛太郎は片手で男をそのまま渡り廊下の外側へと投げ飛ばした。

 

 驚いた顔で空中へと山形に大きく身を投げ出された男が落下していくその瞬間、自分が居る位置と男の位置を再び“入れ替える”。

 

 入れ替わった事により空中に身を乗り出した凛太郎はすぐさま、引きちぎったドアノブをマンションの屋上へ向かって勢いよく投げ放つ。

 

 その距離は僅か5〜10mといったところか。

 投げ飛ばしたドアノブを視界に収めながら、続け様に術式を発動させて落下する自分と投げたドアノブを“入れ替える”ことによってマンションの屋上へと着地。

 

 凛太郎が着地したその先、そこには3人目の襲撃者が下の階を覗き込んでいるところだった。

 

 

 「───よぉ、随分と趣味の悪い術式だな!」

 

 「は? オマエ、いつの間に……っ!」

 

 「(ヤロー)共と戯れるなんざ時間の無駄なんでね。大人しくくたばってくれ」

 

 

 ここまでの接近を許したことに驚愕するが、拳を握って接近してくる凛太郎の姿に笑みを浮かべる。武器を持たず無手であることから、肉弾戦主体の術者であることが予測できた。

 

 ならば相手が得意とする間合い(リーチ)につかせることなく爆破によって潰す。

 

 そう考えて、黄櫨 折は自らの前歯を()()()()()()()()()凛太郎に向かって投擲する。

 

 再び呪力が膨れ上がり爆発する直前。

 

 

 「───()()()()()()()()()()()、ってところか? しかも反転術式まで使えるとはな」

 

 「………あ?」

 

 「ま、だからなんだっつー話だけど!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 前方にいる凛太郎に向かって放った筈の爆弾が黄櫨の()()で起爆した。それどころか、なぜあの一瞬でここまで相手との()()()()()()()()()()

 

 なぜ、と。

 理解が追いつかず呆然とする黄櫨だが、既に彼は駆け出した凛太郎の間合いの中にいる。駆け出した勢いを殺すことなく踏み込むと、握りしめた拳を遠慮なく叩きつける。

 

 骨を砕く感触が拳に伝わる。

 

 

 「グゥ! てンめっ……!」

 

 「悪いが反転術式が使える相手には加減しないんだ。回復する奴とぐだぐだやり合ったっても疲れるだけだからなッ」

 

 

 右フックを叩き込まれた黄櫨だが、すぐさま反撃に出る。

 一撃叩き込まれただけで膝を突きそうになる自身の体に鞭を打ち、振り切った凛太郎の腕を掴んで拘束する。そしていまの一撃で折られた奥歯は吐き出して起爆させる。

 

 ───しかし、それよりも速く反応した凛太郎が膝に蹴りを入れて体勢を崩させると空いた拳で黄櫨の顔面へと追い討ちの掌底を放ち、力尽くで爆弾を放つ方向を変えさせた。

 

 

 「呪力は腹だが反転術式は頭で回す、だから一撃で頭を潰すのがセオリーらしいが……それよりも()()()()()があるの知ってるか?」

 

 「ッッ、この野郎!」

 

 「傷は修復できても“痛み”はあるからな……ま、(ヤロー)限定だが」

 

 

 反転術式の使用には膨大な呪力を要求される。

 しかしそれに見合うだけの価値はある。失った部位を再生させるには術者の呪力量や力量による差異こそあれど、損傷した肉体をまるで何事もなかったかのように修復させることができるのだから。

 

 故に反転術式が使える術者との戦闘は長期戦を強いられる事となる。

 

 だがいかに強力な反転術式使いでも毒物や、一撃で頭部を潰せば死に至る。しかしそれは“言うは易く行うは難し”というやつだ。だから凛太郎はそれよりも簡単に反転術式使いを潰せる方法を考えた。

 

 いくら傷を修復できようと“痛いものは痛い”、()()を最大限に利用する。

 

 圧倒的な防御力を持つ相手や、相手に痛覚が存在しない、または五条 悟のような無下限によって触れることが出来ない相手に効果は見込めないが、それ以外なら必ずと言ってもいいくらいに通用する一撃である。

 

 因み、過去に手合わせの最中に不意打ちで()()を喰らった秤 金次は一撃でノックアウト。それを見ていた反転術式の使える乙骨 憂太と五条 悟やその他の男子生徒たちはエグすぎる攻撃方法に顔を青くし前屈みで内股となっていた。

 

 

 「喰らってみな、トぶぞっ!!」

 

 「は?───ッッッ!!!?!?」

 

 

 その一撃こそが金的である。

 

 相手が反転術式を使えるからこそ、遠慮なく繰り出す全力の一撃で文字通り叩き潰す

 

 そもそも凛太郎からしたらヤローの玉なんざどうでもいい。反転術式でどうせ治せるんだから玉の一つや二つ、一時的に無くなったところでなんの痛手もないだろうと。

 

 故に、全力で蹴りを叩き込むのだ。

 それに加えて、凛太郎の“鋭い”呪力の特性が相手の痛みをブーストさせる。

 

 

 「〜〜ッッ、カッ……な、なめるなァッ!!」

 

 「誰も1発だけで済ますとは言ってないぞ」

 

 「───ッッ!……おふ

 

 

 電流のように股間から全身へと流れる痛みに悶絶する黄櫨だが、堪え切った彼は怒りの形相を露わとして凛太郎に反撃の一手を繰り出そうとするがそれよりも速く凛太郎がもう一度同じ部位に蹴りを叩き込む。

 

 それどころか、倒れ込んだ黄櫨のウィークポイント目掛けて何度もストンピングを繰り出している。側から見れば恐怖さえ覚えるほど執拗に蹴り送り出す。

 

 それはもう相手が可哀想になるくらいに。

 

 

 「…………」

 

 「は、男に生まれたことを後悔するんだな!……っと遊んでる場合じゃなかったな」

 

 

 完全に意識を失い、倒れ込んだ黄櫨の姿に凛太郎は己の勝利を讃えるように拳を掲げる。

 

 が、しかしまだレジィと名乗る変な服装の男が残っていることを思い出して気絶した黄櫨を放置し屋上から飛び降りる、とそのまま先ほどまで自分がいた階まで落下する。

 

 そして渡り廊下の外壁を掴んで乗り込むと、そこには自分が予想だにしない光景が存在していた。

 

 

 「お前……チッ! 黄櫨までやられたのかっ!?」

 

 「───な、なんだ……オマエ……ッ!」

 

 「………へ?」

 

 

 そこにはレジィと復活した針を相手に交戦する()()の姿があった。

 2対1という状況でと交戦中であったその少年は凛太郎の姿を視界に収めると大きく目を見開いて───()()()を露わとする。

 

 なぜなら凛太郎から発せられる呪力とプレッシャーは少年の警戒度を引き上げるには十分であった。それはまるで、()()で暴れていた特級呪霊にすら匹敵……否、呪いの王にすら迫るかもしれないと。

 

 そして、その少年の姿に凛太郎も動揺を露わとした。

 無愛想な表情、同じ黒髪で自分と似たようなツンツン頭、そして自分と()()()()に身を包んだ姿。その全てが自分の記憶の中にある後輩の姿と一致する。

 

 

 「め、メグミーン!!?」

 

 「……は?」

 

 

 その少年こそ、凛太郎の自慢の後輩ちゃんズの1人である呪術高専東京校の一年生である伏黒 恵であった。

 

 思いがけない再会に凛太郎は目を輝かせる。

 しかしそれとは対照的に伏黒はそんな凛太郎の様子に、()()()かのように目を細めて警戒心を解くことはない。

 

 伏黒の様子に気がつくこと事に気づくことなく彼に近づいて、感動のさ再開を祝してハグでも交わそうとする凛太郎だが。

 

 

 「おッス恵! 元気してたか!」

 

 「っ、動くな!」

 

 「……ん?」

 

 

 ───そんな彼に伏黒は自身が握る剣を突きつける。

 

 

 「オマエ、なんで()()()()()()()()()……! それにその制服、高専の関係者か?」

 

 「え? ちょ、どうしたんだよメグミン……? てか玉犬まで俺のことを見てすごい唸ってるんだけど……え、何故? あんなにわしゃわしゃした仲なのに」

 

 「!……俺の術式のことまで知ってるのかッ」

 

 「へ、なにこの空気感……とりあえず、一旦落ち着けって……って、ちょ待て待て待て!? お前その()()はダメだろ!それあれだろ、()()()()()()()()みたいな詠唱してヤバいの召喚するやつだろ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 はい。
 というわけで、呪術廻戦(原作)です。

 そんな簡単に自分の仲間と再開できるわけないよね。
 面識があり可愛がっていた相手なのに、向こうからしたら赤の他人で同じ顔の人間から警戒されるし自分の世界に帰れないという状況で苦しんでください。





ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?

  • 07:00くらい
  • 19:00くらいやな
  • 21:00くらいやでー!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。