透き通る様な世界観にいる一般呪術師   作:半ライス大盛り

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 感想・閲覧・高評価・ここすき。
 誤字報告などもありがとうございます。

 呪術廻戦も来週が最終回か……寂しいよ……!

 
 次回からパヴァーヌ再開やで〜。





なに見てんだ無限の彼方にぶっ飛ばすぞ

 

 

 

 ───戦闘を終え()()を果たした伏黒は瓦礫の上に座り込み、凛太郎から渡されていた黒いスマホを食い入るように見つめながら画面に指を走らせていた。

 

 それは凛太郎がシャーレの先生から手渡された“劣化版シッテムの箱”とも言える白いスマホではなく、凛太郎がキヴォトスに来る以前から個人的に使用していた黒いスマホ。

 

 伏黒が食い入るように視線を向ける先には、凛太郎がこれまでカメラ機能で保存してきた写真の数々が表示されていた。伏黒はどこか困惑したような様子でそれに目を通していた。

 

 なにせ()()()()()()()()写真がいくつも存在していたからだ。

 

 

 「………ッ!」

 

 

 恐らく任務帰りに撮ったであろうと思われる写真。

 そこには自分の先輩であり数少ない特級呪術師である乙骨 憂太と共に凛太郎がラーメンを食べている食事の風景を撮った写真がある。

 

 それだけではなく、乙骨 憂太の他にも禪院 真希やパンダ、狗巻 棘といった高専の先輩たちとも撮ったであろう写真の数々がある。カラオケやボーリングなど、楽しそうに並ぶ先輩たちと凛太郎の姿が写真として残されていた。

 

 その他にも見るからに不機嫌そうな表情を浮かべている七海 建人と、その隣で愉快そうに笑う五条 悟と共にカメラ目線でキレッキレのポーズを決めてプリクラで撮った写真などが混じっている。

 

 激しく困惑するがそれだけならばまだ、自分が知らないだけで凛太郎という人物と彼らが交流があったのだろうと納得することができた。

 

 

 「は?……な、なんだこれ……ッ!?」

 

 

 だが画面をスライドさせていくうちに、彼の困惑はさらに大きなものとなっていった。

 

 なにせそこには、同級生であり共に行動することの多い呪術高専東京高の一年生である虎杖 悠仁と釘崎 野薔薇、そして自分が凛太郎たちと共に写真に写っているのだ。

 

 それは伏黒にとって()()()()()()()()

 震える指先で保存されていたカメラの映像データを再生させる。

 

 

 『おうこら、凛太郎! ヘマしたらどうなるかわかってるんだろうな!!』

 

 『そうよそうよ! 顔だけが取り柄の先輩じゃないってしっかり証明してみせなさいよー!』

 

 『ふっ……女の子たちからの黄色い声援が心地いいぜ。まっかせてよーん! 絶対に三振空振りさせるからねぇ〜!!』

 

 『……図太いなお前、正直びっくり。というか真希のやつ絶対半ギレだぞアレ。なんだかんだでピッチャーやりたがってたもんな〜』

 

 『しゃけしゃけ』

 

 『じゃんけんで勝ったから公平なジャッジじゃい』

 

 『ねぇ、俺もピッチャーやりたかったんだけどぉ!』

 

 『お黙り! さっさとポジションにつけヤローども、後わかってると思うが飛んできた捕球ミスったりなんてしたら殺すからなテメェら。それと相手のバッターが男ならすれ違いざまに悪質タックルかまして来い俺が許す』

 

 『え、こわ。澄んだ瞳でなんて事言うんだお前。ダメダメ暴力はんたーい! パンダ的にもそれはダメだと思います!』

 

 『馬鹿野郎。かちゃあいいんだよ!』

 

 『いや先輩、普通にルール違反でアウトですからねそれ』

 

 『何言ってんだ後輩、俺がルールだ』

 

 

 再生された映像は京都姉妹校交流会にて、2日目の従来の個人戦から勝負方法が急遽変更となり野球試合が行われた際の映像だった。撮影者が誰なのかはわからないが、このスマホに映像が保存されているということは凛太郎の指示によって記録されたものだろうと考える。

 

 マウンドに立つ凛太郎、そしてその周りには()()を含め東京校のメンバーが集まっている。

 

 

 『ふっ……戦友、どうやらお前がピッチャーのようだな』

 

 『見りゃわかんだろ。言っとくが俺は相手がヤローなら遠慮なくデットボール決めるぞ……そうだ、お前に聞きたいことがあったんだ。嘘偽りなく答えろよ』

 

 『ほう。なにが聞きたい、俺と虎杖(ブラザー)の勝利の秘訣か?』

 

 『いやそれは微塵も興味ないっす。俺が聞きたいことは一つだけだ……お前、真衣ちゃんと2人っきりでアイドルの握手会デートに行ったってのは本当か?

 

 『?……誰から聞いたのかは知らんが、真衣のやつにも高田ちゃんの素晴らしさを布教しに行っただけさ』

 

 『つまり事実ってわけか。ハハ……殺す。おうゴラ、この筋肉ゴリラが。なんて羨ま……けしからんマネしてくれとんじゃ! 俺だってまだ一緒にお出かけしたことないんだぞッ!? 』

 

 『ンなるほど、なら次の握手会のチケットは俺とお前の分も用意しておくとしよう! 安心しろマナーなどは俺がサポートしよう!』

 

 『ちっげーよ! 別に握手会自体には興味ねえよッ! というかなんでお前といかなきゃならんのじゃい!! 俺は真衣ちゃんたちとキャッキャウフフしたいの!』

 

 『だってよ。よかったな真衣、デケェ声で言われてんぞ』コソコソ  

 『〜〜ッ……うるさいわね。喋りかけないでちょうだい』コソコソ 

 

 『とりあえず死ねえッ!!』

 

 『む!……フンッ!!』

 

 『うげぇ!? 打たれたァッ!!? 走れパンダ! 見た目よりもフットワークが軽いってところを見せてやれッ! お前は走れるデブの筈だ!!』

 

 『なんて言い草! パンダ使いが荒くて泣いちゃうぞッ!? そして俺はデブじゃないちょっとふくよかなだけだ! パンダーッシュ!!』

 

 『あ、凛太郎テメー! なに打たれてんだッ!!』

 

 『ちゃ、ちゃうねん……!』

 

 

 ───映像を停止させる。

 あまりの情報量の多さに伏黒は思わず頭を抱えてしまう。

 

 頭の中で情報を整理しようにも思考がうまく纏まらない。一通り目を通し終えた映像や写真のデータ、これが現代の技術や呪術的な技能で作成した合成やフェイク映像などではなく本物であろうと理解してしまう。

 

 だからこそ、頭を抱えてしまう。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()、戦闘終了後に合流した凛太郎の言葉が()()()()()()()と決定付けてしまえる証拠のようなものだったからだ。

 

 つまり、津上 凛太郎という人間は並行世界からやってきた呪術師なのだと。それに加えて渋谷で虎杖 悠仁の意識が戻るまであの両面宿儺と戦いその末に一度死んでいると。

 

 しかも死んだと思ったら今度は別の世界で目を覚まし、意図せずして世界の壁を超えて並行世界に迷い込んでしまったらしい。

 

 ───なんじゃそりゃ、というのが伏黒の感想だ。

 だがしかし、これが全てあると証明する術が自分にはない。それにこれだけの物的証拠とも言える物があり、凛太郎本人が東京校の学生たちしか知らないような些細なことまで知っているのだ。

 

 彼が本当に並行世界の人間であり、並行世界の自分の先輩なのだと認めざるを得ない。

 

 そんな並行世界の自称先輩に視線を向けて見れば───。

 

 

 「ちがーう! 腕は、こうっ! もっと腕を高く、そして角度を意識しながら勢いよくあげるんだ!!」

 

 「Yes, Your Majesty! つまりこういうことっすね!」

 

 「NO〜〜ぉ!! まだだ! ユーならもっと舞えるはずだッ!」

 

 「はいっ!!」

 

 「……マジでなにやってんだオマエら」

 

 「ん? お、スマホ見終わったのかメグミン」

 

 

 先程から隣で何かやってるとは思っていたが、集中力が削がれそうになる光景をあえて無視していたのだがその光景を視界に映すだけで気が滅入りそうになる、というかなった。

 

 彼の視線の先には自称先輩の凛太郎ともう1人、髙羽(たかば)史彦(ふみひこ)と名乗った男が隣に立っていた。

 

 なにやらトンチンカンな格好をしているが、これは彼に初めて爆笑を教えてくれた芸人をリスペクトした衣装らしい。因みにナニがとは言わないが()()()()()

 

 その格好には思わずツッコミを入れてしまった凛太郎だが、キヴォトスにも()()()()()()()()()()()がいるので『これくらい普通なのか…?』とあまり気にしないことにした。

 

 なんならほぼ全裸の子だっているのだ、きっとこれが最先端のファッションなんだろうと彼は考えることをやめた。

 

 

 「……ひとまず、アンタの言ってた事は信じることにする。何がどうなってんのかわからないが、ここまでの物を見せられたらアンタの言い分を否定しきれない」

 

 「ふむふむ、信じてくれて嬉しいぞ後輩ー! 普段ツンケンしてるくせにちゃんとデレてくれるから俺は嬉しいっ」

 

 「やめろっ。信じたとは言ったが、アンタが知る後輩と俺は別人だろうが……おい、聞いてんのか人の頭を撫で回すんじゃねえ!」

 

 「照れるなよ、ウバッ!?……お、お前いまガチで殴ったろ。いまのは痛かった……痛かったぞ───っ!……ふぅ、でも許そう。俺は先輩だからなッ!」

 

 「それで、そっちはこっちの状況を理解できたのか?」

 

 「んにゃ、さっぱり……あー、『死滅回游』だっけ? なんというか“ルール”がありがちでつまんねえというか、これ考えたやつ頭良いようで実はバカだろ。“羂索”とかいうのも傍迷惑な野郎だな、便器にこべりついたうんこみたいな奴だな絶対」

 

 「言いたい放題だな……」

 

 「いーやまだまだ言い足りないねッ! こっちの世界と俺が居た世界じゃ多分そこまで“大きな差”はないだろうし、俺の居た世界でも色々とこいつが原因ってわけだ。じゃあ俺が渋谷で宿儺とやり合って死ぬハメになったのも元を辿ればコイツの所為だろ?」

 

 「ふむふむ、なるほど……つまり少年、判決は?」

 

 「ん〜、もちろん有罪(ギルティ)! とりあえずそいつぶっ殺せば呪い云々もちょっとマシになるだろ」

 

 

 伏黒の説明により、現在『死滅回游』と呼ばれる呪術を与えられた者達による殺し合いが行われている事は理解した。

 

 だが彼から話を聞けば聞くほど凛太郎はうんざりしたような表情を浮かべてため息を吐いていた、言いたいことは山ほどあるがまずルールが複雑すぎるもっとわかりやすくしろというのが凛太郎の第一の感想だ。

 

 あの渋谷にいた偽物の夏油が体を乗っ取られておりその中身が千年以上も前にいた呪術師であること。羂索という人物には『千年近くバレないようにコソコソと準備してたとかどんだけ暇人だったんだコイツぼっちかよ』くらいの感想しかないが、様々な不幸の元凶の人物となれば話は別だ。

 

 カビすら生えてきそうな過去の人間が未来の人間に迷惑かける為にしぶとく生き延びるなやボケ、と舌打ちをこぼす。

 

 そして最後に、恩師である五条 悟が未だ封印されたままであるということ……渋谷で五条 悟を救出する事は失敗に終わったという事だ。そして伏黒たちは五条を助ける為、獄門疆の封印を解く為にも“天使”と呼ばれる人物を探しているとかなんとか。

 

 自分が居た世界とこの並行世界ではそこまでの差はないのだろうと思っている。凛太郎という人間が高専には居らず何人かの仲間たちが帰らぬ人となっているようだが、些細な変化こそあれど“出来事”や“流れ”にそこまで大きな差がなく“共通”しているという事がわかってしまった。

 

 つまり、自分の居た世界でも五条 悟の救出は失敗しているのだろうと直感してしまう。

 

 だからこそ考えてしまう。

 あっちの世界とこっちの世界、並行世界(ここ)にはなくて元の世界には存在してた一つのピース。自分という例外があの時、渋谷で宿儺と戦い死ぬ事なく上手くやっていれば少しは何か変わっていたのではないかと。

 

 無意識のうちに拳を握り奥歯を噛み締める。

 

 過ぎた話にどれだけ文句を言ったところでなにも変わらないが、それでも考えてしまう。もしも自分が上手くやっていれば結果は変わったのかもしれない、だがそれと同時にそもそも凛太郎という人間が居たところで結果はなにも変わりはしないのではないかと。

 

 嫌な考えばかりが脳裏を過ぎる。

 自分1人だけで何かが変えられるなんて、自惚れているつもりもない。

 

 

 「悠仁や野薔薇ちゃんとか、2年生たち(アイツら)は無事なのか?」

 

 「……全員無事、とは言えない」

 

 「っ……そっか。ま、そんな都合よくいかねえよな〜。はぁ、ほんと世の中クソだな」

 

 

 瓦礫に腰を下ろして頭を抱える。

 どうしてこう、顔も知らない悪人ばかりが得をして自分の親しい善人たちばかりが損な役割をさせられるのか。全ての人間を助けられるなどと思ってはいない、だからせめて手の届く身近な人は守りたいと思っていた。

 

 だが、結局はこれなのかと苛立ちが募る。

 

 こっちの並行世界では夜蛾や七海といった、凛太郎がよく知る“良い人”が既に帰らぬ人となっている。自分のいた世界の彼らが無事であるか確認する術は凛太郎になく、“もしかしたら”と考えながらも無事を祈るしかできない。

 

 

 「はっ……もう俺が闇堕ちして呪術界隈ぶっ壊すしかないのか……? ほらサスケみたいに『革命だ』的な感じでさ、それっぽい能力もあるし……どう思う?」

 

 「アンタなに言ってんだ……そもそも、その程度で変えられるなら誰も苦労しねぇだろ」

 

 「やっぱ無理か〜。あー、ダル〜……どっかにドラえもん落ちてねえかなー、もしくはデスノートとか」

 

 「求める選択肢が極端過ぎるな少年ッ!」

 

 「……というか、さっきから無視してたがコイツ誰だ? おい、顔が近えよ!?」

 

 「誰に向かって指差しとんじゃ貴様ッ!? この人への文句は俺に言いなッ!」

 

 「アンタの情緒はどうなってんだマジで……っ!」

 

 

 ペチン! と伏黒が向けた指先を叩き落とす。

 先程まで受け入れ難い現状にしょげていたというのに、グルルルと番犬のように唸る凛太郎の姿に『マジでなんなんだこいつ』と伏黒は呆れたように息を吐いて天を見上げる。

 

 そんな凛太郎の肩に手を置いて、男が一歩前に出た。

 

 

 「いいのさ少年、ならばもう一度自己紹介と行こうッ! 求められれば答えるというのが芸人だからなッ!」

 

 「別に求めてねえよ」

 

 「いーや、俺が求めてるねッ!」

 

 「御歳35歳ッ! ナベナベ所属の髙羽史彦。挨拶代わりにとっておきのギャグをお見せしよう、意中の子の前で披露するといいッ!」

 

 「いや結構です」

 

 「バカやろう黙って見とけって!」

 

 

 ゴゴゴゴ、と異様な覇気すら感じるほどの凄み。

 

 全身に力を込めるように身を屈めて構える髙羽の姿に凛太郎は目を輝かせながら伏黒の肩を掴んで揺らしている。その姿はまるでヒーローショーで自分が好きなヒーローが登場してきたような反応だ。

 

 そんな彼を横目に伏黒は白けた眼差しを2人に向けながらどうでもよさげに息を吐いた。

 

 

 「余計なお世Wi-Fi───ッ!!」

 

 「キタァァァアアアッッッッッ!!」

 

 「うるさ……なんだこれ……ほんとなんだこれ……」

 

 

 なにが起きているのか理解できない。

 どう足掻いても自分だけではツッコミが追いつかないであろう事を悟った伏黒は死んだ魚のような目で虚空を眺めていることしかできない。

 

 その隣ではテンションがぶち上がっている凛太郎が感動を隠しきれない様子で雄叫びを上げている。そんな彼の様子に満更ではない様子で、というかめちゃくちゃ嬉しそうに笑っている髙羽の姿がある。

 

 因みにこの津上 凛太郎、近くの無人となったコンビニからパクってきた新品のTシャツに髙羽のサインをもらっていたりする。

 

 

 『ファンです! サインくださいッ!』

 

 『うっそマジで!?』

 

 

 ───これが数分前に出来事だ。

 

 

 「津上少年ッ、これは既に少年に伝授し終えた。因みに著作権はフリーだいつでも好きな時に披露したまえ! さっき言ったように意中の子の前で披露すれば好感度だって上がるはずだ!」

 

 「あざっす髙羽師匠ッ!」

 

 「……アンタら実は知り合いだったりするか?」

 

 「いや、津上少年とはさっきあったばっかだな!」

 

 「ん?……んー、そうだな。こっちだとバリバリ初対面」

 

 「マジでなんなんだ……というかそっちにもいるのかよ」

 

 「ははっ、まあ()()あってな……俺の心の師匠、かな」

 

 

 髙羽と肩を組んで笑う凛太郎の姿に頭が痛くなる。

 並行世界の凛太郎はともかく、さっきあったばかりの癖になんでそんなに息ぴったりなんだと、ツッコミを入れるのすら疲れてきた伏黒。

 

 そんな伏黒の様子を眺めながら考える。

 

 自分が髙羽と出会ったのは中学の頃だっただろうかと、()()()()()()()()を掘り起こす。それは確か自分の故郷が無茶苦茶になり、()()()との再会を果たして呪いの世界に足を踏み入れるよりも少しだけ前のことだったか。

 

 あの頃の自分は()()()()()、というよりもヤンチャだったなと内心で苦笑する。()()()()()()()()()()()()()()()()()、なにをしても無気力で苛立ちをぶつけるように暴れていたりもした。

 

 そんな時だ、偶然その場に居合わせた髙羽と凛太郎は出会った。

 

 

 『どうした少年、()()()()()()()してるな! そんな少年には俺のとっておきを……ってどこ行くつもりだ話は終わってないぞ!』

 

 

 それが髙羽 史彦との邂逅だった。

 最初こそ鬱陶しい奴だ、なんて思っていたが見ず知らずの凛太郎を髙羽は気にかけて何かと笑わせようとしてくれていた。それがなぜなのか、なんて凛太郎は知らないが、それでもあの時自分の心は少しだけ救われていたのだと感謝している。

 

 それから、偶に彼のいる寂れた劇場に足を運んでいたりもした。

 万人からのウケがよくないような冴えないギャグだが、それでも相手を必死に笑わせようと、自分を知ってもらおうとしているのが伝わってくるその在り方が凛太郎は気に入ったのだ。

 

 

 「うしっ! とりあえず、悠仁と合流するんだろ行こうぜ?」

 

 「アンタまさか、ついてくるつもりなのか?」

 

 「当たり前だろ。お前が俺の知る恵じゃなかろうと、恵が俺の後輩である事は変わらねえんだ。だったら困ってる後輩を助けてやるのが先輩ってもんだろ」

 

 「……そうか、ありがとう」

 

 

 過去を振り返り感傷に浸るのもここまでだ。

 

 ひとまず結界に入った際に分断されてしまった悠仁と合流する為にもこの広い結界(コロニー)内を探し回らなければならないが、もしかしたら少し前の自分たちの戦いに気付いて近くまで来てるかもしれないと考えて辺りを探索しながら悠仁と合流しようと考える。

 

 

 「気にすんな。んじゃ行こうぜ……───ッ!?」

 

 「ッ……津上!?」

 

 「ど、どうした少年!?」

 

 

 そう思って歩き出そうとした時、凛太郎が膝から崩れ落ちた。

 それどころか彼の全身が映像のフレームがブレるかのように大きなノイズが走っていた。突然の事態に伏黒と髙羽の2人は焦ったような表情で彼に駆け寄った。

 

 だがそんな2人とは対照的に、凛太郎はどこか納得したような顔をしている。

 

 

 (クソッ……もう、()()なのかよ……───ッ!)

 

 

 なんとなく予想はしていた。

 レジィとの戦いの最中にその()()は現れていたのだから、きっとこれ以上長い時間ここには留まれない。全身から力が抜けていき今にも弾き出されそうな感覚に襲われている。

 

 

 「悪い恵、嘘ついた……力になってやりたかったが、多分これ以上は無理だ……ぐ、ぅぅ……()()()()ッ」

 

 「!……戻されるって、アンタのいた世界にか?」

 

 「さぁ、正直わからん……運がよけりゃもしかしたらって可能性はあるが、どうだろうな。自分がいたキヴォトスに戻れるのかすらわからないしな……っ!」

 

 「……そうかっ」

 

 

 意識が今にも吹っ飛びそうだった。

 自分の身体は薄れていき溶けていく、だがそれでもギリギリのところで気合いで堪える。悲痛な顔で自分を見る“後輩”の姿に、まだ伝えなければならないことがある。

 

 

 「なぁ……恵っ」

 

 「なんだ……?」

 

 「お前が俺の知ってる後輩じゃなくても、久しぶりに後輩の元気な姿が見れて、俺は嬉しかったぜ……とりあえず、俺のほうも色々と頑張ってみるからそっちも頑張れよな」

 

 「……ああ。ありがとう先輩」

 

 「ふっ……それはそうと、偶にお前の飲み物の中身を激甘プロテインに入れ替えたりしてイタズラしてたのは実は俺なんだ……今のうちに懺悔しとくわメンゴ」

 

 「……なんの話だ?」

 

 「それと、学生寮のお前の部屋の壁に穴開けたのは悠仁じゃなくて実は俺だ。思ったより激おこプンプン丸状態のお前が怖くて黙ってたんだ許してチョンマゲ。因みにお前の部屋でこっそりセミを羽化させたのも俺だ」

 

 「アンタ別の世界の俺になにしてんだ……!」

 

 「それと実は……」

 

 「まだあるのかッ!?」

 

 「うそうそ、流石にもうねえよ……んじゃ、またな後輩。髙羽師匠も俺の後輩のこと助けてやってくれると嬉しいっす」

 

 「おう! 任せとけ津上少年!」

 

 

 凛太郎の意識が落ちる……───。

 視界が暗闇に包まれる寸前、呆れたように笑う後輩の姿に安心しながらもどうせならもう1人の後輩である虎杖 悠仁の姿も一目見たかったと内心で苦笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 「……うお、知ってる天井だ」

 

 

 意識が覚醒する。

 目を覚ました凛太郎が初めに視界に映した光景はミレニアムの『廃墟』にあった『施設』の朽ちかけたあの天井だった。

 

 地面に倒れていた体を起こしてみれば、自分が並行世界の跳ぶ羽目になった原因である『謎の機械』が静かに起動していた。

 

 

 「夢じゃ、ねえんだよな?」

 

 

 ぶち抜かれた脇腹、傷は修復したが血で汚れ穴の空いたパーカーはそのままとなっている。そして髙羽の手書きのサインが刻まれたTシャツ、その数々があれは夢でなかったということを証明していた。

 

 その事実に、静かにそしてゆっくりと凛太郎の口角が上がっていく。

 

 なにせ漸く見つけたのだ。

 自分が元いた世界へと帰る為の手段となり得る物を、と言っても今すぐに帰るつもりもない。なにせこっちでやらなければならない事はまだある、その上この『謎の機械』がしっかりと起動してくれるかもまだわからないのだ。

 

 また並行世界に飛ばされたなんてことになったら堪らない。

 

 そもそも、次もキチンと稼働してくれるのかすらわからない。なにせボロっちい機械の状態が状態だ、丁重に扱わなければならない。

 

 

 「しかし、ここに放置していくわけにもいかねえよな……エンジニア部のみんなならこれ直せるか? うーん、ぶっこ抜いて持ってくかみんなをここに連れてくるべきなのか……悩ましいところだ」

 

 

 色々と考え込みながら、不意に機械に触れた瞬間。

 ───バチッ、と凛太郎の脳内に()()()()()()()が流し込まれた。

 

 

 「あ?………ッッ!!!??」

 

 

 それは凛太郎が知る由もない並行世界の記録。

 凛太郎の脳内に次々と断片化された映像の数々が映し出されていく。

 

 

 『覚えているか? 面白いものが見れると言ったろう小僧』

 

 『オマエは!! オマエ達は!! どうして普通に生きられない!!どうして不幸を振り撒かずにいられないんだ!!』

 

 『アイツを殺すためならなんでも食ってやる』

 

 『どう? 久しぶり? お寛ぎ頂けたかな?』

 

 『オマエさ、もっと言葉を選んだ方がいいんじゃないかと? ───今際の際だぞ』

 

 『そろそろ掴めよ虎杖』

 

 『押忍!!』

 

 『天晴れだ五条 悟。生涯 貴様を忘れる事はないだろう』

 

 

 これから彼らの元に訪れるであろう光景の数々が脳内に流し込まれる。それは伏黒 恵の身体を乗っ取った呪いの両面宿儺の姿であり、それに立ち向かう後輩と友人達の姿。復活した恩師とその親友の肉体に潜む全ての元凶。

 

 そして、呪いの王に敗れ両断された崩れ落ちた現代最強。

 

 

 「うっ……ヴォェ……カ……ッ!!」

 

 

 流し込まれた膨大な情報量に吐瀉物を撒き散らす。

 

 頭が痛い。

 耳鳴りがする。

 再び意識が遠のいてきた。だが、その全てを堪えて、凛太郎は倒れ込みながら『謎の機械』を睨みつけるように視線を向ける。

 

 なんだ今の映像は。

 自問自答したところで疑問に対する答えは出てこない、だがあれが嘘っぱちではないであろう事はすぐにわかった。妙な直感が凛太郎にはあった、あれはこれからあの並行世界に訪れる未来の光景だと。

 

 だからこそ危惧する。 

 自分がいた世界とあの並行世界は些細な変化こそあれど、大まかな出来事は“共通”していたのだ。元いた世界で起きた出来事はあっちの世界でも発生していた。

 

 つまり、この映像は自分がいた世界でも十分にあり得る未来の出来事なのだ。

 

 

 「はーっ、はーっ……クソがッ……五条、先生が……死んだ……!?」

 

 

 苛立ちが募る。

 それは好き放題暴れ回る過去の呪術師たち、両面宿儺に対してであり全ての不幸の元凶とも言っていい羂索に対してでもあり、そして───。

 

 

 「ふ、ふざけんな! んで、そんな……なに()()()()()()して死んでんだよアンタ……ッ!」

 

 

 恩師である()()()に対してだ。

 敗れたというのにまるでやりきったと言わんばかりに満足げな表情で笑みを浮かべて死んだその姿に、どうしようもない苛立ちを覚える。きっと彼の孤独は満たされてしまったのだろうと。

 

 呪いの王が相手であろうと勝つんじゃなかったのかよと、拳を地面に叩きつける。

 

 

 「……決めたぞコラ。絶対に戻ってやる、そんでもって……宿儺も羂索とかいうやつも……そんで五条先生も纏めてぶっ飛ばしてやる……特に五条先生は念入りにボコボコにしてやる……ッ!」

 

 

 その為にはもっと強くならなければ、今のままでは満足していられない。凛太郎はそう心に決めて、疲労によって襲いかかってきた睡魔に逆らうことができずゆっくりと意識を落とした。

 

 その願いに呼応するかのように、()()が鼓動していたことに気付かぬまま───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 君が望みなら、心臓(ソレ)は強く応えてくれるのさ〜♪
 的な感じです。


 じゅじゅさんぽ!
 〜その1〜


 呪霊くん
『■■■■■ッッ!!』

 東堂 葵
「ほぅ……あれが目的の呪霊か。大したレベルではなさそうだが、中々数が多いな。準備はいいか戦友ッ!」

 津上 凛太郎
「なぁ、これ俺いらなくね? どう考えてもお前1人で十分じゃん。というか急に呼び出されたと思ったら、なんでお前の仕事手伝わされてるんだよ。1人で片付けろよこの筋肉ゴリラ」

 東堂 葵
「どうした戦友(あいぼう)。随分と弱気じゃないか。心配することはない、俺たちなら必ず祓えるさ」

 津上 凛太郎
「ちげーよタコ。なんでむさい男一緒にせっかくの休日を過ごさなきゃいけないのかって文句言ってんだよ!! しかもいま何時だと思ってんだ朝だけどまだ外真っ暗なんですけどっ!? 見てこれ!朝の5時ですっ!めっちゃ眠い!!」

 東堂 葵
「ふっ、だがお前は来てくれた。俺と共に戦うことを決意してくれてのだろう?」

 津上 凛太郎
「あ゛!? 俺は!京都の!!観光にッ!!! 来てたんだよッッ!!! それも2泊3日のな!! 本当なら真衣ちゃんとか霞ちゃんとか桃ちゃんたち誘って一緒に遊ぶ予定だったんだよ!それと歌姫先生とかともお出かけしたかったの! なのにテメェがここまで引き摺って来たんだろうがブチ殺すぞ!!」

 東堂 葵
「それならば、俺がお前の観光大使となろう! 任せろ完璧なプランを組み上げて見せるっ!……む!? 奴が動いた、行くぞ戦友(あいぼう)ッ!」フクビリビリッ!

 津上 凛太郎
「お前に観光大使なんざ務まるわけねえだろが! というかなんで脱いだッ!? ……あ゛あ゛、クソがやってやるよちきしょー!!(ヤケクソ)」フクビリビリッ!




 じゅじゅさんぽ!
 〜その2〜


 津上 凛太郎
「───おい。なにやってんだオマエ」

 禪院 直哉
「ん? あれ、君は確か東京のとこの……つがみりんたろー君、やったっけ? 間違ってたらごめんな、僕ってばそこら辺の木偶にあんま興味ないねん……それで、見ての僕ら通り取り込み中なんやけど……なにかよ、ウ゛ッ!!?」

 津上 凛太郎
「偶々、こっちに遊びきたからさ挨拶しようかと思ってたんだけどまさかオマエみたいなクズと出会すなんてな。オマエさ、真衣ちゃんになにしてくれてんの? その子に一生癒えない傷でも残ったらどうするつもりなんだ」

 禪院 真衣
「あなた……なんで……ッ!?」

 津上 凛太郎
「オイ、さっさと立てよ。どういうつもりで自分よりも歳下のガキを、ましてや女の子を痛ぶってたわけなんだ? なぁ……教えてくれよ三下ッ!」

 






ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?

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  • 19:00くらいやな
  • 21:00くらいやでー!!
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