透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
気づけば2024年も終わりですね。
自分のペースでゆっくりやって行きたいと思います。
───パキッ、と心地よい音と共にボトルを開封する。
それから水の入ったペットボトルを呷るように傾け、自動販売機の内部でキンキンに冷却されていた飲料水をゴクゴクと無心で飲み干していく。
満タンにあった筈の500mlほどの飲料水があっという間に身体の中に消えていき、数秒ほどで自分の手元には空になったプラスチックのボトルだけが残されていた。
静かに息を吐いた。
そして深く息を吸って吐き出す、だいぶ思考はクリアになって来た。先程まであった、あの謎の
だが、あの時なにが起こったのか
まるでその一部分にだけ酷いモヤがかかってしまったような、記憶の一部分だけを切り取られたかのようにスッポリと穴が空いてしまっている。
思い出せるのは、自分がアリスちゃんたちにとんでもないことを口走ってしまっていた事くらいだ。あの瞬間、
……アリスちゃんたちには悪いことをした。
いきなり変な事を彼女たちの前で口走って、せっかく楽しげだったあの時の雰囲気をぶち壊してしまったのだから……素直に申し訳なく思う。それから先程の俺の変な様子や発言を気にしていなければいいのだが。
『うわっ、ちょ、お姉ちゃん回復! 回復ちょうだい! 脱出する前にこのままじゃ私死んじゃうってば!?……お姉ちゃん?』
『……ごめんミドリ、この回復アイテムも脱出装置も1人用なんだ。だから私が使わせてもらうね、グッバ〜イ!ミドリッ!』
『お姉ちゃんッ!?』
『あ、ごめんねモモイ……ここはもう満員だから……!』
『ば、バカな!? 嘘でしょユズッ!?』
『うわーん! 敵が多すぎてやられてしまいましたぁっ!!』
チラリ、と視線を横に流せば少し離れた位置で楽しそうにワイワイとはしゃぎながら大きな筐体の前で4人で協力プレイができるシューティングゲームを遊んでいるゲーム開発部の姿がある。
……どうやら、杞憂だったようだ。
楽しそうにゲームをプレイしている姿につい笑みが溢れてしまう。しかしはしゃぎ過ぎて店員に怒られなければいいが……なんて言ったそばから店の人間に声かけられる。せめて出禁を喰らわないように祈っといてやろう。
思わず苦笑してしまうが、そんな彼女たちから視線を外して隣に座る
「それで……リオちゃんは俺と話がしたいんだっけ」
「もう落ち着いたのかしら?」
「もち、大丈夫だよありがとね。んっ〜、あれくらいなんてことはないっしょ……多分」
俺の様子が落ち着くまで待っていてくれたリオちゃんに軽く礼を言って伸びをしながら姿勢を崩す。こんなことを言うのもアレだが……ゲームセンターにいるリオちゃんの姿が似合わないというか、こういった場で遊び尽くす彼女の姿が想像出来なくてちょっと笑ってしまう。
ゲームセンターで時間を浪費するくらいなら、と部屋で難しそうな本を読んでいる姿の方が容易に想像出来てしまうくらいだ。ではなぜそんな彼女がここにいるのかというと……どうやらゲーム開発部のみんなと色々あってこの場にいるらしい。
そして、俺がゲーム開発部に呼び出された
別にこんな回りくどい事せずとも普通に呼んでくれれば会いに行ったのだが……もしかして訳ありだったりするのか? なんて首を傾げていたが、どうにかもそんなとこみたいだ。
ちょっと安心、単純に俺のことが嫌いとかそういうのではなさそうで。
「んで、聞きたい事ってなにさ?」
「……あなたが、なぜあの子を助けようと思ったのか。その理由をもう一度あなたに聞きたかったの」
「へ?俺がアリスちゃんを……なんで?」
どうしてそんなことを、なんて首を傾げてしまう。
というかこの助ける助けない云々のやり取りってもう済ませたと思っていたんだが、彼女にとってはそうではないようだ。まぁ、確かになぁなぁで協力させていた感じはあったが……今更なにが聞きたいといううのだろうか?
「あの子と……アリスという少女の腹の底はなんとなく見えたつもりよ、それは貴方の目論見通りでしょう。貴方たちがアリスに肩入れする理由もよくわかるわ」
「そいつはよかった。妹分と仲良くしてくれてるみたいで嬉しいよ」
「それでも、いくら純粋なあの子でも
「ん〜、まあ確かにそうかもね……それで? それを踏まえた上で君が聞きたいことってなに」
「───単刀直入に言うと、あの子以上の爆弾である貴方という人間をいまだに測りかねているの」
「……え、俺を?」
「……先に謝罪しておくわ、不愉快な気持ちにさせたらごめんなさい。それでも聞かせてちょうだい、貴方はきっと
「………ああ、なるほどね」
「それを責めるつもりも、深掘りするつもりもない……いえ、そんな資格は私にはないもの」
「津上 リンタロウという人間が私利私欲の為に道を踏み外す人間ではないという事は何となくわかっているわ……それでも一線を越えたことがあるというなら、きっとそれは
「───」
「……沈黙は肯定として捉えるわよ」
まさかそんな話を……彼女から振られるだなんて思ってもいなかったので驚いてしまう。確かにリオちゃんにはそういった過去を仄めかすような事を口走ってしまったが、だとしても面と向かって聞いてくるとは思わず、驚いて言葉は出てこなかった。
それと同時に、なんとなくだが彼女が自分になにを問いただそうとしているのか理解できてしまった。明確な違いこそあるが、
……だからこそ、
だが俺が
そうするしかなかったとしても、結局アリスちゃんを危険視するリオちゃんの意見と一緒で、その瞬間の最善の為に1人の女の子の命を奪ったのは俺だ。
「あなたは私が何を思ってこれほどの事をしようとしているのか。それは理解していると、言ったわね……ならばなぜその在り方を捻じ曲げたのかしら? 」
「………」
「聞こえのいい言葉ではなく、私は貴方の───津上 リンタロウの言葉が聞きたいの」
「───はは、そこまで求められちゃ仕方ない……そうだな、理由は色々あるよ」
ジッとこちらを見つめる彼女の瞳から感じる“熱”に、苦笑気味に笑ってしまう。恐らくだがリオちゃんは
先の見えない暗闇で答えを探しているかのようなリオちゃんの姿にそう感じてしまった。まるで迷える子羊だと、つい笑ってしまった。
───ならば自分にできることは、彼女が自分と同じ轍を踏まないように道を示すことくらいだ。
「ところでリオちゃんって恋愛したことある?」
「急に何を言い出しているのかしら」
「まぁまぁ、恋愛ってのは出会いや別れやら紆余曲折あるからさ、人を強くしてくれる要素がてんこ盛りなのだよ」
「……私にそういった経験はないけれど、貴方が言わんとしていることがわからないわけではないわ。それがいまの話になんの関係があるのかわからないけれど」
「ふっ、因みにこう見えて俺にも本気で好きになった子がいたんだぜ……優しくて真っ直ぐですごい可愛い女の子だった。ちょっとズレたりおっちょこちょいなとこもあったけど、そこも含めて長所だって言えるくらい素敵な子だったよ」
「はぁ……そう、それでその女の子とはどうなったのかしら」
「───その子はもういないよ。死んだんだ、俺が殺した……ああ、これはみんなにオフレコでお願いね」
「───………ぇっ」
息を呑むように目を見開いて驚いている。
そんな彼女の様子が確認せずとも気配で伝わってきてしまう。
ガヤガヤとゲームセンター特有の騒音まみれの空間だというのに、自分の小さな呟きは掻き消されることなくやけに大きく響いたような感覚に陥ってしまう。
固まった彼女の様子を尻目に、ゆっくりと言の葉を紡いでいく。
「あ、別にその子を恨んでたとかじゃないよ。もちろん助けたかったさ、そこは勘違いしないでよ……今となっちゃただの言い訳にしかならないんだけどね」
「───」
「なんで、って言いたげな顔してるね。君と同じだよ、
「───……っ、貴方はその選択を後悔しているの?」
「……あの時からずっと、後悔ばかりの人生だよ。あの子はもう当たり前の幸せすら享受できないのに、なんでそれを奪った側にいるような自分はのうのうと今も生きてるんだろうってふと考えたりもする」
もしかしたら、違う選択肢があったかもしれない。
俺にもっと力があれば違う結末になったかもしれない、あの子を助け出せたかもしれない。だけど、あの頃の自分にはそんな力も術もなく……もうこれ以上彼女が苦しまないようにと命を奪うことしかできなかった。
……なんてそんなタラレバを、意味のない後悔ばかりがいつまでも自分の中で渦巻いている。
「俺さキヴォトスに来る前は、結構危ない場所で仕事をしてたんだよね。まぁ日常的に銃器やらでドンパチやってるここも大概だけど……んでさ、人命に関わる仕事なんかもやってたわけよ」
「───どれだけ強くたって、俺が救える命の数には限りがあるんだ……絶対助けるって見栄え張ったのにその約束を守れなくて、自分よりも年下の子に泣きながら責められた事だってあった……ああ、別に不幸自慢がしたいとかじゃないから笑って聞き流してくれていいよ」
「っ……笑わないわ」
「そっか、ありがとう」
あれは結構キツかった。
呪いの世界に踏み入ってすぐの頃だったか。
過去に悠仁たち1年生組が解決にあたった少年院での任務と似たような状況だった気がする。領域としては未完成な生得領域を具現化させた三次元的な迷宮に取り残された人たちを救出に行ったことがある。
その任務の結果を言ってしまえば、
原因となった呪霊を祓ったのはいいものの、力及ばず助けようとした人間は取り殺され救うことはできなかった。その被害者の親や子供からは、お母さんを返してくれ、どうして助けてくれなかったんだ、なんて非難されたこともあった。
「……助けられる命には限りがある、それは変えられない。“最強”にだって無理なんだ、なら俺1人にできる事なんてたかが知れてるよ……だから俺は自分の手が届く範囲の人間を
疑う余地のない善人、誰よりも幸せになることが許されるような
ただ運が悪かった……そんな一言で片付けられて忘れられる悲劇があったのだ。
ああだこうだと綺麗事を並べても、結局は俺が納得できる結末の為に……自分の為に津上 凛太郎という人間は偽りの善意を振り翳している。
「だから俺はアリスちゃんを助けたいと思ってるし、あの子やゲーム開発部の子たちがこの先も笑って過ごせるようになってほしいって本心で思ってるよ」
「……なら、自分が助けた人間がこのさき誰かを傷つけ取り返しのつかないことをしたらどうするの?」
「ずるいかもしれないけど、その時はその時だよ。何がダメだったとか、どうしてそうなったとか、ソイツとちゃんと考えて話し合って……答えを決めるよ。俺は今できることをするしかないからね」
これから先何が起こるのかなんて分かりやしない。わかっていたら自分が望んだ結末のために力を尽くすことができるだろうが、それが出来ないから今という瞬間を後悔しない為に必死駆け抜けてきた。
その場凌ぎだと言われようが、生憎とこういうやり方しかわからないのだ。
「ま、偉そうにあれこれ言ったけど……最終的に何をどう決めるかはリオちゃん自身だよ。俺が君にできるのはお膳立てくらいなもんだからさ」
「………」
「その選択は誰に言われたからとかでもなく、君自身が考えて答えを出さなきゃいけないものだ」
もし彼女の気が変わり、やはり俺やアリスちゃんを野放しにしてはおけないとまた行動を起こすようならその時はその時だ。もしそうなっても俺は彼女のその選択に文句を言うつもりはない、お互いに自分が正しいと思う行動をとってぶつかり合うしかない。
後悔なんてやる前から考えるものではないだろう、後悔というのは行動に移してその結果の後からやってくるものだ。
「悩みたまえ若人よ人生はこれからだ、ってやつだな」
「?……私とあなたにそこまでの年齢差はないでしょう」
「まあね。けど、潜った修羅場や場数は違うでしょお互いに」
そして数日後。
作戦が決行される日がやってきた。
「めしを食うでごわす」
「……は?」
「それとお前も妹にならないか?」
彼女は困惑した。
無名の司祭の「オーパーツ」を稼働させるトリガーAIであり、彼女も自らを“王女を助ける無名の司祭たちが残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ「鍵」である<Key>”。
王女の肉体を借り、自らの起動を確認し「ATRAHASIS」と呼ばれるプロトコルを実施して、「世界を滅ぼす」というプログラムされた目的の為に行動に移ろうとした彼女のその表情は困惑を隠せていなかった。
「めしを食うでごわす!!」
「………」
「あ、おにぎりの具材はしゃけと梅干しならどっちがいい?」
「……結構です」
「おけ。シンプルな塩握りってことね」
「そうじゃないです」
───なんだこの男。
何故か懐に抱えた炊飯器としゃもじを片手におにぎりを作り始めようとしている凛太郎の姿に、空いた口が塞がらないと言った様子で〈Key〉は惚けてしまっていた。
執筆久しぶり過ぎて、話の流れと構想を完全に忘れてたとか言えない…。
ぶっちゃけどの時間帯に更新されると読みやすい?
-
07:00くらい
-
19:00くらいやな
-
21:00くらいやでー!!