透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
正月カヨコちゃん来るってマ?
ごめんテラコ貯金してる石が消えそう…。
曇らせ好きなんだけど、ナチュラルに強い主人公のせいでどうすればいいかわからん。現状一番曇ってるのは親しい先輩であり友人を殺すハメになった悠二くらいなんだが。
「うーん。きゅうおく……9億かあ。どう考えてもシロコちゃん達だけで、払い切れる金額じゃないよな、っと。てか9億円の借金とか悪徳だとしても絶対後ろの方がすげー黒い感じでしょこれ。まじでキヴォトス恐ろしい所だな」
このキヴォトスに訪れて、かれこれ1週間くらいの日時が経過していた。シロコちゃんと一緒に
現在は損傷の酷い校舎の壁を修復中である。
助けてドラえもん本格的な修復作業なんてできないよー、なんて途方に暮れそうな時期もあったがよく考えれば全然そんな事はなかった。
五条先生と一緒にはっちゃけ過ぎて夜蛾学長にお叱りを喰らい、罰としてぶっ壊した高専の校舎の修理をした時の経験がここで生きてくるとは。こっちは鉄筋で向こうは木造だったけど、
あの時、五条先生とふざけて校舎を吹っ飛ばしておいて正解だったかもしれない。ありがとう五条先生、魔貫光殺砲の練習に付き合ってくれて。
ま、その後一人だけ逃げ出そうとしたのは許さんけどな。死にものぐるいで道連れにしたわ。
「うし、ここの壁はこんなもんかなぁ。そういえばアヤネちゃんがグラウンドの水飲み場の調子が悪いって言ってたし、そっちも見てみるか〜」
しかし何というか、平和だ。
最近ヘルメット団という謎のテロが多く発生するが、呪術師として活動していた頃と比べれば圧倒的に平和だ。
任務を言い渡され、現場に到着すれば既に無惨な状態となった死体を見つけて、そんで気持ち悪い呪霊を祓って、後輩とかスーツの人たちとかとも飯食って寝て、また呪霊を祓って、それで今度は呪詛師をぶちのめしに行く。
そんな生活だったが、今じゃ学校の用務員のような仕事をこなしながらかわいい女の子達に囲まれて暮らしている。
んー、最高ですね。
「はー……ここが俺の楽園ッ……。平和だなぁ、ドブカスくんをブン殴った時の殺伐とした空気が懐かしい」
なにが、三歩後ろを歩かない女は背中刺されて死んだらいい、じゃボケ。女の子は慈しみ敬い愛でるべきじゃろがい。ぺっ、お前が三歩下がって歩かんかい黒閃叩き込んで転がすぞ。
偶々、本当に偶々胸糞悪い現場を目撃した時、ペラペラと悪びれる事もなく喋りだす奴の言い分に我慢出来ずにプッツンしてブン殴ってしまった。
もうちょいキツめな感じのやつが来ると思っていたが、向こうの当主のジジイが何故かそこまで事を大きくしなかったらしい。よく知らんが腹から声出して面白そうに笑ってた。
ジジイはともかく、学長と先生には感謝してもしたりないね。
「こういう時に真依ちゃんの構築術式みたいのがあればパパッと簡単に作業が終わりそうなんだけどな。呪力消費が重いらしいけど、なんか便利そうだよなあれ……そうだ呪力消費といえば」
無意識のうちに呟いていた独り言に、ハッとする。
チラリと周りに人がいない事を確認してから持ち運んでいた工具箱を漁って中から釘を一本取り出す。それを容器と仮定してズッと練り上げた呪力を注ぎ込む。
すると次の瞬間、釘はひしゃげたかと思えば軽い音と共に破裂するように粉々になった。
「……やっぱ呪力の出力が上がってる?」
最近気がついた事なのだが、自身の呪力の出力が変化している気がするのだ。それだけではなく、呪力の総量も増えている感じがする。と言っても同級生の特級よろしくバカみたいな呪力量があるわけでもないし劇的な変化が起きている訳でもない。
何となくだが、素の状態なのに術式を使用してギアが上がってる状態に近くなっているような……そんな感じだ。
これがキヴォトスに訪れた事が原因なのか、それとも一度死というもの経験した事による変化なのか。わからん事だらけだが、暫くは大技は控えて呪力のコントロールに専念するか。
「……うむ、わからん。けどま呪力の総量が増えて困る事はなさそうだしいいか。コントロールがちと面倒だが」
「ちょっと、なに一人でブツブツ言ってるのよ。サボってないでちゃんと仕事してるんでしょうね」
「おっと、そのちょっとツンケンした態度とは裏腹に優しさが滲み出る声色はセリカちゃんじゃないか! グッモーニング今日もかわいいね!」
「は、はあ!? いきなり何言ってるのよこのヘンタイっ!」
「あはは、おつかれさまですリンタロウくん。 あ、よかったらこれどうぞ。この間はお掃除も手伝ってくれてありがとうございます」
「別に気にしないでもいいって。けど、ありがとうノノミちゃん。ちょうど小腹が空いてたのよねえ。あ、ノノミちゃんもおっはー!」
「ふふ、はい。おっはー☆」
ほえー、今日もかわいい。
受け取ったビニール袋の中から惣菜パンを取り出し、封を切って頬張る。うん、美味しい。空腹に嘆いていた胃袋が活力が満ちていく。
こちらは黒見セリカちゃん。
アビドス高等学校の1年生。ピコピコと動く猫耳、赤い瞳と長い黒髪をツインテールに結んだ髪型が特徴的だ。年齢は15歳との事で2つ年下、そしてアビドス対策委員会のメンバーである。うん、かわいい。スカートからチラッと見えるスパッツもキュート。
そしてこちらが十六夜ノノミちゃん。
アビドス高等学校の2年生。黄緑色の瞳に白茶色のロングヘアー、絵に描いたようなゆるふわとおっとりを兼ね備えたような女の子。彼女も対策委員会のメンバーだ。そして
うわ、デッッッ。
同級生でここまで発育がいい子は見たことない。
女の子というのはそれぞれその子にしかない魅力、特別な持ち味を秘めているので、身体的な特徴でのみ魅力を語るような事はしたくないが。というかそれだけで女性のタイプを語るのは三流がする事だ出直してきなさい。
だがしかし、
うーん、眼福。
「もしかして2人はこれからお出かけかな」
「はい。実は学校に置いてある消耗品なんかが少なくなってきたので、切らしちゃう前に買いに行こうって話してたんです」
「そりゃ大変だ。ここら辺はお店閉まってるからねえ、ちょっと買い物しにいくだけでも遠出しなきゃ行けないし。という訳でお兄さんもお供しようか?」
「な、なんであんたまでついてこようとしてるのよっ!? 私とノノミ先輩だけで充分だから! というか作業中でしょ……っ!」
「はは、冗談だよ冗談。作業もそうだけど、俺もこの後ちょっとだけ用事があるからね」
「は……えっ? そ、そうなの?」
「そうそう。あ、因みに行き先とかは内緒ね。俺は謎も着飾るミステリアスボーイだから。まあ帰りは遅くはならんでしょ……あれ、セリカちゃんもしかしてちょっと残念だなって思ったりしてくれた?」
「ッ〜〜〜! そ、そんなわけないじゃない! ってなんでついてくるの!?」
「あははっ、二人とも仲良しですね〜」
フンッ、と鼻を鳴らしてズカズカと歩いていってしまう。もちろんニヤニヤと笑いながら後を追う。
ちょっとからかい過ぎて怒ったかなとも思ったが、1週間という短い時間ながら彼女の性格は何となく理解できている。冗談は通じるし根が真面目で優しい子だという事はわかっているので心配ない。あれは可愛らしい照れ隠しなのだ。
いってらっしゃーい、とセリカちゃんとノノミちゃんを校門まで見送った後、ひとまず工具箱などを片付けてから校舎に戻る。
キヴォトスに来てからアビドスの空き教室を使わせてもらいそこを寝床にしている。このがっこうぐらしにも慣れてきたもので、いつもの対策委員会本部の教室までの道のりにも迷うことがなくなってきた。
「シロコちゃーん! というわけでちょっと出かけてくるね!」
「ん……珍しいね。リンタローが一人で外に出るの」
「……なんか、その言い方だと俺が引きこもりみたいでやだな」
「え……あ、ごめん」
ちゃ、ちゃんと外に出てます。
そんな引きこもりの友人と偶然外で居合わせたみたいな反応されちゃうと流石に傷つきます。さ、最近は夜になると郊外に出かけてるし。呪力の調子を確かめる為に砂漠の方でビーム撃ったりしてます。
まあ、シロコちゃんたちに呪力の事とかは説明してないのでこっそり隠れながらだけど。
「どこに行くの?」
「ふふーん、それは内緒。でもヒントを上げると郊外の方かな、お土産でも期待して待っててよ」
「……リンタローお金持ってるの?」
「あ、あー……ない、かも……ですね。ってああ! 財布を取り出そうとしないでシロコちゃん!!? ごめんねちょっと見栄張ろうとしただけだから! ただでさえ色々と良くしてもらってるのにお金まで貰ったら俺の心が死んじゃうからさっ!?」
「ん……おやつは300円まで」
「いや本当に大丈夫だから! マジでごめんね!? その300円はシロコちゃんが好きに使って……無言で小銭を握らせようとしないでシロコちゃん! くぅっ、細くて綺麗な指してるのに力強いッおのれキヴォトス人!?」
「っ……ありがとう。でもリンタローは頑張ってるから、素直に受け取るべき」
5分ほど格闘したが結局お金を握らされるハメになってしまった。無職はお金の暴力の前では無力だったよ。
やめて、衣食住をどうにかしてもらってるのにお金まで受け取ったら俺の男としてのポリシーが完全に殺されちゃう。つい最近シロコちゃんから寝袋までもらったのに、これ以上は心がキツイ。
ヒモにはなりたくねえ、ヒモにはなりたくないんだ。
とりあえず、これ以上は時間が遅くなりそうなのでそろそろ向かうとしよう。アヤネちゃんは別件で留守にしており、ホシノちゃんにも声をかけてから出ようと思ったのだが、お昼寝中だったようなのでプリチーな寝顔を拝み頬をツンツンしてから教室を出る。
以前校舎を探索中に見つけた黒いウィンドブレーカーをアビドスのジャージの上から羽織り、ジッパーを上までキッチリと上げてフードを被る。
「うし。それじゃあ一稼ぎするとしますか」
学校にあったPCを借りた際に見つけた面白い情報をコピーしてプリントアウトしておいた紙切れ数枚に視線を向ける。
「
ヴァルキューレ警察学校とやらが掲示していた情報。
お尋ね者とでも言えばいいのか、記事に張り出されている顔写真とその下には懸賞金の額が書き込まれている。目撃情報があった場所なども記されているので虱潰しで当たって行こう。
悪い奴を捕まえてお金をもらえる、呪術師として活動していた頃のように荒事で稼げるなら得意分だ。
「はー、でも正直女の子に手を上げるとかしたくないな。けどシロコちゃんたちの力にもなってあげたいからなー……はぁぁぁ、気が滅入る。大人しく捕まってくれるといいんだけど」
キヴォトスに来る以前に使っていた通帳の呪術師として稼いだ金があれば、アビドスが抱える借金の三分の一、いや半分くらいは余裕で返せるのだがないものねだりはしょうがない。
とりま、無駄足にならない事を祈ろう。
夢を見る。
何度も同じ、夢を見る。
ただひたすらに、真っ暗な闇の中を、無我夢中で走り続けるタチの悪い夢を見る。1歩、2歩と踏み出す度になぜ自分はこんな必死に脚を動かしているのかと疑問が浮かぶ。
不自然に記憶が飛び、つい休んでしまおうと脚が止まる。
乱れた息を整えたくて、大きく息を吸ってゆっくりと空気を吐き出す。そして背後で何かが動く気配につられて、振り向いてみれば。
ヒュッ、とか細い息が漏れた。
再び無我夢中で走り出した。絶対に脚を止めてはならない。どうして脚を止めてしまったのか、それはわからない。けれどなぜ自分が走っていたのかを思い出す。
ただ
誰かにそう言われた訳ではない、自分の本能がそれを理解していた。
『っぁ、ハァ……ハァ……ッ! どうしてこんな、なんでッ』
脚が重い。
足首まで深さのある泥のような黒い液体に脚を絡め取られながら、ただひたすら走り続ける。それでも背後から迫り来る大きな
振り返った先には、
自分の身長を優に超える大きさ、体から幾重にも突き出た節足動物のような嫌悪感を抱かせる獣の手足、そして獣姿のソレにツギハイだかのような不気味な人間の頭部。
理解が追いつかない。
小さな疑問は頭から吹き飛び、どうしようもない恐怖だけが残る。
逃走は長く続かない。
泥の中で何かに掴まれたように脚をもつれさせ転倒してしまう。
泥を這うように進むが、恐怖で体が思うように動かない。
やがて追いついて来た化け物が、真っ黒な空洞の瞳で見下ろしながら嗤うのだ。体から幾重にも突き出た手足が逃げようとする私を押さえつけて、化け物は大きく口を広げる。
『やだ、いやだっ。やめ……ぁ』
───そして私は目を覚ます。
見慣れた事務所の天井。
ソファで横になった所為か背中が痛む、どっと吹き出た汗が気持ち悪い。呼吸が乱れて、叫び声を上げなかっただけ自分を褒めてやりたい。気分が悪い、上体を起こして深く息を吐いた。
「……うなされてたみたいだけど、大丈夫、──ちゃん」
つい、ビクッと肩を震わせてしまった。
声の方へと視線を向ければ心配そうな表情でこちらを見つめる小さな少女の姿がある。ただ、その言葉に返事をするだけの気力もなく彼女の頭を優しく撫でる事しかできない。
「ふぅ……社長たちは、出払ってるんだっけ? ごめん、ちょっと外で空気吸ってくるね」
こちらを心配する少女の声を遠ざけるように事務所を出た。
この事務所を拠点とする便利屋のメンバー。
一人は見栄っ張りな性格でアウトローに憧れる社長と、そんな彼女を揶揄い楽しそうに笑う少女、いつもオドオドとしており社長を強く慕っている後輩の少女。
便利屋としてこなす依頼は上手くいかない事も多いが、それを苦だと思った事はない。
そんな大切な便利屋の仲間たち。
けれどもそんな彼女たちにも言えない秘密が私にもあった。絶対に明かせない大きな隠し事。
『ねェ、見えテるゥ? みミぃ、ミえてルよォネエエ?』
ああ、目を合わせちゃダメだ。
私がこいつに気づいていると絶対に悟らせてはいけない。悟らせて仕舞えば、どうなるかわかったものじゃない。
この化け物は私にしか見えていない。
・津上凛太郎
「んんー、呪術師はクソ! そしてここが俺の楽園ッ!」
キヴォトスに訪れて1週間ちょっと、割と異世界を満喫してます。もらった寝袋を使っているが、なんだかいい匂いがするのでドキドキしている、キモイ。
実はこっそり砂漠に飲まれて廃墟とかした街に訪れて色々と物色している。運動能力や呪力操作が鈍らないように鍛錬し、なにもない砂漠に向けて
・黒見セリカ
「うぅ……なんなのよあのヘンタイ」
対策委員会編で先生に対して大人は信用できないと意地を張っていたが、凛太郎は同じ学生で子供ということもあって態度はちょっと柔らかめ。借金返済の為に色々バイトをしている所、周辺を探索していた凛太郎に見つかる。それ以降何かと凛太郎が手伝いに来る為、一緒にバイトをするハメに。
・十六夜ノノミ
「うふふっ、何かお土産でも買っていきましょうか〜」
凛太郎と教室だけではなく、廊下など校舎の掃除を一緒にしている。
階層ごとに手分けをして掃除していた時、上の階の窓辺から下にいた凛太郎に掃除用具を持って来て欲しいと頼むとそのまま一回の跳躍で上の階まで跳んで来たのでキヴォドスの外から来た人はそういう事が普通に出来るんだと思い始めている。
砂狼シロコ
「……リンタロー、迷子になってないといいけど」
ん、メインヒロイン。最近は一緒にランニングに行ったりしている。ライディングで使う事を想定して寝袋を購入したが数回使っただけで押し入れに眠っていたので、寝具が欲しいと嘆いていた凛太郎にあげる事にした。ちょっと恥ずかしい。
キヴォトスに来る以前の凛太郎の話をこっそり聞いた事がある、楽しそうにそれでいて寂しそうに笑いながら先輩や後輩、友人たちの話をする彼の姿に胸が痛くなる。
今後の展開。※参考程度
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時計じかけの花のパヴァーヌ編
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エデン条約編