透き通る様な世界観にいる一般呪術師 作:半ライス大盛り
「波ァァァァァッ!!」ジュレイニドーン
「うっおおおぉぉ!! すんげー!モノホンだ! モノホンのかめはめ波だ! おい見たか釘崎!伏黒!……伏黒?」
「うっさいわね。いちいちデカい声出すなっつーの、ガキじゃないんだからあんなんで馬鹿みたいに騒ぐな……ん?」
「………な、なんだ」ソワソワ
「「(あれ、なんかめっちゃソワソワしてる?)」」
あの呪霊、いや呪霊もどきとでもいうべきか?
まあいいや、あの呪霊と戦闘から既に三、四日ほどの時間が経過している。その四日間のうちに色々とあった。戦闘の後、カヨコちゃんが所属している企業とでも言えばいいのか、『便利屋
まず社長のアルちゃん、それから室長のムツキちゃん、んで平社員のハルカちゃん。それとカヨコちゃんはなんと課長ポジションらしい。便利屋のみんなと直接会って話をした感想としては、なんというか“おもしれー集団”といった感じだ。
それと全員顔が良い、みんなかわいくて美少女の集団に囲まれた時は思わずムンクの『叫び』バリに声をあげそうになったが、なんとか堪えた。
まあ、鼻の下が伸びてるだとかでカヨコちゃんに頬をつねられたが。
軽く自己紹介を済ませた後、みんなでご飯を食べに行ったのだが、その、色々とすごかった。
適当なお店に入って何か食べようとしていたのだが、席につき注文する際、なぜか冷や汗を流しながらメニュー表を見つめては一人前の料理をどうにかしてみんなで山分けしようとしている社長の姿を見て思わず真顔になってしまった。
ついバッとカヨコちゃんの方に視線を向けてみれば、彼女は気まずそうな表情を浮かべ視線を逸らした後に色々と自分たちの活動と経営状況を赤裸々に語ってくれた。
その、苦労してるんだな。
疲れたような表情の彼女にそんな感想しか出てこなかった。
俺から食事に誘ったという事もあったし、最初からカヨコちゃんたちには財布を出させるつもりはなかったんだが、奢るから好きなの食べても良いよと伝えればアルちゃんからはまるで怪物でも見るかのような顔をされた。なんでじゃい。
『……はっ!? ほ、施しを受けるつもりはないわ!』
『あ、そういう感じ? そんなつもりはなかったんだけどな……まあいいや。あ、店員さんすんませーん! えっと、ここからここまでもらえます? はい、全部大盛りで!』
『ひ、ひぃー!?』
『適当に頼んだから、みんなも好きなの食べていいよ』
『わぁっ! タロちゃんてば太っ腹〜! んー、それじゃあ私もこれとこれ、頼んじゃおうかなぁ!』
『……じゃ、私もこれ頼もうかな。ハルカは何食べる?』
『あ、えっ?えっ……わ、私なんかが食べても……あ、それならこれを』
出された料理はちゃんと完食いたしました。
とても美味しゅうございました。泣きながら頬いっぱいにご飯を食べるハルカちゃんの姿にはビックリしたが、そこまで美味しそうに食べていただけるなら俺も食事に誘った甲斐があったいうものだ。
外も暗くなり始めてその後はそのまま解散、という流れになるはずだったのだが、せっかくなんだから親睦を深めようとムツキちゃんの提案で便利屋68+αで一仕事しに行く事になった。
アビドスの借金の事もあり、金はあるだけ困らないのでそれを承諾。
臨時で便利屋68の一員にさせられたが、少数精鋭の秘密結社みたいでカッコよかったので、俺もついテンション上がってアルちゃんたちについていった。俺のポジションは見習い、もしくはバイトらしい。
懸賞金やブラックマーケットなる場所で手頃な依頼を受けて、怪しい取引を妨害したり身柄を確保したりした。なんかちょっと危ない橋を渡った気がする。
そんでその後 便利屋の事務所にお邪魔したのだが、はしゃぎ過ぎたのか気がつけば事務所の床で寝落ちしてました。それもなんとみんなで横一列になって寝てました。因みに俺は一番端っこ、隣にはカヨコちゃんがいました。みんな寝顔が可愛かったです。
一瞬、“ナニ”かあったのかと自分を疑いそうになったがそういう訳ではなさそうなので安心した。女の子は大好きだが、だからと言って女遊びするクズにはなりたくないので。
あ、俺は純愛派です。
あと、呪霊を視認できるのはカヨコちゃんだけで、みんなにも隠していると言っていたので彼女にのみ呪霊への対処法的な奴を教えておいた。呪霊の等級や、視線に敏感である事やその他諸々を。
ひとまず、彼女の持っていた拳銃。
予備の弾丸に結構な量の呪いを込めていくつか渡しておいた。対呪霊用の簡易的な呪具として持続時間や、呪霊相手にどれほどの効果があるかわからないが、ないよりはいいだろう。
彼女にもどうしようもなくなったら使ってくれと伝えた。そうすれば遠く離れていようと、自分の呪力が爆ぜた感覚で状況と位置を把握できるので駆けつける事ができる。
それからコンビニで適当に買い物してみんなで朝ごはんを食べた後で解散した。
連絡先を交換しようと言ってくれたのだが、残念な事に俺のスマホは渋谷での戦いの所為かキヴォトスに来てからうんともすんとも言ってくれず完全にぶっ壊れてしまっている。
その為、便利屋のみんなと連絡先を交換する事ができなかった。とても悲しい。
とりあえずアビドスの固定電話の番号は教えておいた。ムツキちゃんやカヨコちゃんが残念がっていたが、スマホを直すか買い換えるまではどうしようもない。
───それからちょっと地獄を見る事になった。
お土産を買い、お金も稼いでルンルンな気分でアビドスに帰ってくるなり、なんだか綺麗な笑顔を浮かべたホシノちゃんに捕まったと思ったら対策委員会本部まで有無を言わせず連行されちょっとばかしお話をする事となった。
『……えーっと』
『よーし。それじゃあ、タローくんにはキリキリ喋ってもらおうかなー』
『ん、黙秘権はない』
『皆さーんお茶飲みます?』
『あ、それなら私も貰おうかな』
教室には既にメンバーが勢揃いの状態で集まっていた。
アヤネちゃんとノノミちゃんはお菓子とお茶を並べておやつタイムの準備をしており、セリカちゃんは呆れたような同情するような、そんな意味深な視線を頬杖をつきながら怖い顔をこちらに向けて来ている。
そして目の前にはムスッとしたような表情でジッとこちらを見つめるシロコちゃん、そんな表情も素敵でちょーかわいい。その隣にはぽわぽわとゆるい雰囲気を纏ったホシノちゃんがいるのだが、なんだかいつもと違う御様子である。
というかみんな怒っているようだった。
なぜそんなにもおかんむり状態なのかと思ったが、帰りは遅くならないと言っていたのに連絡一つ寄越さないで朝帰りしているのだから当然だ、と言われたらその通りですねと謝るしかない。
そのうえ、呪霊との戦闘や便利屋と共同でこなしたいくつかの仕事、ドンチャン騒ぎで暴れた所為で着ていた服は目に見えてボロボロになって煤けてたし。俺がこっそりと稼いできた資金、その金額を確認して何か危ない事をして来たんじゃないかとホシノちゃんにはそりゃもう怖い顔をされた。
『ふぅ……タローくん正座』
『え?』
『正座』
『あ、はい』
『タローくん。おじさんはね、ちょーっと怒ってるよ』
『うん。怒った顔も可愛いね……あ、すいません。真面目に聞くんで脇腹を抓るのは勘弁してください、痛い痛い普通に痛いっ』
なんだかちゃんと先輩モードのホシノちゃんは初めて見たかもしれない。ホシノちゃんは普段のふわふわとした雰囲気とは別で相手を“よく視ている”子だ、俺自身
純粋にこちらを心配して、説教までしてくれるんだ。心配をかけた身で不謹慎かもしれないが、そこまで想ってくれるほど仲良くなれていた事がなんだが嬉しかった。
『………』
『あの、シロコちゃん。据わった目のままずっと見つめられるのも、その、きついと言いますか』
『心配した』
『……ご、ごめんちゃい』
『……すごく、心配だったよ。連絡を取る方法もないから……リンタローに何かあったんじゃないかと、思った』
『あ゛あ゛ー! 罪悪感がッ! いや本当、すいませんでしたッ!!』
シロコちゃんの声がちょっと震えてる時点でダメだった。額を地面に擦り付けるというか叩きつけるレベルで土下座したね。もうね、ほんと無理。あんな捨てられた子犬みたいな
誰だ不謹慎だけど嬉しいとか言ってた奴、こんな顔されちゃ全然嬉しくねえってばよ。
今後こう言った事がないようにと、ちゃんと連絡するよう指切りで約束する事になった。今ならシロコちゃんとの間に無理難題な“縛り”だって設けられちゃう心持ち。
それからなんだが笑顔が怖いノノミちゃんや、見るからに私は怒ってますと言った様子のアヤネちゃん、光のない瞳で睨むように見てくるセリカちゃん、彼女たちの機嫌を直してもらうためにもすんごい頑張った。
それからというものの、まるで監視するかのようにジッとこちらを見つめてくる彼女たちの視線を背に浴びながら校舎を修復したり、掃除をしたりと任された仕事をこなしていた。外出禁止とかになんなくてよかったよマジで。
そんなこんなで時間が経過して、俺は郊外付近のコンビニまで買い物に来ていたのだが。
「……た゛、た゛す゛け゛て゛く゛た゛さ゛い゛っ」
「………はあ?」
───道端になんかいた。
▼
「んぐっ、はぐ……んんっ……ぷぁ! ふー、ご馳走様でしたっ! いや、助かったよ本当にありがとう!」
「おう、きちんと感謝して崇め奉れ。ったく遠慮なく食いやがって、てめえに食わせる為に買ったわけじゃねえってのに」
「……ご、ごめんね?」
人気のない通行路。
凛太郎はその道端に腰を下ろしながら、後で食べようと思っていた自分の弁当や飲料を食べ尽くした謎の多い男性の姿に呆れたように息を吐いた。
チラリと視線を向ける、天パなのか黒髪の癖っ毛に黒縁の眼鏡をかけた成人男性。身なりや顔立ちは整っているが天パと眼鏡の所為なのかなんだかパッとしない印象を受ける。
それから珍しいなと思った。
ここキヴォトスで初めて自分以外の男性にあったかもしれない。いや、存在しない事はないのだろうが、滅多に出会わないのだ。
出会うとしてもそのどれもがロボットだったり喋る上に二足歩行で歩く犬や猫、人間の男性という言葉がピッタリと当てはまる様な人間には出会ったのは初めてだった。
そしてこの男の頭部にはなぜかヘイローが存在していない。
キヴォトスの住民の、ヘイローといったその辺については詳しくはないので、深くは考えなかった。
どうやらここアビドスに訪れたのは初めてなようで、備えも土地勘もなく住民もおらず食べ物のあるお店もなく、それどころか遭難してしまい絶体絶命な状況に追い込まれていたようだ。
男性から話を聞いた凛太郎は無計画すぎる行動に思わず「バカだろオマエ」と口が滑ってしまった。
女の子ならともかく、見ず知らずの、それも野郎を善意で助けるつもりはなかった凛太郎だが、余りにも必死な形相で恥も外聞もなく泣きついて来た男の姿に呆れて助けてしまった。
「ハァ……知らない土地ならちゃんと準備してから来いっての。迷子になった挙句、空腹で死にかけてましたじゃ笑い話にもならねえよ」
「か、返す言葉もないです」
あははー、と引き攣った笑みを浮かべて視線を逸らす姿に本当に大丈夫こいつと心配になってしまう。自分が通り掛からなければ本当に死んでいたのでは? と凛太郎は頭を抱える。
重い息を吐き出して、腰を上げてズボンについた汚れを軽く叩く。
そんな凛太郎の行動に目をパチクリさせながら、謎の男は空になったプラスチックの容器を片付けるとそれに続くように腰上げた。
「あれ、もうどこか行っちゃうの?」
「そりゃそうだろ。いつまでもこんな場所で時間潰す訳にもいかねえっての、どっかのバカの所為でただでさえ遅れてるんだ」
「あ、それなら道案内とか頼んでもいい?」
「オマエ面の皮厚いな。ビックリだよ」
いやー、もう迷子は懲り懲りだしさ。なんてニコニコと楽しそうに笑いながら言っている大人の男の姿にマジかコイツと、つい眉を顰めて睨むように視線を向けるが本人は何処吹く風といった様子である。
「……仕方ねえ。また迷子にでもなって死なれたら後味が良くないからな。で、どこに行きたいんだよ」
「ありがとう。行き先なんだけど、学校に行きたいんだ」
「学校、って事はこの近くだと……まさかアビドスか?」
頷いて答える男に、マジかよ凛太郎はゲンナリした。帰り道もコイツと一緒なのかよと。
「んだよ、俺と方向一緒かよ。じゃあついて来い、ちょうど帰り道だ」
「え、そうなの? という事は君はアビドスの生徒ってこと?」
「いや別にそういう訳じゃないが、うーん説明がむずいなぁ。ま、あの子達の助けになれるうちは一応はアビドスの一員かな。ほら、ちゃっちゃと行くぞ」
「あ! できれば背負って欲しいなって、足が痛くて動きたくないです」
「は? 蹴り殺すぞ」
「ええーっ!!?」
「俺が背負うのは女の子だけだ、文句言ってねえで歩け」
ブーブー、と文句を言う男を無視して歩き出す。
それでもしっかりと後ろを付いてくる男の姿に何度目かわからないため息を吐く。一緒にいるだけでここまで精神的に疲れるのは五条先生以来かもしれないと何となくこの男の性格を理解し始めて来た。
なんで俺が見ず知らずの男と二人きりで長い帰り道を歩かなきゃならんのだと苛立ちが募る。
スマホが無事ならイヤホンで耳栓をして音楽でも聞けるのだが、それもできないので隣でペラペラと喋り掛けてくる男の言葉を完全にシャットダウンする事もできない。
そこでふと、そういえばアビドスの図書館で借りていた本を上着に入れたまま持ち歩いて事を思い出した。どうせなら、学校に着くまでの間、ながら見でもしながら時間を潰すかと上着から本を取り出した。
大きさでいえば、スマホよりも少し大きいサイズでソフトカバーのコミック本くらいの一冊の本。片手は買い物袋で塞がっているので、空いている片手で器用にペラペラとページを捲りながら読み掛けていた場所から目を通す。
「えーっと、なになに『ゼロから学ぶ手話の辞典』?」
「距離が近い。覗き込んで来んなや」
「すごいね! もしかしなくても手話の勉強してるの?」
「んー、まぁちょっとな。少し前に郊外の方で会った子が手話で話す子だったんだよ」
「うんうん。どんな子だったの」
「花壇の前でジッと花を見つめてる子でさ。俺も簡単な単語なら知ってるから、ちょっとだけ話したんだけどなんか不思議な感じで、次会えた時はもう少し会話ができるようになっとこうかなと……ってなんでアンタにこんな事話さなきゃならんのじゃ」
ナチュラルに、あまりにも距離感が近い男に思わず余計な事を語ってしまったが、これ以上律儀に返事を返してやる義理もないので無視を決め込んでページを捲る。
「……そういえばアンタ、アビドスになんの用があってここまで来たんだ?」
「……あ! そういえば自己紹介がまだだったね!」
やばい、すっかり忘れてたよと。
凛太郎の言葉に思い出したように手を叩いた男は懐から何かを取り出すと、綺麗な姿勢で凛太郎に向けて差し出した。
それは一枚の小さな紙切れだった。
なんだ急に、と胡乱な目を向けながら差し出されたそれを受け取る。その紙切れ、名刺には印刷で連邦生徒会・連邦捜査部『S.C.H.A.L.E』と書かれていた。
「どうも。連邦捜査部シャーレ担当顧問の先生です。よろしくね」
「……はぁ??」
「あ、あれ? なんか反応薄いね」
「いや、連邦なんちゃらとか言われても知らんし。というかシャーレって理化学の?」
「うん。それはペトリ皿の方だね」
・津上 凛太郎
「くそっ! オマエ体力無さすぎるだろ! 離せコラ! なんで俺が男を担がなきゃならんのじゃ!」
便利屋68と意気投合して仕事をした結果、事務所で寝落ちして朝帰りした男。その所為で帰りが遅い事を心配したアビドスのメンバーからはキツいお話を受けることになった。
稼いで来た額としては懸賞金の一味を一網打尽にして来たので理不尽な利子を二月分返せるぐらいの額、気づかない内に割と危ない橋を渡ってる。
最近は手話の練習中。
因みにお忍び中だという相手をデートに誘っている。
・先生
「嫌だっ! もう歩きたくないッ! 見てほら、足がピーンってしてるの! もはや棒だって! 痛い足攣ったぁッ!」
先生の容姿としては便利屋のスピンオフコミックの先生、というよりはペルソナ5のジョーカーに近い感じ。
※シャーレの先生の名前はちょっと消しました。
なんか違うな〜感が自分の中にあったので。
・小鳥遊ホシノ
「ふぁ〜、んん。もう、お説教はあんまりおじさんのキャラじゃないんだけどなー」
凛太郎の思っていた通り、怪しい凛太郎の事は信用こそするが信頼はしていな“かった”。それでも彼と接する内にアビドスの一員として認めている。
なので今回は連絡も寄越さない上に、多額の現金を持ち衣服をボロボロにさせて朝帰りして来た凛太郎にちょっとお叱りを下した。
そんな無茶をさせる為に助けたわけじゃない。
・砂狼 シロコ
「……うーん、発信機でも取り付けるべき?」
行ってきますと出かけた凛太郎を見送り、いつまで経っても帰ってこない凛太郎に何かあったのではないかと本気で心配していた。まさか家出……そんなわけ。
耳をシュンとさせて身を案じる彼女の姿に罪悪感から凛太郎は血反吐を吐きそうになったが堪えた。それはそうと最近凛太郎用の目出し帽を作り始めている、なんでだろうね。
10話ぐらいまでにちゃちゃっとアビドス編を終わらせてエデン条約編に行きたい。
あとちょっとアンケートとります。本編には影響しないと思いますが、作中の用語とか設定とかどれくらいわかりやすく描写すれば良いのかわからないので。アンケートは多分次の更新で消えます。
今後の展開。※参考程度
-
時計じかけの花のパヴァーヌ編
-
エデン条約編