プリミティブ・ンホアヘェ!   作:罪袋伝吉

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・あんまし、期待されてないかもですが、続きました。

・いろいろパロディ多めですが、知らなくても読むのに問題ありません。






ベッドインニンジャ。

 

 スージーを材木倉庫の寝床に帰らせ、コーンブレッドとスープの仕込みを終えて片付けを終えたあと、俺が高床式住居に帰ったのはだいたい夜の零時を回った頃だった。

 

 風が戸を閉め忘れた窓から入り、さわさわさわとそこから見えるシュロの木の葉が音を立てている。

 

 窓を閉めて燭台の蝋燭を消して寝床に入る。

 

……久々のおっぱいだったなぁ、と手をワキワキして感触を反芻するように動かす。

 

 やっちまったなぁ、と後悔というか罪悪感はあるが目の前におっぱいがあって揉まない男などいるだろうか。

 

 いや、いない。

 

 うむ、それに銃なんぞ向けてきた相手である。本来ならば御命御免していてもおかしくないのをおっぱいで勘弁してやったのだ。寛大な処置と言っても良いだろう。あとくんかくんかも許される行為の範疇だと確信している(きっぱり)。

 

 むぅ、しかしなんだな。家の中に女の残り香がするんだよなぁ。

 

 ルカや楠木達の匂いだな。うーむ、悪い匂いではないが、股間に悪い匂いではある。

 

 うーむ一発抜いとくかな、とか思ったがなんか疲れててやる気が起きない。そりゃそうか、1日で何十キロも早足で移動したからなぁ。それも往復で。

 

 実際、浜辺やらなんやら直線距離でも百キロ程はあるのだ。いかに俺がニンジャだからとはいえ、疲れるモンは疲れるのである。

 

「……明日は早い。寝るか」

 

 というか、こんな時間まで起きているのも何年振りだろうか。昔ならばまだ宵の口とばかりに部下達と夜の街で遊び歩いていた気がする。三年前は景気なんぞ関係なしにヒット商品を飛ばしまくって給料ボーナスガッポガッポだったからなぁ。

 

 んで、飲み歩いた後はいつもの風俗の馴染みの嬢の部屋に行き、世話を焼かれながらその身体を……。

 

……いかんな。

 

 こう女の匂いばかりでは昔を思い出してかなわん。

 

 サッちゃんにエリナちゃんにリッちゃんにアケミちゃん……。

 

 はぁ、みんないい子達だったなぁ。

 

 客として店に行ってそういうことして、話を聞いてやってそれで仲良くなって。みんな、寂しい子達だった。……そしてロクデナシな俺と気が合うくらいには不幸だったなぁ。

 

……不幸、か。

 

 苦しんだ奴にしか見えない世界もある。だが、苦しんだ奴の優しさは痛いくらいに優しくて甘くて苦いんだ。……自分を偽って生きて、目的のために人をそそのかして金のために地位のためにステータスのために生きてきた俺を溶かすくらいに。

 

 生まれたときからシノビとして育てられた。

 

 ジジィもトビ・カトウ、親父もトビ・カトウだ。ジジィは暗殺専門のシノビだったが、親父は鳶職、つまり建築関係の真っ当な仕事をしていた。

 

 俺は……まぁ、ガキの頃から親父の仕事を手伝ってたよ。だから建築は嫌いじゃ無かった。

 

……戦わないニンジャってのも、良いんじゃないか?ニンジャだからって暗闇で生きなくても良いんじゃないか?

 

 親父はそう言っていた。

 

 だが、親父は殺された。

 

 トビ・カトウの名を持つ親父に要人暗殺を強要してきた、母の兄の手によって、だ。

 

 母の兄、つまり伯父は風魔忍群の風魔小太郎の名を継ぐ者だった。奴らは、当時、某国の手先として雇われていた。要人とは日本の政治家、それもタカ派の重鎮だった。

 

 拒否した親父を、奴らは集団で殺したのだ。

 

……ああ、その後は。

 

 俺が生きており風魔が滅びたことがその後の顛末を語っている。

 

 俺は政府に雇われたシノビ達と共に風魔を討ち滅ぼした。だが、俺は何もかも失った。何もかもだ。

 

 俺は世界の闇に落ちた。復讐をするということはそう言うことだ。闇の住人を殺すと言うことはそういう事だ。

 

……表の世界に帰れたのは、根来衆の長のおかげだろう。

 

 根来衆は音楽系の芸能事務所を営んでおり、演歌歌手やアイドルを手掛けていた。根来のニンジャ衆は皆、シノビの技をダンスや歌謡、パフォーマンスに昇華させており、殺伐とした世界では無く華やかな舞台でその才能を発揮していた。

 

 だが、根来衆も風魔に襲撃され俺同様に風魔討伐にさんかしており、俺とも何度か共闘しており、最後の戦いにおいて俺が風魔小太郎の首を取れたのはまさしく根来の長のおかげだろう。

 

 すべてが終わり、風魔小太郎の首級を上げて立ち竦む俺に、根来の長は、

 

『君!君!そこの君!』

  

 なんぞと声をかけて、

 

『ティン!と来た。君、ウチのくノ一芸能事務所でアイドルのプロデューサーにならないか?』

 

 と強引に俺をアイドルのプロデューサーにしてしまった。つうか、根来の長は顔も何もかもわからないくらいに幻術でも掛けているのか真っ黒な輪郭しかわからない人物だったが、まぁ、いい人ではあった。

 

 そうして俺は根来衆の経営するアイドル事務所の新人プロデューサーにされてしまったが、そのおかげでなんとか表の世界に戻れたのだ。 

 

……まぁ、ライバルくノ一芸能事務所の社長が土蜘蛛衆でやはり真っ黒だったり、いろいろだったが。

  

 そして、俺はたった一年で、くノ一アイドルの三人組のユニットを売れっ子トップアイドルにしたのだ。

 

 ユニットは超大ブレイクした。が、しかし。

 

 ユニットの三人が三人共に俺に恋愛感情を持ち始め、それがトラブルの元となり、スキャンダルにまで発展してしまったのだ。

 

……つうか、三人のくノ一アイドル達にレイプされた。毎晩毎晩、女性経験の無い俺がくノ一の術を駆使して性的に襲ってくるアイドル達に抵抗など出来ず為す術も無かったのだ。

 

 つうか、他のプロデューサーに相談したが誰も助けてはくれなかった。社長もだ。

  

 このままではスキャンダルになる。そうして俺はプロデューサー業を辞めることにしたのだ。

 

『うーん、その辺は根来衆の鉄壁のファイヤーウォールで守られているから外部に漏れることは無いよ。というか妊娠さえさせなければこのままアイドル達の性欲処理をしてくれれば良いんじゃないかな。ウチは枕営業とかは禁止だけど、バレなきゃ恋愛は認めているから』

 

 根来衆の長は物分かりが良すぎた。

 

 だが、このままでは俺の命が危ない。なんせくノ一の性欲は常人のそれを遥かに越えており、それが三人。性も根も尽き果てかけた俺は事務所を退職した。

 

『君は才能あるヒットメイカーだ。いつかまた帰って来たまえ。我が256(ねごろ)プロはいつでも待っているぞ!』

 

 なんぞと根来衆の長に多額の退職金の入ったアタッシュケースを渡されて円満退職したが、アイドル達はなかなか俺を諦めず、あたかも抜け忍を探すかの如く逃げても逃げても追跡を止めなかったので、仕方なく俺は海外で一年ほど生活せざるを得なかった。

 

……まぁ退職金のおかげで生活資金には困ることは無く、悠々自適に暮らせたので良かったけどな。

 

 ベガスで豪遊し、忍術を使ってカジノで大儲けしたり、バニーガール侍らして夜のプレジャー満喫したり、ベガスの地主の超金持ちのオッサンと友達んなってゴルフしたり、場末の売れない歌手の女の子にアドバイスして売れっ子にしたり、いじめられっこの少年に空手を教えて大会に優勝させたり、まぁ、楽しかったのは楽しかった。

 

 とはいえ、俺は親父に真っ当に生きると誓ったのだ。裏ではなく表の世界でだ。

 

 ほとぼりが冷めただろうと、一年後、俺は素性を隠して普通の商社に入社して働き始めた。

 

 芸能事務所での仕事にはもう戻るつもりは無いが、芸能事務所で得たノウハウやアメリカでの経験はビジネスの上でも俺の武器となった。

 

 そう、俺のビジネスはやはり世の中に流行を作ってなんぼだと気づいたのだ。

 

 そこからは、もはや爆進するのみだった。

 

 ありとあらゆる物の価値を見極めて、それを流行の波に乗せるだけでとにかくヒットするようになった。

 

 まぁ、バカな味方のせいで足を引っ張られることは多々あったが、しかしそれでも俺のいる会社はどこも潤った。

 

 転職に次ぐ転職を繰り返したが……これもバカ共に嫌気が差しての事だ……行く先々でヒットを飛ばし、俺はどれだけの金を積んでも雇いたいと思われる男となっていた。つーかやはりめちゃ金が入ってきた。

 

 だが、それで満たされはしなかった。

 

 つうか、女、である。

 

 くノ一アイドル達にしてやられたのが悔しかったという事もあるが、シノビとして二度とくノ一のニンジツにしてやられるわけにもいかぬ。

 

 ゆえにそちらの修行を怠るわけには……と言いつつ、単に女好きなだけだったりする。いや、負けず嫌いだってのもあるのだが。

 

 とはいえそこらの女に手を出すと、バレたら仕事に悪い影響が出てしまう可能性がある。会社の女などは論外。取引先の女も同様だ。

 

 

 故にTHE風俗!である。

 

 無論、素性を探られたりすると面倒なので行く店も守秘義務が徹底した一流の超高級店を選び、一流の嬢を指名してとにかくプライベートは開かさぬようにし、また相手の素性も詮索しない事をとにかく徹底して……と、思ってたが、なんか女の子達はいつの間にか自分を俺にさらけ出すかのようになっていた。

 

 嬢達は何も語らない俺に何故か臆さず話しかけてくるようになり、いつしか自分の住んでいるマンションやアパートに俺を呼んでくれるようになった。

 

 不思議なものである。

 

 正直、話を聞いてやる筋合いは無かったが、聞かない理由も無いかったというだけなのだ。

 

 何より仕事の癖で人の話を相づち打って聞くようになっていたのが悪かった、いや良かったのか。

 

 ふむ、なるほど、それで?ふむ、そうだったのか、と言って話を遮らずに聞いていたら、なんか好かれていた。

 

 部屋のソファで酒を飲みながら、風呂に一緒に入りながら、ベッドで絡みながらそうしていたら、女達は自分が住んでいる部屋に俺をよく招いて来るようになったのだ。

 

……タダで高級な女と過ごすなんて事を拒否などするわけも無く、そのまんま付き合いが始まり……いや、女のヒモになったわけでは無い。それなりに飯を作ってやったり掃除してやったり、飯やらデートやら行ったりとかはやってた……ってヒモか?これ。

 

 そんな間柄になったら女の持つトラブルやらなんやら巻き込まれたりしたわけで。そして巻き込まれたら解決せにゃならんわな。

 

……でら解決したら女はいなくなるのだ。

 

 女達が苦界に身を落とす原因が解消されれば、そりゃあそうなるものだ。

 

 女という生き物はサバサバしとるもんで苦界で会った男なんぞ解放されればどれだけ良い出会いであっても悪い過去なのだ。先に進むためにそんなもん容易に捨てるモンなのだ。

 

 女は終わった恋にとらわれない。リセットボタンを押して消去抹消が常であり、記憶に捕らわれるのは男のみなのである。

 

……みーんな居なくなったなぁ。アケミちゃんだけなんかFXで借金増やして残ってたけど。今頃、どうしてっかなぁ。もう三年だなぁ。

 

 目を閉じて、懐かしむようにモミモミ、モミモミと天井に向かって手を動かす。女達の乳をイメージしてモミモミ、モミモミ。

 

 あー、なんか眠くなってきた。だが手は天をモミモミしたまま。むなしい。空を揉むこの手のなんとむなしい事よ。

 

 むなしいが空を揉み続けるのをやめられない。ぱいおつみーもーみもー。

 

 ああ、意識が遠のく。パトラッシュ俺もう眠いんだ……つーか寝ろ俺。ネロだけに。いやネロじゃねーけど。

 

 あれ?なんかおっぱいの感触が手に……いや、これは夢だな。エア乳?バーチャル乳?俺の脳内補完?

 

「んぁ……おっぱい召喚、このカードを引くとリアルでおっぱいが……むにゃむにゃ。あ~柔らけぇ柔らけぇ、おお神よ……」

 

……揉んでる感触がキチンとあるぞ。つか柔らけー。

 

 のっしり、と俺の上に何かが乗ってきた。

 

「んぁ……、眠いんだって。そういうのは……今晩は無しだ……。明日は……えいぎょう……プレゼン資料やったっけか?ああ、眠てぇ……」

 

 意識が混濁する。プレゼン資料?あーアイドル達のスケジュールだっけか?いや、今度は絶対、ヤシ糖が流行る。中高年の血糖値にあれは良いんだ……。健康ブームに沿って……企画、そう企画書を……。

 

 記憶が眠気で混濁する。

 

 大き過ぎず小さくも無い若い乳が手のひらにおさまっている。柔らかさも張りも丁度良い。

  

……あ~、こんな乳の女、いたっけ。あ~誰だろわからん。

  

 さわさわモミモミすると女は悶えた。

 

「んっ……つか、オジサン上手っんっ、んんっ、あん」

 

 甘い声だな……。つーか俺をオジサン呼ぶな。

 

 そう思いつつも、寝ぼけた頭はどんどん眠りに落ちていく。すんすんと匂いを嗅いでもなんか最近嗅いだ記憶はあるのだが、誰なのかわからん。

 

「ああ?……つかお前、身体冷えてるじゃねぇか。風邪引くぞぉ……?あぁ……ったく、ほれ、オフトゥン掛けてぬくぬくすっぞ……つか寝れ……」

 

 俺は乳から手をのけた。

 

「あん、オッサンっ、止めちゃヤダ……って、うわわっ?!」

 

 バランスを崩して俺の身体に倒れ込む女の身体を抱き止めて、よいしょっと毛皮の掛け布団を掛ける。

 

「んぁ、いい匂いしてんなぁお前。つか……ほれ、お休み……」

 

 癖で、よーしよし、よーしよしと髪を撫でつつそのまんま俺はさらに深い眠りについた。

 

 ニンジャよしよしは睡眠技である。狼ですら抗えぬよしよしに女はパタリと静かになった。よーしよし、よーしよし。

 

 




・風魔忍群。いろんな物語で割と悪役率が高い気がする。まぁ、本編に出てくることは無い。

・根来衆。かつては火縄や火薬術に長けたシノビだったと言われる。なお、今のシノギはアイドル事務所であり256(ねごろ)プロというどっかで聞いたような感じなアイドル事務所を経営している。本編に出てくることは多分、ない。

・256プロのアイドルくノ一三人衆。なお某765プロのアイドル達では無いオリキャラなので、誰が誰とか云々は考えないように。本編に出てくることは無いと思われるが、出たらどうしよう。なお、現在の原始サンはもはやセックスモンスター級なのでこの三人に勝ち目は無し。

・土蜘蛛衆。土着の神道系なシノビの一族。今はスパイディプロというアイドル事務所を経営している。256プロとはライバルだがそのアイドルの育成の手腕をみとめており、お互いに切磋琢磨している。本編に出てくることは多分無い。

・ラスベガスの地主のオッサン。まぁ、わかる人にはわかる。

・場末の歌手。まぁ、これもわかる人にはわかる。

・いじめられっこの少年。ワックスがけで修行。

【次回】お題未定!

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