空条承太郎の親友   作:herz

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・男主達が社会人。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。親友組の距離が近いですが、腐向けではありません

・(おそらく)今回限りの登場となるオリキャラが2人います。前半男主視点、後半オリキャラ視点




 ――身の程知らずの若者VS怒りが頂点に達した最強のスタンド使い。




空条承太郎の親友は、パンドラの箱

 

 

 

 

 その日の仕事が終わり、自宅に帰ろうと歩いていた時。俺のスマホに電話が掛かって来た。

 

 

「――救援要請……了解しました。今から現場に向かいますので、救援対象と現在の状況について説明をお願いします」

 

 

 財団職員からその知らせを聞いた俺は、人気の無い場所に移動して眼鏡を外し、前髪を上げる。

 仕事着も軽く着崩した。……これで、印象がかなり変わるはずだ。

 

 図書館司書として働いている時の格好そのままで向かうと、万が一スタンド使いとの戦闘を一般人に目撃されてしまったら、後々面倒な事になるからな。

 それを防ぐため、または図書館司書からスタンド使いへと仕事モードを切り替えるスイッチ代わりとして、普段からこうするようにしている。

 

 財団職員によると、救援対象は俺や承太郎達よりも若い男2名――"後世代"と呼ばれるようになった者達だった。

 

 

 後世代とは。前世で生まれておらず、今世で初めて生まれて、スタンド使いになった人間達の事である。

 どうやら、前世を持つスタンド使い同士が今世で初めて結婚し、その子供として生まれた者は高確率でスタンド使いになっているらしい。当然、その子供に前世の記憶は無い。

 

 逆に。前世でもスタンド使い、あるいは波紋使いだった者達は、単純に"前世代"と呼ばれている。

 それに合わせて、今世でスタンド使いになった者達を"後世代"と呼ぶようになった訳だ。

 

 それを踏まえると、俺の立場はその中間……いや、どっちつかずだな。

 前世ではスタンド使いじゃなかったけど記憶だけはあるし、そんな状態で今世で初めてスタンド使いになってるし。

 

 

 おっと、閑話休題。

 

 で、そんな後世代のスタンド使い2名が、任務完了後に敵スタンド使い達に襲撃された。

 彼らが苦戦しているため、その援護をして欲しい……というのが、今回の救援要請の内容だ。

 

 急いで現場に向かうと、4人の人間がそれぞれスタンドを出して睨み合っていた。

 財団職員から聞いた情報の中には、救援対象の容姿も含まれている。俺は迷いなく、明るい茶髪で筋肉質の男と、黒髪で細身の男に声を掛けた。

 

 

「救援要請を出したのは、君達だな?援護する――イージスホワイト!」

 

 

 俺が現れた事で驚く2人の隙を突こうと、敵スタンド使い達が一斉に攻撃を仕掛けた。咄嗟にイージスを呼び出して2人をバリアで囲み、それを防ぐ。

 

 

「ひ……っ!?だ、誰だ!?」

 

「さっき援護すると言っただろ。財団からの要請で助けに来た」

 

 

 細身の男が俺と目を合わせて、小さく悲鳴を上げた。今の俺は仕事モードで無表情だから、目付きの悪さがより際立っているのだろう。無理もない。

 

 

「申し訳ないが、俺のスタンドは奴らに有効な攻撃手段を持っていない。しかし、その代わりに防御には自信がある。

 俺達が君達を護るから、その間に奴らを倒して欲しい。頼めるか?」

 

「――――」

 

「……おい?」

 

「っわ、分かっ、違う、分かり、ました!」

 

 

 もう1人。筋肉質な男の方に声を掛けると、彼は何故か俺と俺の背後を見てぼうっとしていたので、再度声を掛ける。

 すると我に返ったのか、返事をしてすぐに細身の男と共に攻勢に出た。

 

 どうやら、筋肉質な男の方が近距離パワー型、細身の男の方が遠隔操作型のスタンドならしい。

 2人の連携は……うん。決して悪くは無いが、俺の中ではどうしてもジョジョキャラ達が基準になってしまうから、彼らの連携はそれと比べるとまだまだだな。

 

 まぁ、危ない所は俺とイージスが補えばいい。……やがて、2人は敵スタンド使い達を倒し、拘束した。

 そこへちょうど、財団職員達が駆け付けた。あとは彼らに任せればいいだろう。

 

 

「お疲れ様です。敵はあの通り、彼らが捕まえましたよ」

 

「あぁ、良かった!園原さん、ご協力ありがとうございます」

 

「いえいえ。俺はただサポートしただけですから、お礼はあの若者2人に言ってあげてください」

 

 

 俺が財団職員と会話していた時、その若者達の片方、筋肉質な男がばっと振り向いて俺を凝視する。何だ?

 

 

「園原?……っ、やっぱり!あなたが園原志人さんだったんですね!?」

 

「んん?」

 

「――"最強の盾"……!!まさかこんなに凄い人だったとは!それに、スタンドが"最も美しい"と言われているのも納得ですね!本当に綺麗です!!」

 

「…………」

 

 

 仕事モードじゃなかったら、苦々しい表情になってたな。……心の中で、イージスが"早く中に戻りたい"と言っている。

 お望み通り、引っ込んでもらった。イージスも俺と同じく、最強の盾とか、最も美しいとか、そう言われるのは嫌いなんだ。

 

 ちなみに。イージスが最も美しいスタンドだと言われるようになったのは、つい最近だという。

 ここ数年で財団の東京支部に顔を出す機会が増えた事から、イージスの姿を目撃される事も増えて、そのせいでそんな噂が広まったようだ。

 

 

 その後。筋肉質な男はエドワード、細身の男はブレイクと名乗る。

 どちらも性格は悪くないようで、救援に関しては素直にお礼を言ってくれたのだが……ブレイクくんは、まだいい。だがしかし、エドワードくんがちょっと困った奴だった。

 

 

「前世代の人達とはあまり会った事が無かったので、"最強のスタンド使い"とか"最強の盾"とか、噂を聞いてもそんなにピンと来なかったんですけど……

 少なくとも、最強の盾についての噂は事実でしたね!バリアの強度や支援の的確さ、それに本体であるあなたの冷静さが頼もしかったです!先程は本当に助かりました!」

 

「…………それは、まぁ、どういたしまして。だが、俺もイージスも実際はそんな大層な肩書きで呼ばれる程の者では、」

 

「またまた、そんなに謙遜しなくていいのに!あれ程の実力があるなら、もっと自信を持っていいと思いますよ?」

 

 

 どうやら、変に気に入られてしまったらしい。エドワードくんがかなり興奮した様子で話し掛けて来る。

 

 

「いや、自信を持っていない訳では無いが、」

 

「あぁでも、攻撃が出来ないならやっぱりパートナーが重要になりますよね。肩を並べて戦うパートナーが!」

 

「は?」

 

「とはいえ。あなたのパートナーに相応しいスタンド使いなんて、滅多にいないと思いますが……よっぽど強い人じゃないと駄目でしょうね!そう、例えば、」

 

「え、エドワード!ちょっと落ち着けよ!」

 

「うるさいなぁ、ブレイク。今いいとこなんだから、黙ってろよ!」

 

「だから落ち着けって!」

 

 

 ……話が妙な方向に進んでるな、と思っていたらブレイクくんがエドワードくんを止めてくれた。ありがたい。

 

 実は、エドワードくんに対しては困った奴を通り越して、失礼ながらちょっと気持ち悪いなと思ってしまったのだ。

 なんというか、俺を見る彼の目が、な……やけに熱が籠っていて、ほんの少しだけ嫌な感じがした。

 

 しかし。根はいい子みたいだから、拒絶しづらくてどう対応するべきか迷っている。困ったな。

 できる事なら、この場から逃げたい。何か良いきっかけがあるといいんだが……

 

 

 すると、その時。俺のスマホに着信が!誰だか知らないが、ナイスタイミング!

 

 

「すまない。電話が掛かって来た。少し離れる」

 

「え、あっ、園原さん!?」

 

 

 エドワードくんが引き留めて来たが、聞こえなかった振りをしてその場から離れた。そしてスマホの画面を見る、と――

 

 

(――愛してるぜ、ダーリン!!)

 

 

 内心でそう叫んだが、もちろん友愛である。

 

 

 電話の相手は、愛すべき我が親友だった。助かったぞ、承太郎!

 思わず無表情を取っ払い、笑顔のまま電話に出る。……何故かかなり強い視線を感じているが、それを無視して会話に集中。

 

 

「よう、親友!」

 

「おう、親友。……どうした?やけに機嫌がいいじゃねえか」

 

「お前が電話掛けて来てくれたおかげで助かったんだよ。ありがとう」

 

「……何があった?」

 

「悪いが、今は話せない。それより、お前は?何で電話掛けて来たんだ?」

 

「……分かった。話は後で聞く。……で、ついさっき。アバッキオとブチャラティに出くわした」

 

「へぇ、あの人達と?」

 

「ああ。夕飯を食いに行くところだったらしい。それで俺も誘われたんだが……まだ夕飯食べてないなら、シドも来ないか?」

 

「行く。絶対に行く!!」

 

 

 よっしゃ!これでエドワードくんから離れる口実が出来た!

 

 承太郎に待ち合わせ場所を聞いてから電話を切り、財団職員に声を掛けて、救援要請の報酬は明日受け取りたいとお願いする。

 明日はちょうど仕事が休みで、いつでも取りに行けると伝えたら、時間を指定された。受け取りは午前中だ。

 

 エドワードくん達には、友人との約束があるからと言って早々に別れた。

 彼はそれでも俺を引き留めようとしていたが、ブレイクくんがそれを止めたので渋々といった様子で引き下がった。

 

 いったい彼は何なんだ?何故あそこまで俺に関わろうとする?その目的が分からなくて不気味だ。

 さっきまではどう対応すべきか迷っていたが、彼と関わるのは避けた方がいいかもな。例え性格は悪くなくても、俺自身との相性が悪い気がする。

 

 だが。相手は年下で、しかも俺と同じく財団に登録しているスタンド使いだ。

 大人気ない対応をしたら周囲から批判されるかもしれないし、彼とは今後、任務中に行動を共にする可能性もある。下手に関係を悪化させるのは良くない。

 

 

 悪意は向けない、しかし好意も向けない、無難な対応をしつつ出来る限り避ける……あれ?これ、難易度高くね??

 

 

(面倒くせぇ……)

 

 

 ……そんな事を考えながら待ち合わせ場所に向かったら、承太郎達から心配されてしまった。

 

 

「……どうした、志人。何があった?」

 

「志人君がそんなに顔をしかめるなんて……珍しいな。大丈夫か?」

 

「……さっき、電話を掛けて来てくれたおかげで助かった、と言っていたな?それが関係しているのか?」

 

「話は、とりあえず店に行った後で……」

 

「……分かった。なら、さっそく行こうか」

 

 

 今日行く店は、ブチャラティが以前同僚からおすすめされた店で……なんと、蕎麦屋だった。

 

 ブチャラティはいつの間にか日本食に嵌まっており、この蕎麦屋は特にお気に入りなのだとか。あと、寿司も好きなんだってよ。

 彼の意外な一面を知り、思わず笑ってしまった。……そのおかげで、少しだけ気分が晴れた。

 

 ブチャラティは、今日は非番で明日も休日。アバッキオは、今日が仕事の定休日で明日の仕事は午後のみ。承太郎は、今は仕事終わりで明日は午後の講義のみ。

 という事で。明日は3人共に余裕があって飲酒をしても問題無いし、何なら酒を飲めない俺が、後の送迎のために先に自宅から車を回して来ようかと聞いてみたが……

 

 酒を飲んだら俺の話を真剣に聞けないから、と。彼らは迷う事なく断った。なんて良い人達なんだ!

 やがて、蕎麦屋に到着した。念のためイージスに防音バリアを張ってもらい、まずは簡単に事情を話す。

 

 

「……"最強の盾"。"最も美しいスタンド"……か。確かに、財団関係者の間ではその噂がよく話題になっている……」

 

「そうなのか?アバッキオ」

 

「ああ。……ブチャラティは本業が忙しくて、財団と関わる機会が減ったから、知らないのも当然だろ。

 それに。最強の盾の方は何年も前から言われていたが、最も美しいスタンドの方が噂になり始めたのは、つい最近だしな」

 

「へえ……」

 

 

 アバッキオとブチャラティがそう話す中、承太郎は無言で俺の頭を撫でている。慰めてくれているのだ。

 

 

「肩書きだけを重視される度に、承太郎の気持ちが痛いほど理解できるぜ……

 最強の盾とか最も美しいスタンドとか、最強の矛とか最強のスタンド使いとか無敵のスタープラチナとか、そんな称号なんざいらねぇよな」

 

「全くだ……人間は肩書きが全てじゃねえ。そんな物は、それを付けられた人間を縛る足枷に過ぎない。

 肩書きを与えられると同時に、いらねえ責任まで勝手に押し付けられるし」

 

「そうそう!!どうせ何か問題が起こったら"最強の盾なんだろ?どうにかしろよ!"とか言われるんだぜ、きっと!」

 

「実際に"最強のスタンド使いなんだろ?どうにかしろよ!"と言われて問題解決を丸投げされた事がある」

 

「え、マジ?」

 

「マジだ。それで言われた通り俺が"どうにかしてやった"訳だが、その結果に対して、俺に丸投げした奴らは後から好き勝手に文句を言ってきやがった」

 

「だったら最初から丸投げすんなぁっ!!」

 

「本っっ当にな!!」

 

 

 と、俺と承太郎が愚痴を言い合っていたら、アバッキオには憐れみの目を向けられ、ブチャラティには苦笑いを向けられた。

 

 

「なるほど……志人君達は、そういう肩書きが嫌いなんだな。肩書きと共に押し付けられる責任が鬱陶しいから……うん、その気持ちは理解できる」

 

「そう考えると、まさかジョルノも……?」

 

「あ、そうか!確かに、そうかもしれない。もしもパッショーネのボスという肩書きのせいで、あいつが志人君達と似たような事で苦労していたとしたら……」

 

「……そうだな。今度、本人に聞いてみようぜ。前世ではどうだったのかを」

 

「ああ、そうしよう」

 

 

 優しい兄貴分達がいる……!!ジョルノ、良かったな!理解者が増えそうだぞ!

 

 

 するとそこへ、注文した蕎麦が届いた。一旦話を中断し、蕎麦を啜る。……あ、美味しい。俺もまた今度ここに来ようかな。

 

 

「……で?」

 

「んん?」

 

「エドワードとかいうガキの話は?」

 

「おっと、そうだった。……彼は、なぁ。性格は悪く無さそうだけど、俺とはなんとなく相性が悪そうな少年で――」

 

 

 ……エドワードくんとのやり取りについて詳しく話すと、承太郎とアバッキオは眉間に皺を寄せて、ブチャラティは訝しげに首をひねる。

 

 

「……よく分からねえガキだな。怪しい」

 

「その少年は何がしたいんだ……?」

 

「それが分からないから、最初は対応に困ったんですよ。まぁその後はちゃんと考え直して、これからは出来る限り彼を避けようと決断した訳ですが」

 

「――――気に入らねえな……」

 

「っ、」

 

 

 その時、承太郎のドスの利いた声が聞こえた。思わず背筋を伸ばす。……アバッキオとブチャラティも、承太郎を見ながら固まっていた。

 

 

「……シド」

 

「は、はい」

 

「そのガキの特徴を、教えろ。念のため、一緒にいたブレイクとかいうガキの方も。……ジョースター家で、要警戒対象の情報を共有する」

 

「あーあ……ご愁傷様。あるいは、お悔やみ申し上げます、か?」

 

「自業自得だが、可哀想に。来世では幸せになれるといいな」

 

「…………あのー、アバッキオもブチャラティさんも同情していると見せ掛けて割と酷い事言ってません?」

 

「そりゃそうだ、本気で同情してねえからな」

 

「右に同じ。……志人君に手を出した方が悪い」

 

「本当に手を出された訳でも無いのに……」

 

 

 まさか、この程度でもジョースター家で情報を共有される事になるとは。彼らが俺に対して過保護なのは、もう何年も前から知っているが……

 それにしたって、今回はそこまで警戒する必要は無いのでは?……なんて俺が言っても、承太郎が一度そう決めてしまった以上、撤回させるのは難しいか。

 

 仕方なく、エドワードくんとブレイクくんの特徴を伝えた。

 

 

「……ところで、そのガキの話で思い出したんだが。最近、後世代の事で気になる噂を耳にした」

 

 

 その後。アバッキオがそんな事を言ったので、詳しく話してもらう。

 

 

 彼曰く――後世代が、前世代を嘗めている。

 

 前世代は、そのほとんどが社会人。よって、本業の方を優先して財団の方にはあまり顔を出さなくなった。

 その代わりに。後世代が積極的に財団からの依頼を受けてくれるため、それに関しては問題無い。……しかし、そこで別の問題が発生した。

 

 現在。後世代の間で、"前世代は大した実力を持っていないのでは?"なんて噂が広まっているというのだ。

 

 彼らは自分達の親から前世の話を聞いているはずだが、それに対し半信半疑になっている者が多いらしい。

 それは、前世代が本業を優先させている事で、親以外の前世代の者達と交流する機会が減ったせいだと思われる。

 

 さらに。何度も財団からの依頼を達成した事で自信がつき、自尊心が強くなって自惚れてしまう奴が増えたという。

 後世代のほとんどが、前世代の事をよく知らずに育ってしまった。……上には上がいるという事を知らない者が、多過ぎるのだ。

 

 

「……そういう訳だから、今後東京支部に行く時は気をつけろよ?前世代っていうだけで、後世代のガキ共に変に絡まれるかもしれないからな」

 

 

 そんなアバッキオの忠告を聞いた俺達は、素直に頷いた。……無知って恐ろしいよな。後世代が甘く見ている前世代は、どいつもこいつも曲者で、強者ばかりだというのに。

 

 

 

 

 

 

 さて、その翌日。救援要請の報酬を受け取るために、財団の東京支部にやって来たのだが――

 

 

「――志人さん!」

 

「あ"?」

 

 

 なんでいるんだよ、てめぇ。つーか、気安く下の名前で呼ぶな。

 

 

 ……報酬を受け取って帰ろうとした時、向こうからエドワードくんが駆け寄って来た。その後ろには、慌てた様子で追い掛けて来るブレイクくんの姿も見える。

 

 

「良かった。今日この時間に東京支部に来るって聞いたので、待ってたんです!」

 

 

 それを誰から聞いた?……いや、財団職員が無闇に個人情報を漏らす訳が無いし、昨日の会話を盗み聞きされていたのかもしれないな。

 

 

「エドワード!?何やってんだ!今日は訓練場を使うだけだって言ってたのに!」

 

「だって、そう言わないとお前に邪魔されちまうだろ?」

 

「…………はぁー……」

 

 

 と、駆け寄って来たブレイクくんが深く溜め息をつく。……エドワードくんよりは常識があるらしい。しかし彼を止める事が出来ず、振り回されているようだ。

 

 

「それよりも志人さん!昨日の話の続きです!」

 

「っ!?」

 

 

 エドワードくんが俺の両手を握った。何故か背筋がぞわぞわするので振り払おうとしたが、力が強過ぎて逃げられない!

 

 イージスが勝手に出ようとしたのを止めた。彼の力では、この手を外す事はできないし……

 出来れば、俺の心そのものであるスタンドの姿を、こんな野郎の前に晒したくない。思い返せば昨日、俺だけでなくイージスも変な目で見られてたしな。

 

 

「昨日、あなたのパートナーはよっぽど強い人じゃないと駄目だって話をしましたよね?」

 

「…………その話を聞いてやれば、この手を離してくれるのか?」

 

「もちろんです!この話が終われば離します!」

 

 

 つまり、話が終わるまでは逃がさないって事か。……仕方ない、聞いてやろう。内心不快に思っている事を悟られないように、無表情を保ちながら。

 

 

「で?話とは何だ?」

 

「――俺をあなたのパートナーにしてください!」

 

「…………はぁ?」

 

 

 何言ってんだ?このガキ。

 

 

「俺、結構強いですよ?近距離パワー型のスタンドだし、志人さんのスタンドとも相性が良いと思うんです!昨日の戦闘でも俺達の連携はばっちりだったし!」

 

 

 いや、俺とイージスはあの時ちょっとしたサポートをしてただけで、実際に連携取ってたのはてめぇとブレイクくんだろ。記憶を捏造すんな。

 そしてそのブレイクくんは、エドワードくんの後ろで額を押さえて項垂れている。そんな事してる暇があるならこいつを止めろよ!

 

 

「俺なら志人さんと……最強の盾で最も美しいスタンドを持つあなたと!肩を並べる事が出来ます!

 あなたに相応しいスタンド使いは、この俺です。俺をあなたのパートナーにしてください!お願いします!!」

 

「……君が俺に相応しいなんて、勝手に決めつけないで欲しいのだが」

 

「…………あなたに相応しいのは"最強のスタンド使い"にして、"最強の矛"である空条承太郎だけだと、そう言いたいんですか?確か、親友なんでしたっけ?」

 

「はっ?」

 

 

 急に話が飛んだ。何故そこで承太郎の名前が出て来る?首を傾げる俺の前で、エドワードくんの表情が変わった。

 さっきまでは笑顔だったのに、今は恐ろしいぐらいの、真顔。……背筋のぞわぞわ感が強くなった。何なんだ、この嫌な予感は。

 

 

「……やっぱり、俺があなたのパートナーになるには、障害を乗り越えないといけないんですね」

 

「何を言って、」

 

「空条承太郎……前世代の(・・・・)最強を倒せば、志人さんは俺を認めてくれますよね?」

 

「はぁ!?」

 

 

 このガキ!とんでもない事を言い始めたぞ!?なんで承太郎を倒せば俺が認めるって話になるんだよ!?

 

 

「……エドワードくん。そんな馬鹿な真似をしたところで俺は――っ!?」

 

 

 俺が説得を試みようとした時、俺の両手を握る力が強まり、思わず顔を歪める。なんて馬鹿力だ!

 心の中でイージスが外に出せと騒いでいるが、なんとか押し留めた。駄目だ。おそらく、お前が出たらもっと面倒な事になる。落ち着け。

 

 

「馬鹿な真似、ですか。そう言うって事は志人さんは俺が負けると思ってるんですね。悔しいなぁ。昨日の戦闘を見て俺の強さを充分知ってくれたはずなのに……」

 

「ぐっ、痛……っ!!」

 

「お、おいエドワード!ちょっと強く握り過ぎじゃないか……!?」

 

 

 さらに力が強くなったところで、ようやく異変に気づいたのかブレイクくんが彼を止めようとする。

 そのタイミングで、俺達の周囲の人間もこちらの様子がおかしい事に気づいたのだろう。徐々に騒がしくなってる気がする。

 

 そして、数人が駆け寄って来る足音も聞こえた――刹那。

 

 

「っ!?」

 

「……あれ?えっ!?」

 

 

 俺はいつの間にか、エドワードくんやブレイクくんと少し離れた場所に立っていた。

 後ろから誰かの太い腕が肩に回っていて、抱き寄せられている。それから、頭の上に軽く顎を乗せられる感覚。

 

 俺にこんな事をする上、時も止められる奴なんて……1人しかいない。それが分かっていても、何故ここにいるのかが分からず困惑しながら名前を呼ぶ。

 

 

「――承太郎……?」

 

「……ああ。俺だ」

 

 

 柔らかい声で返事が返って来て、労るように肩をポンポンと優しく撫でられる。

 ほっとした。どうやら俺は、自分が思っている以上に気を張っていたらしい。肩の力が抜けていく。その拍子にイージスが出て来た。

 

 

「志人の馬鹿!すぐに俺を出してくれたら君を護れたのに!!」

 

「そうは言っても、あの状態だとバリア張れなかっただろ?」

 

「そうだけど!そうだけどさぁ!!」

 

 

 イージスは泣きそうな顔で、俺の両手をそっと包む。……うわ、手の痕がくっきり残ってる。そんなに強く握られてたのか。

 すると、承太郎が俺の手首を掴んだ。彼は目を大きく見開き、俺の手を凝視して……怖い顔で歯軋りする。あ、これはやばい気を逸らさないと!

 

 

「とっ、ところで承太郎!?」

 

「あ?」

 

「お前なんでここにいるんだ?」

 

「……昨日の話を聞いた時から、何故か嫌な予感しかしなくてな。それでお前を心配して、わざわざ東京支部に来てみたら……案の定だったぜ」

 

 

 そう言って、ギロリとエドワードくん達を睨む承太郎。……気を逸らすつもりで何故ここにいるのかを聞いたのに、どうやら藪蛇だったらしい。

 そして信じられない事に、エドワードくんはそれに対して一瞬怯むも、睨み返して口を開いた。

 

 ……その度胸だけは認めてやってもいいかもしれない。ただし、度胸と書いて無謀と読むけど。

 

 

「あんたが、空条承太郎だな?最強のスタンド使いだっていう……」

 

「……目上を相手に、随分と偉そうな口を利くものだな」

 

「ふん!最強って言っても、たかが前世代の(・・・・)最強だろ?それなら目上だろうが何だろうが、敬おうとは思わねぇな」

 

 

 ひいっ、と。何処かで誰かの小さな悲鳴が上がった。……そうだよな、承太郎を相手に後世代のガキがこんな失礼な態度を取るなんて、悲鳴上げたくなっちゃうよな。分かる分かる。

 

 にしても、昨日アバッキオが言ってた通りだな。後世代は前世代を嘗めている。

 こうして対峙しているのに、承太郎の実力を肌で感じ取れないとは……鈍過ぎるな。経験不足である事と、平和な今世で育った事による弊害だろうか?

 

 

「だが、ちょうどいい。俺と勝負しろ!」

 

「……はあ?」

 

 

 馬鹿だ。馬鹿がいる。昨日の戦闘を見る限り、彼が承太郎に敵うわけが無いのに!

 

 

「俺が前世代の(・・・・)最強を倒せば、志人さんは俺を認めてくれるんだ!!」

 

「……シド?」

 

「いやいやいや!?そんな事一言も言ってねぇよ!?」

 

「ああ……そうだよな」

 

 

 承太郎から問い掛けるような視線を向けられて、慌てて首を横に振った。それは彼も分かっていたらしく、平然と頷く。

 

 

 この時、承太郎は冷静だった。だからエドワードくんを本気で相手にする事は無いだろうし、適当にあしらってくれるだろうと……そう、思っていたんだ。

 

 

「あんたを倒せば!最強の盾は――志人さんは!俺の物だぁっ!!」

 

 

 彼の口から、そんな言葉が飛び出すまでは。

 

 

「――俺の(・・)親友が、誰の物、だって?」

 

「じょ、承、太郎……?」

 

 

 怖い。怖い、どうしよう。一見静かだが、俺には分かる。承太郎が、過去に無い程ぶちギレているのだと……!!

 血の気が引いて思わず体を震わせると、承太郎がコートを脱いで俺の肩に掛け、頭を撫でてくる。

 

 違うんだよ!確かにここ空調効いてて涼しいけど、それで寒いんじゃねぇんだよ!お前の怒りを感じて恐怖で震えてるんだよ!!

 

 そして、感覚が鈍っているエドワードくん達でも、さすがに自分達に向けられる殺気は感じ取れたのだろう。彼らの顔色も悪くなっている。

 ちなみに。周囲は承太郎を刺激しないためか、物音1つ立てない。とても静かな空間になった。

 

 

「……勝負しろ、と言っていたな――いいだろう。受けて立つ」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 エドワードは、基本的に明るくて良い奴だけど……"思い込んだら一直線"という、困った性質も持っていた。

 

 俺はエドワードの幼馴染みとして、そういう困った一面を何度も見て来た。……だから、分かっていたんだ。彼は、熱しやすく冷めやすい性格でもあるのだと。

 一度何か思い込んで熱くなっても、いずれは冷めて冷静になる……それを繰り返していたから、今回だってすぐに落ち着くはず。

 

 いったいどういう訳か、最強の盾……園原さんに夢中になっている幼馴染み。

 それに絡まれる園原さんは気の毒だけど、きっとエドワードはそのうち正気になって彼から離れるだろう、と。そう、思っていたのに。

 

 

 今回だけは、エドワードの様子がおかしい気がする……空条さんからあれほど威圧されたのに、園原さんの事をまだ諦めないなんて!

 

 

あの(・・)最強のスタンド使いに挑むとは……愚かな」

 

「"ジョースター家のお気に入り"に手を出しちまったし、承太郎さんにも目を付けられてるし、あらゆる意味で詰んでるなぁ」

 

「唯一のストッパーである、そのお気に入り……園原さんも、承太郎さんを止めるつもりは無いようだね……あーあ、可哀想に」

 

 

 訓練場の上にある、見学のために用意されたスペース……そこに、多くの人が集まっていた。後世代の人間も、前世代の人間もいる。

 その中で、前世代の人達のそんな声が聞こえて来た。……園原さんが"ジョースター家のお気に入り"だという話も聞いた事はあったけど、彼に手を出すのはそんなにまずい事なのか?

 

 訓練場で戦うエドワードと空条さんを見る。今のところエドワードが攻勢に出ていて、空条さんが防戦一方って感じに見えるし、大丈夫だと思うけど……

 

 

(念のため。万が一の時は空条さんを止めて欲しいと、園原さんにお願いしておくか)

 

 

 そう考え、隣に立っている園原さんに目を向けて……息を呑んだ。

 空条さんの白いコートを羽織っており、さらに真っ白なスタンドが寄り添っている事から、触れてはいけない、神聖な存在のように見える彼……

 

 そんな彼に声を掛ける事を躊躇した、その時。

 

 

「よお、志人。面白そうな事になってんじゃねーか」

 

「っ、アバッキオ!?」

 

「やあ、志人君。大体の事情は、財団職員から聞いたぞ。災難だったな」

 

「ブチャラティさんまで!どうしたんだ?2人揃って……」

 

「……もしかして、志人の事を心配して来てくれたの?」

 

「ああ、そうだ。……よく分かったな?イージス」

 

「承太郎も同じ理由でここに来たからね」

 

「なるほど。……で、そのコートは承太郎のだよな?なんで羽織ってんだ?」

 

「さぁ?承太郎に"そのまま着てろ"って言われたから、そうしてるだけ」

 

「…………独占欲……」

 

「えっ?」

 

「いや、何でもねえ」

 

 

 髪の長い男と、おかっぱ頭の男が園原さんの下へやって来た。……どうやら、園原さんとは親しい間柄のようだ。

 彼らに対し、園原さんは俺達には決して向けなかった笑顔を見せている。……俺達と話してた時は、常に無表情だったのに。

 

 

「……それで、そっちのガキは?」

 

「昨日話しただろ?エドワードくんと一緒にいた、ブレイクくん」

 

「あー、そいつがそうだという事は……」

 

「訓練場で承太郎と戦っているのが、志人君に絡んでいたという少年だな」

 

「はい。そうです」

 

 

 会話の後。髪の長い男……アバッキオが俺と園原さんの間に割って入り、園原さんの肩に腕を乗せる。

 アバッキオの反対側では、おかっぱ頭の男……ブチャラティが園原さんに寄り添っていた。

 

 

「…………なぁ。2人共、近いんだけど?」

 

「別にいいだろ、減るもんじゃねえし」

 

「これぐらいならジョースター家で慣れているだろう?」

 

「いや、まぁ、そうですけど……」

 

 

 戸惑っているが拒否はしない園原さんと、彼を見て微笑む2人。……そんな2人は一瞬、刃物のように鋭い視線を俺に向けた。ぞっとして、思わず後退り。

 たったそれだけで俺への興味を失ったのか、アバッキオは鼻で嗤い、ブチャラティは呆れたような目をして、それぞれ俺から視線を外す。

 

 全く相手にされていない。ムカつく。……って、しまった。これでは園原さんに話し掛ける事ができない!

 その事に焦った俺は、ふと。訓練場の方に目をやり……自分の目を疑った。

 

 

「っ、エドワード!?」

 

 

 そこには、疲労困憊といった様子のエドワードと、それとは逆に全く疲れていない空条さんがいた。……周囲の様子を見ると、後世代は俺と同じく動揺している。

 それも当然だ。エドワードは、後世代の中でトップクラスの実力を持っている。そんな彼が、あんな無様な姿を見せているのだから。

 

 

「馬鹿な!さっきまで空条さんは防戦一方だったはず!何故ああなったんだ……!?まさか、スタンド能力のせいで、」

 

「んな訳あるかよ……単純に、あのガキのスタミナが切れただけだ」

 

 

 と、訓練場にいるエドワードを見下すように、アバッキオがそう言った。

 

 

「承太郎が、防戦一方?……っは!その目は節穴かよ」

 

「……周囲の様子を見るに、後世代のほとんどがあの少年の方が優勢と見ていたようだな。戦況を正確に読めないとは、情けない」

 

「なっ、」

 

「あのな、ブレイクくん」

 

 

 アバッキオとブチャラティの言葉に怒ろうとした時、園原さんが口を開く。

 

 

「承太郎は、防戦一方だった訳じゃない――エドワードくんの攻撃を、必要最低限の力で全て受け流していたんだ。だからあいつは、全くダメージを負っていないし疲れてもいない」

 

「えっ……?」

 

「でも、エドワードくんの方は全力だった。スタミナを温存する事なく、考え無しに攻撃してしまったから……彼は今、あんな状況に陥っている」

 

 

 ……そう言われて、納得してしまった。確かにそうだ。

 エドワードは感情的になって、最初から全力で攻撃していた。……それに対し空条さんは、激怒しながらも冷静に対処していたんだな……

 

 再び訓練場を見ると、空条さんはエドワードに向かって真っ直ぐ、堂々と歩いて接近していく。

 さらに彼は、スタンドを使っていない。それなのにエドワードのスタンドによる攻撃を余裕で避けている!

 

 

「スタンドも使わずに、生身で攻撃を避けるなんて……!?」

 

「いいや。あれはスタンドもちゃんと使っているな」

 

「そうですね。スタープラチナはまだ外に出てますし……使ってるのは、目か?」

 

「ああ……スタープラチナと感覚を共有し、その動体視力の良さを利用して攻撃を避けている……ってところだろ」

 

 

 俺の驚きを、ブチャラティと園原さんとアバッキオが揃って否定する。……空条さんだけでなく、いとも容易く戦況を読む園原さん達も、ただ者ではない。

 ここに至ってようやく、理解した。――俺達後世代は、前世代の実力に遠く及ばないのだと。

 

 

 最後に。難なくエドワードに接近した空条さんは、スタンドではなく自らの拳で、彼の顔をぶん殴った!

 

 

「えっ、エドワード!?」

 

「わざわざ生身で殴るとは……志人に手を出された事に余程腹が立っていて、スタンドではなく自分の手で決着を付けたかったのか?」

 

「承太郎なら、それもあり得るな」

 

「……もう終わりだよな?俺、下に行って来る。イージス、行くぞ!」

 

「はーい」

 

「おい、志人!?」

 

「ちょっと待て、俺達も行く!」

 

 

 早歩きで訓練場へ向かう園原さんを、ブチャラティとアバッキオが追う。俺もその後ろについて行った。

 

 

 ……訓練場へ到着すると、エドワードは顔を押さえて踞っていた。慌てて彼の下へ駆け寄り、顔を覗き込む。

 

 

「エドワード、っ、うわ、」

 

 

 大変だ、鼻血が出てる!……空条さんの拳は、本当に顔のど真ん中に命中したのだろう。鼻の骨が折れてたりしないよな?大丈夫かな……?

 そんなエドワードの事を、背筋が凍る程の冷たい目で見る空条さん……怖い。怖過ぎる。

 

 

「承太郎。ほらよ」

 

「ん」

 

 

 しかし。そんな冷たい目は、園原さんが側に来た瞬間一気に温かくなった。まるで、季節が冬から春に変わったかのように。

 俺が唖然としていると、空条さんは園原さんから手渡されたコートを身に付けた。

 

 

「……やれやれだぜ。時間の無駄だったようだ」

 

「軽い運動代わりにはなったんじゃないか?」

 

「いや……運動にもならなかった。それどころか、これじゃあ遊びにもならねえ」

 

「うわー、辛辣……」

 

「……ゆ……志人、さん……!」

 

 

 エドワードが、園原さんに向かって片手を伸ばす。嘘だろ、お前。そんな状態でもまだ諦めてないのか!?

 やっぱり、今回のエドワードは何かがおかしい。何故そんなに彼に執着するんだ?

 

 ……すると、その手の前に透明な壁が現れた。イージスのバリアだ。だが、園原さんは困惑した様子でイージスを見上げている。

 

 

「イージス……?」

 

「だって、そいつには指一本触れて欲しく無いし」

 

 

 どうやら、自我を持つイージスが本体を無視して勝手にバリアを張ったようだ。

 

 

「……シド。お前、このガキの事をどう思う?」

 

「んん?」

 

「正直に、はっきりと言え。……お前は昨日、下手にこいつと関係を悪化させたら、今後任務で一緒になった時に何か支障が出たら困る、と。そこを心配していたな?」

 

「あぁ。そうだが?」

 

 

 なるほど。それを心配していたから、俺達が迷惑を掛けてもまともに応じてくれたのか……大人だ。

 

 

「……こいつがお前に……ジョースター家のお気に入りに手を出した場面は、多くの人間が目撃している。

 財団側も、これ以降はそんな奴とお前を任務で一緒にさせる事はしないだろう……向こうは任務を受ける人間同士の相性を、ちゃんと考えてくれるからな」

 

「あっ。……そうか。確かに、そうだな」

 

「……って事で。今なら正直に、言いたい事を言って良いと思うぜ。訓練場での会話は上には聞こえないし、ちょうどいいだろ?」

 

 

 空条さんの言葉に深く納得したのか、園原さんは何度も頷いている。

 

 

「さて、最初の質問に戻るぜ。……お前、このガキの事をどう思う?もっと言うなら、俺と比べた場合こいつの事をどう思う?」

 

「承太郎と比べた場合?」

 

「そう」

 

「……うーん、そうだな――俺の中の好感度メーターがマイナス方向に振り切ってる。測定不能」

 

「「へっ?」」

 

「「ぶふ……ッ!!」」

 

 

 真顔の園原さんによる、思わぬ発言を聞いた俺とエドワードは間抜けな声を上げ、ブチャラティとアバッキオは何故か噴き出した。

 

 

「ほう?……ちなみにその例えに俺を当て嵌めたら、どうなる?」

 

「――俺の中の好感度メーターがプラス方向に振り切ってる!測定不能!」

 

「っ、ははははははッ!!」

 

「ふは、っ、いい、笑顔、だな……ッ!!」

 

「くく……ッ!!な、っ、なるほど……お前の中で俺はプラス、このガキはマイナスと、対極の位置にいる訳か……!」

 

 

 そして先程の真顔とは打って変わり、満面の笑みでそう言った園原さんに対し、アバッキオは爆笑。ブチャラティと空条さんは、笑いを堪えながらも言葉を返した。

 

 なんという分かりやすい表現。つまり、それだけ空条さんの事が大好きで、エドワードの事は大嫌いだという事だな……

 それを理解したのだろう。エドワードはショックを受けた様子で愕然としていた。

 

 

 だがしかし。……本番は、ここからだった。

 

 

「よし、その調子でもっと言ってくれ。……お前、こいつの俺に対する態度を見て、どう思った?」

 

「俺の親友相手に何様のつもりだよ、って思った。ムカついた。あと、承太郎の実力を肌で感じ取れないなんて鈍過ぎる」

 

「こいつが俺に勝負を挑んだ時は?」

 

「目の前に馬鹿がいるなぁ、と思った。あの程度の実力で承太郎に敵うわけが無いのに」

 

「こいつに"俺の物だ"と言われた時は?」

 

「鳥肌立った。気色悪い」

 

「こいつが結局俺に負けた時は?」

 

「結果は分かりきってたし、特に何も?今回ばかりは、承太郎の心配をする必要が無いほど実力差が開いてたからな。エドワードくんは負けて当然だろ」

 

 

 ……空条さんの問い掛けに、園原さんが正直に答える度に、エドワードの血の気が引いていく。

 いくらなんでも、そんな言葉を聞かせるのは可哀想だと思った。だから彼らを止めようと、俺が口を開いた時――大きな手が、俺の頭を掴んだ。

 

 

「ひっ、」

 

「……そのまま、黙ってろ……いいな?」

 

「…………は、……はい……」

 

 

 空条さんのスタンド、スタープラチナの手が、俺の頭を掴んでいる……大人しく、口を閉じた。

 

 

「……最後の質問だ。――もしも、このガキが何らかの方法で俺を倒したら……お前は、どうする?こいつを認めるか?」

 

 

 その問いを聞いたエドワードの目に、光が戻った。何かを期待するように、熱の籠った目で園原さんを見つめている。

 エドワードの馬鹿野郎!期待した分だけ後が辛くなるだけだぞ!?……そう言いたかったけど、頭を掴まれている恐怖に負けて、言えなかった。

 

 

「……もしも、彼が。承太郎を倒したら……いや。倒さなくても、何らかの形で俺の親友を傷つけた、その時は……俺の手で、このガキをぶっ潰す」

 

「…………え……?」

 

 

 エドワードが固まった。その目から再び、希望の光が消えていく。嗚呼……だから言ったのに。否、それは恐怖のせいで口に出せなかったのだが。

 

 

「当然の事だが、承太郎を倒したとしても俺はこいつを認めねぇ。俺の親友や、俺が護りたい人達に手を出す奴は……誰であろうと、俺の敵だ」

 

「――シドがこいつの物になる事は、もうあり得ないか?」

 

「うん。あり得ない。そもそも俺は物じゃねぇし、例え物だったとしても、このガキの所有物になる事は絶対に無い。つーか、こいつは論外」

 

「――――」

 

 

 もしも。"心の音"なんてものが俺の耳に聞こえていたら、エドワードの心が折れる、ボキリという音が聞こえていただろう。

 彼の目から完全に光が消えた時、そこから涙が流れた。……すると、俺の頭を掴んでいた手が消える。

 

 

 はっと顔を上げると、そこには――冷笑を浮かべてエドワードを見下す、最強のスタンド使いの姿が……

 

 

「さて。俺の目的は、これで達成だ。……シド。報酬は受け取ったのか?」

 

「あ、あぁ。受け取ったぞ」

 

「なら、もう行こうぜ。……ん、ちょうど昼時だな。ブチャラティ、アバッキオ。お前らはどうする?このまま帰るなら、俺達と一緒に昼飯でもどうだ?」

 

「おぉ、それ良いな!この近くでおすすめのカフェがあるんだけど、2人共来るか?」

 

「……そりゃあ、行く、が……承太郎。お前、えげつねえな」

 

「あえて志人君の口から言わせて止めを刺すとは……酷い奴め」

 

「……何だ。あのガキに同情したのか?」

 

「いや?全然。ざまあみやがれ」

 

「むしろ、よくやってくれた」

 

「…………お前らだって人の事言えねえじゃねーか」

 

 

 ……そんな会話をしながら去って行く彼らを、呆然と見送った。……あの会話からして、空条さんはエドワードの心を折るために、園原さんの言葉を利用したようだ。

 それは確かに、効果的だったのだろう。現にエドワードはこの有り様だし。

 

 

 それを見て、俺は誓った。……もう二度と、園原さんには関わらない。

 

 

(最強の盾にして、最も美しいスタンドを持つ園原志人は――決して、触れてはならない存在……そう、パンドラの箱だ)

 

 

 後世代の皆に、そう伝えなくては。

 

 

 

 

 

 

 







おまけの小話↓


※承太郎だけが知っている、真相(承太郎視点。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。ほんの少し腐向け表現)


「あんたを倒せば!最強の盾は――志人さんは!俺の物だぁっ!!」


 エドワードとかいうクソガキの、そんなセリフを聞いた瞬間。
 このガキが、俺の親友に向けている感情の正体が、分かった。……直感したのだ。


(執着心、独占欲、所有欲……そして――)


 ――それらの感情がない交ぜになった末の、恋情。……ただし、おそらく本人はまだそれを自覚していない。


 俺は本来、恋愛事には疎い人間だ。その自覚はある。
 そういう機微には志人の方が鋭いし、いつもあいつから教えられて気づく事ばかりだ。

 そんな俺だが……いつの間にか、志人が直接関係している事であれば、例え恋愛事であっても直感が働くようになっていた。
 きっと、志人が自分に向けられる好意に鈍い分、俺がそれを補うために無意識に、部分的に感覚を鋭くしていったのだろう。


 ……その結果。このガキが無自覚に志人に恋愛感情を抱いていると気づく事が出来たのは、幸運だったな。


(おかげで、その恋情が育つ前に叩き潰す事ができる……)


 このガキが何故志人に惚れたのか、惚れたきっかけは何だったのか。そんな事はどうでもいい。
 重要なのは、その感情が俺の親友にとって害になるのか、ならないのか、だ。

 ……俺は、害悪にしかならないと判断した。

 このまま放って置いたらいずれ、このガキは志人への恋愛感情を自覚するだろう。
 その時、こいつがどんな行動を取るのかは想像しやすい……間違いなく、志人へのアピールが悪化するはずだ。

 彼の手にくっきりと残った、あのクソガキの手の痕を思い出し、怒りを募らせる。
 志人が痛がっていたにも関わらず、奴は手を離さなかった。自分勝手で、相手を思いやる気持ちが欠けている証拠だ。

 今回だけは、志人の人を見る目が間違っていたと思う。あんな事をする人間が、"性格は悪くなさそう"とか、あり得ねえだろ。


(……もう二度と、志人に近づく気になれないように……万が一恋愛感情に気づいた時、志人にその想いが届く事は無いのだと、思い知らせてやるために――

 ――あのクソガキの心を、徹底的にへし折る)


 手始めに、戦闘で格の違いを見せつけてやった。
 スタンドに頼るばかりではなく、本体の拳で殴って戦闘を終わらせたのもそのためだったが……

 一番の理由は、この後の本番のために、こいつの意識を保っておく必要があったからだ。

 訓練場までやって来た志人を誘導して、このガキに対する本音を言わせる。
 志人が内心でこいつを拒絶したがっているのは分かっていたし、あとはその感情をわざと煽ってやれば、彼は俺の思惑通りに本音をぶちまけた。

 志人が本音を口にする度に、ガキの顔から血の気が引いていく。……いい気味だ。


「――シドがこいつの物になる事は、もうあり得ないか?」

「うん。あり得ない。そもそも俺は物じゃねぇし、例え物だったとしても、このガキの所有物になる事は絶対に無い。つーか、こいつは論外」

「――――」


 そして、この会話が止めになった。クソガキの目から光が消えて、涙が流れるのを見た時。
 自分がそいつの事を心の底から嘲笑い、仄暗い悦びを感じているのを自覚した。


 ……志人のためと言いながら、このガキの心をへし折った本当の理由は、俺自身のためだったのかもな。
 まあ、理由なんざどうでもいいか。結果的に、これで俺の親友を護る事が出来たのだから。


 ――なお、後日。クソガキが志人に対して恋情を抱いていた事は隠して、それ以外の事の顛末をジョースター家で共有したところ。
 腹黒ジョナサンは満足そうに笑い、ディオとジョルノは爆笑。残りのジョセフ、仗助、徐倫からは何故かドン引きされた。解せない……

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