空条承太郎の親友   作:herz

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・前半、男主視点。後半、承太郎視点。

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊注意。本作の仗助の進路や、原作の設定について捏造しています。




 ――20歳を迎え、飲酒解禁となった誕生日パーティーで起こった、まさかの出来事。




大学生編
空条承太郎の、一人勝ち


 

 

「――承太郎さん、志人さん誕生日おめでとうございまァァす!!」

 

「ハッピィバァスデェェッ!!」

 

 

 大学生活1年目の、2月。……今日は29日で、俺の誕生日だ。

 

 ジョースター家の皆が、閏年である今年は絶対に俺の誕生日を祝う!と張り切った結果。ジョースター邸のリビングの飾り付けが、初めてのサプライズパーティーの時以上に豪華になった。

 まぁ、今回は皆の予定の都合上で祝う事ができなかった承太郎の誕生日会も兼ねているし、そうなるのも当然か。

 

 去年ジョースター邸から出て新生活を始めたジョナサンとディオや、普段家にいないジョージ2世と貞夫さんを含め、ジョースター家が久々に全員集合している。

 それぞれ忙しい中、この日のために予定を開けてくれたのだ。

 

 

 これまた豪華な食事とケーキを食べて、プレゼントも貰った。後はお開きの時間まで雑談するのが、ジョースター邸での誕生日会のお決まりだが……今日はそれだけでは無い。

 

 

「んじゃ、さっそく!酒、解禁!!ほら、志人。これとかおすすめだぜ!」

 

「待て、ジョセフ。それは初心者にはキツ過ぎる。シド、こっちの度数低めの缶チューハイにしておけ」

 

「おう、ありがとう」

 

「まァ最初はそれでも良いかもしれねェが、今日のうちにある程度キツいのも飲んで、自分の限界も知っといた方が良いだろ?」

 

 

 そう。20歳になったので、酒が飲めるようになった。……前世では20歳を迎える前に死んでしまったから、今回が転生して以降初の飲酒である。

 前々世ではもちろん酒を飲んだ経験があったが、園原志人になったこの体での飲酒は初めてだ。ジョセフの言う通り、今のうちに限界を知っておくのも良いかもしれない。

 

 俺が納得していると、承太郎が冷たい目でジョセフを見る。おや……?

 

 

「……もっともらしい事を言っているが、本当はシドが酔っ払ったらどうなるかを知りたいだけだろ?」

 

「あらァ?バレちゃった?」

 

 

 おい、ジジイ。……俺がため息をつくと、近くにいたジョナサンとディオもそれに続いた。

 

 

「全く油断も隙も無いなあ。志人、気づかないうちに度数が高いお酒にすり替えられないよう、気をつけてね?」

 

「私達も目を光らせておくが、自分でも気をつけなさい」

 

「はーい」

 

「ひどォい!俺の信用なさ過ぎィ!」

 

「今さら何言ってんだ?」

 

「自分の胸に手を当ててよく考えろ、馬鹿め」

 

「それでも分からないなら鏡を見てね」

 

「…………やだァ、辛辣ゥ。3人揃って真顔でそんな事言わないで……」

 

 

 基本メンタルが強いジョセフでも、承太郎、ディオ、ジョナサンの3人にマジレスされてちょっと傷ついたらしい。……さすがに可哀想だから、少しはフォローしておくか。

 

 

「ジョセフ先輩の企みはともかく、言ってる事は間違いでは無いですね。今日は控えめにしますけど、今度飲む時は自分の限界を確かめてみますよ。……先輩。忠告、ありがとうございます」

 

「お、おう。……お前は本当に良い子だなァ!こいつらとは違って!」

 

 

 わしゃわしゃと、頭を撫でられた。頭がぐわんぐわんするから止めてくれ。

 

 

「お前らも志人のこういうところを見習えよ!?」

 

「シド。こいつを調子に乗せるのは止めとけ。面倒くせえから」

 

「言葉1つでまた騒がしくなるとは、相変わらず単純な男だ」

 

「ジョセフこそ、志人の事を見習ったらどうかな?いつまでも悪戯小僧のままだと困るよ」

 

「だ、か、らァ!お前らが見習えと言ってんのに!つーかジョナサン!?あんたは大分遠慮が無くなって来たな!?」

 

 

 と、珍しくツッコミ役に回るジョセフ。……確かにジョセフの言う通り、ジョナサンは毒舌を吐く事が多くなったな。

 否笠の一件があった日以来、ジョースター家の人間の前でのみだが、腹黒い一面を見せる事が増えて来た気がする。

 

 軽い言い争いをする彼らから少し離れると、仗助、ジョルノ、徐倫が話している様子が目に入った。

 

 

「承太郎さんと志人さんはもう酒解禁か。……いいなァ」

 

「……あたし達もちょっとぐらい良いんじゃない?」

 

「医者志望の僕としては、おすすめ出来ませんね。前世があるとはいえ、今世の僕達の体はまだ子供ですから。アルコールを摂取して健康に異常が出る可能性も、無いとは言えません」

 

「そうそう、ジョルノが正解だ」

 

「あ、志人さん」

 

 

 3人の下に行き、ジョルノの頭を撫でる。さすがは医者の卵。

 

 

「というか、こんなにたくさん大人がいる場所で飲めると思うなよ?徐倫ちゃんは特に、承太郎が見張ってるはずだ」

 

「げっ……!あの人の説教、怖いのよね……うん、素直に止めておくわ」

 

「それが良いよ。……あと、仗助は進路が進路だからな。今のうちに、いろいろ自制する癖をつけとけ」

 

「分かってますよォ、志人さん。俺は未成年飲酒を取り締まる側になるんで!」

 

 

 未成年飲酒を取り締まる側――つまり、警察官。それが、今世の仗助が目指す職業だ。彼は春から警察学校に入校する事になる。

 前世でも、警官だった祖父……東方良平に憧れて同じ警官になっていたらしい。そして今世でも前世と同様に、警官になる事を決めた。

 

 となると気になるのが、トレードマークであるリーゼントの事だ。警官になるなら、この髪型はさすがに許されないだろう。

 以前、恐る恐る本人に聞いてみたところ。高卒後はこの髪型を止めると、あっさりとした返答が返って来た。

 

 

「前世でも今世でも、この髪型は高校までにしようって決めてたんスよ。……そりゃあ、恩人を尊敬する気持ちは転生した今でも全然変わってないし、できればこの髪型はそのままにしておきたいですけど。

 

 それを貫いたまま警官になったら、絶対に問題児扱いされる。そんなの、恩人であるあの人だって望まないだろうなと思って……

 志人さんの時とは違って、未だに再会してないからどんな人かは分からないけど、自分を尊敬する余り自分と同じ髪型を貫いた子供が周りから非難されてたら、誰だって良い気分になれないと思うんスよ」

 

「……そうだな。もしも俺がその人の立場だったら、確かにそう思う」

 

「でしょ?……だから、この髪型は止めます。でも、あの人を尊敬する事自体は絶対に止めない。

 

 ――前世の志人さんが言ってた通り、心と頭で勝負っス!髪型は変えても、尊敬する心さえ変えなければそれでいい。

 見た目じゃなくて、俺の心の中に"リーゼント"があればそれでいいんスよ!」

 

 

 そう言って晴れやかに笑った仗助ならきっと、国民を守る立派な警察官になってくれるだろう。……さて、閑話休題。

 

 

 仗助達と話している間に、ジョセフ達の方の騒ぎが収束したらしい。承太郎が座っているソファーに向かってその隣に座り、缶チューハイを飲む。

 前々世では比較的強い方だったが……今世の俺は、どれぐらい酒に強いんだろうか?

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 大人達は酒を飲みながら、未成年3人はジュースを飲みながら、久々に全員揃った家族同士で会話をする。

 普段はあまり会話に加わらない俺だが、久々の家族団欒に安心している事や、酒が入っていた事もあり、常より口数が多くなっていた。

 

 ……隣に座る親友が、いつの間にか静かになっていた事に気づくのが遅れてしまったのは、おそらくそのせいだ。

 

 

「あれ?……志人さん?」

 

 

 最初に気づいたのは仗助だった。近くの椅子に座っていた彼は、俯くシドの顔の前で手をヒラヒラと振る。……だが、全く反応しない。

 これはまずいかもしれないと、こいつが両手で持っていた缶を取り上げる。抵抗は特に無く、中身は既に空だった。

 

 念のためにシドが持っていたチューハイの度数を確認したが、他の酒よりも低い。……つか、これは俺が最初に渡したやつじゃねえか。

 

 

「シド?……おい、大丈夫か?」

 

 

 軽く肩を叩くと、シドが顔を上げて俺を見る。……頬は赤くなり、目がとろんとしていて、いつもの鋭い目付きは何処にも無い。俺を見ながらゆっくりとした動作で首を傾げ、口を開いた。

 

 

「――じょーたろ……?」

 

 

 あっ。駄目だ、こいつ。完全に酔っ払ってやがる。

 

 

「……一応確認しますが、ジョセフさん。志人さんに度数の高いお酒を飲ませて無いですよね?」

 

「俺は何もやってねェよ、ジョルノ!志人が持ってた酒は、最初に承太郎が渡した酒だ。俺が見ていた限り、志人はそれ以外の酒は口にしてないぜ」

 

「そうだね……僕も見てたけど、ジョセフは何もやって無いよ」

 

「私は志人の方を見ていたが、確かにそれ以外の酒は飲んでいなかったはず……」

 

「承太郎さん。その酒の度数は?」

 

「……ほら、自分で見ろ」

 

「…………度数3%……?えっ、結構低いっスね?あれェ……?」

 

 

 一緒に見ていた他の大人達にも聞いたが、誰もこいつに度数の高い酒を飲ませていないし、シドが他の酒を取りに行く様子も無かったという。

 

 

「つまり……志人さんは缶チューハイ1本でこんなに酔っ払っちゃう程、めちゃくちゃ酒に弱かったって事?意外だわ」

 

 

 ……今回は缶チューハイ1本だったが、まさかノンアルコールでも酔っ払ったりしないよな?

 

 徐倫の言葉で、シドに視線が集まる。……シドは何を考えているのか、無言で俺を見つめていた。

 

 

「じょーたろ」

 

「お、おう。……何だ?」

 

「……ん」

 

「あ?」

 

 

 俺に向かって両手を広げている。……ん?

 

 

「……ぎゅー」

 

「…………えっ」

 

「ぎゅー!」

 

「……抱き締めろ、と?」

 

「ん!」

 

 

 まさかと思ってそう聞くと、頷かれた。……戸惑いながらも、言われた通りにする。俺よりも細いが、意外と筋肉がついている体に両腕を回した。

 すると、利き手を引っ張られた。されるがままにしていると、その手を持ち上げて自分の頭の上に。

 

 

「なでて」

 

「は、」

 

「なでろー」

 

 

 ……さらに困惑しながら、言われた通りに頭を撫でる。それをやらせた本人は俺の胸にぐりぐりと頭を寄せて、満足気に笑った。

 これは、一体どういう事だ?……一瞬処理落ちしそうになった脳を無理やり働かせ、家族がいる方へ顔を向ける。

 

 

「――おい、てめーら。全員スマホを下ろせ」

 

 

 やけに静かだと思っていたら、全員漏れなくこちらにスマホを向けて写真、もしくは動画を撮っていた。見世物じゃねえぞ。

 

 

「なんだなんだ、子供返りかァ?志人ちゃん!」

 

「酔っ払うと甘えたがりになるんだ……え、やだ、可愛い……!」

 

「これは、レアですね……」

 

「レアだなァ。志人さんが誰かにベタベタ甘えるなんて、すげぇ珍しい……」

 

「だからスマホ下ろせって言ってるだろうが」

 

 

 シドから離れて立ち上がろうとするが、こいつは俺に体重を掛けてそれを阻止する。

 

 

「……おい、シド」

 

「やだ。なでろ」

 

「…………やれやれだぜ」

 

 

 仕方なく諦めてソファーに座り直し、頭を撫で続ける。……滅多に甘えない親友が甘やかして欲しいというなら、そうするしかない。

 

 

「承太郎だけずるいなァ。……志人ちゃん、俺ともハグしようぜ?」

 

 

 そう言って近づいて来たジョセフの方へ、シドが顔を向ける。俺から手を離して、そちらに両腕を広げた。

 

 

「じょせふしぇんぱい、ぎゅー」

 

「ぶふ……っ、先輩って言えてねェじゃん!ほら、ぎゅう!」

 

 

 ジョセフがシドを抱き締めて、その頭を撫でた。……ちょっと力が強過ぎないか?酔っ払ってる奴にそれはきついだろ。

 すると、シドが頭を振ってその手から逃れ、ついでにジョセフの腕の中からも逃げて立ち上がった。やはり嫌だったのだろう。

 

 

「じょなしゃん、ぎゅー」

 

「あはは!"じょなしゃん"って何?可愛いなあ」

 

 

 次に呼ばれたのはジョナサンだ。ジョセフと同じようにすると、シドが彼に擦り寄る。……ジョセフよりはお気に召したようだな。

 

 

「でおしゃん、ぎゅー」

 

「ぶふっ!?」

 

 

 "でおしゃん"……これは笑う。俺やジョルノは何とか笑いを耐えたが、他は大笑いだ。呼ばれたディオは何とも言えない顔をしていた。

 

 

「……志人。そのようなふざけた呼び方はするな――」

 

「でーおーしゃーん、ぎゅー!」

 

「――許す」

 

「許した!?」

 

「ぎゃははははははっ!!」

 

 

 その呼び方を止めさせようとしたが、シドが珍しくむくれた顔をしてハグを催促する様子に負けたらしい。あっさり許可していた。

 周囲がさらに笑う中、ディオはシドを抱き締めて頭を撫でた。……しばらくされるがままだったシドが首を傾げて、ジョナサンを呼ぶ。

 

 

「ん?どうしたの?」

 

「なでて」

 

「うん、いいよ」

 

 

 ディオに抱き締められたまま、ジョナサンに頭を撫でられる。……シドは嬉しそうに、ふにゃふにゃと笑った。

 

 

「これはどういう事だ……?」

 

「……多分、抱き締めるのはディオがちょうど良くて、撫で方はジョナサンがちょうど良かったんだろ」

 

「あっ、なるほど。そういう事か」

 

 

 俺が推測を口にすると、ディオとジョナサンが納得したように頷き、それから顔を見合わせる。

 

 

「……この子、このまま家に持ち帰りたいね」

 

「ああ。この子が家にいるだけで仕事の疲れが飛びそうだ」

 

「――ピピーッ!!そこのお二人さん!誘拐未遂で逮捕するっスよ!!」

 

「ディオ兄さんもジョナサンも、志人さんは物じゃないんですから。持ち帰りは止めてください」

 

「志人さん!こっちにおいで、危ないわよ!」

 

 

 誘拐未遂……おそらくあの2人は半分は冗談で、もう半分は本気で言っていたな。気持ちは分からなくも無いが犯罪はよせ。

 高校生組がそれを止めて、徐倫がシドを呼ぶ。……彼は素直にディオ達から離れるが、徐倫達の下には近づかず、そのまま両腕を広げる。

 

 

「じょるの、じょーすけ、じょりーんちゃん……おいで」

 

「えっ?」

 

「おーいーで!」

 

 

 俺やジョセフ、ジョナサンとディオの時と対応が違う。……どうやら、酔っ払って甘えたになっていても、シドにとって年下3人は甘やかす対象のままのようだ。

 言われた通り3人がシドの下に集まると、彼は3人まとめて抱き締めてから、その頭を順番に撫でる。

 

 

「ふふ、いいこいいこー」

 

「…………志人さん、帰っちゃ駄目」

 

「このままジョースター邸にしばらくいてくださいっス。せめて俺が警察学校の寮に行く前まで!」

 

「僕達のお兄ちゃんとしてここに残ってください」

 

「君達ね……僕達を誘拐犯扱いしたのに、それはどうかと思うよ?」

 

「駄々っ子か、貴様らは」

 

 

 その後。シドはお袋達からもハグを求められ、全員とそれを済ませると……何故か、俺の下へ戻って来た。またハグと頭を撫でる事を求められたので、言われた通りにする。

 

 

「……やっぱり、これ」

 

「ん?」

 

「じょーたろ、のが、いちばん……おちつく。――じょーたろが、おとーさんだったらよかったのに……」

 

「――――」

 

 

 その言葉に、息を呑む。

 

 

「……俺は、お前の父親になるよりも、親友がいい」

 

「ふふ……そっか……うん。おれも、やっぱり、しんゆうがいい、な……」

 

 

 安心したように笑ったシドは、目を閉じて眠りについた。……俺はため息をつき、家族の方へ顔を向ける。彼らはそれぞれ、悲しげな表情をしていた。

 

 

「……あァー、嫌でも理解できたな。志人があんなに甘えたになった理由が。――幼い頃に虐待を受けていた反動……きっと、甘えたくても甘えられなかったんだろうなァ。

 父親はあれだし、母親は自分と同じ目にあっていたし、途中から自分の身代わりになってくれたし。

 

 志人は賢くて物分かりが良い。いや、良過ぎる。それが、幼い頃からずっとそうだったとしたら……

 元々お人好しである志人の事だ。相手に迷惑を掛けるからと、そう考えて誰にも甘えなかったんじゃねェか?」

 

 

 ジョセフのそんな推測に、否定の声は上がらない。俺の考えも、ジョセフと同じだった。

 

 

(俺が父親だったら良かったのに、か。……前世で妻と娘を遠ざけた俺に対して、そんな事を言うとはな)

 

 

 志人にとって、相手があのクソ野郎でなければ、例えどんな父親であっても"良い父親"だと思えるのかもしれない。

 

 

「お酒の力に頼らないと甘えられないのかしら……?」

 

「……志人さんは普段、かなり理性的ですからね。その理性で押さえていたものが出てしまったのか、それとも甘えたいという気持ちを無意識に抱いていて、それが酔っ払った事で表に現れたのか」

 

「何にせよ、良かったね。例え無意識だとしても、志人には甘えたい気持ちがちゃんとある事が分かった。僕達に甘えるのを嫌がっている訳じゃない、という事もね」

 

「ククッ……ならば、しっかりと甘やかしてやらないとな。

 とはいえ、急に過剰になると逆に逃げられてしまうかもしれん。今まで通り、長期戦でじわじわと外堀を埋めるのが無難だろう」

 

 

 ディオの言葉に俺達が頷いていると、仗助が真顔でこう言った。

 

 

「それはそれとして、志人さんが外で酒を飲むのはまずいっスよね。ちゃんと相手を認識してるみたいですし、知らない人に甘える事は無さそうっスけど……

 もしも、この人が外で1人で飲んでこの状態になったら?もしくは俺達や、前世の仲間以外の人達と一緒に飲んでる途中でこうなったら?

 

 さっきのジョナサンとディオさんは、冗談半分だったと思いますけど――マジで志人さんを"お持ち帰り"しようとする奴が出て来るんじゃないスか?」

 

 

 はっと顔を上げて、仗助以外の家族全員で顔を見合わせた。確かに、それはまずい。

 

 志人の顔を見る。……幸せそうな笑顔で眠っている今のこいつは、非常に無防備だ。意識がある時も、あんなにふにゃふにゃしていたからな。

 見目の良い若い男が、外でこんな状態になっていたら……邪な考えを抱いて手を出す奴がいても、おかしくない。

 

 

「――志人さんを下衆共の手から守るわよ!明日目を覚まして、覚えていたら志人さん自身も気をつけてくれると思うけど、万が一酔っ払った時の記憶が無かったら自覚できない。危険だわ」

 

「そうですね。もしも記憶が無かったら、僕達から志人さんにしっかりと忠告しましょう。特に承太郎さんが強く言えば、志人さんなら分かってくれるはずです」

 

「おう。……耳にタコができるかってぐらい、言い聞かせてやらないとな」

 

 

 しかし、翌日。俺達と共にジョースター邸に泊まったシドは、こちらの心配とは裏腹に酔っ払った時の事をちゃんと覚えていた。

 一人ひとりに昨夜の事を謝罪して回ったシドは、最後に朝食の場でこう宣言する。

 

 

「――俺、もう誰かと一緒に酒を飲む事は止めます。外でも絶対に飲みません。誰かに迷惑掛けたくないし、何よりも恥ずかし過ぎて俺が死んじゃうので!!」

 

 

 そんな宣言に対して、家族全員で遠慮はするな、気にしない、迷惑じゃない等と言ってシドを止めようとするが、その決意は固く、説得はできなかった。

 全員何も言わなかったが、酔っ払った志人にもう一度甘えられたいと誰もがそう思っていたはずだ。その機会が失われてしまい、大げさな程に沈んでいた者も少なくない。

 

 

 ……だが。俺がシドと2人で自宅へ帰る途中、シドがこんな事を言い出した。

 

 

「さっきは誰かと一緒に酒を飲む事は止めると言ったんだが……承太郎。ごく稀にでいいから、俺と2人でまた一緒に飲んでくれないか?」

 

「……それは構わないが、いいのか?さっきは誰に何を言われても考えを変えなかったのに?」

 

「まぁ、そうなんだけどな……やっぱりこの先、どうしても酒の力に頼りたい時が来ると思うんだ。ストレスが溜まり過ぎてそれを発散するために、とかな。

 そういう時は多分、1人で飲むのが寂しくなる。……そうなったら、お前を呼んでもいいか?お前が相手なら、酔っ払ってもいろいろ安心できるし――」

 

「――抱き方と撫で方も俺が一番落ち着くんだってなあ、ハニー?」

 

「その言い方は止めろダーリン。確実に誤解を招くしぞわぞわするだろ!?」

 

「くく……っ!」

 

 

 親友から信頼を寄せられ、気分が良い。シドの肩に腕を乗せた。

 

 

「シド。俺と2人で飲む事は、今後誰にも言うなよ?俺の家族には特にな。……全員お前と酒を飲みたがってるから、バレたら俺もお前も大変な事になるぜ」

 

「え、何で?」

 

「酔っ払ったお前に甘えられるのが俺だけなんてずるい、とか言い出しそうなんだよ」

 

「ずるいって……俺に迷惑掛けられる事の何が良いんだ?」

 

「……誰かに甘える事と、迷惑を掛ける事をイコールで結び付けちまってる今のお前だと、理解するのは難しいだろうな」

 

「??」

 

「まあ、そこは俺達が時間を掛けて理解させてやるから、今は深く考えなくて良い」

 

 

 昨日ディオが言っていたように、長期戦になるのは覚悟している。志人にはこれから徐々に、俺達に甘える事を覚えさせるのだ。

 こいつが幼少期に植え付けられた、"誰かに甘えるのを我慢する癖"を上書きするには、相当長い時間が必要だな。

 

 

「とにかく、俺と飲む事は誰にも言わない方がいい」

 

「……それなんだが、アバッキオとブチャラティさんはどうする?俺達が成人したら一緒に飲む約束しただろ?

 あの2人なら口が固いし、俺が酔っ払うとどうなるのかを言い触らす事は無いと思うから、1回だけなら一緒に飲んでもいいかと思ってる」

 

「あー……確かに1回だけなら良いが、あの人達もお前が甘えたになる事を知ったら、次も一緒に飲みたいと言うはずだ。その時はちゃんと断れよ?

 それから、俺と2人で飲む事も絶対に言うな。間違いなく面倒な事になる」

 

「お、おう……了解」

 

 

 ちょっと凄んでそう言えば、シドは怯みながらも頷いた。

 アバッキオとブチャラティは、こいつの事を実の弟のように可愛がっている。滅多に甘えない弟分があんなに甘えて来たら、それは次も見たいと思うだろう。うちの家族と同じだ。

 

 

(……さて。となると、俺だけは今後もシドに甘えられる機会がある訳か……悪くねえな)

 

 

 にやつきそうになるのを抑え、無駄だと思いながらも無表情を保つ。……シドが訝しげな顔をした。やはり、こいつにはすぐにバレてしまうな。

 

 

「どうした?やけに機嫌が良さそうだが」

 

「ああ。――一人勝ちってのは、なかなか気分が良い」

 

「……何の話だ?」

 

「さあな」

 

 

 親友の"変なところで鈍くなる性質"には何度も悩まされているが、今回だけはそれに感謝した。

 

 

 

 

 

 

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