空条承太郎の親友   作:herz

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・pixivでは前編、後編、小説パートの3つに分かれていますが、一つひとつの話が長いので、ハーメルンでは前編①、②。後編①、②。小説パート前編、中編、後編の7つに分けました。よって、似非ホラー編はかなり長いです!


・ちゃんねる風似非ホラーの小説パート。全然怖く無いです。ご都合主義、捏造過多。キャラ崩壊あり。

・前編では、短編5つを詰め込んでいます。




修学旅行組4名は、異界へ飛ばされた~小説パート(前編)~

 

 

プロローグ

 

 

・男主視点。スレを立てるまでの話。

 

 

 

 

 

 

 大学1年の夏休み。2泊3日の○○県旅行の当日。花京院、形兆と久々に顔を合わせ……まず驚いたのが、

 

 

「――形兆」

 

「――典明」

 

 

 2人が君付けもさん付けも無く、互いの名前を呼び捨てしていた事!しかも高校時代の時よりもかなり距離が近づいている!!

 

 

「しばらく会わなかった間に随分仲良くなったな!?」

 

「……何があった?」

 

「いろいろ、だね」

 

「いろいろ、だな」

 

 

 承太郎の問いに対し、2人は顔を見合わせて苦笑いを浮かべ、そう答える。……2人が答えたくないなら深くは聞かないようにしようと、俺も承太郎もその話題を流した。

 

 だが、その代わりにこれだけは押し通す。

 

 

「2人には俺の事も名前を呼び捨てで呼んで欲しいなぁ」

 

「はあ?」

 

「ええっ?」

 

「形兆は俺の名前もだぜ。次からさん付けされたら返事しねえぞ」

 

「は」

 

「あ、そうだ!俺も典明って呼んでいいか?」

 

「ちょ、」

 

「俺もそう呼んでいいよなあ?典明」

 

「えっ」

 

 

 ……旅行先まで車で向かう道中。俺と承太郎が2人を押して押して押しまくって、4人それぞれが呼び捨てで呼び合う事を納得させた。

 

 お前らだけずるいじゃん。俺達だってそう呼ばれたいし、呼びたいし。

 

 

(それに――何だかんだ、2人共満更でも無さそうだったし?)

 

 

 本気で嫌がってたら、俺も承太郎もすぐに諦めていただろう。

 

 

 さて。初日の観光だが、高校時代に戻ったみたいで楽しかった。

 ……それぞれが行きたい場所を観光計画に詰め込み過ぎて、最終的にチェックインの時間に遅れそうになってバタバタしたが、それもまた良い思い出だ。

 

 この分なら明日も楽しめるだろうと、皆で楽しく雑談しながら今日泊まるホテルの客室に入り、鍵を閉めて、それから――――暗転。

 

 

 

 

 

 

「「「「…………は?」」」」

 

 

 気が付いた時には、全員で不気味なホテルのロビーと思われる場所に立っていた。

 

 

「……おい、どうなってやがる?」

 

「これは……!典明!」

 

「ああ、形兆。これで、二度目(・・・)だね」

 

 

 険しい表情で困惑している承太郎とは反対に、何か心当たりがある様子の形兆と花京院。そんな2人に話を聞こうとした俺は、彼らの向こう側を見て目を見開く。

 

 

「っ、お前ら、あれを見ろ!」

 

「えっ、……なっ!?」

 

「何だ、あれは……!!」

 

「全身が焼け爛れている……!?」

 

 

 かろうじて服を身に付けている、顔から何まで全身焼け爛れた、人型のナニカ(・・・)

 それが複数、俺達を睨んでいた。……そのうちの一体が、何かを叫びながら襲い掛かって来る!

 

 

「スタープラチナ!!」

 

 

 それを承太郎がスタンドで迎え撃とうとした、その時。

 

 

「っ!?――駄目だ承太郎ッ!!そいつに触れてはいけない!!」

 

 

 何故か、花京院がそれを止めようとした。しかしその警告は遅く、スタープラチナの拳が直撃し……ナニカ(・・・)は消滅する。

 

 

「ぐ、うぅッ……!?」

 

「承太郎!?」

 

 

 その直後、承太郎が自分の拳を押さえて苦悶の声を上げる。慌ててそちらを見ると、彼は拳に火傷を負っていた。

 咄嗟に駆け寄ってバックの中にあった飲み水を取り出し、火傷した場所に水掛ける。……今はこれぐらいしかできないが、早急に手当てしなくては!

 

 

「ハイエロファント!」

 

「バッド・カンパニー!」

 

 

 承太郎には攻撃を止めさせて、後は遠距離攻撃ができる花京院と形兆のスタンドに任せた。追い掛けて来る奴等を牽制しつつ逃亡する。

 

 その最中、花京院達の"心当たり"について話を聞いた。

 

 

「――とどのつまりスタンドは全く関係無く、ホラー小説でありがちな展開が現実になったって事か!?典明!」

 

「その通り!……あ、志人、承太郎!そっちは嫌な予感がする、階段を上がれ!」

 

「分かった!」

 

 

 花京院と形兆は、以前康一やあの岸辺露伴と共に異界へ飛ばされた事があり、この手の現象に巻き込まれたのは今回で二度目だという。

 その時は財団職員の中のとある霊能者さんのおかげで、異界から脱出する事ができたそうだ。

 

 そんな霊能者さんから、霊的な感知能力を見出だされた花京院の指示で、逃亡する方向を決める。……先ほど承太郎を止めようとしたのも、その力が嫌な予感を感じ取ったせいだったとか。

 

 

 その後俺達が逃げ込んだのは、とある客室の中。花京院によると、ここは他の客室よりも嫌な予感を感じないらしい。

 

 

「……バリアのおかげで、これ以上は入って来れないようだが……これからどうする?」

 

「そうだな……形兆。以前巻き込まれた時は、盛り塩が効いてたよね?」

 

「……確かに効いていたが、今は塩なんて持っていないぞ」

 

「あ、じゃあさ……気休め程度だけど、これ砕いて使ってみるか?」

 

「…………ポテチ……?」

 

「……志人、貴様。いくらなんでも、それはどうなんだ?」

 

「まぁまぁ、気休め程度だって言っただろ?どうせちゃんとした塩が無いんだからさ」

 

 

 という訳で、部屋の四隅にポテチを砕いたやつを盛ってみた。どうか効果が出ますように、と祈りながら。

 

 

「……部屋の空気が、少し軽くなった?」

 

「本当に、ちょっとだけだが軽くなったぞ?嘘だろ志人……」

 

「何故そんな物で効果が出る……!?一体何をやったんだ貴様」

 

「効果が出ますように、っていうお祈り?」

 

「ふざけているのか」

 

「いや、本気」

 

「…………」

 

「形兆、そんな目で見ないでくれ」

 

 

 3人の反応を見るに、多少は効果があったようだ。良かった良かった……って、そうだ承太郎の火傷の応急処置!!手持ちのバックの中に救急セットを入れて置いて正解だった!

 俺がそれを使って応急処置をしている間、花京院と形兆は携帯で外と連絡を取ろうとしたが、結果は失敗。

 

 

 その代わりに花京院が試したのが、オカルト板に繋がるかどうか。

 

 

「前回は繋がっていたんだが、今回は……あ、やっぱり繋がった」

 

「そんなのが通用するのは、二次創作の中だけだと思ってた……」

 

「僕も前回、全く同じ事を考えたよ」

 

 

 こうして典明がスレ主となり、オカ板に立てられたのが――【SPW】不気味なホテルで籠城中【守護霊もどき】というスレである。

 

 

 

 

 

 


 

 

実は怒ると怖い男

 

 

・形兆視点。スレで経緯と質問の答えを投下した後。

 

 

 

 

 

 

「うぐ……っ!?」

 

「承太郎?」

 

「が、っ、あ"あ"ぁぁッ!?」

 

「おい、どうした!?」

 

「承太郎!?」

 

 

 典明がスレを立てた後、しばらくして承太郎が火傷した拳を押さえて苦しみ出した!志人の応急処置は間違っていなかったはず。それが何故……!?

 

 

「うぁ、体が熱い……ッ、手が、手が痛い、熱い!!あ、息、がはッ!?あ"あ"ァ……!!」

 

「承太郎、承太郎!っ、しっかりしろ!!」

 

「形兆、水だ!水を火傷した場所に!!」

 

「おう!」

 

 

 体の熱さや息苦しさ、火傷した拳の熱さと痛みを訴えている。典明がそれを聞いて飲み水を取り出し、承太郎が押さえる拳にそれを掛けた。

 俺もそれに続くが、効果は見られない。ますます苦しみ、踞って悲鳴を上げる承太郎。どうする?他に何か出来る事は無いのか!?

 

 すると、志人が動いた。

 

 彼は何故か、胸元から形見であるロザリオを取り出す。それを持った手で、承太郎の火傷した拳を握った。その瞬間聞こえたのは、耳をつんざく悲鳴。

 

 

(これは――女の悲鳴?)

 

 

 俺と典明は思わず耳を塞いだ。……その後、承太郎が顔を上げる。

 

 

「志人……お前、今何した?手と体の熱さと痛み、それに息苦しさも消えたぜ」

 

「えっ!?いや、俺はただこのロザリオと一緒にお前の手を握っただけで、」

 

「志人!バリアが破られるよ!?」

 

「っ、まずい!来るぞ!!」

 

 

 承太郎が復活したのは良かったが、直後にイージスと典明が声を上げる。……その警告通りにバリアが破壊され、客室内に奴らが押し入って来た!

 

 

「志人が精神的に不安定になった結果、バリアも不安定になったという事か……」

 

「スタンドは精神の力だからね。そういう事だろう」

 

 

 典明と共に、承太郎と彼を支えている志人の前に出た。ここは比較的冷静な俺と典明で、なんとかするしかない。

 全身が焼け爛れた奴らが、部屋の隅に避難した俺達の前を塞ぐ。……しかし、それ以上は近づいて来ない。恨めしそうな目で睨まれるだけだ。

 

 

「……どうなっている?」

 

「これは……」

 

「典明?」

 

「近付きたくても、近付けない……のか?」

 

 

 そんな典明の独り言に対して、どういう事だと聞こうとした時、唸るような声が聞こえた。

 

 

「てめぇら、だろ……」

 

「え」

 

「っ!?」

 

「…………シ、ド?」

 

「絶っ対に、てめぇらが何かしたんだよなぁ――承太郎を、俺の親友を苦しめたのはてめぇらだよなぁ!?」

 

「お、おい志人!?」

 

「落ち着け!!」

 

 

 志人が激怒した。初めてこいつと会った時と同じく、いやそれ以上にキレている!?

 俺と典明が慌てて、前に出ようとした志人を押さえる。貴様は攻撃力がほとんど無いだろう!?気持ちは分かるが待て!!

 

 しかしふと、俺達の前にいる敵を見ると……奴らは後退りしていた。何故だ?

 

 

(まさか、志人に怯えている?)

 

 

 そんな馬鹿な、と。自分の考えを即座に打ち消した瞬間、志人が叫ぶ。

 

 

「イージスホワイトォッ!!やれ!!」

 

「……あぁ、なるほど。良いイメージだね!」

 

 

 イージスが白い杖を振るうと、奴ら全員を囲うバリアが現れ――奴らを巻き込みながら一気に収縮し、球体となって空中に浮かんだ!

 

 

「っは!!ざまぁみやがれ!てめぇらはそこで鮨詰めになってろ!!」

 

 

 そう言って、天使の姿をしたスタンドと共に、親指で首を切りそれを下に向ける動作をした、涼しげな美形。正直に言って、怖い。

 

 

「これで道ができた。早く部屋から出よう。……ごめんな。俺が油断したせいでまた逃げる事になって」

 

「あ、ああ……いや、君のせいではないから」

 

「……別に、気にするな」

 

「ありがとう。……承太郎、大丈夫か?本当にもう痛く無いんだよな?立てるか?歩ける?」

 

「…………おう。歩ける」

 

「よし、行こう!」

 

 

 一度ぶちギレてスッキリしたのか、俺達に掛ける声は穏やかだ。特に、承太郎に対しては大袈裟な程に心配していた。

 

 先を行く志人の後ろで、俺達はボソボソと会話する。

 

 

「なあ、承太郎。もしかして、志人ってあまり怒らせない方がいいタイプかな……?」

 

「……心配するな。あいつは自分の懐にいれた仲間に対しては、怒る事はほとんど無い。怒ったとしても、それは相手のための怒りだ。お人好しなのは変わらねえよ」

 

「そう、か。なら良いのだが……」

 

「ただ、」

 

「た、ただ?」

 

「……仲間以外の相手に対しては、最近徐々にお人好しが鳴りを潜めていてな。ぶちギレた時も加減が無くなりつつあるんだが、当の本人はそこを自覚していない気がする」

 

「……つまり?」

 

「――無自覚で容赦無しってのは、恐ろしいよな……」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

「典明ー?」

 

「は、はいッ!!」

 

「どっちに行けば安全なんだ?」

 

「ああ、そ、そうだったね!えっと……そこは真っ直ぐで大丈夫!」

 

「分かった、ありがとう」

 

 

 典明の指示を素直に聞く姿には、先程の恐ろしさが欠片も残っていない。……普段怒らない奴ほど怒らせた時は怖い、か。

 

 

「……とりあえず、志人がぶちギレた事はスレには書かない方向で」

 

「そうしよう」

 

「……賛成」

 

 

 

 

 

 


 

 

彼女は親友組を全力で推している

 

 

・先祖が巫女(本名、五藤風花)視点。先祖が巫女が初めてスレに書き込んだ辺り。

 

 

 

 

 

 

 ――空条承太郎様は、私の最推しである。

 

 

 同僚の中には、他のジョースター家の人間を推している人も結構いますが、私は断然承太郎様推し。

 顔良し、体格良し、声良し、性格……は、ちょっと排他的だけどクールなところがむしろ良い。あなた様はそのままで全然OKです!!

 

 前世では彼の存在だけは知っていたけれど、残念ながらいろいろタイミングが悪くて直接お目にかかれた事はありませんでした。

 それが今世になって、初めて彼の姿を目にしてその声も聞いた瞬間。私はころっと落ちます。

 

 だって、その全てが私の好みどストライクなんだもん!!

 あれで10代?10代!?それってこれから成長したらどうなるんですか!?あぁ!前世の大人バージョン承太郎様を見たかった!!

 

 とか言いつつ、今世の私は早々に結婚しました。さすがに承太郎様を相手に恋愛を持ち込む勇気はありませんし、年下はそもそも恋愛対象になりませんし。

 ……まぁ、旦那の特徴は承太郎様の特徴とちょっとだけ似てたりするんですが、ね。

 

 

 さて、そんなある日。突然現れた承太郎様の親友――園原志人様。

 彼は、あらゆる意味で例外の存在。その存在が明らかになった時。一時期財団内部はかなりざわついていました。

 

 前世では例の矢によって死に、しかし今世ではスタンドが目覚めた。スタンドとの完全同化という戦闘方法を編み出した張本人。

 あの(・・)空条承太郎様が親友と認める男。そして……ジョースター家のお気に入り。

 

 一体どんな方なのかと思えば、承太郎様とは体格も性格も正反対の人間。失礼ながら頼り無さそうに見える、ごく普通の少年でした。……あ、目付きの悪さを除いて。

 

 

 だがしかし。私がそう思っていたのは最初だけです。

 

 去年の春。財団職員達にとっては苦く、恐ろしい記憶として残っている――お気に入り様誘拐事件。

 私の自慢の従兄、六車拓海も巻き込まれたその事件がきっかけで、志人様への印象はガラリと変わりました。

 

 その事件以来。あのクソ真面目で、基本的に誰に対しても公平な態度を取るはずの拓海兄さんが、志人様の事をそれはもう推してくるのです。

 

 以前から承太郎様の事を尊敬しており、特に強く推している様子でしたが、何だかそれ以上に志人様を推している気がします。本人にその自覚は無さそうですが……

 拓海兄さんがそこまで夢中になるのは、非常に珍しい。それが面白くて従兄による志人様の布教話を聞いているうちに、私まで"志人様もありかも"なんて思い始めた始末。

 

 

 という訳で。最近では従兄と同じく、承太郎様と志人様の親友組を推しております。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――そんな推しである親友組とそのご友人の方々が、異界に飛ばされた。

 

 

 花京院さんが立てたスレを最初に発見したのは、私でした。

 

 東京支部にて、休憩時間中になんとなくオカ板を覗いた時。

 SPWと守護霊もどきの単語を見つけて慌てて中身を見てみたら……承太郎様と志人様が異界に飛ばされたという、まさかの事態に絶叫。

 

 スレを遡って大体の状況を把握し、パニック状態のまま書き込んで承太郎様に怒られてリアルでも"はいッ!黙ります!!"と言ってしまったのはご愛嬌という事で。

 

 

 そして即座に、上司に連絡。

 

 

「もしもし、五藤です!突然で申し訳ありませんが、緊急事態発生!恐れていた事態が起こってしまいました!

 

 ――優先度SSS(トリプルS)!!異界案件!巻き込まれたのは空条承太郎様、園原志人様、花京院典明様、虹村形兆様!

 

 既に立てられているスレのURLもこの後、すぐに送信します!サイバー対策課にも情報を共有してください!

 そしてジョースター家を始めとした関係者の方々にも、至急ご連絡を!」

 

 

 財団内部では、発生した事案に対して優先度が設定されています。

 

 その中で重要度、緊急度、危険度の全てが最も高い、優先度SSS(トリプルS)とは。

 ジョースター家の人間、あるいはそのお気に入り様が巻き込まれた事案の中でも、特に危険性が高いと思われるケースの事。

 

 これが出ると、財団内部は何処もかしこもバタバタする&胃薬大量消費となってしまうので、職員のほとんどがそんな事態になる事を常に恐れているのです。

 

 

「さーて。○○県にすぐに行けるように、いろいろ準備しないとですね!」

 

 

 上司への連絡とURLの送信を済ませ、様々な道具を用意するために、事務室へ向かって走ります。承太郎様、志人様!必ず助けますから、待っててくださいね!!

 

 あっ。も、もちろん花京院さんと形兆さんの事も、忘れてませんよ??

 

 

 

 

 

 


 

 

火災被害者達の、恐怖体験

 

 

・第三者視点。男主達が異界脱出を開始した後。

 

 

 

 

 

 彼ら――火災事件の被害者達にとって、この異界に引きずり込まれた生者達は獲物でしかなかった。そのほとんどが生きたまま焼け死んだ彼らは、その苦しみを生者達にぶつけようと襲い掛かる。

 

 この異界を支配している者の意思が、彼らに伝わって来る。……あの生者達こそが、我々を殺した元凶なのだと。

 憎い、憎い、憎い!許せない許せない許せない許せない許せない――

 

 彼らはその怒りと憎しみを爆発させ、生者達を追い掛けた。

 

 

 ……しかし、それも最初だけだった。

 

 

「…………あれ?」

 

「部屋から出たらすぐに襲われるだろうと思ってたのに……」

 

「……近づいてすら来ねえぞ」

 

「それどころか、避けられていないか?」

 

「もしかして、志人のロザリオと虹印護符が効いてる?」

 

「だからそのふざけた呼び方は止めろ、典明」

 

 

 いつの間にか、獲物である生者達はナニカ(・・・)によって護られていた。

 

 それは、彼らにとっては邪魔なものでしかない。生者達はそのナニカ(・・・)による光――園原達にこの光は見えない――に包まれており、彼らはそれを恐れていた。

 彼らの誰もが生者達に近づく事すらできない中、そのうちの1人が勇気を持って、不意打ちで襲う事を試みる。

 

 階段のすぐ横の曲がり角から飛び出し、すぐ近くにいた大柄な男に襲い掛かり――

 

 

「……危ねえな。驚いたじゃねえか」

 

 

 ――そして、一瞬で消滅した。

 

 

「驚いた、というだけでワンパンで消滅させられた方は、堪ったものではないな……」

 

「なるほど。これが本当のワンパン……だがしかし、使ったのはスタンドではなく生身の拳……」

 

「そうだ承太郎!火傷は!?」

 

「……いや、無い。お前のロザリオがしっかり守ってくれてるぜ」

 

「なら良いが、だからって1人で突っ走るのは止めろよ?」

 

「ああ、分かってる」

 

 

 襲ったのは、生者達の中で比較的弱い者のはずだ。何故なら彼らが一番干渉しやすく、先程も彼らの苦しみや怒り、憎しみをぶつけて壊す寸前まで追い詰めた相手だったから。

 しかし。妙な力で殴るどころか生身の拳で殴っていたのに、相手は火傷を負わない……全くの無傷。

 

 弱者が、突然強者へ……得体の知れない存在へと、変貌を遂げた。火災の被害者達はいよいよ、恐慌状態となる。

 

 そんな最中。支配者からの意思……命令が伝わって来た。"奴らを4階へ上がらせるな、止めろ!"と。

 ……彼らは支配者の命令には逆らえず、恐慌を無理やり抑えて3階にいた生者達に襲い掛かったのだが――

 

 

「オラオラオラオラオラオラァッ!!」

 

 

 ――たった1人によって、次々と瞬殺されていく。

 

 

「……僕らの出番、ほとんど無いね」

 

「いつもより攻撃が苛烈な気がするんだが……」

 

「霊に干渉された時のストレス解消を、今やってるんじゃないかな?」

 

「1人で突っ走るなってさっき言ったのに!!イージス、バリア、」

 

「シド!お前はスタンド能力を温存しとけと言っただろ!」

 

「承太郎の言う通りだよ、志人。この異界に来てからは、俺の力を使い過ぎだ。こんな状況下だからか多分アドレナリンが出ていて、自分でも気づいて無いんだろうけど……

 さっきも一瞬同化を使っちゃったし、体力的にも精神的にも、結構ギリギリだよ?最後の戦いが始まるまで、気力を残しておかないと」

 

「ぐっ……!じゃあ承太郎、俺をあまりハラハラさせるな!無茶すんなって!!」

 

「分かってる!……オラアァッ!!」

 

「絶対分かってねぇから、お前!!」

 

 

 得体の知れない存在を避けて他の生者達を襲いたくても、何やら叫んでいる眼鏡の男から感じられる一際強いナニカ(・・・)のせいで、その側にいる男2人にも全く近づく事ができない。

 

 

 このままでは……全員、消される。

 

 

「……おい、奴らが逃げていくぞ?」

 

「承太郎とスタープラチナの力に、恐れをなしたんじゃないか?ざまあみろ」

 

「典明、相手は火災の被害者達だ。あまりそういう事を言ってやるな」

 

「おっと、そうだね志人。ごめん……って、ちょっと待って?君、序盤の自分の所業を忘れてないか?あの鮨詰めのやつを」

 

「…………あ、承太郎!本当に火傷してないんだよな?」

 

「随分とあからさまに無視したな、貴様」

 

「さっきも言っただろ?お前のロザリオのおかげで、この通り無傷だ」

 

 

 背後の生者達の会話と、頭に響く支配者の声に構わず、まだ残っていた火災の被害者達は必死に逃走した。

 支配者からの命令に逆らえば、彼らの頭には激痛が走る。その激痛は辛いが、それよりも得体の知れない存在によって消滅させられる方が恐ろしい。

 

 

 彼らは躊躇う事なく、支配者を見捨てた。

 

 

 

 

 

 


 

 

大喧嘩のきっかけ

 

 

・花京院視点。除霊完了後、脱出する直前。

 

 

 

 

 

 

 元大学生達の被害者である女性の霊は、僕達に怯えながらも憎しみの籠った目で睨んで来た。

 

 

「――――人殺し。人殺し。人殺し。人殺し人殺し人殺し人殺しぃ!!ああぁぁいや来ないでいやいやいやいや来ないでえぇぇっ!!」

 

 

 かと思えば錯乱した様子で叫び、それが霊障となって僕達を襲う。

 だが形兆の護符と、それに籠められた志人の祈りのおかげで、そこまで影響は出なかったらしい。ちょっとした頭痛がするぐらいだ。

 

 その後もまた叫んだり、火事の火を操って攻撃されたりしながらも、最後は承太郎が止めを刺した。

 途中で志人が、自分達は例の元大学生では無いのだと、誤解を解こうと頑張っていたが、彼女は聞く耳を持ってくれなかった。

 

 承太郎の除霊を受け、徐々に消えていく女性の霊は、消える間際まで僕達を睨み続け……そして、こう言い残す。

 

 

「――みちづれに、して、やる……」

 

 

 それを聞いた瞬間。嫌な予感を感じた僕は、咄嗟に声を上げた。

 

 

「全員、志人の下へ集まれ!!志人はバリアを!」

 

「分かった!」

 

 

 志人のバリアの中に全員が入ったその時、ホテルの崩落が始まった!

 

 

「な、何でいきなり崩れ始めたんだ!?」

 

「おそらく、彼女が最後の力を振り絞って僕達を道連れにしようとしている!」

 

「何!?」

 

 

 既に女性は消えているが、ホテルの崩落は止まらない。……志人がスレに除霊が終わった事を報告した。それからすぐに、霊能者の彼女が作った出入口が出現。僕達は急いでそこに向かう。

 最初に承太郎、次に志人、その次に形兆、最後に僕が潜り抜けようとした時。

 

 急に足元が無くなった感覚。そして浮遊感。……落ちる直前に、承太郎達の青ざめた表情が見えた。

 

 

「あ、待っ――形兆!?」

 

 

 続いて、志人の必死な声。こちらへ手を伸ばしながら落ちて来る――大切な存在の姿。

 

 

「典明ィッ!!手を伸ばせェェッ!!」

 

「っ!!」

 

 

 伸ばした手は、しっかりと掴まれ……浮遊感が止まる。形兆の足に、紫色の茨が絡んでいるのが見えた。

 そこにハイエロファントの紐も伸ばして絡め、ジョセフさんのハーミットパープルが千切れないように、補強する。

 

 

「こっっんの、馬鹿阿呆間抜けいちょおぉっ!!何やらかしてんだてめえぇぇっ!?」

 

「ふざけてんじゃあねえぞォォッ!クソ形兆ォッ!!」

 

「危ねえェェッ!?俺のスタンド茨で本当に良かったあァァッ!!」

 

「ひ、引き上げましょう!早くっ!!」

 

「花京院さん!虹村さん!あと少しだけ耐えてください!すぐに引き上げます!!」

 

 

 頭上の騒ぎは……無理もない。全ては自分を犠牲にした形兆が悪い。

 

 

「典明」

 

「…………何だい?」

 

「お前を助けられて、本当に良かった」

 

「――――」

 

 

 ……しかし当の本人は悪びれるどころか、僕を見て安心したように微笑んでいる。身を投げ出した事への後悔は、全く無いようだ。

 

 

(ふざけるなよ、お前)

 

 

 

 

 

 

 

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