・最初は男主視点。途中からブチャラティ視点。最後に、再び男主視点。
・「空条承太郎の、一人勝ち」の後。男主達が大学2年生。アバッキオ、ブチャラティと飲み会。
・いろいろと距離が近いですが、not腐向け。後半はちょっとシリアス。
――(園原志人を甘やかすのに長い時間を掛ける)覚悟はいいか?俺はできてる。
20歳の誕生日から時が過ぎ、大学生活2年目に入ったある日。アバッキオ、ブチャラティと以前から約束していた飲み会を開く事になった。
大学生である俺と承太郎ならともかく、いろんな方面から引っ張りだこの優秀な探偵さんと、町の平和を守るために働いている交番のお巡りさんは、とても忙しい。
全員の予定を合わせる事は難しく、気がつけば数ヶ月経過していた。……探偵さん、お巡りさん。本当にお疲れ様です。
飲み会を開く場所は、アバッキオの自宅だ。今までに数回お邪魔した事があるが、1人暮らしにしては結構広い所に住んでいるため、4人が集まるのにちょうど良い。
なんなら泊まっていけ、とも言われていた。今回はお言葉に甘える事にする。承太郎とブチャラティもそうするらしい。
「はあ?缶チューハイ1本で酔っ払った!?マジか、お前」
「随分と酒に弱いな……」
4人分の酒と摘まみを用意して、さっそく飲み会……を、開始する前に。
アバッキオとブチャラティには、俺の酒の弱さについて前もって教えておく。2人は目を見開いていた。
「で、お二人には俺が飲む前に、約束をしてもらいたい事がありまして」
「約束?」
「俺が誰かと一緒に酒を飲む事は、これっきりにしたいんです。俺が酔っ払うと絶対に2人に迷惑掛けるし、何よりも俺が恥ずかしいので。
だからこの日以降、俺にはもう酒を勧めないと約束して欲しい。……お願いできますか?」
「……どういう迷惑を掛けられるんだ?」
「それは、」
「シドが酔っ払ってからのお楽しみ、だぜ」
と、承太郎が俺の言葉を遮った。……なにニヤニヤしてんだ、お前。
「まあ、先に約束しておく事をお勧めする。そうしないと、こいつは今日は酒を飲まないと言い張るぞ」
「何故バレた」
「お前ならそう考えるだろうと思ってた。……さて、どうする?1回は見ておいた方が良いぜ。シドが酔っ払う姿を」
「……承太郎がそこまで言うなら、面白そうだし乗ってやる。今後、お前に酒は勧めないと約束すれば良いんだな?」
「俺も約束しよう。……その口振りから察するに、少なくとも酷い事にはならないんだろう?志人君がどんな酔っ払い方をするのか、気になる」
「よーし2人共、言質は取りましたよ!……と言っても、まずは前回試してなかった
そう言って、俺が手に取ったのは――ノンアルコールチューハイ。
あの誕生日パーティーから今に至るまで、試す機会が無かったのだ。きっとこれなら、すぐに酔っ払う事も無いはず。
―――
――――――
―――――――――
俺やアバッキオは酒にはかなり強く、2、3本飲んだ程度では酔わない。それに、承太郎も酒には強いようだ。
彼も既に2、3本は飲んでいるようだが、顔色があまり変わっていない。……しかし、志人君は違った。
「ん?……もう酔っ払ってるぜ、こいつ」
「何?」
「……確かに顔赤いし、ぼーっとしてるな」
志人君の隣に座っていた承太郎が、彼の手から酒を取り上げた。それにも気づいていない様子で、志人君は遠くを見つめている。
「いや、待て。……志人が飲んでいたのはノンアルコールだったよな?こいつ、何本飲んだ?」
「…………2本、だな」
「ノンアルコールでも、たったの2本でアウトか……」
相当弱いな。確か、日本では下戸と言うのだったか?志人君は間違いなく、それだろう。……すると、彼は承太郎に向かって両手を伸ばした。
「じょーたろ、ぎゅー」
「はいはい」
「えっ」
「なでて」
「はいはい」
「お、おい……?」
舌足らずな話し方でハグを求め、承太郎は慣れた様子でそれに応じる。さらには頭まで撫でていた。志人君はふにゃふにゃと、嬉しそうに笑っている。
俺とアバッキオは顔を見合わせ、揃って困惑していた。
「……見ての通り、こいつは酔っ払うと甘えたがりになるんだ。抱き締められるのと、頭を撫でられるのが好きならしい」
「ガキじゃねえか」
「くくっ……!可愛い酔い方だな」
一体どうなるのかと思っていたが、それぐらいなら全く迷惑にならない。
むしろ、また見たいところだが……残念な事に、今後は酒を勧めないと約束してしまった。それを裏切って志人君に嫌われたく無いし、諦めるしかないか。本当に残念だ。
「……そうだな。あんたの酔い方と比べれば、志人のこれは可愛いもんだ」
「うっ」
アバッキオに痛いところを突かれた。それはそうなんだが、わざわざ言わなくてもいいじゃないか……
「……ほう?ブチャラティは酔っ払うとどうなるんだ?」
「この人はな――キス魔になるんだ」
「キス魔……!?」
承太郎が、珍しくぎょっとしている。俺は額を押さえて項垂れるしかなかった。
「俺と同じで酒にはかなり強いから、人前で泥酔した事は無いがな。
今世で一度だけ、俺と2人で飲んだ時に酔っ払ってキス魔になった時があるんだよ。……あれはヤバかった。押さえるのに苦労したぜ」
「……俺は記憶が飛んでいるんだが、相当やらかしていたらしい。翌日はアバッキオに酷く叱られた」
あれ以来、俺は酒の量をしっかりセーブするようになった。その日の醜態は全く記憶に無いが、心から反省している。
「…………きす」
「あ?」
「――じょーたろ、ちゅーして?」
「ごふっ!?」
と、志人君の思わぬ発言を聞き、承太郎は噎せた。俺とアバッキオも同じく噎せてしまい、慌てて息を整える。
「……っ、おい!てめえらのせいで、シドが余計な事を覚えちまったじゃねえか!」
「俺達というか、その話を出したアバッキオのせいだ!」
「責任転嫁するな!!」
「じょーたろー、ちゅー!」
「…………さすがにそれは駄目だ」
「けちー」
「うるせえ。お前はこれで我慢してろ」
そう言って、承太郎は拗ねている志人君の頭を撫でる。……彼の顔は、拗ねた表情から嬉しそうな表情へと、コロッと変化した。
「……チョロ過ぎじゃねえか?」
「警官としては、悪い大人達にすぐ騙されそうで心配なんだが」
「そんな野郎共は俺が、いやジョースター家が1人残らずぶっ飛ばしてやる」
「ああー……一昨年の春の騒動からして、お前らなら本気でやるだろうな……」
「?」
アバッキオが承太郎から目を逸らし、遠い目になる。……一昨年の春の騒動とは、何だ?
俺がその騒動について聞こうとした時、志人君が承太郎から離れ、アバッキオに向かって両手を伸ばす。
「あばきお、ぎゅー」
「はあ?」
「ぎゅー!」
「…………しょうがねえな」
アバッキオは素直ではないが、志人君に甘い。嫌そうな顔は、ただのポーズだろう。
内心ではきっと、滅多に甘えて来ない志人君にハグを要求されて、喜んでいるはずだ。先程も彼に甘えられている承太郎を見て、一瞬羨ましそうにしていたからな。
志人君を抱き寄せて、言われるまでもなく彼の頭をポンポンと撫でている。彼はアバッキオの胸にグリグリと頭を押し付けていた。
「んー……ふふ」
「……何だ?ご機嫌だな」
「うん、ごきげん」
「そうかよ」
おやおや、そう言うアバッキオも目尻を下げて機嫌が良さそうだ。余程弟分が可愛いらしい。
「あばきお……おにいちゃんみたい」
「は、俺が?」
「んん、おれのにいちゃん。あにき」
「……ほう?ジョナサンやディオがそれを聞いたら、どう思うだろうな?」
「承太郎、言うんじゃねえぞ!?後が怖い!」
やけに焦っているが、ジョナサンとディオさんはそれ程に怖い人なのだろうか?……以前話した限りでは、そんな風には見えなかったのだが。
その時。ふと顔を上げた志人君と、目が合った。彼はアバッキオから離れると、俺に向かって両手を伸ばす。
「ぶちゃしゃん、ぎゅー」
「「ぶふっ!?」」
「っ、くく、く、はははははッ!!」
アバッキオと承太郎が噴き出し、口を押さえて笑いを耐えている中。逆に俺は思い切り笑った。"ぶちゃしゃん"って何だそれは!!
「ぶーちゃーしゃん!ぎゅー!」
「ああ、分かった分かった、よしよし」
笑い混じりにそう言って、彼をそっと引き寄せた。その髪をすくように優しく撫でると、背中に腕が回って抱き着かれる。
……しばらくそのままだったが、志人君は先程とは違い、無言だ。何故か何も話さない。
「志人君?」
「…………ぶちゃしゃんの、なでかた」
「ん?」
「――かーさん、みたい」
「おいおい、そこはお父さんじゃないのか?」
「ちがう。あいつは、おれをなぐるだけで、なでられたことなんて、いちどもない」
「…………何だって?」
聞き捨てならない発言だった。承太郎とアバッキオを見ると、2人揃って志人君に憐憫の眼差しを向けている。……彼らは知っていたのか?
「ぶちゃしゃん、なでて。……いっぱい、なでて」
「あ、ああ……」
事情を聞くのは後回し。今はお願いされた通りに、彼の頭を撫でる。……すると、今度は静かに泣き出した。慌ててその涙を拭う。
「どうした?何故泣く?」
「ごめんね、ブチャラティ。ちょっと失礼するよ」
「!?」
「承太郎、お願い」
そこへ、突然出て来た志人君のスタンド……イージスホワイト。彼は俺から志人君を引き離し、承太郎を呼んだ。
承太郎はイージスから彼を受け取り、そのまま膝に乗せて抱き寄せ……幼い子供をあやすかのように、彼の背中を撫でている。
そういえば、承太郎は前世では子を持つ親だったな。
「…………じょーたろ?」
「ああ、俺だ」
「……じょーたろ、おとーさん」
「誰がお父さんだ、誰が。……前にも言っただろ?俺は父親よりも親友がいいって」
「うん……」
志人君は、承太郎の首元にすり寄った。既に泣き止んでいる。
「……かーさんと、ばーちゃんは、もう、てんごくにいっちゃったけど、」
「ん?」
「いまの、おれには……じょーたろと、みんなが、ぜんせのなかまがいるから――だから、さびしくなんか、ない」
「……馬鹿が。強がるな」
「じょーたろたちがいてくれたら、ほかに、なにもいらない」
「駄目だ、欲しがれ。もっとだ。お前にはまだ幸せが足りてない」
「いらない……」
「お前がいらなくても、俺達は勝手にやらせてもらうぜ」
「いらない。じょーたろの、ばか」
「馬鹿でも良い。志人のためならいくらでも馬鹿になってやる」
「おれ、もう、しあわせいっぱいだよ」
「まだまだ足りねーって言ってんだろ」
……そんな言い合いを、俺とアバッキオは口を挟まずに聞いている。事情を詳しく知らない部外者が、口出しできるような状況ではなかった。
志人君の発言と、彼らの言い合いから分かった事は……志人君が、父親から暴行を受けていた事。彼の母と祖母が既に亡くなっている事。
彼は承太郎達のおかげで充分幸せだと思っているが、承太郎達はまだまだ足りないと思っている事。……本人がそれ以上を望んでいないなら、そっとしておくべきではないのか?
「……承太郎。志人はそろそろ眠りそうだよ」
と、外に出たままだったイージスが、彼らの言い合いに割り込んだ。
「ん、分かった。……イージス」
「何だい?」
「アバッキオとブチャラティにも、志人の事情を全部話しても良いと思うか?」
「うん、大丈夫。志人は彼らの事も信頼しているから。……典明や形兆と同じだよ」
「……なら、こいつが寝たら勝手に話しておくぜ」
「お願いするね」
やがてイージスが消えると、寝息が聞こえてきた。……志人君が眠りについたようだ。
「さて……アバッキオ。確か、客室が1つあるんだったな?案内してくれ。こいつをベッドに寝かせてやりたい」
「分かった、こっちだ」
アバッキオの案内で、彼らがリビングから出て行き……客室に志人君を置いて戻って来た。
「……で、話してくれるんだよな?あいつに何があったのかを。……一昨年の春の騒動中に、志人が父親から暴力を振るわれていて、母親が父親のせいで自殺したって話は聞いたが」
「なっ……!?」
アバッキオの言葉を聞き、驚愕する。母親が自殺!?そんな事があったのか……
そして承太郎から語られたのは、志人君の悲惨な家庭事情。その後、ジョースター家にやって来た彼の父親との対峙。
それから、決して誰にも明かさないと約束した上で、一昨年の春の騒動についても聞いた。
以前、夏に熱射病で死にかけた事も含め、散々な目に遭っている。……それなのに"しあわせいっぱい"とは、欲が無さ過ぎて心配になってしまう。
先程は"本人が望んでいないなら、そっとしておくべきだ"と思ったが、それは早々に撤回しよう。確かにこれでは、承太郎の言う通りまだ幸せが足りてないな。
「……まさか酔っ払って甘えたになるのは、そのクソ重たい家庭事情から来る反動か?」
「……おそらく、な。志人は自分と同じく暴力を振るわれている母親に対して、甘えたくても甘えられなかった。幼いながらに、それが相手の迷惑になると思い込んだ。
今でも、甘える事は迷惑を掛ける事だと、そう思い込み……誰かに甘えたいという、幼少期に感じていた欲求を無理やり抑え込んでいる。
……そんな欲求が酔っ払った事で解放されたから、俺達に甘えて来たんだろう」
アバッキオが承太郎に問い掛け、その答えが返って来た途端、彼は目頭を押さえて俯く。……俺も泣きそうになった。
「……志人をもっと甘やかしてやらねえと」
「俺もそうする……!志人君は幸せにならなきゃ駄目だ。これでもかという程に甘やかしてやりたい!!」
「……そうしてくれると助かる。シドの事は、ジョースター家総出で外堀を埋めつつ、誰かに適度に甘える事は決して迷惑にはならないのだと、理解させようとしている最中だが……
ジョースター家以外にも、協力者がいるのに越した事はない。……あいつの保護者がどんどん増えて来るのは、ある意味問題だがな」
「ちなみに、その保護者は現時点でどれぐらいいるんだ?」
俺がそう聞くと、承太郎は深いため息をつく。おや……?
「…………ジョースター家本家と親戚は確実だが、それ以外の詳細はよく分からない。しかし、それなりの数がいるはずだ。
以前はそうでも無かったんだが、あいつ、ここ数年でスマホを見る回数が急に増えてな……
その理由を聞いたら、前世の記憶を持つ仲間達と知り合った事で、メッセージアプリでやり取りする相手が増えて、返信する回数も増えたせいだと言われた。
――なお。俺がその話を聞いた日、シドは7人の人間とそれぞれ個別にやり取りしていた。……多い時は1日に10人と個別にやり取りした事もあった、と聞いた時は唖然としたぜ」
俺とアバッキオも、唖然とした。志人君の人脈は一体どうなっているんだ!?
「あいつの携帯の連絡先、とんでもねえラインナップになってんじゃねえか……?」
「ちょっと覗き見したいところだが、それもある意味怖いな……」
「……俺も、そこは深く聞かないようにしている」
「なるほど。これが本当のパンドラの箱……」
「それだ」
こちらが精神的ダメージを食らわないためにも、彼の人脈についてはあまり触れない方が良さそうだな。
「……とにかく。あんた達も出来る限り、シドの事を気にかけてやってくれ」
「もちろんだ。……あの子の事は放って置けない」
「まあ……可愛い弟分だしな。面倒見てやらねえと」
「おっと?珍しく素直じゃないか、アバッキオ」
「うるせえ、ほっとけ。……ところで、承太郎。志人の話で、何か酒の肴になりそうなやつはねえのか?」
「……ほう?親友である俺にそれを聞くのか?長くなるぜ」
「上等じゃねえか。聞いてやるよ」
「例えば、どんな話がある?」
「そうだな……じゃあ、まずはあいつのお人好しが際立っていた、形兆と出会った時の話でもするか――」
―――
――――――
―――――――――
――翌日。目覚めた俺が最初にやった事は、昨夜散々迷惑を掛けた承太郎達に謝罪する事だった。
昨夜の事はもちろん、しっかり覚えている。まさか、ノンアルコールでも2本が限界だったとは。
承太郎は、まだ良い。俺が酔っ払ったらどうなるのかを知っていたから。しかし、アバッキオとブチャラティはきっと驚いただろう。とんだ迷惑を掛けてしまった。
「本当にすみませんでした……!!」
「そんなに謝るな。迷惑だなんて思ってないぞ。なぁ?アバッキオ」
「ああ……あれぐらい、ブチャラティの酔っ払った時と比べたらよっぽどマシだ」
「まだ言うか!もういいだろ、その話は!」
その話も、覚えている。ブチャラティは酔っ払うとキス魔になるらしい。意外な一面だな。
……酔っ払った自分も、危うくそれに影響されそうになった事については、穴があったら入りたい心境にさせられる。承太郎には先程、必死に謝ったところだ。
「いや、マジでご迷惑お掛けしました。お詫びに、俺にできる事があれば言ってください」
「それも大丈夫だ。……君が眠っている間に、承太郎から君の話をたくさん聞いたからな」
「えっ」
「それだけで充分、お釣りが来るぜ。……特に、あれは面白かったな。修学旅行中に、奈良の鹿に囲まれたって話」
「他にも、承太郎の妹の体育祭の時に、筋肉痛なのに頑張って王子様になった話とか」
承太郎を睨むと、さっと目を逸らされた。てめぇ、この野郎……!!
「あ、欲を言えば。もう一度、志人君が酔っ払った姿を見たいんだが、」
「すみません!それだけは却下で!!」
「それは残念。……酔っ払った時だけじゃなくて、いつでも俺達に甘えて良いんだぞ?」
と、ブチャラティが俺の頭を撫でる。……優しく、髪をすくような撫で方。それは、今は亡き母の撫で方とよく似ていて――
――それに身を委ねそうになり、慌てて我に返った。
「気持ちは嬉しいですけど、これ以上迷惑は掛けたく無いので。遠慮しておきます」
今の俺は充分、幸せだ。承太郎や前世の仲間達が、俺に幸せをくれる。……だから、彼らに甘えて迷惑を掛ける訳にはいかないのだ。この恩を仇で返したくない。
そう思って、笑って遠慮すると……ブチャラティとアバッキオは、形容しがたい表情になった。あれ??
「くっ――根深い……!!こっちは甘やかしたいのに!」
「こいつ、どうやったら素面でも甘えてくれるんだ!?」
「だから昨日言っただろ?長期戦しかねえんだよ。……ほら、見ろよ。こいつの、"何を言ってるんだか、さっぱり分かりません"っていう困った顔を」
承太郎が、俺の頬を軽く突いてくる。やめて。
「……あのクソ野郎のせいで植え付けられた"悪癖"を完全に正すには、相当な時間が掛かるだろう。今のうちに覚悟しておけ」
「それなら問題無い。既に覚悟は出来ている」
「例え何年掛かろうとも、とことん付き合ってやるぜ」
「…………あの、ちょっと?皆さん何の話をしてるんですか??」
思わず敬語で突っ込んでしまった。だってどいつもこいつも、"これから最終決戦に挑む"みたいな真剣な表情してるし!なんか怖い。
「気にするな、志人君。大丈夫だ」
「俺達がなんとかしてやるからな」
「お前はただ、幸せに生きてればいい。……あとは、俺達に任せておけ」
彼らはそれぞれよく分からない事を言い、俺の頭を順番にぐしゃぐしゃと撫でた。やめて。
以下はおまけの小話↓
※ある日の園原(第三者視点。メッセージアプリの会話は[ ]で表現)
とある休日、園原は自宅でスマホを手にして、メッセージアプリで5人の人間とそれぞれ個別にやり取りしていた。
まず、1人目。
[アナスイのせいでストレス過多だ。愚痴に付き合ってくれ、園原]
[いつも本っっ当にお疲れ様です、ウェザーさん]
ウェザーこと、ウェス・ブルーマリン。彼は普段から同じ大学に通っているアナスイに振り回される、苦労人である。
そんな彼と園原のやり取りは、いつの間にかウェザーの愚痴を園原が聞くのがお決まりとなっていた。
次に、2人目。
[今、話しても大丈夫かしら?少し相談があるの]
[もちろんですよ、リサリサさん]
リサリサこと、エリザベス。……恋人であるジョージ2世と同居している彼女は、沖縄旅行中に園原と友好的な関係を築いた。
その際。恋人について些細な事を園原に相談したのがきっかけとなり、稀にメッセージアプリを通して、彼に相談を持ち掛けるようになったのだ。
さて、3人目。
[【顎にH☆Sの刺青を入れた男の顔写真】]
[なあ、この角度で写った俺って美しいよな?]
[クソどうでもいい写真送ってくんじゃねぇよ、噴上]
ひょんな事から知り合い、園原の友人となった噴上裕也。今世の彼は園原と同い年だが、別の高校に通っていた。現在では、彼も大学生だ。
前世と変わらずナルシストだが、彼が決して悪い人間では無い事を知っている園原は、くだらないメッセージを送られても、何だかんだ付き合っている。
さらに、4人目。
[ちょっと志人、聞きなさい!今日もディオ様が本当に素敵だったのよ!!]
[どうも、マライアさん。ディオさんはお元気ですか?仕事で無理してたりしませんよね?]
[ええ、大丈夫よ。相変わらずお元気だわ。それよりもとにかく聞いて!ディオ様がね――]
前世ではDIOの配下だった、マライア。彼女もまた、ちょっとした出来事から園原と知り合いになった人間である。
今世でディオが経営する会社の社員となった彼女は、前世よりも魅力的になったディオに夢中であり、園原に対してよく"ディオ語り"をしている。
そして、5人目。
[志人君。最近、たまたま絶版本の○○を手に入れたんだが、時間がある時に我が家へ読みに来ないかね?]
[ウィルさん、お誘いありがとうございます!それは読みたい!!]
ウィル・A・ツェペリ。園原とは、SPW財団のクリスマスパーティー中に顔を合わせていた。
互いに読書家である事が判明してからは、意気投合。
最初の頃のやり取りはメッセージアプリでの会話のみだったが、そのうち園原は彼の自宅に招かれるようになり、現在でも交流が続いている。
(それにしても、いつも思うが――前世の仲間達は、ほとんど暇人なのか?)
常日頃、彼ら以外のジョジョキャラ達からもメッセージをもらう事が多い園原は、そう考えて首を傾げた。
※自分も周りも個性的なジョジョキャラ達にとって、真面目で素直な(しかも聞き上手な)園原の存在は、かなり貴重。
※よって。園原を構いたい、あるいは構ってもらいたいジョジョキャラ達が増えた。
※同時に、その中から「勝手に」"園原志人を甘やかし隊"に加入する者が複数現れる=保護者を量産。
※もちろん、園原にその自覚は無い。