空条承太郎の親友   作:herz

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・男主視点。「空条承太郎の親友と、いつかの未来」の前。

・2人の距離が近い。また、言動で誤解を招きそうですが、腐向けではありません。注意。

・承太郎の心情を捏造しています。本編内容には、もしかすると賛否両論あるかもしれません。




「――――前世の妻を、見つけた」




空条承太郎の親友は、己の親友以上に愛情深い男を知らない

 

 

 夜中。今日の仕事を終えて、職場である図書館から一歩外に出ると――真っっ白。

 

 

「もうこんなに積もってたのか……」

 

 

 季節は冬真っ只中。今日は東京でも夕方から雪が降り始めて、今ではこの通り。雪だらけだ。寒い寒い。……高校の時の沖縄旅行を思い出した。あっちは暑かったが、今の寒さではあの暑さが恋しい。

 

 今夜は鍋にしよう、そうしよう。残ったやつはちゃんと保管して、それを明日雑炊にして食う。よし、それだ。

 簡単に夕食と明日の朝食を決めて、自宅の近所にあるスーパーで食材を買い、再び外に出て傘を差す。まだ雪が降っている中、自然と早足になった。早く家で温まりたい。

 

 

(……もしかして、向こう――アメリカもこれぐらい降ってんのかなぁ)

 

 

 我が親友……承太郎は現在、アメリカにいる。普段お世話になっている教授と共に、海洋学の学会に出席しているのだ。

 この久々の大雪は明日も残っているだろうし、明日の朝早くに帰国して来る予定のあいつは驚くだろうな。

 

 明日は早めに起きて朝飯食ったら、車で空港まで迎えに行くつもりだ。お誂え向きに、仕事も休みだし。学会で疲れているであろう学者様を、彼の自宅まで送ってやればいい。

 あいつには何度も助けられている。だから、こういう小さな事でも何か恩返しがしたい。

 

 大事な親友のためなら、何でもしてやりたい。

 

 ……連絡しないまま行ったら、ちょっと怒られるかもな。後でメッセージを送っておこう。本当に疲れていたら、承太郎なら遠慮はしないはず。

 

 

 途中、雪で足を滑らせそうになりながらも、なんとか自宅に到着した。……そんな俺の家の前に、大きな傘を差した大きな男がいる。

 

 

「…………は?」

 

「……よう、ハニー。今帰ったぜ」

 

 

 今の俺にいつもの悪ふざけに応じる余裕は無い!!

 

 

「承太郎っ!?お前、なんで?帰って来るのは明日のはずじゃ……」

 

「早めに帰って来た」

 

「あ、待て待て、俺の荷物は持たなくていい、っ!?」

 

 

 一瞬触れた手に驚いて、思わず承太郎の手をガッと掴んだ。

 

 

「――冷たっ!?この手どうしたんだ?冷えきってるじゃねぇか!」

 

「……多分、1時間近くずっとここにいたせいだ」

 

「馬鹿野郎!!こういう時こそ合鍵使えよ!?」

 

「スーツケースの中に入れたままだったのを忘れててな。わざわざ出すのも面倒で、」

 

「馬鹿!阿呆!間抜けぇっ!!」

 

 

 心の底からそう叫び、承太郎の手を引いて自宅内へ。すぐにイージスを呼び出して、俺の代わりに風呂の準備をしてもらう。

 俺は承太郎に毛布を被せて暖かいお茶を出してから夕食の準備に取り掛かり、そうしながら承太郎に軽くお説教。

 

 

「こんな大雪の中で何やってんだ!風邪引いたらどうする!?帰って来てたなら一言連絡入れろよ!?

 あぁもう、お前がいるって分かってたらもっとちゃんとした飯を作ったのに!っていうか俺がもっと早く帰っていればお前を待たせる事も無かったのに!!くそっ!

 

 ……あ"?おい、てめぇ!何そんな嬉しそうな顔してやがる!?こっちは本気で心配してんだぞ!?」

 

「お風呂沸いたよー」

 

「ありがとう、イージス。おら!さっさと風呂入って来やがれ馬鹿!阿呆!間抜けダーリン!」

 

 

 本当ならその背中を蹴ってやりたいところだが、それはさすがに可哀想だ。代わりにイージスに承太郎の手を引かせて、風呂まで誘導する……その前に。

 

 

「承太郎」

 

「ん?」

 

「――おかえり」

 

 

 ばっと振り向いた承太郎は、あえて笑みを浮かべる俺を見て目を見開き……泣きそうな顔で笑った。

 

 

「――ただいま、志人」

 

「んん、よし。話はお前が風呂で温まって、飯も食った後に聞く」

 

「……ありがとう」

 

 

 ……それから、承太郎を風呂まで誘導したイージスが戻って来た。不安そうな顔をしている。俺も同じだ。

 

 

「承太郎、一体何があったのかな……?」

 

「さぁな……ただ、高校時代のあれの時と比べればそんなに酷い顔じゃねぇ。そこだけは救いだ」

 

 

 最初は承太郎がいた事に驚き過ぎて見落としていたが、途中で気づいた。あぁこいつ絶対何かあったな、と。

 

 目や雰囲気で落ち込んでいる事も分かるが、状況的にもおかしい。

 俺の家から承太郎の家までは近い。こんな雪が降る外で俺の帰りを待つよりも、自分の家で連絡を取って、俺が帰ったかどうかを確認してから来た方が安全だ。

 

 承太郎は、そんな簡単な判断さえ出来ない程に余裕が無いのか?

 

 とはいえ、高校時代のあれ……財団職員達の言葉がきっかけで悪夢を見て、精神的に相当不安定になっていた時よりはましだ。あの時のような酷い顔ではなかった。

 

 

 その後は風呂から出た承太郎と一緒に鍋を食べて――鍋完食により明日の雑炊は無し。残念――イージスに防音バリアを張ってもらい、さっそく話を聞く事に。

 

 

「で……何があった?わざわざあんな寒い中で俺を待ってたぐらいだし、何か聞いて欲しい事があるんだろ?」

 

 

 承太郎はあのイルカのぬいぐるみを手にして、何か言葉を探すように視線を動かす。

 結局、このぬいぐるみは引っ越し以降もずっと俺の家に置かれている。承太郎は何故か引き取ろうとしないので、このままだ。

 

 

「…………前世の、」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

「――――前世の妻を、見つけた」

 

「ええっ!?」

 

 

 一瞬ガタッと椅子から立ち上がりそうになったのをなんとか抑えたが、その代わりに俺自身であるイージスから驚愕の声が出る。

 

 今まではデリケートな話題だからと、承太郎には前世の妻について詳しく聞く事は避けていた。

 俺が知っているのは、承太郎自身が話してくれた事のみ……こいつが前世の妻を深く愛していたという事と、相手がスタンド使いでは無い事。そして、今世ではまだ見つかっていないという事ぐらいだ。

 

 そんな前世の妻を、見つけた?どうやって?そもそも承太郎は自分から探してたのか?

 

 

「……偶然だった。アメリカで学会を終えた帰りに、道端ですれ違ったんだ。

 

 俺は元々、今世で前世の妻を探そうとは思っていなかった。ジョナサンやジョセフ、リサリサさんのように前世と同じ相手と添い遂げようとは、特に考えていなかった。

 前世は前世、今世は今世だ。俺にも、前世の妻にも、今世ではそれぞれの人生がある。無理に探す必要は無いと思っていた」

 

 

 なるほど、そういう考えだったか。前世よりも今世の自分を見て欲しい……そう考える承太郎だからこそ、だろうな。

 

 同じ考えを持った上で、それでも前世の妻と今世でも結婚したジョナサンは例外だ。

 後々話を聞いたら、あの人は"エリナに再会した時に惚れ直したから、今世でも口説き落とした"と言ってたし。末永く爆発してください。

 

 

「……探す必要は、無い。そう思っていた、はずだったんだが、」

 

「んん?」

 

「――あいつの隣に男がいて、さらに子供まで一緒にいるのを見て……自分の感情が、分からなくなっちまった」

 

「…………既に、結婚してたのか……」

 

「おそらく、それで間違い無い。どちらも左手の薬指に指輪があったからな」

 

 

 確定じゃねぇか。……というか、咄嗟にそこまで観察出来たお前は本当にさすがだな。

 

 

 衝撃の事実を聞き、何と言えば良いのか言葉が見つからなかった。

 それにこいつが慰めて欲しいのか、笑って欲しいのか、それとも何か相談に乗って欲しいのか、心の整理のために話を聞いて欲しいだけなのか。まだ判断がつかない。

 

 例えば、承太郎が失恋で沈んでいたのだとしたら。おそらくはもっと酷い顔になっているはず。

 しかしそんな気配が無く、それどころか前世の妻の隣に別の男と子供がいた事を話した時、こいつは何故か……ほんの一瞬、安堵した表情を見せたのだ。

 

 ただの失恋ならいくらでも慰めてやれるのだが、どうもそれだけでは無さそうだ。……やはり、判断がつかない。もっと話を聞かなくては。

 

 

「……自分の感情が、分からなくなったって言ってたな?」

 

「ああ……」

 

「前世の妻とその今世の家族を見て、お前は最初にどう思ったのか……思い出せるか?」

 

「…………分からん。思い出せない。あいつを見つけた上に既に結婚していたという事実に驚き過ぎて、記憶が飛んでる……

 その時から何度か上の空になってたみたいでな。教授に心配されて、早めに日本に帰っていいと言われてしまった」

 

 

 あぁ、早く帰って来たのはそういう経緯だったのか。その教授、良い人だな。一度くらいは俺も会ってみたい。……それはさておき。

 

 

「……なら、これは俺の勝手な推測なんだが――ほっとしたんじゃないか?」

 

「!?」

 

 

 俺がそう言うと、承太郎は勢いよく顔を上げて俺を凝視する。どうやら当たったらしい。

 

 

「……今、志人に言われて少しだけ思い出した。確かに俺は、何故か安心していた。……何でそれが分かったんだ?」

 

「お前がさっき前世の妻が結婚していた事を話した時、ほんの一瞬だがお前自身がそういう表情を見せたんだよ。その理由までは、分からないけどな」

 

「そう、か……」

 

 

 すると、承太郎はますます憂い顔になった。……まずいな。何か掛ける言葉を間違ってしまったのだろうか?

 

 

「……前世の俺は、本当に妻を愛していたんだろうか?」

 

「は?」

 

「前世の妻が、今世で別の男と結婚しているのに……最初に浮かんだ感情が安堵だなんて。そこは普通、嫉妬じゃないのか?

 俺は、何かおかしいんじゃないか?前世の妻に向けていた感情は、本当に愛だったのか……?」

 

「…………お前なぁ……」

 

 

 思わず頭を抱えた。……馬鹿野郎が。考えが凝り固まってるぞ。

 

 

「俺は前世でも今世でも結婚していないが、それでも分かっている事がある。……愛ってのは、人間の存在と同じくらい多種多様だって事だ」

 

「多種、多様……」

 

「そう。人によって種類も異なるし、程度も異なる。自分の女が別の男と一緒にいるのを見て嫉妬するだけが"愛"?そんな訳無いだろうが。決めつけるな。

 

 他にもあるはずだ。例えば――相手が幸せなら、自分も幸せ。相手が幸せに生きているなら、もう何だっていい。そう思う事だって"愛"だろ?」

 

 

 そう……俺が、親友に対していつもそう思っているように。もちろん俺の場合は友愛だが、男女の恋愛にもそんな"愛"があるはず。

 

 

「お前も前世の妻を見つけた時、実はそう思ったんじゃないか?彼女が幸せそうにしていたから、安心した。そうじゃないのか?」

 

「…………そう、だな……ああ、そうだ。俺はあの時、そう思った」

 

「なら問題ねぇよ。むしろ承太郎は誰よりも、前世の妻を愛しているんだと俺は思ったぜ。

 

 だって、ちょっとすれ違っただけでその女性が前世の妻だと分かったんだよな?お前、前世を思い出してから何年目だ?もう10年なんてとっくに通り越して、多分20年前後ってところだろ?

 そんなに経ってるのに、今世ではまだ一度も会えていなかった前世の妻の顔を、ずっっと覚えていた。しかも女性だし、前世と今世では髪型や化粧の違いもあったはずだ。

 

 それでも、お前はすれ違っただけで気づいた。それ程に前世の妻に対する愛が深いって事だろ?誇れよ、親友。

 お前は前世でも今世でも、たった1人の女性をちゃんと愛しているんだ。良い夫で、良い男じゃねぇか。

 

 ――少なくとも俺は、前世でも今世でも、承太郎以上に愛情深い男を知らない」

 

 

 俺の今世の父親であるあのクズとは大違いだ。ジョースター家の人間が総じて愛情深い事は知っているが、その中でも承太郎のそれは一番強いと思う。徐倫の事もあんなに大事にしてるしな。

 

 

 すると、承太郎が固まった。それからややあって、テーブルに両肘を突いて両手で顔を覆う。あれ??

 

 

「承太郎?」

 

「本当にいい加減にしろよ愛すべき爆弾魔」

 

「はぁ??」

 

「ちょっとこっち来い」

 

「え、何、怖い」

 

「いいから、ここに、来い」

 

「アッ、ハイ」

 

 

 片手で顔を覆い、もう片方の手で自分の隣を指差す。命令に逆らう方が後で怖そうなので、仕方なく席を立って椅子に座っている承太郎の隣に立つ。

 

 

「来たけど何を――っ!?」

 

 

 突然太い両腕が俺の腰に回り、そのまま引き寄せられた。承太郎は俺の胸に顔を埋めている。

 

 

「おい、何だこの体勢??」

 

「俺は、」

 

「?」

 

「俺は――本当に、妻をちゃんと愛する事が出来ていたと、思うか?」

 

「――――」

 

 

 親友の声は、震えている。……デカイ子供のようだ。気がついた時には勝手に手が動き、珍しく自分の下にあるその頭を撫でていた。

 

 

「……出来ていた(・・)、じゃねぇよ。出来ている(・・)んだ。言っただろ?お前は前世でも今世でも、たった1人の女性を……前世の妻を、ちゃんと愛する事が出来ている、と。

 前世だけじゃない。お前は今世でも、前世の妻の幸せを願っている。それは紛れもない"愛"だ」

 

「――――そうか」

 

 

 か細い声で返って来た相槌と共に、俺を抱き締める手の力が強くなった。……やれやれだぜ。しょうがないから、こいつの気が済むまで付き合ってやるとするか。

 

 承太郎は、思った事を全部吐き出そうと決めたようだ――

 

 

 ――嫉妬まではいかないものの、前世の妻が他の男と結婚し、子供までいるのを見た時。悔しく思った。自分の手で彼女を幸せにしてやれなかった、と。

 無理に探す必要は無いと思っていたくせに、実際に他の男といるのを見てから悔しがっても、もう遅い。……そんな自分が情けねえ。

 

 徐倫に何と話せばいいのか、それが憂鬱で仕方ない。探そうとしなかった事を怒られるだろうか?下手な事を言えば泣かれそうで怖い。

 また喧嘩になったら?前世のように嫌われたら?今度は関係修復も出来ないかもしれない。不安だ。

 

 それにしても前世の妻は相変わらず美人だった。さすが俺が惚れ込んだ嫁。……いや、もう今世では嫁じゃないのか。悔しい。

 あの時の男が俺の元嫁を悲しませたら、ぶん殴りに行ってやる。……そういえば、一緒にいた子供。前世の妻によく似た女の子は可愛いかった――

 

 

 ――とまぁ途中から支離滅裂になっていたが、承太郎はその後も口を閉じる事なく……結局は前世の妻の幸せを喜び、この先もそれが続くようにと心から願う事で話を終えた。やはり、俺の親友は良い男だ。

 こいつが求めていたのは、前世の妻とその今世の家族に対する複雑な感情を吐き出して、心を整理する事だったらしい。

 

 それを俺が受け止めた事で、ようやく落ち着いたようだな。最後にはすっきりした表情で礼を言われた。

 

 

「……なあ、シド」

 

「んん?」

 

「お前は俺の事を良い男だと言ったが、それならお前は俺以上の良い男だぜ」

 

「止めろよ、照れるわ」

 

「くく……っ!いつものダーリン、ハニーを交代するべきか?」

 

「止めろって!お前ハニーなんて柄か!?」

 

「はははははっ!!」

 

 

 ……うん。悪ふざけで笑えるぐらいには、元気になってくれたんだろう。良かった。

 

 

 全部終わった頃には夜も更けていたため、承太郎を家に泊める事にした。もう風呂入った後だし、雪が降ってる中で帰らせたら本当に風邪を引いてしまう。

 で、いつもは体格の問題で俺がソファー、承太郎がベッドで寝る事にしているのだが……何故か今日は承太郎がソファーで寝ると言い出して、ちょっとした言い争いになった。

 

 俺としては、帰国したばかりで疲れている承太郎に窮屈な思いをさせたくない。承太郎としては、今日は俺に散々世話になったから自分がベッドで寝るのは申し訳ない。

 そんな言い争いは、痺れを切らした承太郎がスタプラさんの時止めを発動し、俺をベッドに放り込んだ上で自分もベッドに入るという暴挙に出た事で、終了。

 

 

 承太郎は俺を拘束したまま眠った。力が強過ぎて抜け出せない。

 

 

「…………イージス、助けて」

 

「無理だよ。スタンド能力の特訓のおかげで射程距離は成長したけど、破壊力……俺の力は何をやってもEのままだったもん」

 

「ですよねー……はぁ……」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 翌朝、意外な事に目覚めはスッキリしていた。あんな逃げられない状態でよく熟睡できたな、俺……

 

 

(んん?……そういや、承太郎は?)

 

 

 ベッドの上には俺1人。親友の姿は何処にも無かった。まさか勝手に帰ったのか、と思いきやリビングから物音が聞こえる。

 

 寝室を出てそこに行くと、焼き魚や味噌汁の良い匂い。……承太郎がテーブルに2人分の朝食を準備していた。美味しそうな和食だ。

 俺を見て穏やかに微笑む、美丈夫。あまりに優しいその表情に、思わずぎょっとした。

 

 

「おはよう。ちょうど起こしに行こうと思っていた」

 

「お、おはよう……」

 

「顔洗って来いよ。そのままでも十分だが、洗った方がもっと男前だぜ」

 

「あぁ……洗って来る。飯の準備、ありがとう」

 

「俺が好きでやってる事だ、気にするな」

 

 

 優しい笑顔で見送られ、洗面所に向かう。……あいつが泊まった日はいつもなら俺の方が早起きで、朝食作るのも俺の役目なのに。

 つーか、冷蔵庫の中身は昨日の夕食でほとんど無くなったはず……って事はわざわざ早起きして、自分で食材買いに行った上で作ったのか!?

 

 今日は一体どうした?それにあの笑顔!いつもの数倍は柔らかい。何があったんだ??

 

 顔を洗ってリビングに戻ると、承太郎は椅子を引いて俺に座るよう促したり。

 食べ終わった後は皿洗いまでやってくれたり、スタプラさんに食後のお茶を淹れさせて俺の前に置いたり……

 

 

 おい、お前マジでどうした??

 

 

「ところで、シド」

 

 

 と、承太郎が皿洗いをしながら声を掛けて来た。ちょうど、俺が緑茶を口に含んだところで流し目を送って来る。

 

 

「――今の俺なら良い嫁になれると思わねえか?ダーリン」

 

 

 ――思い切り、茶を噴き出した。承太郎は大爆笑。俺は朝っぱらから怒鳴る羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 当時はまだ、承太郎の甲斐甲斐しさは最後の悪ふざけのため、あるいは前日の夜に俺がこいつの悩みを聞いてあげたお礼にやった事なのだと、そう思っていたのだが。

 

 この日以降。2人きりになると承太郎が俺の世話を焼くようになり、こちらを優先させる頻度も増えた事から。

 俺は、こいつの友愛の重さを徐々に理解する……否、理解させられていくのである。

 

 

 …………そういえば、ダーリンとハニー呼びがたまに逆転するようになったのも、これがきっかけだった気がするなぁ。

 

 

 

 

 

 

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