空条承太郎の親友   作:herz

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・「修学旅行組は、異界へ飛ばされた」と少し繋がっています。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。露伴の扱いが悪いです。

・露伴視点。




 ジョースター家のお気に入りを狙う某漫画家は、死亡フラグを乱立させながら、バッドエンドへ向かって突き進む――


「あーあ、だから言ったのに!露伴先生の馬鹿」




岸辺露伴は、猛獣達を怒らせた

 

 

 【SPW】不気味なホテルで籠城中【守護霊もどき】――というスレを発見したのは、偶然だった。

 

 ネタ探し兼息抜きのためにオカ板を覗いていたのだが、SPWと守護霊もどきの単語を発見して、そのスレの中へ入る。

 既に1000近くまで進んでいたし、スレが終わった直後に削除されてしまったようで、その全てを細かく見る事は出来なかったが……

 

 

 そんなスレの中で、興味深い存在を見つけた。

 

 

(星家――ジョースター家のお気に入り、か)

 

 

 そういえば、数年前にそんな噂話を耳にした事があった気がする。

 その時はそこまで興味が湧かなかったが、如何にもネタで溢れていそうな男だと知っていれば、すぐにでも探し出したというのに……数年も無駄にしてしまった。

 

 

(まさか比較的身近に、こんなにも面白そうな奴がいたとは!)

 

 

 噂話を耳にした程度だから、本名は知らない。しかし、スレを見た事でそれ以外の情報はいくつか集まった。

 

 大学1年で、花、虹、空……花京院さん、形兆、承太郎さんと同じ高校に通っていた事。現在は、承太郎さんと同じ大学に在学している事。スタンド能力が防御特化である事。

 花京院さんが歩く本棚と称する程に、知識量が多い事。ジョースター家の人間達から身内扱いされている事。

 

 そして何よりも!あの(・・)空条承太郎の親友だって!?前世でそんな存在がいたとは聞いてないぞ!?

 今世で出会ったのだろうか?一体どんな経緯であの最強のスタンド使いの親友になったのか、非常に気になる!

 

 しかもジョースター家のお気に入りという事は、僕が知らない彼らのプライベートや、意外な一面なども知っているかもしれない。

 こいつの記憶はきっと最高のネタになる。是非とも「本」にしたい!素晴らしい!!

 

 

 さて。問題はどうやって接触するのか、だが……僕には頼れる存在がいるからな。まぁ、何とかなるだろう。

 

 

「――それで、露伴先生。僕に聞きたい事って?」

 

 

 頼れる存在……康一くんを自宅に招き、今日のために用意した高級ケーキと紅茶でもて成す。

 ジョースター家のお気に入りである園という人物は、承太郎さん達と同じ高校……つまり、康一くんが今も在学している高校に通っていたという。彼なら、何か知っているはずだ。

 

 

「もしかしたら、君はもう知っているかもしれないな。……先日、承太郎さん達が異界に飛ばされた事件についてなんだが」

 

「あ、知ってます!仗助くんや、億泰くんから聞きました。凄く大変だったみたいで……あれ?でも、何で先生がその事件の事を知ってるんですか?」

 

「実はね……たまたま、その事件のスレを発見して見ていたんだよ。発見した時には既に終わりが近い状態で、その後すぐに削除されてしまったが。いつも通り、財団職員がやったんだろう」

 

「なるほど、それで知ってたんだ…………ん、このケーキ美味しいですね!」

 

「そうかそうか。君に気に入ってもらえて良かった」

 

 

 どうやら、ケーキでご機嫌を取る作戦は成功したようだな。これで多少は口が軽くなってくれるといいんだが……さっそく、本題に入るとしよう。

 

 

「で、その事件について。ちょっと聞きたい事がある」

 

「はい、何ですか?」

 

「――ジョースター家のお気に入りとは、どんな人物なんだい?」

 

「――――」

 

「…………康一くん……?」

 

 

 カラン、と。フォークを落としてしまった康一くんは、ケーキを食べて嬉しそうにしていた表情から一転、青ざめた表情になる。それどころか、ガタガタと震え出した!

 その尋常ではない様子を見てさすがに心配になり、僕は椅子から立ち上がって彼の隣に向かう。

 

 

「どうしたんだ?まさか、ケーキ自体に何か、」

 

「違うよッ!!」

 

「!?」

 

 

 康一くんはそう叫び、僕の片腕をガシッと掴んだ。

 

 

「駄目だよ、先生!」

 

「な、何がだ?」

 

「ジョースター家のお気に入り……園原志人さんにだけは!絶っっ対に手を出しちゃ駄目だッ!!」

 

 

 ソノハラ、ユキト……その本名をしっかりと記憶に刻み込み、出来る限り真剣な表情を作った。

 

 

「どういう事かな?君がそんなに怖がるなんて、余程の事があったに違いない。ぜひ、話を聞かせてくれ」

 

「……話を聞いたら、志人さんには関わらないって、約束してくれますか?」

 

「……あぁ、もちろん約束するよ!」

 

 

 "絶対に"関わらない、とは言えないがな。

 

 

「…………志人さんは、ジョースター家の人達から凄く愛されているんです。

 というかジョースター家だけじゃなくて、それ以外の味方もたくさんいます。まあ、当の本人は愛されている自覚も、味方がたくさんいる自覚も、あまり無さそうだけど……」

 

「ほう……?」

 

 

 康一くんから語られたのは、とても興味深い話だった。

 園原という男は、前世では仗助の恩人、今世では承太郎さんの親友。また、ジョセフさんからは本当の弟のように可愛いがられており……

 前世では承太郎さんの娘だった空条徐倫や、同じく前世でマフィアのボスをやっていたジョルノ・ジョバァーナからは、本当の兄のように慕われているようだ。

 

 さらに。康一くんは顔を合わせた回数は少ないようだが、ジョースター家の先祖だったジョナサン・ジョースターや、その宿敵だったDIOからも、大切にされているらしい。

 

 このように、ジョースター家に愛されている園原に手を出した場合、一体どうなるのか。

 その具体例として。2年前の夏に、康一くん達が通う中高一貫校で起こった事件……生徒達による、園原へのいじめがエスカレートして、最終的に彼が死にかけた事。

 

 そんないじめを行った犯人全員に対して、ジョースター家とその仲間達がどんな断罪を行ったのかも、詳しく聞いた。

 

 

「そういう訳だから、露伴先生。ジョースター家を怒らせないで!いくら先生でも、志人さんに手を出したら殺されちゃうよッ!!肉体的にじゃなくて、精神的にッ!!」

 

 

 少々興奮気味の康一くんを宥め、園原には手を出さないと約束する。そしてようやく安心したのか、彼はケーキを食べ終えてから帰って行った。…………さて、と。

 

 

(まずは、財団の東京支部での張り込みから始めるか。……幸い例のスレで、目元加工済みではあったが園原の顔写真も見た。何も手掛かりが無いよりは、発見しやすいだろう)

 

 

 ターゲットは財団からの依頼か何かで、いずれ東京支部にやって来るはず。そこで捕まえよう。

 

 忠告はありがたく受け取っておくぜ、康一くん。だが僕は、身近に最高のネタの宝庫があると知った上で、それを放置するなんてできない。

 万が一。ジョースター家に目を付けられて、報復された場合――それさえも、ネタにしてしまえば良いだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「露伴先生の約束って、信用できないんだよなぁ」

 

 

「…………仕方ない。穏便に済ませてもらえるように、あらかじめ連絡しておこう。

 先生の事をよく知っているジョースター家の人は……仗助くんと、承太郎さんと、ジョセフさん、だね。誰に言おうかな」

 

 

「仗助くん……は、プッツンしそうで怖いし。承太郎さん……は、どんな行動に出るか予測出来ないからこそ、もっと怖いし。ここは、ジョセフさんに決めた!」

 

 

「……あ、もしもし?ジョセフさん、今大丈夫ですか?……ありがとうございます!えっと、実は――」

 

 

 

 

「――という訳なんですが…………え?今からジョースター邸に?……今日は他に予定も無いので、大丈夫です、けど…………

 

 ええっ!?ジョースター家の人達を全員呼ぶ?僕がその場で全員に説明!?そっ、それはちょっと怖い……

 

 …………え、あ、待ってください、ジョセフさん!分かりました、分かりましたからどうか穏便にお願いします!露伴先生を再起不能にしちゃ駄目ですッ!!

 ちゃんと頑張って説明するので、肉体的にも精神的にも先生の命だけは助けてくださいッ!!

 

 ……はい、分かりました。今からそっちに向かいます…………はい、失礼します……」

 

 

 

 

 

 

「――――うわぁぁん!!露伴先生の馬鹿ァッ!!先生のせいで僕の方がこれから怖い目に遭っちゃうよぉ!!」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 僕が東京支部に通い始めてから、数日後。運良く早々に、園原を発見した。

 

 しかしまさか、容姿が様変わりしているとは思わなかった。今の園原は眼鏡を掛けていないし、前髪も掻き上げている。

 目付きがかなり悪いが……そういえば、花京院さんがスレでそんな事を言っていたような?

 

 僕が気づいたのは、財団職員が彼の名前を呼んで話し掛けているのを目撃したおかげだ。それが無かったら、またしばらく探し回る羽目になっていたかもしれない。

 財団職員が園原から離れる時を見計らい、彼に話し掛けるために近づこうとした、その時。邪魔が入った。

 

 

「――あれ、志人さんじゃないっスか!」

 

「よォ、志人ちゃん!」

 

 

 仗助とジョセフさんだ!くそ、先を越されたか……!

 

 

「2人共、任務帰りか?」

 

「はい!いやあ、志人さんに偶然会えるなんてラッキー!志人さんが卒業してからはあまり会えなくなったし、寂しいんスよ……」

 

「俺もだぜ!お前も承太郎もジョナサンもディオも、みんな引っ越しちまったからもうオニイサン達、寂しくて寂しくて……!!」

 

「はは、そんな大袈裟な、」

 

「「大袈裟じゃないッ!!」」

 

「うわ、息ぴったり。どうしたんだ?そんなに大声出して」

 

「いやいや志人ちゃん、いくらなんでも冷たくねェか??」

 

「だって、寂しいなら呼んでくれたらいいじゃないですか。予定合わせて、いつでも会いに行きますよ?」

 

「え、いいのか!?」

 

「本気にしますよ!?」

 

「おう、いいぞ」

 

「やったァ!!」

 

 

 ……相変わらず、うるさい。仗助はいつもの事だが、前世のジョセフさんはあんなに落ち着いていたのに、今世では仗助と同じくらい騒がしい。ふん、さすがは元親子という事か。

 その後も園原に話し掛けるタイミングを狙っていたが、仗助達がいくら待っても離れようとしないため、今日は諦めて帰る事にした。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「……仗助、ジョセフ先輩。何を見てるんだ?顔が怖いぞ」

 

「あっ!?すんません志人さん!」

 

「悪い悪い、なんでもねェよ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 次に園原が東京支部に来たのは、仗助達に邪魔された日からさらに数日後。財団職員達の会話を盗み聞きして、彼が訓練場にいる事を知った。

 さっそく、訓練場を見物できるフロアに向かう。まずは、彼のスタンドをこの目で見たい。

 

 窓ガラス越しに訓練場を見下ろすと、白い鎧を身に付けたスタンドと共にいる園原を見つけた。天使のような見た目のスタンド、か……興味深い。

 スケッチブックを取り出し、そのスタンドを描きながら、園原の側にいる2人の人物にも目を向ける。

 

 あれは……ジョルノ・ジョバァーナと、空条徐倫か。どうやら、園原のスタンドの特訓に付き合っているようだ。

 ここからでは会話は聞こえないが、2人揃ってやけに楽しそうにしている。

 

 しばらく待っていたが、スケッチを描き終わっても、彼ら2人が園原から離れる気配が無い。……今回もジョースター家に邪魔された。

 いつまでもここにいたら、周りにいる研究員達に怪しまれるかもしれない。この辺りで退散した方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

「……もう行った?」

 

「えぇ。どうやら、諦めたようです」

 

「そう……やれやれだわ。志人さんって、どうしてこうも変人ばかり引き寄せちゃうのかしら?」

 

「徐倫。それだと、僕達も変人に含まれているように聞こえますよ」

 

「あ、それは嫌。もう言わない」

 

「ジョルノ?徐倫ちゃん?何話してたんだ?」

 

「いえいえ、こちらの話ですよ。志人さん」

 

「気にしないで!」

 

「んん?まぁ、お前らがそう言うなら……」

 

 

 

 

 

 

 ……それから、また数日後。東京支部で、園原が1人でいるところを発見。ジョースター家に邪魔される前に、急いで声を掛ける。

 

 

「そこの目付きの悪い君――」

 

「「――志人!」」

 

「あ、ディオさん!ジョナサンも!こんにちは」

 

 

 またか、ジョースター家!今度はジョナサン・ジョースターとDIOだ。

 顔を合わせてしまう前に園原から離れ、合流した3人の様子を窺った。……奴らはそれぞれ、園原の背中を押したり、彼の手を引いたりしてその場から離れて行く。

 

 

「ちょっと、何処に行くんですか?俺、さっきディオさん達の前に誰かに声を掛けられて、」

 

「えっ?志人の側にそんな人、いたかな?……ディオは見たかい?」

 

「いいや?見てないな。気のせいだろう」

 

「あれ……?確かに、声が聞こえたはずなんですが」

 

 

 おい、待て。横合いから声を掛けられた園原ならともかく、僕の反対側から園原に声を掛けた奴らの目には、どう考えても僕の姿が見えていたはず、

 

 

「大丈夫、気のせいだよ。――誰も、いなかったからね」

 

「ああ――誰も、いなかったぞ」

 

 

 と、そう言いながら園原に笑い掛ける奴らは、一瞬、目だけを僕の方へ向ける。その視線の冷たさに、ぞっとした。

 思わず、そこから逃げ出す。……あの目で確定だな。奴らは、僕と園原の接触を意図的に妨害したのだ。

 

 もうジョースター家には全てバレているのかもしれないが、そんな事は関係無い。僕は諦めないぞ!

 

 

 

 

 

 

「……この前の仗助とジョセフ先輩や、ジョルノと徐倫ちゃんもそうですけど、ディオさん達って俺に何か隠し事してますよね?

 最近。俺が東京支部にいる間は、ずっとくっついて来ますし……いや、それは嫌じゃないしむしろ嬉しく思いますが、まるで護衛されているような気分です」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……あー、なるほど。マジで護衛だったんですね。俺は誰から狙われてるんですか?」

 

「すまないが、それは言えない」

 

「ジョセフから聞いてるよ?君に柱の男達は危険だって話したのに、いつの間にか彼らと仲良くなっていたと」

 

「い、いや、それは……実際に話してみないと、本当に危険なのかどうかも分からないと思ったので……」

 

「……お前の偏見を持たない主義に救われた私が言うのもなんだが、今回ばかりはその考え方は危ういぞ」

 

「今、志人を狙っている人は、目的のためなら手段を選ばないタイプの人間で、常識が通用しない」

 

「私も承太郎達から話を聞いたが、そいつは相当イカれているらしい。……何がなんでも、志人と接触させる訳にはいかないのだ」

 

「だから。君にはその人の名前も、どんな力を持っているのかも教えないよ。君自身に、その人への興味を持たせないためにも、ね」

 

「頼むから、自分から相手を探すような真似はするなよ?いいな?」

 

「……分かりました。そうします」

 

「うん、よしよし」

 

「いい子だ」

 

 

 

 

 

 

 それ以降も、東京支部を訪れる園原の姿を何度も発見したが、彼の側には毎回必ず誰かがいる。よく見るのはジョースター家の人間だが、それ以外の人間が側にいる事も多い。

 どいつもこいつも、僕の狙いに気づいているらしい。園原の側から離れようとせず、中にはあからさまに殺気をぶつけて来る奴もいた。……隙が無い!

 

 気がつけば、既に1ヶ月以上経過している。だが、僕は諦めたくない。……そこで閃いたのが、東京支部以外の場所で捕まえる事だった。

 しばらく東京支部に通う事を止め、僕が諦めたと見せかけて……それから1週間ほど過ぎた頃に、再び行動を開始する。

 

 

 目指した場所は、承太郎さんが通っているという大学。……以前、康一くんとの雑談の中で、彼が通っている大学の名前が出た事を思い出したのだ。

 そして例のスレの中には、園原が彼と同じ大学に通っているという情報もあった。ここで張り込んでいれば、そのうち――

 

 

(――来た!!)

 

 

 大学の入り口から出て来る、園原を発見した。見た目は例のスレに出ていた写真の通り。しかも1人だ!

 今は夕方だし、講義が終わった後なのだろう。きっと、これから自宅に帰るはず。

 

 人目があるから今は接触できないが、もしも今日接触できなくても、自宅を知る事ができればこっちのものだろう。さっそく、尾行を開始する。

 

 

 ……大学に近い駅から電車に乗って、とある駅で降りた。ここが自宅の最寄り駅か?

 尾行を続けていると、段々人気が無くなってきた。接触するチャンスが来るかもしれない……そう思っていたら、園原が突然走り出した!慌てて追い掛ける。

 

 曲がり角の先に消えた園原の後に続くと――そこには、誰もいなかった。横に細い路地があるぐらいで、人影が全く無い。

 

 

「馬鹿な……!いくらなんでも、逃げ足が速過ぎる!」

 

 

 その後も周辺を隈無く探したが、結局園原を見つける事は出来なかった。この僕を出し抜くとは……!

 許さないぞ、園原!次こそは、お前を絶対に「本」にしてやるからなッ!!

 

 

 

 

 

 

「…………ふぅ。ちょうど細い路地があって良かった。ありがとう、イージス。不可視のバリアのおかげで助かったぜ」

 

「うん、どういたしまして。……それで、さっき通り過ぎて行った男だけど、あれは……」

 

「…………あぁ。岸辺露伴だった」

 

「志人風に言うなら"アイエエエ!?"だね」

 

「本当にな!!何でだ!?何で俺が露伴に尾行されて、あ、待てよ?ディオ達が言ってた、最近俺を狙ってる奴ってまさか……!?」

 

「そのまさか、だと思うよ。……これはまずいね。もしも、露伴のスタンドで志人の記憶を読まれてしまったら、前々世の事がバレてしまう」

 

「本当にまずいぞ、それは。……だが、今はとりあえず移動して、露伴の事を知らない振りをしながら承太郎に相談だな。

 身を隠せそうな場所を見つけたら、電話してみよう。あいつのバイトも、そろそろ終わる頃だと思うし」

 

 

 

 

「もしもし?バイト終わったか?……そうか、お疲れ様。…………あー、分かるか?そう。実はついさっき、ちょっと困った事があって――」

 

 

 

 

「――って訳で、さっき撒いて逃げて来たばかりなんだが……

 

 え?ギザギザのヘアバンド?あぁ、確かに付けてたな。……髪型?うん、横に流してた。……そうだ。デカいスケッチブックも持ってたぜ。

 そこまで言い当てるって事は、知ってるんだな?俺を尾行していた相手の事を。最近、俺を狙ってるっていう奴はあの人だったのか?…………おい、承太郎?」

 

 

 

 

 

 

「……あれ?じょ、承太郎くーん?――もしかして、めちゃくちゃ怒ってる??」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 翌日。昨日と同様に大学前で張り込みをしていたら、日が暮れた頃に園原が姿を見せた。尾行を開始する。

 奴が進む道は、昨日と同じだ。電車に乗って降りた駅も同じ……ならば、先回りするとしよう。

 

 一度奴から離れ、昨日撒かれた辺りまで急いで向かう。物陰に隠れて息を潜めていると、やがて園原がやって来た。

 周囲には誰もいない。……ようやく到来したチャンスを無駄にしないよう、慎重に行くとしよう。

 

 僕が隠れている場所を通り過ぎた園原の背後に忍び寄り、無言でヘブンズ・ドアーを呼び出し、奴の体に触れる――

 

 

「――は?」

 

 

 刹那。目の前で園原の姿が消えた……否、消えたのではなく、いつの間にか前方に瞬間移動していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 ――突然姿を現した、空条承太郎とスタープラチナの手によって。

 

 

「……やれやれだぜ。これで現行犯だな。スタンドを出している事が何よりの証拠だ」

 

 

 承太郎さんは、止まった時の中で園原を抱き上げて移動したのだろう。

 ぎょっとしている彼を抱えたまま、酷く冷たい目で僕を見下していた。園原の側には、奴のスタンドの姿もある。

 

 それに気を取られていた僕は、背後から迫る敵への対応が遅れてしまった。

 

 

「――ハーミットパープル!」

 

「――ストーン・フリー!」

 

 

 茨と糸が体中に巻き付き、拘束された。身動きが取れない……!!というか、いつから僕の背後にいたんだ!?周囲に誰もいない事は確認したはずなのに!

 

 

「――ホワイトスネイク」

 

 

 そして、頭を触られる感覚がした次の瞬間。意識が遠退き、それからすぐに戻って来る。……何故か、僕のスタンドが勝手に消えていた。

 

 

「っ、ヘブンズ・ドアー!……な、何故出て来ない!?」

 

「君のスタンドDISCは、抜き取らせてもらった。しばらくは没収だよ」

 

「何だと……!?」

 

 

 色黒の神父が、手の中にあるDISCを軽く振る。スタンドDISC、と言っていたな?まさか、あれの中にヘブンズ・ドアーが!?

 

 

「くっ……ふざけるなッ!!僕のスタンドを返せ!」

 

「――ふざけてんのは、てめェだろ……なァ、露伴」

 

「っ!?」

 

 

 ドスの利いた声に驚き、そちらを見ると……そこには、鬼の形相になった仗助の姿が。

 奴の側には、茨と糸の先にいるジョセフさんと空条徐倫……だけでなく、残りのジョースター家の3人まで揃っていた。

 

 全員が、重苦しい殺気を身に纏っている。息を呑んだ。冷や汗も流れる。

 

 

「志人!」

 

「っ、シド!」

 

 

 園原のスタンドと承太郎さんが、地面に降りた途端大きくふらついた園原の体を支えている。

 そんな奴に対し、ジョースター家の誰もが心配そうな声で名前を呼ぶ。……先程までの恐ろしい殺気は、霧散していた。何だこの扱いの差は。

 

 

Fratello(兄さん)、大丈夫ですか?」

 

「大分ふらふらしてたけど……どうしたの?」

 

「すみません、ご心配お掛けしました。……不可視のバリアと防音バリアの重ね掛けが、予想以上に負担になっていたようです。

 最近の特訓中では、こんなに疲れる事は無かったはずなんですが……」

 

「それはそうだよ。だって今回は、その重ね掛けのバリアを承太郎と俺用で1つ、ジョナサン達用で1つ、合計2つも張っていたんだから。

 二重の効果のバリアを2つ張ったら、疲労も2倍だよ。四重のバリアを1つ張っているのと同じ状態だもん。負担になって当然だ」

 

「……それを早く言えよ、イージス」

 

「志人のために、あえて言わなかったのさ。今回体験した事で、バリアの重ね掛けの代償がどんなものか、分かっただろう?これからも体力と精神力をちゃんと鍛えてね」

 

「お前、本当にたまにそういう所あるよな……」

 

 

 園原のスタンドは康一君のスタンドと同じく、自我があるタイプだったのか!

 それに、不可視のバリア?防音バリア?重ね掛け?どういう事だ?奴のスタンド能力は、例のスレでの話では防御特化だったはず……

 

 

「1人で帰すのは不安だな。……プッチ」

 

「何だい?ディオ」

 

「志人を自宅まで送り届けてくれ」

 

「それは構わないが……こいつのスタンドDISCはどうする?」

 

「そうだな……後程、俺が回収しに行く。それまではお前に預けておこう」

 

「分かった」

 

「おい、待て!それを返せ、っ、うっ!?」

 

 

 プッチと呼ばれた神父を止めようとした時、茨と糸の縛りが強くなった。

 さらに誰かに背中を蹴られ、あえなくうつ伏せに倒れる。縛られた状態では起き上がれない。くそ……!!

 

 

「露伴センセー、うるせェぞ。黙ってろ」

 

「あんた、自分の立場がまだ分かっていないようね?」

 

 

 また殺気が膨れ上がった。ジョセフさんと空条徐倫の冷たい声が聞こえる。……これ以上刺激しないように、黙っておこう。

 

 

「……さあ、志人君。歩けるかい?無理そうなら支えて歩くよ」

 

「大丈夫です、1人で歩けます」

 

「おう、志人。気をつけて帰れよ」

 

「ゆっくり休んでね、志人さん」

 

「あ、あぁ。ありがとう」

 

 

 しかし。僕に対する冷たい声は、園原に対する温かい声へと変化した。だからその扱いの差は何だ?気味が悪い。

 

 

「…………あー、承太郎?」

 

「ん?」

 

「ジョナサン達も、だけど……あまり、やり過ぎるなよ?その人に何かあったら悲しむ人達だって、きっといるはずだろ?」

 

「ああ、それは分かってるぜ」

 

「そ、そうか?なら良いんだが――」

 

「――大丈夫だ、殺しはしない」

 

 

 承太郎さんのその言葉を聞いた瞬間、血の気が引く。

 

 今の僕は地面にうつ伏せに倒れているから、見上げても承太郎さんの表情はよく見えないが……

 抑揚の無い声で発せられたその言葉を聞けば、この後の展開は容易に想像する事ができた。

 

 

 殺しはしない(・・・・・・)……それはつまり、殺さない範囲でヤバイ事ならやる、という事だろ?

 

 

「待ってくれ。その言い方、嫌な予感が、」

 

「プッチ。シドの事を頼んだぞ」

 

「了解した」

 

「えっ、プッチさん!?」

 

「志人さん、お疲れ様っス!」

 

「お疲れ様でした、Fratello(兄さん)!」

 

「じゃあね、志人。あとは僕達に任せて!」

 

「待って!?仗助もジョルノもジョナサンも、その笑顔怖いぞ!?

 確実に何かやらかすつもりだろあんた達!ちょっ、……あー!岸辺さん、ごめんなさいぃぃ!!」

 

「志人。被害者である君が、ストーカーに謝罪する必要なんて無いんだよ?」

 

「イージスの言う通りだぞ、志人君。ジョースター家のお気に入りに手を出した奴が悪いのだ」

 

 

 ……園原が神父に引きずられるように退場した後、その場は一気に静かになった。

 

 

「さあて――」

 

「あ、ぐ……っ!?」

 

「――俺の親友に手を出すとは……全く、いい度胸してんじゃねえか。なあ?センセー」

 

 

 承太郎さんは僕の胸ぐらを掴み、無理やり体を起こさせた。口端を吊り上げる彼の目は、先程と変わらず冷たい。

 まるで、ゴミを見るような……否、実際に僕をゴミとして見ているのかもしれない。そうとしか思えない程に、冷めた目だ。

 

 

「……昨日の俺は、ちょうどバイトに出ていてな。志人とは別行動だった。

 どうしようもなかった事だが、俺は志人を1人にしちまった自分に腹が立っている。だが、それ以上に……志人に付き纏うストーカー野郎が許せねえ。

 

 それが誰なのかは、もう分かってるよなあ?――てめえの事だぞ、岸辺露伴ッ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

 

 胸ぐらを掴まれた状態から、地面に叩き付けられた。仰向けに倒れている僕を、ジョナサン以外のジョースター家が囲み、承太郎さんとよく似た目で見下す。

 

 

「……あんなにガードしてたんだから、あたし達にとって志人さんがどれだけ大切な存在なのか、ちゃんと理解できたはずでしょ?

 

 それなのに、わざわざあの人に手を出すなんて……テメーの脳ミソは腐ってんのか?」

 

「腐ってるどころか、こいつの頭の中にはそもそも、理解できる程の脳ミソ自体が無いのでは?

 

 頭蓋骨を開けば分かりますかね?脳ミソがあるかどうか」

 

「それでもしも、中身がちゃァんと詰まってたら……

 

 立派な脳ミソがあるのに、俺達のお気に入りちゃんに手を出した大馬鹿、って事になるなァ。ハハハ」

 

 

 僕を馬鹿にして嘲笑する空条徐倫、ジョルノ・ジョバァーナ、ジョセフ・ジョースター。

 

 

「……あの子の過去は、貴様のような低俗な人間が遊び半分で覗いていいものではない。恥を知れ、この愚か者が。

 

 否、ストーカー行為に及んだのだから犯罪者と呼ぶべきか?」

 

「全くもって、ディオさんの言う通りっスねえ。……志人さんの人生は、小さい頃から散々なものだ。

 承太郎さんと出会った辺りから変わっていったらしいけど、それ以前の記憶は、知り合いでもないストーカー野郎に……テメーなんかに覗かれたくねェと、あの人だってそう思うはず。

 

 だから。二度と志人さんに接触させないためにも、じっっくりと、教え込まないと。……そうっスよね?承太郎さん!」

 

「ああ……その通りだ、仗助。そいつのイカれた頭でも理解できるように……いや、頭だけじゃねえな。体にも覚えさせればいい。

 

 俺達が囲っているお気に入り……園原志人に手を出せば、一体どうなるのかを、な……」

 

 

 静かに激怒するDIO、東方仗助、空条承太郎。

 

 

「……露伴君。君がやった事は謂わば、猛獣達が檻をぶち壊して外に出てしまう程に、その怒りを煽る行動だった。

 ――猛獣達のお気に入りの飼育員に手を出してしまった、君が悪いんだよ?

 

 という訳で。僕達の怒りを煽った君には、しっかりと責任を取ってもらう事にしたから。そのつもりでいてくれ」

 

 

 そして。笑顔で"死刑宣告"する、ジョナサン・ジョースター。……猛獣達からは、もう逃げられないようだ。

 

 

(――猛獣の飼育員ならこいつらの手綱をちゃんと握っておけよッ!?おのれ園原ァ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はい、広瀬です。どうしたんですか?露伴先生。いきなり電話して来るなんて珍しい…………え?っ、ええっ!?

 どうしちゃったんですか、先生!あなたが僕にそんなに謝って来るなんて……!?

 

 …………僕の忠告に素直に従っておけば良かった?……ジョースター家が怖い??……もう志人さんには絶対に近づかないから、自分の代わりに謝っておいてくれ、って……!?

 

 ちょっと待ってください!先生の身に何があったんですか!?ジョースター家はあなたに何をしたんですか!?

 …………はっ?殴って直してのエンドレス?もう思い出したくないから切る?ちょっ、あ、先生?もしもし?先生!?」

 

 

 

 

「……ほ、本当に切れちゃった……仗助くん達、露伴先生に一体何をしたんだろう?

 

 というか殴って直してのエンドレスって、まさか仗助くんのスタンドで?

 いやいや、ジョルノくんのスタンドもあり得るし、もしかしたらジョセフさん達の波紋でも……?」

 

 

「…………」

 

 

「……今度、先生に何か差し入れしてあげようかな?うん、そうしよう。――あーあ、だから言ったのに!露伴先生の馬鹿……」

 

 

 

 

 

 

 




おまけの小話↓


※猛獣達の檻の中へ引きずり込まれた子羊くん=康一(第三者視点。キャラ崩壊あり)
 
 
 猛獣達の檻の中……ジョースター邸に招かれた康一は、全員集合したジョースター家の人間7人の目の前で、小さく震えながらも事の次第を説明する。
 全てを話し終えた頃には、7人の殺気が最高潮に達しており、康一は真っ青になった。

 そんな康一に最初に気づいたのは、ジョナサンだ。
 
 
「……みんな、ちょっと落ち着こう。康一君が怖がってる」
 
「おォっと!ごめんな、康一」
 
「……すまなかった」
 
 
 謝罪と同時に殺気が収められ、康一はようやく一息ついた。
 そして彼らが落ち着いたのを見計らい、肉体的にも精神的にも、露伴の命だけは助けて欲しいと懇願する。
 
 
「肉体的には、もちろんやらねェけどよ……精神的にも駄目か?」
 
「駄目だよ仗助くんッ!!」
 
「…………どうしても、駄目か?康一。シドの記憶を勝手に覗くなんて下衆な行為は――例え実行しなくても、考えただけで万死に値すると、俺は思うんだが」
 
「万死ッ!?だだだ駄目ですよ承太郎さん!!スタープラチナはしまってください、お願いします!!」
 
 
 その後。康一が必死にお願いした事で、ジョースター家は渋々だが、その願いを聞き入れた。
 
 
「……ではさっそく、志人さんを護衛する計画を立てましょうか。僕達以外の仲間達にも協力してもらって、」
 
「あ、その前に!……志人には、露伴の存在を秘密にしておいた方が良いぜ」
 
「はァ!?何でだよ、ジジイ!志人さんにも話しておかねェと危ないだろ?」
 
「そうしたいのは山々なんだがなァ……あの子には前科があるから……」
 
 
 ジョセフ曰く。以前、園原に柱の男達の危険性について話したのだが、それにも関わらず、彼はいつの間にか柱の男達と仲良くなっていたという。
 もしかすると。注意を促す事が、逆に園原に興味を抱かせる事になってしまうかもしれない。
 
 
「なるほど……そういう事だったのね。確かに、それはまずいわ。志人さんの偏見を持たないところは長所だと思うけど、今回ばかりは、ね……」
 
「……あの子は相手を理解するための手段として、対話を好むからな……岸辺露伴が相手でも、それは変わらないだろう。なにせ、元吸血鬼であるこの私に対して、物怖じしなかった男だからな」
 
「ディオが言うと説得力が増すね。……じゃあ、志人には秘密にしておこうか」
 
「……そうだな。余程の事が起こらない限りは」
 
 
 そして後に、承太郎が言う余程の事……露伴がわざわざ大学前までやって来て、園原を尾行するという事件が起こってしまうのだが……それはさておき。
 
 
「……協力者はどうする?俺としては、アバッキオとブチャラティを加えたいんだが」
 
「確か、前世で元警官だった人と、今世で警官になってる人っスよね?それは賛成です!あとは……あっ、形兆と花京院さんは?」
 
「リサリサさんはどうかしら?それに、エルメェス達も」
 
「シーザーちゃんも、ありだと思うぜ!」
 
「それなら、前世の僕の師匠にも加わってもらいたいな。ウィルさんも、志人を気に入っているようだし」
 
「では僕も、前世の護衛チームの面子を推薦します。……ああ、そうだ。非常に気に入らないのですが、背に腹は代えられないので、場合によっては暗殺チームにも声を掛けてみましょう。動ける人間は多い方が良い」
 
「……承太郎、ジョセフ。お前達の前世の旅仲間は?もしも声を掛けるなら、私の元配下達に頼むのは止めておくぞ。鉢合わせると、いろいろまずいだろうからな」
 
「ああ、その方が良い」
 
「そうしろ、そうしろ!ポルナレフ達には、俺から声を掛けるつもりだった。ディオの元配下がいたら、護衛どころじゃなくなるわ!」
 
「ならば、私はその代わりにプッチを推薦しよう。最悪の場合、あいつに岸辺露伴のスタンドDISCを抜いてもらえばいい」
 
「なるほど、その手が!…………あァー、そうだなァ……俺も気に入らねェけど、志人の人を見る目を信用して、カーズ達にも声掛けてみるか……」
 
「……こうなったら、志人さんの事を知っていて、あの人を守ってくれそうな人達全員に声を掛ければ良いんじゃないスか?ジョルノが言ってた通り、動ける人間は多い方が良いっスよ」
 
「そうだね、それがいいかもしれない。今みんなが名前を出した人達、全員に事情を説明しよう。その上で協力してくれる人達を、計画に加えればいい。どうかな?」
 
「賛成!」
 
 
 
 
 
 
「――どうしよう。何だか大変な事になりそうな予感……」
 
 
 ジョースター家の者達が真剣に計画を立てている様子を見守っていた康一は、そう小さく呟いて、深くため息をついた。
 
 
(お願いだから、ジョースター家を本気で怒らせるような事をやらかさないでね!露伴先生……!!)
 
 
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