空条承太郎の親友   作:herz

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・「空条承太郎の友人」シリーズ最終話の後。男主達が大学に入学する前の春休み中。

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。男主視点。




 ――仲良しジョースター家は、今日も平和()です。




空条承太郎の親友のパーカーの中は、縄張り

 

 

 

 ジョナサンとディオの引っ越しを手伝った日から、数日後。まだ新居に移ったばかりの時期に、その事件は起こった。

 

 

「――誰かその猫を捕まえてくれェッ!!」

 

 

 ある任務を終えて、東京支部でその報告を終えた時、某銀髪天パ侍と同じ声が響いた。そちらを見ると、ジョセフが黒猫を追い掛けている。

 

 ……さすがは猫、だな。ジョセフの声に応じて、周囲の人間が猫を捕まえようとしたが、ひらりひらりと逃げている。

 中にはスタンドまで使っている人間もいたが、それさえも避けられていた。

 

 まさか、あの猫はスタンドが見えているのか?それなら東京支部にいる理由も、なんとなく理解できる。

 

 

「とりあえず、捕まえるか」

 

 

 黒猫はちょうど、こちらに向かって逃げて来た。しかしその進行上に、台車に段ボールを積み重ねて運んでいる人間の姿が。

 嫌な予感を感じて、咄嗟に猫に向かって走り出す。……その予感の通り、足元に来た猫に驚いた人間が、台車の操作を誤って積み重ねた段ボールを落としてしまった。

 

 

「バリア展開!」

 

 

 猫の上に荷物が落ちる前に、そいつを捕まえて庇い、イージスに俺ごと護るバリアを張らせる。

 段ボールが落ちた衝撃が、バリアを通して伝わって来た。……それなりに重かったのだろう。猫に当たらなくて良かった。

 

 

「全く、無茶しないでよ本体!自分から捕まえに行くんじゃなくて、バリアを張るだけでも良かったはずだろ!?」

 

「悪い、イージス……久々に、体が勝手に動いちまった」

 

「これだからお人好しは!!」

 

「それより、念のために猫の周りにバリアを張ってくれ。

 今は奇跡的に大人しいが、正気に戻ったらまた逃げようとするかもしれない。俺の服と腕ごとで構わないから」

 

「……はいはい、分かったよ」

 

 

 庇った拍子に、俺のパーカーのファスナーが開いた所から中に入ってしまった黒猫は、意外にも大人しくしている。

 猫は暗くて狭い所にいると、落ち着く生き物だ。このままの状態が続くのであれば、好都合。

 

 

「志人!大丈夫だったか!?あと捕まえてくれてサンキュー!」

 

「俺は大丈夫ですけど、ジョセフ先輩。大きな声を出さないで下さい。この猫、今めちゃめちゃ唸ってます。猫は大きな音とか声が苦手なので」

 

「お、おう。悪い」

 

 

 服の上から上手く抱えて、イージスにバリアを張ってもらい、立ち上がる。

 そこで大声を出しながらジョセフがやって来ると、猫が唸り始めたので彼を止めた。せっかく落ち着いてくれたのに、また興奮させたらまずい。

 

 

「……で、この猫は?誰かの飼い猫ですか?さっきの逃走中、スタンドを使われても難なく逃げ切っていたし、もしかしてスタンドが見えているのでは?」

 

「あー……ここだと人が多過ぎるなァ。場所を移すぜ」

 

 

 そう言って歩き出したジョセフについて行くと、ある部屋まで案内される。……その室内には、仗助がいた。しかも体中に怪我を負っている!

 

 

「志人さん?」

 

「仗助、どうした!?その怪我は……!?」

 

「おおォ、派手にやったな!?ちょっと待ってろ、今治療する」

 

 

 仗助は自分の怪我は治せない。おそらく、ジョセフが戻って来るのを待っていたのだろう。波紋による治療が終わった後、さっそく本題に入る。

 

 

「それで。この猫といい、仗助の怪我といい……一体何が起こったんですか?」

 

「…………説明する前に、1つだけ真実を話しておく。間違いなく驚くだろうが、あまり大きな声を出すなよ?」

 

「……分かりました」

 

 

 ジョセフが珍しく真顔でそんな事を言うので、思わず身構えた。

 

 

 

 

 

 

「その黒猫は――承太郎だ」

 

「――――」

 

 

 大声を上げそうになったが、唇を噛んで耐えた。その拍子に血が出てしまった瞬間、仗助のスタンドによって一瞬で治された。反応が早い。

 

 

「何も唇噛んでまで耐えなくてもいいじゃないスか!?」

 

「仗助、静かにしてくれ。こいつがまた唸り出した。俺が耐えた意味がねぇだろ」

 

「猫のためかよ!?あ、いや、承太郎さんのためか……」

 

「ほ、本当に、承太郎?この猫が……?」

 

「そうだぜ、イージス。俺達はこの目で見たんだ。承太郎が、あの女のスタンド能力で猫に変身させられちまった瞬間をなァ」

 

「承太郎さんは、俺を庇ったせいで……」

 

 

 苦々しい表情を浮かべたジョセフと、悔しそうにしている仗助から、事の経緯を聞いた。

 

 今日。仗助は、ある女のスタンド使いを捕らえるために、財団職員達と共に任務を遂行した。

 それが成功して、捕まえた女を東京支部まで護送したのだが……どうやら、その女の方が上手だったらしい。

 

 女のスタンド能力について、財団が事前に調査したところ。その能力は、自分自身を猫科の動物の姿に変身させるという、変わった物だった。

 実際に、仗助と戦った時は本物のライオンや虎、チーターといった猫科の猛獣に変身していたそうだ。

 

 ……しかし。女は自身のスタンドの真の力を、仗助達に捕らえられた後も隠していた。その真の力とは――

 

 

「――自分が触れた相手を(・・・・・・・・・)、猫科の動物にする能力……」

 

「あァ。猫に変身させる事ができるのは、自分自身だけじゃなかった。それこそが、あの女の本当の力だったんだ」

 

 

 それにまんまと騙された仗助達は、女が抵抗を諦めた演技をしているうちに隙を見せてしまい、そこを突かれた。

 最初に狙われたのは仗助だったが……その場に居合わせたのが、たまたま別の任務の帰りに東京支部に来ていた、承太郎とジョセフだった。

 

 承太郎は女の不自然な様子にいち早く気づき、スタンドを出して、咄嗟に仗助と女の間に割って入ったのだという。

 そして。女の手がスタープラチナに触れた瞬間、承太郎は黒猫になってしまった……

 

 

「……本体ではなく、スタンドに触れた?」

 

「そう!そこが問題なんスよ。あの女をボコボコにした後に聞いたんスけど……」

 

 

 承太郎は猫になってしまった後。中身も猫になってしまったのか、パニックになってその場から逃げ出したようだ。

 それを追い掛けたのがジョセフで、最終的に俺が捕まえた訳だが……

 

 その間に、仗助は女と再戦した。大怪我を負いながら、今度は承太郎に手を出された怒りで、情け容赦無く相手をボコボコにして、見事に勝利。

 そして彼は、"承太郎を元に戻せ"と女に命令したのだが、女は嗤いながら"すぐには戻らない"と言ったらしい。

 

 

 "自分の手が相手の本体ではなく、スタンドに触れた場合――何をどうしたって、1週間以上は猫のままだ"と。

 

 

「…………1週間……」

 

「1週間も、猫の姿のまま?それじゃあ承太郎は、その間ずっと無防備じゃないか!こんな姿では万が一の時に、自分の身を守れない……」

 

「そのせいで腹が立って、あの女の顔面をわざとぐちゃぐちゃな状態で治してやりました。あいつ、自分の顔に自信がありそうだったので」

 

「よォし、よくやった!さすが俺の息子!」

 

「ナイス復讐」

 

「ありがとう、仗助!」

 

 

 今だけは黄金の精神なんざ知るか。例え相手が女でも、俺の親友に危害を加えた罪は重い。ジョセフやイージスと共に、仗助を褒め称えた。

 

 

「で、あの女を気絶させれば能力を解除できるかもと思って、実際にやったんスけど……その様子じゃ、駄目だったみたいっスね」

 

「何をどうしたって、1週間以上は猫のまま、か……それは例え本体を気絶させても、って事だったんだろうなァ」

 

 

 気絶した女は、今度こそ財団職員達が連行したという。女が目覚めたら、スタンド能力について拷も、ゲフン、聴取して聞き出すそうだ。

 ……なお。承太郎に手を出されて激怒していたのは、仗助だけではなかったらしい。財団職員達も、である。

 

 

 気を取り直して、猫になってしまった承太郎の話に移った。

 

 

「今の承太郎さんって、スタンド使えるんスかね?志人さんの話じゃ、逃走中に他のスタンドが見えてたみたいだし」

 

「おォい、承太郎!スタンド出せるなら見せろー!」

 

「ちょっと、ジョセフ先輩……」

 

 

 時間が経って余裕が出て来たのか、ジョセフがそう言って、俺のパーカーの中にいる承太郎を覗き込み、煽る。

 あまり刺激しない方が良いと、俺が止めようとした……その時。承太郎の毛並みが逆立った。

 

 

「――ヴヴヴゥゥ……!!」

 

「おお!?」

 

「でッ、出た!!」

 

 

 承太郎のスタンドが、出た。ただし、その姿は様変わりしている。

 

 

「これ、豹か!?」

 

「色とか身に付けてる物は、スタープラチナとそっくりっスね……でも、豹だ!?」

 

 

 どう見ても、豹だな。仗助の言う通り、体の色や装飾品はスタープラチナの物だが、見た目は間違いなく豹である。……つーか、

 

 

「――カッコいい……」

 

「えっ?"怖い"じゃなくて??」

 

「マジかよ志人ちゃん」

 

 

 仗助とジョセフのドン引きしたような声が聞こえたが、俺は誘われるようにその豹に触れた。

 

 一瞬びくりと震えたが、それも最初だけだった。できる限り優しく撫でていると、本体の唸り声は小さくなり、やがて聞こえなくなる。

 それどころか、スタンドの豹が俺の膝に顎を乗せて来たので、頭を撫でる手は止めなかった。

 

 

「――かわいい……」

 

「だから"怖い"じゃなくて??」

 

「マジかよ志人ちゃん……」

 

 

 俺が一番好きな動物は黒豹だ。もちろん、ただの豹も好きだ。カッコいい。そして俺はどちらかというと猫派だ。かわいい。

 

 すると、スタンドが消えた。それから服の中でゴソゴソと動く気配。擽ったいんだが?

 

 

「あ」

 

「顔出した!」

 

 

 パーカーの中から、黒猫が顔を出した。先程よりも穏やかな表情だ。ちょっとぐらいは慣れてくれたんだろうか?

 綺麗な翡翠の瞳に見つめられると、この黒猫は確かに承太郎なんだなと、改めて納得する。目の色がそっくりだ。

 

 ゆっくりと瞬きを返すと、それほど間を空ける事なく、同じ瞬きが返って来た。猫式の挨拶である。……今なら、触れるかもしれない。

 バリアの中に手を通して、鼻先に人差し指を近づける。こちらの匂いを嗅ぎ終わるのを待ってから、顎下にそっと触れてみた。……目を細めて気持ち良さそうにしている。かわいい。

 

 

「なんか、ゴロゴロ言ってるぞ?」

 

「確かそれって、猫の機嫌が良い時の合図だったような……?」

 

「そうそう。諸説あるみたいだけど、猫は喉頭……人間で言うと、喉仏に当たる部分だね。

 その筋肉を収縮させる事で声帯を振動させて、この音を出している、と考えられているらしいよ。ちなみにこれは、志人の記憶から引き出した知識」

 

「志人の頭の中には、そんな知識まであるのかよ……」

 

「グレートっスね」

 

「……機嫌が良いって事は、今なら俺達も触れるんじゃ?」

 

「あ、待ってジョセフ!」

 

 

 つい、撫でるのに集中し過ぎていたらしい。イージスの焦った声が聞こえ、視界の端から手が伸びてバリアの中に入った事に対し、反応が遅れた。

 

 

「――フシャアァァッ!!」

 

「痛ッ!?」

 

「ジョセフ先輩!?」

 

「あーあ、だから言ったのに」

 

「おお、見事な猫パンチ。……ほら、馬鹿ジジイ。治すから手を出せ」

 

「…………可愛い孫に嫌われた……」

 

「はいはい」

 

 

 承太郎は毛を逆立て、思い切り威嚇してジョセフの手に猫パンチを繰り出し、再び俺のパーカーの中に隠れてしまった。超唸ってる。よしよし、落ち着け。

 イージスと仗助は呆れ顔。ジョセフは涙目だった。手の怪我よりも、心のダメージの方が大きかったようだ。

 

 イージスのバリアは、本体である俺が味方と認識している相手であれば、俺が拒否しない限り簡単に入り込めてしまう。

 つまりジョセフが怪我をしたのは、俺の責任でもある。本当にすみませんでした。

 

 

 その後。承太郎が落ち着くのを待っていろいろ試してみたが、やはり彼は中身まで猫になっているらしい。

 人間の時の記憶は無さそうで、おそらく言葉も通じていない。さっきジョセフに言われてスタンドを出したのは、ただの偶然だったようだな。

 

 それから、俺達がいる部屋に財団職員達がやって来た。例のスタンド使いの女の聴取が終わったそうだ。

 承太郎を元に戻す方法については、本当に1週間以上待つしか無いという。

 

 職員達の中には、女を殺害すれば能力が解除されるのではないか、なんて事を言う過激派もいたようだが……女を殺害すればむしろ、一生人間に戻れなくなるらしい。

 聴取の場には、心を読む能力を持つスタンド使いも同席していて、その人によると、女はちゃんと真実を話していたとか。

 

 心を読む?……もしかして、ダービー弟のアトゥム神?

 

 

「……とりあえず、そろそろ帰ろうぜ」

 

「帰ると言っても……承太郎はどうしますか?」

 

「志人さんの家に連れて帰ったらどうスか?」

 

「俺のところはペット禁止のアパートだ。ちなみに、承太郎の家も同じ」

 

「そうスか……困りましたねェ」

 

「問題ねェよ。――ジョースター邸に連れて行けばいい。で、志人ちゃんも承太郎が元の姿に戻るまでうちでお泊まりだな!」

 

「はっ?」

 

「それだ!そうしましょう、志人さん!!」

 

「えっ!?」

 

 

 財団職員達から説明を聞いた後、ジョセフと仗助がそんな事を言い出して、あれよあれよという間にお泊まりが決定してしまった。

 

 俺も承太郎も、まだ新居に移ったばかりでバイトも見つけていない状態だ。よって、ジョースター邸に泊まる事になっても問題ない。

 だがしかし、元々そこに住んでいた承太郎ならまだしも、俺まで泊まるのは申し訳なかった。とはいえ、猫になってしまった承太郎の事は心配だし……

 

 いろいろ考えた末に、今回ばかりはお言葉に甘えて、ジョースター家にお邪魔させてもらう事にした。もちろん、そのお礼に家事全般を手伝うつもりでいる。

 

 

 

 

 

 

 泊まりとなると、俺は一度自宅に戻って準備しないといけないし、承太郎の家も洗濯物とかそのままだろうから、それを片付けてやりたい。

 承太郎とは新居に移ったその日に、互いの家の合鍵を交換してあるから、問題なく入れる。

 

 しかし。その前に問題になったのが、承太郎のスタンドの力だ。

 

 財団側が用意してくれた、猫用のキャリーバッグに入ってもらってから、移動しようとしたのだが……

 キャリーバッグに入って入り口を閉じた瞬間、あの豹のスタンドがそれを破壊してしまった。さすがスタープラチニャ()だな。

 

 キャリーバッグでこれなら、猫用のケージの中に入ってもおそらく同じ事が起こる。……承太郎の事は、常に誰かが見張っていないと危ない。

 だが、幸いな事に。俺のパーカーの中であれば、何故か大人しい。仕方なく、そのまま帰宅する事になった。財団職員が車を手配してくれたので、それに乗って移動する。

 

 

 さて。黒猫ニャン太郎――ジョセフ命名――を連れた俺達は、俺の家や承太郎の家でやる事を済ませた後、ジョースター邸に到着した。

 ジョースター邸にいる人達には既に、承太郎がスタンド能力で猫になってしまった事は連絡済みである。……そんな中、俺達を出迎えてくれたのは、

 

 

「「おかえり」」

 

「ディオさん?」

 

「ジョナサンもいるじゃないスか!何で?」

 

 

 そう。今は新居でルームシェアをしているはずの、始まりの二人だった。何故ここに?

 

 

「……大方、うちの女性陣の誰かから興奮気味の連絡が来たんだろ?で、お前らは野次馬根性で猫の承太郎を見るために来た訳だな?」

 

「あはは、バレた?……まあ、一番は承太郎が心配だから見に来たんだけどね」

 

「承太郎が猫になっている間は、我々もここに泊まり込む」

 

「え?大丈夫なんスか?特に、ディオさんは会社が……」

 

「私の会社が本格的に始動するのは、4月からだ。問題無い」

 

「僕も大学院の入学前だし、まだ大丈夫だよ」

 

 

 という訳で、主人公ズ+ディオが集合。

 

 ……新居に移る前の、あの盛大なお別れ会は一体何だったんだ。そりゃあ、身内が猫になっちまったっていう緊急事態だし、仕方ないんだろうけど。

 そのままリビングへ向かうと、ジョルノと徐倫に加え、他の女性陣が集まっていた。

 

 

「それで、猫の承太郎さんは何処に?……志人さんのお腹の辺りが膨らんでますし、バリアも張ってますけど、まさか?」

 

「そう。今はここにいる。……猫用キャリーの中に入ってもらったら、それをスタンドでぶち壊しちまったからな。

 でも、このパーカーの中にいると何故か大人しいから、仕方なくこの形で運んで来た」

 

「その状態でもスタンドが使えるの!?」

 

「あぁ。スタンド像はカッコいい豹になってたけど」

 

「豹?……そういえば、以前志人が承太郎の事を黒豹に例えていたが……」

 

「美ら海水族館の時ですね。……それが反映されたんでしょうか?」

 

「ねえ、黒猫の兄さんが見たいんだけど、ちょっと覗いても良い?」

 

 

 徐倫がそう言うので、パーカーの中を確認。……かなり緊張しているようだな。イカ耳になってるし。

 

 

「……大分警戒してるから、覗くのはちょっとだけにしてくれ。大声は出さない事、そして触らない事。

 今の承太郎は、俺達が誰なのか分かっていないんだ。さっきジョセフ先輩が触ろうとしたら、猫パンチされて軽く怪我したからな。気をつけろ」

 

「わ、分かったわ」

 

「志人君、あたしも見ていい?」

 

「あたしも見たい!」

 

「わ、私も良いかしら?」

 

 

 そう言ったホリィさんや朋子さん、メアリーさん達女性陣にも同じ事を注意して、彼女達の側に行く。

 

 

「…………これが、兄さん?可愛い」

 

「やだぁ、承太郎ったらこんなに可愛くなっちゃって……!」

 

「可愛い……!」

 

「綺麗な緑目ねぇ」

 

「ヴヴゥゥゥッ!!」

 

 

 女性陣は言われた通りに大声は出さなかったが、承太郎は予想以上に人を警戒しているらしい。この威嚇はちょっと危ないかも、あ、スタンドまで出て来た!?

 

 

「待て待て待て待て、大丈夫、大丈夫だ。この人達はお前に何もしないから!」

 

「グルルル……!!」

 

「よしよし」

 

「本当に豹になってる!?」

 

「……志人さん、その状態でよく触れますね?怖くないんですか?」

 

「え、だって、可愛いだろ?」

 

「かわいい……?」

 

「どこからどう見ても、危険な肉食獣にしか見えないのだが?」

 

「僕、見えないんだけど。豹のスタープラチナはどうなってるの?」

 

「牙を剥き出しにして我々を威嚇している」

 

「それは怖いなあ」

 

 

 そんな会話を他所に、スタープラチナ(豹)の頭を撫でて宥めていると、次第に落ち着いて来た。本体とスタンドのゴロゴロ二重奏が聞こえる。機嫌は直ったらしい。

 スタンドの方が擦り寄って来て、俺の片足に尻尾が絡み付いた。危うく転びそうになり、イージスに支えてもらう。

 

 ……やがて満足したのか、スタンドが消えた代わりに、パーカーの中から本体が顔を出した。

 

 

「……ニャア」

 

「鳴いた!」

 

「鳴き声まで可愛い……!」

 

 

 承太郎が動きたそうにしているので、パーカーの中から外に出し、床に下ろした。すると、一度伸びをして歩き出す。

 やっぱり自分で動きたかったんだな。ついでに、この場所の探索がしたいのかもしれない。

 

 

「……美形の黒猫ですね。それに体格も良い」

 

「そうね。あれは絶対にメス猫にモテるわ」

 

「人間の女だけじゃなく、メス猫にもモテモテって……大変だなァ、承太郎さんは」

 

 

 室内を堂々と歩き回る承太郎を見ながら、年下組3人がそんな会話をしている。

 

 ……と、承太郎がディオの側を通った時、ディオはその場でしゃがみ、彼と目を合わせた。おや?

 ゆっくりと、瞬き。やがてそれが返されると、人差し指を鼻先に近づける。意外な事に、ディオは猫との挨拶のやり方を知っていたようだ。

 

 承太郎はその匂いを嗅ぎ、指先に鼻をチョンと合わせてから、ゆったりと離れていく。彼はそれを無理に追わず、立ち上がった。

 

 

「……確かに、中身も本物の猫になっているようだな」

 

 

 ディオがいつになく珍しい行動を取ったのは、それを自分の目で確かめるためだったらしい。

 

 その後。ディオに習ったのか、ジョナサンも同じ事をしようとしたのだが、承太郎はジョナサンがしゃがんだ時点で、その場を離れて行く。

 

 

「えっ?何で……?」

 

「……おそらく、お前の体がデカ過ぎたのだろう。猫よりも大きい人間という存在は警戒対象になりやすいし、その人間の中でもさらに大きいジョナサンが相手では、避けるのも当然だ」

 

「…………そんなあ……」

 

 

 ジョナサンが目に見えて落ち込んだ。……しかし。彼は唸られたり"シャー!"と言われたりしない分、まだマシだろう。

 

 

「もしかして、今ならナデナデできるかしら?」

 

「あ、いや、ホリィさん!?いきなり撫でるのは止めた方が、」

 

「シャアァァッ!!」

 

「きゃあ!?」

 

 

 自分の近くにいた承太郎の頭を撫でようとしたホリィさんが、思い切り威嚇されてしまった。……このように、ジョナサン以上に嫌われてしまう場合もある。

 

 彼女が威嚇に驚いた隙を突き、その横をすり抜けた承太郎が、俺の腹に向かって飛び込む。慌ててそれを受け止めると、彼はパーカーの中に入って来た。

 

 

「……なァ、志人。もしかしてそのニャン太郎君は、お前のパーカーの中をケージの中みたいなもんだと、勘違いしてんじゃねェの?」

 

「なるほど。今の承太郎にとって、パーカーの中が縄張りという事か」

 

「余ほど居心地が良いんだろうね、その中は。人間湯たんぽ?いや、人間炬燵かな?」

 

 

 おい、前世爺トリオ。俺は猫のケージでも縄張りでも湯たんぽでも炬燵でもねぇよ、ふざけんな。

 承太郎からそんな扱いをされるのはさすがに嫌なので、パーカーの中から再び外に出そうとする……が、

 

 

「…………こいつ、いつの間に寝やがったんだ?」

 

 

 パーカーの中で、黒猫が気持ち良さそうに眠っている。

 ……仕方ない。今だけはケージでも縄張りでも湯たんぽでも炬燵でも、甘んじて受け入れてやろう。

 

 

 やれやれ、世話の焼けるニャン太郎だぜ。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――あれから1週間が経過し、承太郎はジョースター邸とその住人達に徐々に慣れていった。

 最初は俺のパーカーの中に引き籠る事が多かったが、慣れていくにつれて、普通に出歩けるようになったのだ。

 

 今の承太郎に触る事が出来る人も増えた。……最初の接し方が良くなかったのか、ジョセフやホリィさんは他よりも慣れるのに時間が掛かったし、今でもほんの少ししか触らせてくれないようだが。

 

 それとは逆に、あっさり触れるようになったのがディオだ。猫への接し方を知っているし、本人は猫化した承太郎にあまり構おうとしなかったから、その態度が良かったのかもしれない。

 他にも、最初は体格が大きいせいで避けられていたジョナサンや、年下組3人も。数日経つ頃には、頭を撫でても逃げられないぐらいには仲良くなっていた。

 

 ジョナサンがわざわざ猫じゃらしを1つ買って来て、遊んでやってるのを見た時は笑ったな。

 何処でやり方を学んだのか、猫心を擽る動きが上手いんだよなぁ。承太郎も思わず釣られてたみたいだし。

 

 年下3人は、承太郎に自分自身の名前を覚えさせて、鳴き声で返事をさせる事に挑戦しており、つい先日それに成功して喜んでいた。

 ……もっとも返事をした本人、いや本猫はかなりうんざりとした様子で、"ニャ"と低い声で一鳴きしただけだったが。何度も何度も呼ばれてたら、そりゃそうなるよな。

 

 で、ディオは……どうやら、承太郎が疲れた時の休憩所の1つ、のように扱われているらしい。俺以外で、膝に乗られる頻度が一番多い。

 ディオの膝の上にいる時の承太郎は、彼と俺以外の人間に触られる事を良しとしない。そこにいる時は、承太郎からの"必要以上に構うな"のサインである。

 

 

「――何で僕よりも君の方が懐かれてるのかなあ?ねえ?ディオ……」

 

「知るか、そんな事!俺に八つ当たりするな!!」

 

 

 と、承太郎に懐かれている事に嫉妬したジョナサンがディオに八つ当たりするのは、最近よくある事だ。ご愁傷様です、ディオ様。

 

 

「というか、それを言うなら志人はどうなんだ!?」

 

「志人は別格だから仕方ないよ。そんな事より、僅差で僕よりも懐かれているディオの方を蹴落とすべきだよね。例えば君が僕にやった事のように」

 

「前世の私怨まで混ざっているぞ貴様!?」

 

 

 そんな、仲良し義兄弟のじゃれ合いはさておき。ジョナサンが言っていた、俺が別格だという話だが……

 

 

「志人さん、携帯鳴ってますよ」

 

「あぁ、電話か。ありがとう。ちょっと出て来る」

 

 

 ――リンリンリンリン……

 

 

 

 

「志人くーん!ちょっと手伝ってもらってもいい?」

 

「はい、朋子さん。今行きます」

 

 

 ――リンリンリンリン……

 

 

 

 

「志人、風呂空いたぞ」

 

「分かりました。入って来ます」

 

 

 ――リンリンリンリン……

 

 

 

 

「…………本っ当に何処までもついて行くのね、志人さんに……」

 

「志人さんと猫の承太郎さんと鈴の音は、最早セットですね」

 

「……その鈴、外しちゃ駄目なんスか?承太郎さんは悪く無いけど、音が超うるさいっス」

 

「確か財団職員の話では、GPSを付けたのは首輪本体の方だったはずだぜ」

 

「じゃあ、鈴だけなら取っても大丈夫かな?」

 

「よし、志人。そのストーカー猫の鈴を外せ」

 

「ストーカーってディオさん、その扱いはちょっと……承太郎が可哀想なので……」

 

 

 ……という訳で。承太郎は俺が離れると、何処へ行っても必ずついて来るため、ジョナサン達からは俺の懐かれ具合は別格だと言われていた。

 ちなみに、首輪については財団が急遽用意してくれた物で、万が一承太郎が脱走してしまった時は、首輪に付けられたGPSで見つける事ができる。

 

 

 パーカーの中に引きこもる事は無くなったが、承太郎は何故か、俺が移動する度について来た。

 読みたい本を探すために図書室へ行っても、朝昼晩の飯を作る手伝いのためにキッチンへ行っても、果てはトイレや風呂へ行っても……必ず、ついて来る。

 

 最初はそれに困って、一度は承太郎がリビングで眠っている隙に離れ、図書室へ息抜きをしに行ったのだが……すぐにとんぼ返りする事になった。

 目覚めた承太郎が、俺がいない事に気づいた途端に悲しそうに鳴き始めたと、リビングにいた人達から聞いたのだ。

 実際、俺がそっちに戻ったら鳴き止んだ上に飛び付いて来たし。

 

 おそらく分離不安……愛着を感じている相手が離れた時に、ストレスを感じるという症状ではないかと思われる。

 もしかしたら、数日俺のパーカーの中で引きこもっていた事が、原因になっているのかもしれない。決して、ディオが言っていたようなストーカーではないのだ。

 

 それもあって、夜中に俺が眠る時は承太郎も同じベッドで眠っている。

 夜中に何度も鳴かれたら、うるさ過ぎて他の住人達も眠れないだろう。迷惑を掛ける訳にはいかない。

 

 

 このように。1週間の間にいろいろあったのだが、承太郎は未だに元の姿に戻らない。

 例のスタンド使いが"1週間以上は猫のままだ"と言っていたぐらいだし、1週間ぴったりで戻らない場合もある……それは、分かっていたけど。

 

 

 昨日でちょうど1週間が経過し、今はその翌日の夜だ。彼は今日も、猫の姿で1日を過ごした。

 

 ジョースター家の皆は言葉にはしなかったが、承太郎を心配している事が雰囲気で分かる。

 彼らは承太郎が本当に元の姿に戻るのか、不安で仕方ないのだろう。俺もそうだ。

 

 不安を紛らすため、眠る直前についつい猫の承太郎に話し掛けてしまう。

 

 

「昨日で、もう1週間経ったぞ……何でまだ猫のままなんだよ……」

 

「ニャー」

 

「……あぁ、ごめん。分かってる。お前のせいじゃないって……分かってんだけどさ」

 

「ニャウゥ」

 

「ん、慰めてくれるのか……?ありがとう」

 

「ニャン」

 

 

 こいつは皆の前ではそんなに鳴かないのに、寝る前に俺が話し掛けると、何故かよく鳴いてくれる。

 お前、本当はこっちの言葉が分かってんじゃねぇのか?そう突っ込んだ事も何回かあるが……財団職員が、例のスタンド使いからさらに聞き出した話によると、それは無さそうだ。

 

 そいつのスタンド能力は、自分に使えば人間としての意識を保てるが、他人に使うと相手はその意識を保てないのだとか。

 つまり。今の黒猫の承太郎に、"空条承太郎"という人間の意識は残っていない。……それが分かった時は、寂しいと思った。

 

 

 俺が知っている承太郎が、何処にもいない。

 

 

「…………早く、戻って来てくれ。承太郎――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――誰かに、揺さぶられている。その事に気づいた時、猫の承太郎が俺を起こそうとしているのかと、そう思っていた。

 

 

「う……?何だよ、ニャン太郎……」

 

「誰だニャン太郎って。寝惚けてんじゃねえよ、起きろシド」

 

「んん……?」

 

 

 …………あれ??

 

 

「承、太郎……?」

 

「……やれやれ。やっとお目覚めか、ハニー。寝起きのところ悪いが、状況を説明してくれ。何故俺はお前のベッドで寝ていたんだ?」

 

「――――」

 

「……シド?」

 

 

 私服を着て、いつものように帽子を被った美丈夫が、俺の顔を心配そうに覗き込んでいる。

 

 その姿を見た俺は、思わずベッドから飛び下りて部屋の扉を勢い良く開き、朝っぱらだというのに叫んでしまった。

 

 

「――承太郎が元に戻ったあぁぁっ!!」

 

「なんだってえェッ!?」

 

「承太郎さんがッ!?」

 

「承太郎ッ!!」

 

「父さんッ!!」

 

Fratello(兄さん)ッ!!」

 

「うるさいぞ貴様らァッ!!」

 

「――――やかましいッ!!」

 

 

 ……という騒ぎは、他の階にいたホリィさん達やジョージさんも加わったせいで、しばらく続いた。

 

 

「記憶が無い?」

 

「ああ……仗助を庇った辺りはうろ覚えだが、覚えている。だが、その猫になっていた時の記憶が無い」

 

 

 騒ぎが落ち着いた後。朝食も食べ終わり、前世の記憶持ちの8人で談話室に集まる。……承太郎には、猫になっていた時の記憶が全く残っていなかった。

 

 

「承太郎さん、すんません。俺が油断したせいで、こんな事になって……」

 

「気にするな、仗助。……こうして無事に元に戻ったし、今さら蒸し返すつもりはねえよ」

 

「本当に、すみませんでした」

 

 

 1週間の間は猫の承太郎を適度に構い、楽しそうにしていた仗助だが、やはり罪悪感は残っていたのだろう。今謝罪した事で、それも多少は晴れたようだ。

 

 

「……しかし、猫だった実感が全く無いな」

 

「まあ、無理もないよ。例のスタンド使いの能力で猫にされた人は、人間としての意識を保てないらしいから」

 

「それならば、記憶が無いのも当然、か……」

 

「そうそう」

 

「……記憶は無くても、記録(・・)ならあるぞ?」

 

「あ?」

 

 

 承太郎とジョナサンの会話に、わるーい顔をしたディオが加わる。おっと?どう見ても良からぬ事を考えている顔ですねぇ?

 

 

「なるほど、記録かァ!確かにそれなら俺もあるぜ」

 

「僕もありますよ」

 

「あたしも!」

 

 

 そう言って、ジョセフやジョルノ、徐倫が見せたのは――スマホに保存された写真や動画。

 

 

「……これ、は……」

 

「こっちのは、まだ志人のパーカーの中に引きこもってた時の写真!」

 

「パーカーの中?引きこもる??」

 

「これは、ジョナサンと猫じゃらしで遊んでいる時の動画ですよ」

 

「猫じゃらし……」

 

「はい、これ。ディオさんの膝の上で丸まってる写真」

 

「ディオの膝の上、だと……?」

 

「ついでに私も見せてやろう。……ほら、お前が志人に何処までもついて行くストーキングの動画だ。ちなみに、これはほぼ毎日の出来事だった」

 

「スト……!?っ、毎日!?」

 

 

 ……その後も、彼らが見せるここ1週間の写真や動画を見て、珍しく百面相をする承太郎の姿が見られた。

 

 

 そして後に何を思ったのか、承太郎は俺に向かって精一杯の謝罪をしてきたのだ。

 

 

「志人、本気ですまなかった」

 

「分かった、分かったからもう土下座は止めろ、止めなさい」

 

 

 前々世の承りファンに知られたら俺が殺されちゃうだろ!?止めて!!

 

 

 

 

 

 






 現在pixivにて、承太郎の友人シリーズの男主が4部に介入したら?というIF設定のネタ小説も書いています!

 もしよろしければ、こちらもご覧ください!https://www.pixiv.net/novel/series/10190003

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