空条承太郎の親友   作:herz

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・男主達が大学生。アナ徐要素あり。

・ご都合主義、捏造過多。キャラ崩壊注意。男主視点。




「何様のつもりだ、てめぇ!?天地がひっくり返ってもてめぇの事だけは兄と呼ばねぇし義兄さんとも呼ばれたくねぇわ!!」
 
 
 ――その日。園原志人は、ナルシソ・アナスイを年上として敬う事を止めた。




空条承太郎の親友は、痴話喧嘩の仲裁役

 

 

 

 

 

 大学生活が始まってから、しばらく経ったある日。とある人物が、俺の家を訪ねて来た。

 

 

「それで――徐倫ちゃん。俺に相談があるって話だったな?」

 

「ええ。……ごめんなさい、せっかくの休日にお邪魔しちゃって」

 

「いや、むしろわざわざ俺を相談相手に選んでくれて、嬉しいよ。

 俺を頼ってくれた可愛い妹分のためなら、いくらでも時間は作る。だから、そこは気にするな」

 

「あんた本当そういうところよ!?」

 

「んん?」

 

 

 何故か、両手で顔を覆って項垂れてしまった徐倫に対し、俺は首を傾げる。何かおかしかったか?

 

 

 先日。高校生になった徐倫から、メッセージアプリで"相談したい事がある"との連絡が届いた。

 そこで俺は予定を確認して、大学もバイトも無い休日に、彼女を自宅に招き入れる事にしたのだ。

 

 

「で……相談、なんだけど――高校を卒業した後の、進路について」

 

「それは……相談相手は本当に俺で合ってるか?承太郎達、ジョースター家の人達ではなく?」

 

「合ってるわ。実は、卒業後にやりたい事自体は決まってるんだけど……ちょっと問題があって……」

 

「その問題が、家族には相談しにくい事なんだな?それどころか、前世の仲間であるエルメェスちゃん達にも?」

 

「……さすが、察しが良いわね。その通りよ」

 

 

 なるほど。そういう事なら、納得できる。彼女にとって、俺の立場は相談しやすい第三者なのだろう。

 しかし……卒業後の進路で、家族にもエルメェス達にも相談しにくい事?それって、まさか?

 

 

「間違ってたら、悪い。徐倫ちゃんが相談したい事って、もしかして……アナスイさんが関係してるのか?」

 

「…………何で分かったの……?」

 

「去年の文化祭の時の様子を前提に考えれば、進路相談したいけど、身内にも前世で共に戦った仲間にも相談しづらい、しかし俺が相手なら相談できる事って、かなり限られて来るだろう?」

 

 

 これでアナスイが関係していないなら、相談内容は俺にも分からなかったが……彼が関係している上で進路相談といえば、問題になるのは1つしかない。

 

 

「――アナスイさんが、君との結婚を考えている事……それがネックか?」

 

「志人さんの洞察力って本当にどうなってるの??」

 

「ジョースター家の人間には負けるよ」

 

「いやいやいやいや」

 

 

 原作知識を除いても、今の俺が知っているのと同じ情報があれば、徐倫達だってこれぐらいは予想できるはず。俺は大した事はしていない。

 

 

「それで?アナスイさんは徐倫ちゃんと結婚したいがために、君がやりたい事に反対している、と?」

 

「そうじゃないわ。……あたしが卒業後にやりたい事については、アナスイにはまだ何も話して無い。それに、父さん達やエルメェス達にも言ってないの」

 

「……そのやりたい事が何なのかは、俺が聞いても良い事か?」

 

「うん。――あたしは、水族館の飼育員になりたい」

 

 

 水族館の飼育員……それはまた、承太郎が喜びそうな進路だな。

 

 

「それ、良いな。例えばドルフィントレーナーとか、徐倫ちゃんには結構似合いそうだ」

 

「……志人さんがそう言ってくれて良かったわ」

 

「んん?」

 

「ジョースター家の皆やエルメェス達に話したら、さすが空条承太郎の娘だ、とか何とか似たような事を言われそうだもの。

 あたしは父さんの娘だから水族館に勤めたいんじゃなくて、自分の意思でそうなりたいと思ってるから。そう言われたい訳じゃない。

 

 それに……エルメェス達には、もしかしたら苦い顔をされるかも。水族館といえば、前世のあの刑務所の事を思い出しそうだし……」

 

 

 あー、そうか。前世のあの刑務所……グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所は、通称"水族館"って呼ばれてたしな。

 

 

「水族館の飼育員になったら、ドルフィントレーナーになるのも良いけど、ペンギンのお世話とかもやってみたいわ」

 

「いろいろ、やりたい事がある訳か。それなら専門学校か、大学に入る事が当面の目標か?」

 

「そうね……本当に、高校を卒業した後にそこに入学出来るのであれば、の話だけど」

 

「え?」

 

 

 そう言って、彼女は俯く。……嫌な予感。

 

 

「相談したいのは、その事なのよ。……アナスイが、ね……どうやら、あたしが卒業したらすぐに結婚する事を考えてるみたいで」

 

「は??」

 

「もしかしたら、学校にも入学出来ずに終わるかもしれない……」

 

「おいおいおいおい……」

 

「やっぱりそういう反応よね!?普通はドン引きするわよね!?あたしが正常だと分かって良かったわ」

 

 

 嘘だろ、アナスイ。てめぇは正気か!?確かに卒業後なら徐倫は結婚出来る年齢に達しているが、それにしたって卒業した直後に結婚って……!?

 

 

「あの人、馬鹿じゃねぇの??」

 

「馬鹿でもかなり本気よ。話を聞いた限り、結婚とか新居のための費用とか、全部あたしが卒業するまでに用意できるみたい」

 

「はぁ!?そんな金、どうやって用意するんだ!?」

 

「今世で記憶を取り戻して、あたしと再会した辺りから株の投資をやり始めたらしくて……

 それに合わせて財団からの依頼を受けて稼いだお金もあるから、今では相当貯まってるみたい。あと3年もあるなら余裕だって言ってたわ」

 

 

 思わず頭を抱える。ブチャラティを呼びたくなった。

 

 お巡りさーん!助けてください!俺の妹分(未成年)を本格的に囲おうとしている変質者(悪い大人)がいまーす!!

 

 

「……ところで、徐倫ちゃん自身はどう思ってるんだ?アナスイさんと結婚する事は、嫌か?」

 

「…………嫌じゃないから困ってるのよ……」

 

「あぁー……」

 

「あたし、前世で付き合ってた恋人に……それも、初恋の人に裏切られた事があるの。

 それを考えると、アナスイが本気で結婚を考えて頑張って準備してくれてる、ってだけで嬉しく思っちゃって……彼、あたしを裏切りそうな気配が全く無いから……」

 

「…………あぁー……」

 

 

 ロメオの事かぁ……そうだな。原作後半では反省していたものの、あいつがやった事と比べたら、アナスイの方がまだマシだよな。

 彼が今やっている事は、つまりそれだけ徐倫を本気で愛していて、裏切る可能性もほぼゼロだと思っていいだろうし……

 

 

「でも、その代わりに水族館の飼育員になる事を諦められるかと聞かれたら……今すぐには、無理だと思う。

 

 これは、前世のあたしが子供だった時に抱いた夢だから。そう簡単に諦められるはずが無いわ」

 

 

 と、そう言い切った彼女の、承太郎とよく似た瞳の輝きに、目を奪われた。

 

 

「まだ父さんの事が好きだった頃に、家族3人で初めて行った水族館での思い出が、今世で生まれ変わった今でも忘れられないの。

 子供だったあたしが、"大人になったらここでお仕事したい!"とか言ったりして……その時の父さんが珍しく嬉しそうに笑った顔も、鮮明に思い出せるわ。

 

 その後。あたしと父さんは不仲になって……それで結局、そんな夢の事も忘れてしまったけど、でも今世では思い出せた。

 それを思い出したからには今度こそ、前世のようにグレて人生を棒に振るんじゃなくて、ちゃんと夢を叶えたい!」

 

 

 そんなきっかけがあったのか。これ、承太郎が聞いたら本当に喜ぶだろうな。

 徐倫には是非ともその夢を叶えてもらいたいが、アナスイの暴走がその障害となってしまっている……

 

 

 ……そういえば、まだはっきりと聞いた事が無かったな。

 

 

「答えづらい事かもしれないが、聞かせてくれ。――徐倫ちゃんは、アナスイさんの事が好きなのか?結婚を考える程に?」

 

「…………ええ、まあ――好きよ。彼の愛の重さには負けるけど」

 

 

 頬を赤くして、恥ずかしそうにそう答える姿は、まさしく恋する乙女だった。うん、微笑ましい。

 原作ではそんな気配が全く無かったのに、今世では何がどうなってあんな強引な男に惚れたのかはさっぱり分からないが……

 

 そこまで詳しく聞くのは、野暮というものだろう。

 

 

「だからこそ、迷っているんだな?アナスイさんとの結婚を優先するのか、自分の夢を叶える事を優先するのか」

 

「そうなの。……両立させる、なんて中途半端な真似はしたくない。

 最終的にどちらかは諦めるわ。そうしないと、あたしのプライドが許さないし、結婚を真剣に考えてくれてるアナスイにも失礼だから」

 

 

 おい。さっきの恋する乙女の顔は何処にいったんだ、男前女子。さすがだな、6部主人公。

 何かを得るために、別の何かを切り捨てる覚悟は既に出来てる、って事か。メンタルの強さが半端無い……おっと、それはさておき。

 

 

「そういう事なら、最初に考えるべき事は……より長く時間を掛けたいのはどちらなのか、だな」

 

「時間を掛ける?」

 

「あぁ。……直感で答えてくれ。自分の夢と、アナスイさんとの将来。君が長い時間を掛けて取り組みたいと思うのは、どっちだ?」

 

「そう、ね……どちらかと言えば、アナスイの方かしら?」

 

「それは何故?」

 

「…………何というか、もうちょっとゆっくりしたい、って感じ?いろいろ急過ぎるのよ、アナスイは」

 

 

 何だ。それなら、もう答えは出てるじゃねぇか。

 

 

「ところで、結局2人は恋人同士になったのか?俺の予想では、まだそうなっていない気がするが?」

 

「……ええ。志人さんの予想通りよ。相変わらず、アナスイは交際をすっ飛ばして結婚しようとしてるの」

 

「で、徐倫ちゃんは出来れば、お付き合いから始めたいんだろう?文化祭の時にそう言っていたように」

 

「うん……」

 

「そして。君としては、その交際の申し出をアナスイさんの方から言って欲しい?」

 

「そう!彼はあたしにいつも"結婚しよう"とは言うけど、"好きだ"とか"愛してる"とか、"恋人になって欲しい"なんて事は言ってくれないの!過程が抜けてるのよ、過程が!!」

 

 

 あー、うん。これは男女の差がはっきりと出過ぎたんだろうなぁ。

 

 男と女では脳の作りが異なっており、その影響で男は"結果"を、女は"過程"を求める生き物だと言われている。

 アナスイは結婚という"結果"を、徐倫は結婚に至るまでの"過程"を重視しているのだろう。……こればっかりは、当事者同士で話し合ってもらわないと解決しない。

 

 

「なら、その過程を求めるために、結婚を先伸ばしにしてもらうのが良いんじゃないか?そして結婚するまでの間は、水族館の飼育員を続ける。

 中途半端が嫌なら、結婚したら仕事を辞めると、徐倫ちゃん自身が最初からそう決めておけばいい。

 

 ……といっても、これはあくまでも俺の提案だから、具体的な事はアナスイさんとしっかり話し合った上で決めてくれ。

 自分達の将来について早いうちに決めておけば、後々揉める事も無いはずだ」

 

「…………そっか……そうよね。まずは、彼と話し合うのが先、か」

 

「その通りだ。1人で全部考えるんじゃなくて、アナスイさんと一緒に考えた方が良い。――2人の幸せな未来のためにも……真剣に、話し合ってくれ」

 

 

 頼むから、俺の両親のように夫婦関係を台無しにするのだけは止めろよ?そうならないためにも、結婚前の話し合いは必須だ。

 

 

「分かった、ありがとう!やっぱり志人さんに相談して正解だったわ」

 

 

 その後。相談を終えた徐倫を最寄り駅まで見送って、彼女と別れたのだが……

 

 

 その日以降。既に進路を決めた仗助、ジョルノ、徐倫以外の後輩組から、立て続けに進路相談を受ける事になった。何故だ!?

 

 

「ごめんね、志人さん。実は学校の昼休み中、あたしが進路相談した時の事を皆に話したら、ジョルノと仗助もそれに乗っかってあなたを絶賛して……

 

 気がついた時には、志人さんに相談すれば何でも解決する、なんて話になってたわ。多分、そのせいだと思う」

 

「えぇー……?」

 

 

 後日。何か心当たりは無いかと、徐倫に電話で聞いてみたら、そんな答えが返って来た。気がついた時にはって、何がどうしてそうなったんだよ??

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 あれから数週間後の夜。バイトが終わって帰宅している途中に、思わぬ人物を発見した。

 

 

「徐倫ちゃん?」

 

 

 俺が歩いている大通りへと繋がる横道から現れた彼女は、何故か憔悴している。

 ゆっくりと顔を上げて、俺と目が合った瞬間。緑目を大きく見開き――その目から、涙が零れた。はぁ!?

 

 

「どっ、どうした!?何があった!?」

 

 

 慌てて駆け寄ると、徐倫は大泣きしながら縋り付いて来る。おいおいおいおい!?

 

 

「あー、分かった、分かった!落ち着け!とりあえずここから離れるぞ、いいな!?」

 

 

 周りからの視線がグサグサと俺に刺さっている。それから逃れるために、彼女の手を引いて人気の無い場所へ向かった。

 

 そこは小さな公園だった。先に徐倫をベンチに座らせて、イージスに防音バリアを張らせて、すぐ近くの自販機で飲み物を買ってから彼女の下へ戻る。

 その間、俺の代わりに徐倫を慰めていたイージスのおかげで、何とか泣き止んでくれたらしい。そんな彼女に、飲み物を渡した。

 

 

「さて……君の身に一体何があったのか、聞いてもいいか?」

 

「……そもそも、志人さんは何であそこにいたの?」

 

「バイト先からの帰りだったんだ。徐倫ちゃんこそ、どうしてあそこに?ジョースター邸からかなり離れているはずだが」

 

「…………アナスイの家が、近所にあるから」

 

 

 ――なるほど、理解した。

 

 

「よし、君を泣かせたアナスイさんをぶん殴りに行けばいいんだな?」

 

「待って!待って!!違うの!あたしも悪いのよ!!」

 

「志人、俺達じゃ攻撃力が足りないよ。承太郎も呼ばないと」

 

「そうだな、イージス。つーか、むしろジョースター家の男連中全員に呼び掛けて殴り込みに行った方が、」

 

「止めて志人さんッ!アナスイが死んじゃうッ!!」

 

 

 ……とまぁ、茶番――ただし4分の3は本気――はここまでにしておこう。徐倫のこの反応からして、まだアナスイの事が好きみたいだし。

 

 

「それで……アナスイさんと喧嘩でもしたのか?」

 

「……うん……この前、志人さんに相談した事をアナスイにも話して、今日は2人で真剣に話し合おうと思ってたんだけど……彼が、変な勘違いをしたみたいで――」

 

 

 徐倫曰く、自分が話の順序を間違えたせいでもある、との事だが……彼女の話を聞いた俺は、"アナスイの過失の方がデカイだろ"と思った。

 

 

 2人の将来について話し合う前に、彼女はまず、自分が卒業後に水族館の飼育員になりたいと考えている事を、アナスイに明かしたという。

 すると。彼はとんでもない勘違いで激怒し、徐倫を責め立てたそうだ。

 

 アナスイは、彼女がアナスイとの結婚よりも夢を叶える事を優先して、自分を捨てるつもりなのだと、そう勘違いしたらしい。

 徐倫は誤解を解こうとしたが、相手は聞く耳を持ってくれず、激しい口論になった。で、売り言葉に買い言葉が続いた末に――

 

 

「あんたは結局!結婚できれば相手は誰でも良いんだろッ!?

 あたしに"好き"とか"愛してる"とか、今世では一度も言ってないでしょ!?だったら誰でも良いって事じゃねえかッ!!

 

 もういい、帰る!アナスイの馬鹿ッ!!」

 

 

 ――と言って、アナスイの家から出て行き、家に帰ろうとしたところを見つけたのが、俺だったとか。

 

 

(アナスイ、てめぇ馬鹿だな!?人の話はちゃんと最後まで聞けよ!!)

 

 

 いや、本当に馬鹿だろ。何でそんな勘違いをしてしまったんだか……しかし、

 

 

(怒りに身を任せて、その場で徐倫を"分解"しようとしなかった分、前世よりはマシ……か?)

 

 

 アナスイも前世で恋人に裏切られ、その恋人と浮気相手を"分解"したせいで刑務所行きになってたなと、その時思い出した。

 

 

「徐倫ちゃんは、どうしたい?」

 

「どうって……」

 

「このまま終わってもいいのか、終わらせたくないのか」

 

「終わらせたくないに決まってるじゃない!」

 

「じゃあ、誤解を解きに行こう。――今から、俺と一緒にな」

 

 

 おそらく、アナスイも徐倫の事を嫌いになった訳ではないだろう。

 スタンドを出さず、殺意を向ける事も無かったのであれば、多少の理性……彼女への情が残っているはずだ。

 

 それなら、まだ間に合う。今度は俺という第三者を間に挟んだ上で、冷静に話し合ってもらおう。

 

 

 連絡先は既に交換していたため、俺からアナスイに電話した。

 偶然会った徐倫から事情を聞いたので、今からそちらに向かう事、それまでに冷静さを取り戻しておく事、と言い聞かせてから電話を切り、徐倫の案内でアナスイの家へ。

 

 そこからが大変だった。彼は多少は冷静になっていたが、今度は俺が恋敵ではないかと疑い始めたのだ。文化祭の時にちゃんと否定しただろ!?

 で。懇切丁寧に、時間を掛けて説明し、どうにか納得させた頃にはもう、俺はへとへとだった。

 

 だから……強硬手段に出て、さっさと話を終わらせる事にする。

 

 

「悪いな、徐倫ちゃん。この人本当にクソ面倒くせぇから、手っ取り早く俺から誤解を解かせてもらうわ」

 

「えっ?」

 

「アナスイさん。実は彼女、数週間前に俺のところに相談しに来たんですよ――自分とあんたの幸せな未来について」

 

「何ッ!?徐倫がそんな事を……!?」

 

「ちょっと、志人さんッ!?」

 

 

 徐倫が俺を止めようとしたが、イージスのバリアで彼女を一時的に閉じ込めてそれを防ぎ、暴露してやった。

 

 彼女は結婚を嫌がっている訳ではないし、むしろアナスイに好意を持っている事。しかし、結婚を早めようとしている事に対して戸惑っている事。

 結婚に至るまでの"過程"を求めており、結婚よりも先にゆっくりとした交際から始めたいと考えている事。

 彼女が、"結婚しよう"という言葉以外にも、直接的な愛の言葉を求めている事。

 

 ……その全てを話し終えた時。徐倫は真っ赤になった顔を両手で隠し、膝から崩れ落ちた。アナスイもまた、そんな徐倫を見つめて唖然としている。

 

 

「…………そう、か……俺が言葉足らずだった事と、彼女の意思を無視した事が、そもそもの原因……だったのか」

 

「その通りです。この件に関しては、あんたの過失が大きい。

 

 ――彼女の前世の父親の言葉の足りなさと、そんな2人が最初は不仲だった事を考えれば、それが良くない事だってのは簡単に想像できたはずだろ」

 

「あっ」

 

 

 俺にそう言われると、アナスイは"今気づいた"という顔になった。やっぱり馬鹿だわ、こいつ。

 

 

「さて、と……あとの事は2人で話し合ってください。そして話し合う前に、アナスイさん。徐倫ちゃんに約束してください。

 これからは、何事も彼女の意思をちゃんと確認してから行動する事。結婚を急がず、彼女のペースに合わせた交際をする事。

 

 さらに。彼女の夢を、決して否定しない事……今この場で全てを約束しないと、バリアは解除しませんよ」

 

「分かった、約束する!……徐倫。俺は園原が言った事を全部約束する、だから――抱き締めても、いいか……?」

 

 

 アナスイの縋るような言葉に対し、徐倫が確かに頷いたのを確認してから、彼女の周りに張ったバリアを解除。イージスにも戻ってもらった。

 そして。即座に彼女を抱き締めた男の背中に、控え目ながらも手が回される。

 

 

 はいはいエンダーエンダー。末永く爆発しろ。……まぁ、アナスイはさておき。妹分が幸せなら、兄貴分としても嬉しい。

 

 

「では、俺はこれで失礼します。もう喧嘩しないでくださいね。次に徐倫ちゃんを泣かせたら、俺がぶん殴りに行きます」

 

 

 やれやれだぜ、やっと終わったよ全く……と、1人で帰ろうとする俺を、アナスイが呼び止めた。

 

 

「何ですか?」

 

「……まだ、礼を言ってなかったな。ありがとう」

 

 

 おや?意外な事に、ちゃんとお礼を言ってくれた。

 それなら俺も、年上を相手に失礼な態度を取ってしまった事を謝罪しなくては――

 

 

「園原は見所がある。元父親である承太郎だけでなく、徐倫の兄貴分に相応しいお前なら、義兄さんと呼ぶに値するな。

 いや、年齢的に言えば俺の方が兄か。徐倫とはいずれ必ず結婚するし、今からでも俺を兄と呼んでいいぞ」

 

 

 

 

 

 

 ――前言撤回。

 

 

「何様のつもりだ、てめぇ!?天地がひっくり返ってもてめぇの事だけは兄と呼ばねぇし義兄さんとも呼ばれたくねぇわ!!」

 

「えっ」

 

「よし、決めた。あんたの徐倫ちゃんに対する愛の深さだけ(・・)は認めてやる。

 だがしかし!それ以外は駄目だ。あんたは俺にとって尊敬するに値しない年上だと判断した。

 

 よって、これからは敬語も使わねぇし、さん付けもしねぇし、あんたを敬う事もしないからそのつもりでいやがれ。

 あと。俺は協力しねぇが承太郎の説得、頑張れよ!最低でも1回はオラオラの刑になりそうだけど!ざまぁ!

 

 あ、徐倫ちゃん。誤解が解けて良かったな。君の幸せを心から願っている!またな」

 

「あ、えっと、うん!ま、またね志人さん!ありがとう!」

 

 

 言いたい事を言い切ってから、アナスイには嘲笑を、徐倫ちゃんには優しい笑顔を向けて、俺はその場から立ち去った。

 

 

「あ"あ"ぁぁー……やってらんねぇ」

 

 

 アナスイの家から駅へ向かう途中、俺は思わずそう呟き、深いため息をついた。

 

 本当に何様のつもりだよ、アナスイの野郎。一体誰のおかげで徐倫と仲直り出来たと思ってんだ。

 こっちはバイト帰りで肉体的に疲れていたのに、向こうは徐倫を泣かせるわ、俺が恋敵だと勘違いするわ。

 素直に礼を言ったかと思いきや、その直後上から目線で訳の分からん事を言うわ――精神的にも疲れた。もうやだ。

 

 

 俺は携帯を取り出し、電話を掛ける。

 

 

「……シド?」

 

「よぉ、親友。夕飯食べた?」

 

「いや、まだ食べてない。これから材料を買って、家で炒飯でも作ろうかと、」

 

「俺の分も作って!」

 

「あ?」

 

「ついでに泊めて!!」

 

「はあ!?……珍しく我が儘じゃねえか」

 

「疲れた、外食は嫌だ、手料理が良い、でも自分で作る気力が無い、そうだ承太郎に頼もう!って事でお願いします親友様!!材料費は必ず払うので!」

 

「お、おう……材料費はいらねえから、その代わりに帰って来たら一体何があったのかを話せ」

 

「愚痴聞いてくれるのか?やった!すぐに帰るぜ、ダーリン!!」

 

「お前本当にどうした??」

 

 

 ……という事で。

 

 疲れ過ぎて逆に"最高にハイ!!"になった俺は、帰宅後。

 承太郎が作ってくれた炒飯を美味しくいただき、アナスイに関しての愚痴も聞いてもらった。

 

 その結果。シスコンお兄様がアップを始めたけど、俺は止めなかった。アナスイなんてもう知らねぇ。承太郎に絞られてしまえ。

 

 

 ……しかし。俺がアナスイの徐倫ちゃんに対する愛の深さだけ(・・)は認めてやった事を話した時、承太郎は神妙な様子でそれを聞いていた。

 おそらく彼も、アナスイのそこだけ(・・)は既に認めているんだろう。徐倫と両想いになれた訳だし、結婚の許可が出る日も案外近い……あ、待てよ?

 

 

 一度は徐倫を泣かせてしまったアナスイが、そんなに簡単に結婚の許可をもらえるだろうか?

 

 

(――うん、無理だな。向こう10年ぐらいは、許可が下りないかもしれない)

 

 

 

 

 

 

 

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