※この話が前回の前に挿入されていたと、ある読者様から報告があり、その報告の後に修正しました。ご迷惑お掛けして申し訳ありません!
・男主達が大学生、大学に入学した直後から始まる話。前回(文学部のとある男は、捕獲された)のちょっとした騒動の裏話(?)
・前回とは別のオリキャラ視点。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。
――奴はノリがジョセフでうざいから、気をつけろ。byシーザー
「――承太郎と志人が、お前が行ってる大学に入学する」
「ジョウタロウとユキトって……空条承太郎と園原志人!?マジで!?学部は?もしかして、おれと同じ教養学部?」
「ざんねーん!承太郎ちゃんは海洋学部、志人ちゃんは文学部でした!
……って訳で、あいつらが何か困ってたら、同じ高校出身の先輩として手を貸してやってくれ。俺やシーザーからも、承太郎達にお前の事を話しておくからさァ」
ある日。同じ高校に通っていた友達、ジョセフ・ジョースターから電話が掛かってきて、そんな事を頼まれた。
「……なら、その2人にちょっと聞いてみてくれない?大学の入学式が終わったら、直接会えないかな?って」
「それは別にいいが、何でだよ?」
「大学生活が本格的に始まる前に、おれの顔だけでも知っておいてもらおうと思ってね。その方が、本当に何かあった時に助けを求めやすいでしょ?
そ、れ、に!セフちゃんの親戚くんと、シーちゃんも可愛がってる後輩くんだよ?気になるじゃん!」
「セフちゃん言うな。……ま、とにかく頼んだわ。直接会えるかどうかも、2人に聞いてみるぜ」
「了解!じゃ、お願いね」
電話を切り、自分の部屋のベッドに寝転がりながら、ジョセフが名前を出した2人の顔を思い浮かべる…………あー、
「大学中の女の子達が大騒ぎするぞー……これは面白くなるよりも、面倒な事になりそうな予感」
とはいえ、ジョセフから頼まれちゃったしなぁ……しょーがない。言われた通り、彼らに何かあったら助けてやるとしようか。
……で、4月に突入。それから数日後には、入学式の当日がやって来た。
在学生にとってはまだギリギリ春休みだけど、今日は例の親戚くんと後輩くんに会うために、大学に向かう。
待ち合わせ場所として指定したのは、講義室がある建物の裏側にある、小さな庭みたいな場所……まぁ、裏庭って呼べばいいかな?
ここ、意外と気づかれにくい所なんだよねー。在学生でも、知ってる人は少ないと思う。
そこに向かうと、既に2人が待っていた。……高校時代に何度か見掛けた時も思ったけど、顔面レベル高いなぁ。
いや、2人揃って顔面だけでなく全身のビジュアル的に、もう、うん。眩しいぐらいにキラキラしてるんだけどね。モデルさんですか??
「ごめんね、2人とも!お待たせ!」
「……あなたが、ジョセフ先輩やシーザー先輩の友人ですか?」
「そうだよ!
いつもの調子でウインクしながら名乗ると、志人くんは苦笑い。承太郎くんは眉を寄せて、おれを見る。あらら、反応が悪い。
「…………シーザーさんが言ってた、"奴はノリがジョセフでうざいから、気をつけろ"というのは……こういう事か。確かに、うぜえ」
「こら、承太郎!相手は先輩なんだから、失礼な事を言わない!……先輩、すみません」
「いいよ、いいよ!全然気にしないから!」
そうそう、気にしない気にしない。こういう反応されるだろうな、と。予想はしてたし。
……ただ、個人的に。おれのノリとセフちゃんのノリを一緒にされるのはちょっっと納得いかないけどね!シーちゃん酷い。
「では改めて、園原志人です。よろしくお願いします」
「……空条承太郎だ。……ジョセフ達からは、何かあった時はあんたを頼れと、言われているが……大丈夫なんだろうな?とても頼れそうな人間には見えないぜ」
「承太郎!君はまた失礼な事を……!」
「まぁまぁ、落ち着いて!……とにかく、本当に何かあった時はお兄さんに相談してね?」
「すみません……!ありがとうございます」
「…………」
片方は、人好きのする笑顔。もう片方は、無表情&疑いの目。
……んー、志人くんは真面目ないい子。承太郎くんは取っつきにくい子だなぁ。
志人くんはともかく、承太郎くんとは上手くやれるかどうか心配……ジョセフは彼の事を、"素直じゃないだけで実はいい子だ"とか言ってたけど、本当に?
まぁ、でも。かなりの友達想いだって事は分かる。……2年前に高校で起こった、悪夢のような断罪劇を思い出せば、ね。
あの時はジョセフもシーザーもピリピリしてて、マジ怖かった……
「おっと、そうだ。連絡先、交換してもらっても大丈夫?もちろん、無理にとは言わないけど」
「いえいえ!それはむしろ、俺達の方からお願いしたいぐらいですよ。二階堂さん」
「待って待って、固い固い!その二階堂さんっていうの、堅苦しいからやめようよ。もっと気楽な呼び方にして!」
「えっ?うーん……二階堂先輩?」
「もうちょっとフレンドリーに!ちなみに、おれはあだ名で流を音読みにして、リューって呼ばれてるから」
「じゃあ、リュー先輩?」
「おっ!?……それ、いいね!採用!」
「…………マジでノリがジョセフじゃねえか……シドと初めて顔を合わせた時の反応と、全く同じだぜ」
「あぁー……そういえば、そんな事もあったね……」
何故か承太郎くんはますます疑いの目を向けて来たし、志人くんの苦笑いも深まったけど、気にしない気にしない。
志人くんと初めて顔を合わせた時の反応がジョセフと全く同じとか、聞こえない聞こえないっ!!
さーて。本人達から許可を貰って、連絡先を交換して、と。
「どんな小さな事でも構わないから、何かあったらお兄さんに気軽に声掛けてよ!
それじゃあ、ユキちゃんにタロちゃん!またねー!」
「は、ユキ、ちゃん??」
「タロちゃん……!?」
2人と別れたおれは、他に用事も無いのでさっさと帰る事にした。……一応、2人と話して連絡先を交換した事は、ジョセフとシーザーに教えておこうかな。
「何なんだ、あの野郎は!ふざけた呼び方しやがって……ジョセフとシーザーさんが信頼してるって話も疑わしくなってきたぞ」
「んん?そうか?俺は信用できるな、って思ったぜ。確かに、呼び方はちょっとあれだけどな」
「……シドがそう言うなら、本当にそうなんだろうな……どういう所を見て、信用できると判断した?」
「いろいろあるが、一番は……承太郎の態度が悪くても、笑って許してくれた所だな。
こっちは何かあったら頼る側で、向こうは頼られる側だ。それも、俺達の前世を知らないあの人からすれば、俺達は本当に年下だろ?しかも初対面の!
それなのに年上に対してあの態度なんて、その時点で"年下の癖に生意気だ!手助けなんてしてやらない!"ってなるのが普通だと思う。
でも、あの人はそれを笑って許してくれた。不快だという感情を、全く見せずに」
「…………」
「不快感を無理やり隠しているようには見えなかった。リュー先輩は、本当に怒ってなかったんだ。――器の大きい人。俺には、そう見えた」
「…………確かに、言われてみれば……」
「そんな器の大きい先輩に対して君は何を言いましたか、承太郎くーん?」
「ぐっ」
「いずれタイミングを見て先輩に謝罪するべきではないかと、俺は思うんですけどねー?」
「…………そうする……」
―――
――――――
―――――――――
春休みも終わり、2年目の大学生活が始まった。
連絡先を交換した後輩2人のうち、承太郎くんはあれから音沙汰が無いけど、志人くんはたまにメッセージアプリでやり取りしてくれる。
本当にいい子だよね、あの子は!ジョセフだけでなく、シーザーも可愛がってる理由がよく分かった。志人くんは年上に好かれるタイプだ。
それと。イケメンな後輩2人の存在は、1ヶ月経つ頃には大学中に知れ渡っていた。
基礎ゼミでおれと同じクラスになった女の子達も、承太郎くん派か志人くん派かでキャーキャー話してる。
おれは基本的に、同じクラスの学生達と一緒に過ごしているから、彼女達の話もよく聞こえてくるんだ。
承太郎くんは俺様系かつ肉食系イケメンで、志人くんは王子様系かつ草食系イケメン、なんだって。
うーん、確かに見た目や言動からしてその通りかもしれないけど……実際、中身はどうなんだろう?
外見とか、他人から聞いた話だけで人を判断しても、そんな情報はあまり当てにならないと、おれは思うんだけどね……
だから。今話題になっている噂も、簡単に信じてはいけないと思う。
「――ねぇ、知ってる?園原君の噂!」
「あー!聞いたよ、それ。彼がゲイだって話でしょ?」
「しかも、空条君みたいな男がタイプだって聞いたんだけど!?」
「そう!それよ!園原君にはガッカリ!!」
「だよねー?本当にショック。あたし、結構好きだったのに残念過ぎるー!」
「――女子達も話してるけど、文学部の園原の噂ってマジなのか?」
「マジだってさ。あいつ、海洋学部の空条だけじゃなくて、別の男ともよく一緒にいるし」
「あぁ、いるいる。そいつも結構体がデカイ奴だよな」
「じゃあ本当にそういう趣味かよ!?うわー、引くわー……」
「まぁ、でも。ぶっちゃけて言うとイケメンざまぁ!」
「ハハハハハッ!!それな!!」
……同じクラスの女子と男子から聞こえてくる、そんな話。おれは思わず、バンッ!と両手をテーブルに叩き付け、その勢いで立ち上がった。
シン、と静まり返る教室。それに構わず、荷物をまとめて教室の出入り口へ向かう。
「お、おいリュー!?もう授業始まるぜ?何処に行くんだよ」
「サボる」
そう言い捨て、教室から出てドアを強く閉める。……大学の授業をサボったのは、これが初めてだった。
その後。1人になりたくて、志人くん達と顔を合わせた例の裏庭に向かう。
「ふぅー……よく我慢した。偉いぞ、おれ」
あの教室で、怒りを我慢してさっさと離れた事は、我ながらよくやったと自分を褒める。
たまにメッセージアプリでやり取りしているだけでも、志人くんの人柄の良さは凄く伝わってくる。
それに、彼が承太郎くんの事を親友として如何に大事に想っているのかも。
万が一。志人くんが本当に同性愛者だったとしても、たったそれだけの事で付き合いを止めたりなんてしない。
他の人と少し違うだけで、勝手に失望したり馬鹿にしたりする、同じクラスの学生達が許せなかった。
そもそも、真実を確かめようとせずに噂だけを信じて、好き勝手にその人を評価するなんて、おれからすれば論外だよ!
……よし。今度、ジョセフとシーザーにこの事を愚痴ろう、そうしよう。
あ、でも。それはある程度、噂が落ち着いてからにしようかな。下手したら、あの2人がうちの大学に突撃しちゃう。
(…………おれは、どうするべきかな?)
志人くんに、この噂の事を教える?……でも、それでショックを受けた彼が、承太郎くんやもう1人の友達……一色くんから離れてしまったら?
それは、可哀想だよね。離れていく方も、距離を取られる方も。
今のところ。志人くんが噂を知らないなら、知らないままでいた方が良いかな?
ならば、俺が教室で聞いた話を承太郎くんに伝えて、念のため周囲に気を付けるようにと……って、駄目だ駄目だ!!
2年前に起こった、悪夢のような断罪劇。最悪の場合、あれの再現になり兼ねない。それはアウトだよ!
同じ理由で、やっぱりセフちゃんとシーちゃんに話すのもアウト!
あぁー……どうしよう。この一件、おれに何か出来る事ってある?いや、何も無さそうな気がする。
かといって、同じ高校出身の先輩として何もしないのは、正直どうかと思うしなぁ……うーん……何か良い方法はないかな?
そんな事を悩み始めてから、しばらくして。おれがいる裏庭に、誰かの話し声が近づいて来る。
悩み事の途中だったし、今は誰にも会いたくなかったので、咄嗟に物陰に隠れてしまった。
……その判断のおかげで、とんでもない話を聞く事になるなんて、さすがに予測できなかったけど。
「まさか、こんなにも上手くいくとは……」
「それな!園原がホモだって噂、みんな意外とあっさり信じてたし、噂が広がるのも早かったし!」
「あぁ。この計画を考えたオレでも、ここまで噂が早く広まるなんて思ってなかったぜ」
そこまで聞いたおれは、バッグの中でこっそりスマホのカメラを起動させた。
そこからバレないように奴らの方へレンズを向けて、録画を開始する。何事も証拠は残しておかないと、ね。
相手は、男3人。……初めて見る顔だし、少なくとも教養学部の人間では無さそうだ。
「知り合いを片っ端から掴まえて、"園原は同性愛者だ"って吹き込んでやったし、それに園原が普段から空条とか、一色だっけ?
そいつらにくっついてるおかげで、より現実味のある噂になったしな」
「……で?園原には、いつ話を持ち掛けるんだ?」
「そうだな……噂がもっと広まれば、いつもすかした顔してやがるあいつも、さすがに参るだろ。
その時を見計らって、合コンに誘う。そうすれば、噂を消したいと考えたあいつは、ホモじゃなくてヘテロだって事を証明するために、参加せざるを得なくなる」
「で、空条と並んで女子に大人気の園原が合コンに来るって宣伝すれば、その分イイ女がたくさん集まるって事だな!ははは!最高の計画じゃねぇか!」
「おい!声がデカイぞ。誰かに聞かれたらどうする――」
――うん、これぐらいで充分だろう。というか、これ以上はおれがムカつくだけだし、やーめた!
あとはスマホをしまって、奴らがここから立ち去るまでは、音を立てないようにじっとしておかないと。バレたら大変だ。
……やがて。奴らが去って行く姿を見送り、物陰から出て先ほどの動画を確認する。……よーし、さすがおれ!上手く撮れてる!
(さーてと。これを使う場合、問題を解決する方法は…………あっ、)
1つだけ、思い付いた方法がある。これなら、上手くやれば後輩達の友情は壊れずに済むし、奴らにも仕返しが出来ると思う。
ただ……この方法、おれがやっても効果が薄そうなんだよなぁ。
おれの見た目は、髪は茶色に染めてるしピアスも付けてたりするけど、顔に迫力が足りないんだ。それに体細いし、ちょっと童顔寄りだしね。
だからこういう時、ジョセフとシーザーがいてくれたら助かったんだけど……2人がいない今、おれの知り合いで迫力のある人と言えば……承太郎くんしか、いない。
でも、この動画を承太郎くんに見せたら、どうなるか。……うん、彼が激怒する未来しか見えないね!
(嫌だなー、高校時代の悪夢の二の舞は嫌だなー……!!)
なので、おれが承太郎くんを宥めつつ、作戦を伝えて実行してもらわなくてはならない。あははー、憂鬱だよ……
……覚悟を決めて、電話で承太郎くんを呼び出した。
「……それで?シドに関わる重要な話ってのは?」
「まずは、今から見せる動画を見て欲しい。……ただし、動画を見終わってもすぐに怒らないでね。これを見てもらった上で、君に頼みたい事があるんだ」
裏庭にやって来た承太郎くんに、緊張しながらも動画を見せる。……全てを見終わった彼は、青筋を立てていた。ヤバいヤバいヤバいっ!!
「へえ……?そうか、こいつらが……情報提供、ありがとよ。とりあえずこいつら探し出してぶん殴れば、」
「待って!!お願いだからおれの話を聞いてくださいお願いしますぅ!!」
今にも暴走しそうな承太郎くんを、土下座する勢いで必死に止めて……かなりの時間を掛けて、ようやく引き止める事に成功した。
「あのね!君が暴力沙汰を起こしたら何かしらの処分を受ける事になるだろうし、そうなったら一番悲しむのは親友の志人くんだよ!?」
「………志人が、悲しむ」
「そうだよ!それに志人くんの親友が、すぐに暴力を振るう人だって知ったら、大学で出来た友達だっていう一色くんが、志人くんから離れてしまうかもしれない!
彼は何も悪くなくても、彼の親友がそういう人だっていう理由だけで、君以外の人間関係がぶち壊されてしまう事だってあり得るんだからね!?」
「そう、だな…………悪かった」
「へ?……あ、あぁ、うん。分かってくれたなら、それでいいんだよ!」
冷静になったおかげで、おれの言葉が届いたらしい。意外な事に謝ってくれた。
「……で?俺に頼みたい事があるんだったな」
「そうそう!……君には、噂を広めた犯人達を――脅して欲しいんだ。この動画を使って、ね」
「……ほう?もっと詳しく聞かせろ」
まず。今日これから、犯人達が何処の誰なのかを、おれが探し出して調べ上げる。……それが分かったら、そいつらを匿名で秘密裏に裏庭に呼び出す。
そして、承太郎くんには近くで待機してもらい、奴らがやって来たら脅迫を始める。
その内容は……1週間以内に、志人くんが同性愛者だという噂を消す事。それができなければ、おれが撮った動画をあらゆる方法で拡散する……という物。
SNSの恐ろしさを教え込めば、奴らはかなり焦って必死に噂を消そうとするはず。
噂を消す事ができなければ、本当に拡散してしまえばいい。これに関してはおれが、誰が流したのか分からないように、上手く拡散させるつもりだ。
でも。噂を本当に消す事が出来たとしても、その頃には必死に噂を消して回る奴らの姿の方が噂となって広まり、周囲から疑惑の目で見られるようになると思う。
あんなに必死に噂を消して回るなんて、何か後ろめたい事があるんじゃないか?……ってね。
とまぁ、噂を消せなかったとしても、消せたとしても、奴らにとっては大ダメージになる訳だ。個人的には盛大に拡散してやりたいんだけどね。
……そこまで承太郎くんに話すと、彼はニヤリと笑った。カッコいいね。
「……あんた、実は結構イイ性格してたんだな」
「その言い方は嫌だなー!おれはセフちゃんやシーちゃんと比べれば、温厚だよ!」
「温厚、ねえ?……いや、待て。セフちゃんとシーちゃんって、まさか……?」
「ジョセフとシーザーの事だよ?」
「…………」
ニヤリとした顔から一転、呆れた目で見られてしまった。その目は止めて!変人を見るような冷たい目を向けてくるシーちゃんを思い出して傷つくから!
「……しかし、意外だ」
「んっ?何が?」
「シド曰く、あんたは器が大きい人なんだとよ」
「おっ!?」
「だから、実際はそんな性格だったのが、意外だと思った。
それに、メッセージアプリでのやり取りからして、後輩想いの優しい先輩だ、って。この前シドが言ってたぜ」
「えー!?ユキちゃんがそんな事を!?うわー、嬉しいなぁ!」
器が大きい、だって!後輩想いの優しい先輩、だって!やったね、今度セフちゃんとシーちゃんに自慢しよう!
「……でもね、承太郎くん」
「あ?」
「おれ、後輩や友達を含めた仲の良い人達と……それから家族には確かに優しくするし、あまり怒らないよ。
でも――それ以外の人間にも優しくして怒らないなんて、一言も言って無いんだよね」
おれだって、怒る時は怒るさ。そしておれを怒らせた相手が、後輩でも友達でも家族でもない他人だった場合は、なおさら怒る。
おれが怒る理由はいつだって、おれと特に仲が良い訳でもない他人が、おれが大切にしている人達に、何らかの形で手を出した時……だからね。
「…………認めたくないが……」
「承太郎くん?」
「どうやら、あんたはちょっとだけ……シドに似ているらしい」
「え?」
おれが、志人くんに似ている?どういう事?
「犯人達の特定、任せていいんだな?」
「へっ?あ、うん!それは任せて!」
「ん。特定出来たら、教えてくれ。その日のうちに作戦を実行したい」
「わ、分かった」
「…………あー……それから、」
「?」
「……あんたと初めて会った日、いろいろと失礼な事を言って…………すまなかった」
「!?」
「言いたかった事はそれだけだ。じゃあな、センパイ」
衝撃的な発言をした承太郎くんは、おれを置いて去って行く。…………なに?あの子??
「……なんだよ……っ、なんだよ!可愛いとこあるじゃん!?」
ジョセフが言った通り、素直じゃないだけで実はいい子だった!!
ちゃんと謝罪が出来る上に、先輩呼びも出来る子だったんだ!?今まで誤解しててごめんねタロちゃん!!
何だかやる気が出て来た。ユキちゃんのためにも、タロちゃんのためにも、奴らの特定を頑張るぞ!
……え?講義?元々、同じクラスの奴らのせいでやる気無くしてたし、全部の講義をサボるつもりになってたから出ないよ!授業時間を丸々調査のために使っちゃうよ!
――そして、数日後。おれはついに、奴らが何処の誰なのかを突き止めた。いやー苦労したよ!初日以外は、ちゃんと授業にも出ながら調査を進めたからね!
最初に、あの動画から静止画を取り出し、奴らの顔写真をゲット。
それからあの日、俺がサボった基礎ゼミの時間帯に講義が無かった学部・学科を調べて、的を絞る事にしたんだ。
その後は、的を絞った学部・学科に所属する学生達にこっそり写真を見せて、何処の誰かを特定しようと試みた。
ちなみに。写真を見せる相手は、意図的に選んだ。犯人達はどう見ても陽キャだったから、それとは逆の陰キャの学生に声を掛ける。
犯人達と関わりそうに無い生徒を相手に聞き込みをすれば、調査の途中で犯人達にバレる可能性も低くなるでしょ?
ま、そんな感じで調査して、おれは見事に犯人達を特定した訳だ。さっそく、休み時間に承太郎くんを呼び出して、調査結果を報告する。
「……こんなにも早くに、仕事を終わらせるとはな。意外と優秀だ」
「でしょ!?意外は余計だけど、おれってば優秀でしょ!?もっと褒めてもいいんだよタロちゃん!」
「その呼び方は止めろ、ジョセフ2号!」
「君だってその呼び方止めてよ!?」
おれはセフちゃんとは違うから!一緒にしないで!!
「とにかく、これで作戦を実行できるよ。あとは承太郎くんに任せたからね」
「おう、任せとけ。……全力で脅迫してやるぜ」
あららー、怖い笑顔!犯人達、ご愁傷様!同情はしないけどね!
「あ、おれもその場にいていい?物陰に隠れて、邪魔しないようにするからさ」
「……それは構わねえが、何故だ?」
「脅迫されてる犯人達の顔をこっそり見て、心の中で"ざまぁ!!"って笑いたいだけ」
「っ、ふは!あんた、本当にイイ性格してるな……悪くない」
おれの割とゲスな発言に対して、笑って"悪くない"って言える君も、なかなかだと思うよ?
さて。……その日の全ての講義が終わり、おれが匿名で裏庭に呼び出した犯人達がやって来た。
物陰に隠れてそれを確認したおれは、近くで待機している承太郎くんに、メッセージアプリで知らせる。
それからすぐに、承太郎くんがやって来た。犯人達は明らかに動揺している。……さぁさぁ、激おこタロちゃんによる脅迫劇のはじまり、はじまり~。
……で。承太郎くんが、犯人のうちの1人の胸ぐらを掴むところから始まった脅迫劇は、とくに張り合いもなく、あっさりと大成功した。
もちろん、奴らの青ざめた顔を見て心の中ではざまぁ!!と、大いに笑わせてもらったよ!
承太郎くんが最後に、今後は彼や志人くん、それから一色くんに接触した場合も動画を拡散する、と。アドリブを利かせたのは良かったなぁ。
あれだけ脅せば、二度と馬鹿な真似はしないと思う。うん、これで一件落着だね。
と、思っていたら。いつの間にか一色くんが来ていて、一部始終を見ていたなんて!おれ、全然気づかなかった……
大丈夫かな?志人くんの親友の脅迫現場なんて見て、最終的に志人くんとの友情が壊れたりしない?承太郎くんが怖がられたりしない??
いや、杞憂でした。一色くんが承太郎くんを怖がってる様子は無いし、連絡先まで交換してます。
むしろ新たな友情が芽生える予感!?あー、良かった良かった。
「……あいつはもう行った。出て来ていいぞ」
「はーい!」
一色くんが立ち去り、承太郎くんに呼ばれて物陰から出る。
「いやー、大成功だね!あとは1週間後にどうなるか、だけど」
「あぁ。……あんたには世話になったな。いずれ何らかの形で、借りは返すぜ」
「借りなんて、……あ、いや……そうだな……」
「……何だ?」
「えっと、借りを返してもらう代わりに、1個だけお願いしてもいい?」
「…………言ってみろ。聞くだけ聞いてやる」
「――今後はタロちゃんとユキちゃんと一緒に、お昼食べたいなぁ、と……」
「は?」
―――
――――――
―――――――――
あれから、1週間。どうやら犯人達がかなり頑張ったようで、あの噂は全く聞かなくなった。
まぁ、おれの思惑通り奴らの方が噂になって、周りから冷たい目で見られてるんだけどね。自業自得だよ。
でも、今。奴らよりも、志人くん達の方が再び注目されている。……今までは昼休み中、2人だけで行動していた志人くん達の中に、一色くんが加わったからだ。
さらに。あの2人は一色くんを友人だと認める発言をして、周囲をざわつかせていた。
確かにああすれば、一色くんに危害を加えようとする奴らは激減するだろう。……でも中には、それが分からない馬鹿がいるかもしれない。
心配だなぁ、あの子達。この前承太郎くんと話してた一色くんも、純粋ないい子みたいだし。
……うん。やっぱりおれの判断は間違ってなかった。これからは、卒業するまで出来る限り彼らの側にいるとしよう。
まぁ、おれよりも先に一色くんが加わる事になったのは、想定外だったけど。
「――まさか、承太郎がリュー先輩を連れて来るなんて……どういう風の吹き回し?」
「…………ただの気まぐれだ」
「……ふーん?そっか」
「ま、そんな訳で!よろしくね、ユキちゃん!あと、トラちゃんもよろしくー」
「トラちゃん!?……俺の事、ですか?」
「そうだよ!名前が影虎くんだから、トラちゃん!……あ、でもユキちゃんから聞いたけど、自分の名前があまり好きじゃないんだっけ?
じゃあ一色くんから"色"を取って、シキちゃん?それともあだ名のエイトから"エイ"を取って、エイちゃん?」
「……えっと、先輩のお好きなように、どうぞ」
「そう?じゃあ、そうだなぁ……シキちゃんにしとこう!ね?」
「は、はぁ……」
ある日の昼休み。食堂で志人くん達が座る席に、新たにおれが加わった事で、周りがもっとざわざわしている。
おれが承太郎くんに、一緒にお昼を食べたいとお願いした時。彼はちょっと嫌そうにしてたけど、借りを返すためだからとOKしてくれた。
ただし。彼らの中に加わるのは、噂が収まってからだと約束したんだ。あの時点で仲間入りすると、噂のせいで変に誤解される可能性があったから。
でも1週間経った辺りで、おれよりも先に一色くんが加わってしまったため、周囲の反応を考えて、おれが加わるのを再び先延ばしにしてもらった。
そして、今日。おれはようやく、志人くん達とお昼を食べられるようになった訳です。ここまで長かった!!
まぁ、その間に人間関係的に身辺整理して、いろんな意味で身軽になれたから、結果オーライだね。
主に、志人くんの事で好き勝手言ってた同じクラスの連中と、上手く距離を取った。おかげで向こうは必要な時以外は話し掛けて来ないから、気楽になったよ。
「で、園原と空条は二階堂先輩と、」
「シキちゃん!二階堂じゃなくてリューさんか、リュー先輩って呼んでね!」
「は、はい。……あー、リューさん?とはどういう関係なんだ?」
「あぁ。この人は、俺達と同じ高校に通っていた先輩なんだよ」
「え、そうなのか?」
「うん。それに、リュー先輩の友達が承太郎の親戚で、俺もお世話になってる人でさ。その繋がりで仲良くなったんだ!そうだよね、承太郎」
「ん?……ああ、そうだな。その通りだ」
おぉ、志人くん上手い言い方するなぁ!違和感なくそれに同意した承太郎くんも、ナイス!
確かに、それなら嘘は言ってない。……大学に入って初めておれと顔を合わせた、という点を明かしていないだけだ。
彼らの声はそれなりに大きかったから、周囲の学生達は、おれと志人くん達が大学に入る前からの付き合いで、親密な関係だと勘違いしてくれたと思う。
これで、周りの人間はおれにも手を出しにくくなった訳だね。うんうん、ユキちゃんありがとう!
「……あ、そうだ!ねぇ、今写真撮ってもいい?」
「はあ?」
「写真……?」
「え、何でですか?」
「この4人で一緒にお昼食べてるところを撮って、ジョセフ達に送ってやりたいなと思って。
ジョセフ達にも、志人くん達が普段大学でどう過ごしてるのか教えてくれって、頼まれてるからさ」
「……園原。ジョセフ、さんって?」
「ジョセフ・ジョースターさん。さっき話した承太郎の親戚で、俺もお世話になってる人だよ」
「へぇ……って、外国人か!?」
「そう。イギリス人」
志人くんが、ジョセフの事を一色くんに説明している間に、メッセージアプリでジョセフとシーザーとおれの3人で作ったグループの画面を出し……思わず、ニヤニヤと笑う。
「…………おい」
「んっ?何かな、タロちゃん」
「だから、タロちゃんは止めろ」
すると。承太郎くんがひそひそと、おれに話し掛けて来た。
「……実はイイ性格してるあんたが、そんなニヤけた面してるって事は、ジョセフ達に頼まれた事以外に、何か狙いがあるんだろ?」
「あらー、バレた?」
鋭いね、承太郎くん。確かにおれには、他に狙いがある。今回のは、かなり下らない企みだけど。
「――セフちゃんとシーちゃんに、"おれは君達のお気に入りの子達と楽しく過ごしてるよ"って、自慢したくてね♪」
あの2人ならきっと、凄く悔しがると思うんだ。……小声でそう言うと、承太郎くんも悪い顔になった。
「シーザーさんには悪いなと思うが、ジョセフの反応は見たい……よし、やれ。存分に自慢しろ」
「あはっ!りょーかい!」
その後、志人くんと一色くんにもちゃんと許可を取って、4人で写真を撮った。
……って、ちょっとタロちゃん!そのドヤ顔、なに!?最高じゃん!まぁ、おれも同じ顔して映ってるんだけどね!!
そのまま、グループに写真を送ってやった。……案の定2人からブーイングが返って来たけど、反省も後悔もしてないよ!
後に、そのグループの画面を承太郎くんにも見せてあげたら、大いに楽しんでもらえたようで、お褒めの言葉をいただきました。やったね!
でも。承太郎くんをタロちゃんって呼んでるのをジョセフに教えた事は、凄い目付きで怒られちゃった……
ジョセフには絶対に後でからかわれるから、知られたくなかったんだって。……ごめんね、タロちゃん。
以下はおまけの小話↓
※二階堂とジョセフとシーザーの、グループ会話(キャラ崩壊に注意。会話が長い。二は二階堂、ジョセはジョセフ、シーはシーザー)
二[見て見て!]
二(園原達と4人で撮った写真。園原と一色は普通の笑顔。承太郎と二階堂はドヤ顔で映っている)
二[これからは、この4人で一緒にお昼を食べるよ!]
ジョセ[おいリューてめえェェェッ!!]
シー[ふざけるなよ貴様ッ!自分だけ志人と楽しそうにしやがって!?ドヤ顔がうざい!!]
ジョセ[あ?ちょっと待て。よく見たら承太郎までドヤ顔してるじゃねェか!まさか!?]
二[その、まさか♡おれがセフちゃん達に自慢したいって言ったら、存分に自慢しろってGOサイン出してくれた!]
ジョセ[承太郎ちゃあァァん!?]
二[wwwwwwナイス反応www]
シー[それは俺もちょっと笑ったww俺の可愛い弟分と貴様がくっついてるのは許せないが]
二[あれ、シーちゃんってもしかして志人くんの事、結構好きだったりする??]
シー[あいつ、素直で可愛げがある良い後輩なんだよ。他の奴らよりも]
二[あー、確かにあの高校にいた、いろいろ濃いキャラの後輩くん達と比べると……うん、ユキちゃんの方が数倍は可愛いね!]
シー[ユキちゃん?]
ジョセ[ユキちゃん!?という事はお前、もしかして承太郎にもあだ名付けたか?]
二[うん!承太郎くんはタロちゃん!]
ジョセ[タwwwロwwwwちゃんww]
シー[犬みたいなあだ名を付けるなッ!承太郎が可哀想だろ!?]
ジョセ[wwいwwwwwぬwww]
シー[というか、このスカタンがリアルでも爆笑してるせいで、周りの視線が痛いんだが]
二[それはご愁傷様wwじゃあ、おれはこれからこの4人で遊ぶ約束をしてくるね!バイバイ!]
ジョセ[何だと!?リューお前羨まし過ぎるんだよコラァッ!!]
シー[ジョセフの笑いは怒りのおかげで収まったようだが、リュー。貴様は許さん!絶対にッ!!]
ジョセ[……あれ?今気づいたけどもう1人、知らない奴が映ってるな?誰、こいつ?]
シー[あ、本当だ]
※後に。二階堂から一色の事を聞き、園原に友達が出来た事を心から喜ぶ、ジョセフとシーザー。
※彼ら曰く、「志人には承太郎以外の友達が全く出来ないんじゃないかと、心配していた」失礼な!!by園原