空条承太郎の親友   作:herz

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・「空条承太郎の親友は、思わぬ繋がりを知る」の続き。ご都合主義、捏造過多(特に、図書館について)。キャラ崩壊あり。

・新たなジョジョキャラ達が登場します。そのジョジョキャラ達の口調がよく分からないまま書いており、セリフも少ないですが、そこは目を瞑ってもらえるとありがたいです。

・親友組の距離は相変わらず近いし、片方の友愛がますます重くなっていますが、腐向けではありません。

・メッセージアプリでの会話を[]で表現。




 ――保護者は増え続けるよ、どこまでも。




空条承太郎の親友は、保護者量産常習犯

 

 

[【悲報】旧図書館の取り壊しが決定しました(´;ω;`)]

 

[は?]

 

[は?]

 

[はあ!?]

 

 

 夕食を終えて、四方さんと別れた後。旧図書館組のグループで、例の衝撃の事実を書き込んだ。

 すると。あまり間を置かずに既読が付き、俺と承太郎以外の3人から反応が返って来る。

 

 

[どういう事ですか、志人さん!]

 

[驚き過ぎて1回スマホ落としちゃった。それでどういう事かな!?]

 

[詳しい経緯を今すぐに話せ!]

 

[俺が普段から世話になっている海洋学教授が、実は三谷の兄だったと判明した事がきっかけだ。旧図書館の取り壊しについては、その人から聞いた]

 

[待って待って待って承太郎えっ??]

 

[何だその繋がりは!?]

 

[世間狭過ぎじゃないですか!?というか、承太郎さんもその場にいたんですね?]

 

[ああ。……で、取り壊しの話を聞いたシドが、その場で三谷に鬼電して事情を聞き出した]

 

 

 そうそう、思わず鬼電しちゃったんだよな。三谷さんには悪い事をした。

 

 

 彼から話を聞いて最初に分かったのは、俺達にその事実を隠すつもりは無く、近々事情を説明する予定だったという事。

 四方さんが知っていた理由は、つい最近電話で話した時にぽろっと口にしてしまったから。

 

 三谷さんは来週の月曜日……つまり、図書館の定休日を狙って、まずは俺に電話する気でいたらしい。確かにその日なら、俺の仕事の邪魔にはならない。

 だがしかし。まさかその前に、俺が承太郎を通じて四方さんと繋がるなんて、夢にも思わなかっただろう。

 

 そして俺から鬼電されるという、とばっちりを食らった訳だ。……本当にすみませんでした。

 

 

 さて。肝心の、旧図書館の取り壊しが決定した理由についてだが。

 

 

[――老朽化が進んだ……そっかあ]

 

 

 そう、建物の老朽化が原因である。

 

 

[既に校舎内には新しい図書館があり、旧図書館を維持する理由も無い……いずれはそうなる予定だった、という事だな]

 

[確か旧図書館は、あの学校が設立された当初からあったんでしたよね?しかも木造建築……]

 

[あぁ、そうだ。三谷さん曰く、建築されてから既に70年以上は経っている、との事]

 

[そんなに!?]

 

[それは、また……今までよく持ちましたね]

 

[最初の頃はちゃんと点検もやっていたようだが、新しい図書館が出来た後はそっちの整備に金を掛けるために、旧図書館はほとんど放置されていたらしい]

 

 

 まぁ。いくらマンモス校でも、金を掛けられる所と掛けられない所の差は、どうしても出ちまうよな。

 そこから更に、旧図書館にある貴重な本や古い本の数々が、今後どうなるのかも説明した。三谷さんから聞いた時は驚いたが――

 

 ――それらの本は全て、三谷さんとそのご友人の方々がお金を出し合って建設した、私設図書館に収められるという。

 

 学校側からは元々、老朽化が進んだら取り壊すと、もう何年も前から言われていたらしい。

 だから三谷さんは、数年前。そろそろ建物が危ない事を察知して、以前からご友人の方々に相談していた、私設図書館の建設を進める事に。

 

 そして、最近。学校側から取り壊しを言い渡された時には既に、私設図書館が完成していたので、特に抵抗もなく受け入れた、と。

 ちなみに。三谷さんは今後も、定年退職するまでは学校の新しい図書館で司書を続けつつ、私設図書館の管理人も勤めるという。

 

 

[その私設図書館の事も、僕達に教えてくれたら良かったのに……(´・ω・`)]

 

[ジョルノの言う通りだ。俺もシドも、ついさっきそれを知ったばかりでな。驚いたぜ]

 

[三谷さん自身もマジで忘れてたらしい。俺達には既に話した気になっていた、と]

 

[あはは。しょうがないなあ、三谷さんったら。あの人の記憶能力の老朽化も大分進んでるんじゃない?]

 

[こらこら、毒舌坊主。それは三谷の前では言うなよ?]

 

[その呼び方は止めて貴族坊主]

 

[あのー、まだ話には続きがあるんですが。いいですか?]

 

[ああ、すまない。良いぞ]

 

 

 話の続きは、その私設図書館に収める大量の本についてだ。俺達には、旧図書館から私設図書館に本を運ぶ手伝いをして欲しいと、三谷さんから頼まれている。

 

 本来なら専門の業者に頼む方が早いが、それでは大切な本達が雑に扱われる可能性もある。

 特に旧図書館には、三谷さんが修復した本が多いため、何かの拍子にそれらが壊れてしまうかもしれない。

 

 だから、確実に本を大切に扱ってくれる人達に手伝って欲しい、との事だった。……あの三谷さんにそう言われる程には、俺達旧図書館組は信用されているらしい。

 

 

[って訳で。今月の○○日に引っ越し作業をやるんだが、皆の予定は?]

 

[その日は空いているよ!]

 

[僕も大丈夫です]

 

[俺も、特に予定は無い]

 

[……今から急げば、どうにか予定を空けられそうだ]

 

[ディオ兄さん、無理しないでくださいよ?]

 

[問題ない]

 

 

 他3人はともかく、ディオは本当に大丈夫か?例の万能セキュリティソフトの件で、今も忙しい毎日を送ってるはずだし……体調、崩さなければ良いんだが。

 

 

[ところで、手伝いは僕達5人だけで大丈夫ですか?旧図書館の本って、かなり多いですよね?]

 

[それなんだが、六車さんも来るらしい。まぁ、それでも人手が足りないと思うから、三谷さんに許可をもらって、他にも数名呼ぶ事にした。

 俺の知り合いの中でも、読書好きで本を大切に扱ってくれる人達に、頼んでみようと思う]

 

[ほう?誰を呼ぶんだ?]

 

[候補は5人です。――ウィルさん、カーズさん、ダニエルさん、ンドゥールさん、リゾットさん。あ、ダニエルさんはダービー兄って言った方が分かりやすいか?]

 

 

 

 

「――はあ?」

 

 

 隣からドスの利いた声が聞こえ、恐る恐るそちらの様子を窺う。……承太郎はため息をつき、額を押さえていた。

 

 

[師匠は良いとして、他4人!!]

 

[何故リゾット!?]

 

[私は、ツェペリ男爵とは既に折り合いがついているし、それ以外も問題無いが……ダービー兄やンドゥールとはいつ知り合ったんだ?]

 

[ダニエルさん、ンドゥールさんとは数年前に知り合ったばかりです。

 あの人達と俺の好きな作家が同じで、その作家が書いたシリーズの話で盛り上がってたら、いつの間にか仲良くなってました。

 

 ちなみに。ダニエルさんとンドゥールさんの2人は、何年も前から読書仲間として密かに交流していたそうですよ?]

 

[奴らが?……意外な組み合わせだな]

 

 

 本当に、ディオが言うように意外な組み合わせだった。

 あの人達は、前世では言葉を交わした事がほとんど無かったそうだが、今世では徐々に仲良くなっていったらしい。

 

 

 それから、今世のンドゥールは盲目ではない。正確には、幼い頃から目の病気に掛かっていて、危うくまた盲目になるところだったが……

 現代の医療技術が発展していたおかげで手術が成功し、盲目にならずに済んだという。

 

 今世では知らない仲では無いし、彼が視力を失わずに済んで良かったと、心から思っている。……閑話休題。

 

 

[シドが認めているなら、そいつらを呼んでも構わない]

 

 

 と、承太郎からのメッセージが目に入る。思わず隣を見ると、ちらっと俺を見た彼は、さらに文字を打ち込み始めた。

 

 

[ダービー兄とンドゥールであれば、他のディオの元配下達と比べたら、かなりマシだ]

 

 

 あぁ、なるほど。そういや承太郎は前世で、彼ら2人の事はそれなりに評価してたな。

 

 

[承太郎がそう言うなら……僕も構わないよ。ウィルさんは歓迎するし、他の4人とも僕個人としては特に因縁は無いし]

 

 

 ……そうだな。ダービー兄やンドゥールとは、"ジョナサン・ジョースターとしては"、確かに因縁は無いだろう。

 

 

[承太郎さんは、本当に良いんですか?]

 

[余程の事で無い限り、俺はシドが決めた事に文句は言わねえ。こいつの人を見る目は全面的に信用している]

 

[……最近のあなたは、以前にも増して志人さんに甘くなっているように思えるのですが]

 

[そうか?気のせいだろ]

 

 

 ジョルノ、鋭い。さすがだ。そして承太郎は惚けるな。

 

 

 承太郎の前世の妻が見つかり、既に別の男と結婚して子供までいる事が分かった日から、こいつの俺に対する態度が大きく変わった。

 2人きりになると急に世話焼きになるし、激甘だし、他の人間よりも俺を優先しようとする頻度が増えたし……こいつの友愛の重さは、なんとなく分かって来たところだ。

 

 

(直近の出来事で言うと、このソファーベットだな……)

 

 

 現在、俺は承太郎の家にいる。そして今2人で座っている、折り畳み式の黒いソファーベットだが……承太郎がいつの間にか購入していた物だ。

 

 

 きっかけは、おそらく。俺がこの前承太郎の家に泊まった時、以前使っていた普通のソファーで寝返りを打った際に、床に落ちてしまった事。

 

 あの時の承太郎は俺のドジを笑っていたが、その数日後。

 ちょっとした用があって、再びこの家に来た時には既に、この黒いソファーベットに変わっていた。あと、青いクッションも追加されている。

 

 本人は、"ちょうど買い換え時だったんだ"なんて言っていたが、以前のソファーはどう考えても、まだ使えそうだったのに――

 

 

[まあ、承太郎さんの言う通り、志人さんの人を見る目は確かですよね……

 分かりました。僕も志人さんを信用しましょう。それにリゾット1人だけなら、他の暗殺チームの奴らが来るよりはマシです]

 

[ディオはどう?]

 

[さっき言ったように、私も構わない]

 

[なら、全員賛成だね]

 

 

 ――おっと、今はこっちに集中しないと。

 

 

[ありがとうございます。じゃあ、ウィルさん達には俺から事情を話しておきます。

 といっても、彼ら全員が来る事はさすがに無いと思いますけどね。いきなり手伝いを頼んでも、皆さんそれぞれ予定があるはずだし]

 

[いや。他でもない志人から頼まれたら、全員が来るだろう]

 

[全員来ますよ、きっと]

 

[うん、絶対に来る]

 

[断らねえだろ、お前の頼みなら]

 

[何だその自信は??]

 

[シドだからな]

 

[志人だからね]

 

[志人さんですから]

 

[志人だからな]

 

[仲良しか??]

 

 

 ……釈然としないまま、旧図書館組グループでのやり取りを終えた。次はウィルさん達だ。

 

 

「個別で連絡……は、面倒だな。よし、俺を入れた6人のグループを作ろう。そうしよう」

 

「はっ?おい、シド、」

 

「え?何?」

 

「…………いや、何でもねえ。お前が気にしないなら、それで良いが……」

 

「んん?」

 

 

 何故か引いている様子の承太郎はさておき、さっそくウィルさん達全員を招待する。グループ名はシンプルに、"読書好き"だ。

 最初に俺が、突然グループを作った事への謝罪と、彼らに頼みたい事があると書き込む。

 

 

「お?ラッキー、一気に全員分の既読が付いた」

 

「……だろうな」

 

「うわ、ちょっ……!?」

 

 

 それと同時に、承太郎が俺に寄り掛かってスマホの画面を覗き込んで来た。

 

 

「承太郎、邪魔」

 

「このまま続けろ。俺が監視する」

 

「えぇー……?」

 

 

 力じゃ勝てねぇし、承太郎は一度決めた事はなかなか曲げない奴だし……仕方ない。このまま続けよう。

 

 

[何だこのグループは?志人以外、全く知らない面々なのだが]

 

[志人君、これはどういう事かね?確かカーズという名前は、柱の男という存在の名前と同じだったはずだが、まさか?]

 

[如何にも、私がそのカーズだ。貴様は?]

 

[前世ではシーザーの祖父だった者だ]

 

[ツェペリ家の人間か。理解した]

 

 

 あっ、まずい。そういやツェペリ男爵とカーズの関係は……!前世ではカーズの仲間がシーザーを殺した訳だし、ヤバイかな?

 いやいや。もうグループを作ってしまったからには、続けるしかない。

 

 

[ダービーと志人しか知らない……]

 

[同じく、私も志人とンドゥールしか知らないぞ。グループ名で共通点は察しているが……]

 

 

 続いて、ンドゥールとダービー兄。彼らの書き込みを見て、さらに体重を掛けて来る承太郎。重い重い重い重い。

 

 

[園原、早く説明してくれ。状況が全く分からん]

 

 

 そして多分、一番困惑していると思われるリゾット。この人は本当に、俺以外で繋がりのある人間がいないだろうからな。すみません、今すぐに説明します。

 

 簡単に、誰がどういう人なのか、前世で誰と繋がりがあったのかなどを説明した後、本題に入った。

 事の経緯。承太郎達、旧図書館組について。それから、頼み事の内容も詳しく説明する。

 

 

[――という事で。皆さんにはできれば、今月の○○日に本を運ぶ手伝いをしてもらいたいな、と。

 もちろん、強制ではありません。完全にボランティアですし、それぞれ相性が悪い人もいると思いますし、断られても仕方ないと思っています]

 

[俺は構わない。……ジョルノ1人だけなら、ブチャラティチームの他の奴らが来るよりはマシだ]

 

[ありがとうございます、リゾットさん!]

 

 

 と、真っ先にリゾットが返事をしてくれた。理由がジョルノと全く同じで、ちょっと笑える。

 

 

[私も構わんよ。カーズさえ、こちらにちょっかいを出して来なければ、だが]

 

[別に余計な手出しはしない。貴様には興味が無いからな。

 そんな事より、あまり人を頼ろうとしない志人が珍しくお願いしてきたのだから、それに応える事の方が重要だ。その日は私も手伝ってやろう]

 

[お二人共、ありがとうございます!]

 

 

 ツェペリ男爵とカーズもOK、と。

 

 

[手伝う事はもちろん、構わないが……承太郎、か……]

 

[ディオ様と志人の助けになりたいし、行きたいのは山々だが……俺とダービーが行く事で、奴がどんな反応をするのかが不安だ]

 

 

 うん。ダービー兄とンドゥールは、なぁ……不安に思うのは当然だろう。

 

 

[ダニエルさん、ンドゥールさん。無理しないでくださいね?

 承太郎からは既に、前世であなた達と戦った話について聞いています。本当に強制ではないので、断っても大丈夫ですよ]

 

[いや、ディオ様と志人のためだ。行く]

 

[他ならぬ君からの頼みだからな、私も行こう]

 

[え、本当に良いんですか!?]

 

[ああ]

 

[大丈夫だ]

 

[すみません、ありがとうございます!]

 

 

 結局、全員OKしてくれた。これだけ人手が足りていれば、本の移動も比較的早めに終わるはず。三谷さんに良い報告ができそうだ。

 

 

「やったぜ、承太郎!人手が増えたぞ」

 

「…………お前は……」

 

「承太郎?」

 

 

 深く……本当に深くため息をついた承太郎は、徐に両手を伸ばし、俺の両頬を軽く摘まむ。

 

 

「にゃんひゃよ」

 

「…………このグループでのやり取りは、ジョナサン達にも報告しておくか……また厄介な野郎共に好かれやがって」

 

「にゃんのひゃなし?」

 

「お前が余計な保護者を量産してるって話だ」

 

「?」

 

「シドの保護者は多いに越した事は無い、無い、が……一体どこまで増やし続けるつもりだ、てめえ……」

 

「??」

 

「――とりあえず、この"読書好き"グループは"究極カオス"グループとでも改名しとけ」

 

「にゃんで??」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 そして、当日。1日だけ有給を取った俺は、久々に母校へ向かっていた。

 

 本当は待ち合わせ時間の5分前ぐらいに到着するはずだったのだが、急に職場から電話が掛かって来てそっちの対応を優先したため、待ち合わせ時間を少し過ぎてしまった。

 承太郎やジョルノと一緒に行く予定だったが、2人には既に連絡済みで、先に行ってもらっている。

 

 皆はもう、旧図書館の中にいるだろう……そう思っていたのだが。

 

 

(えっ、あれ、どういう状況?)

 

 

 今日待ち合わせしていた全員が、まだ校門の前にいる。それに、険悪な雰囲気が漂っていた。

 

 一体何があったのか、承太郎とジョルノが、ダービー兄、ンドゥール、リゾットの3人と睨み合っている。

 それに対して。ニコニコするだけで彼らを止めようとしないジョナサン、呆れ顔のディオ、カーズを警戒している様子のツェペリ男爵、承太郎達にもツェペリ男爵にも興味が無さそうな顔をしたカーズ。

 

 そして、その全員を見ておろおろしている六車さん。

 

 

(OK、大体理解した)

 

 

 だがしかし。俺はあえて、空気を読まずに突撃する。

 

 

「――皆さん、おはようございまーす!!」

 

「!」

 

「志人さん?」

 

「ほらほら、三谷さんが待ってんだからさっさと行くぞー」

 

「ちょっ、」

 

「シド?」

 

 

 睨み合っていた奴らのうち、承太郎とジョルノの手を引いて、スタスタと校門を通り過ぎる。……ある程度進んだところで、顔だけで振り向いた。

 

 

「あ、そうそう。分別のある(・・・・・)大人(・・)、である皆さんは当然分かっていると思いますが、今日だけは喧嘩は無しですよ?本を運ぶという仕事に集中してください。

 もちろん!分別のある(・・・・・)大人(・・)、である皆さんには、言うまでも無いですよ、ね?」

 

 

 にっこり、と。満面の笑みで言ってやった。……先程まで睨み合っていた5人が、気まずそうな顔で黙って頷く。

 それとは反対に、睨み合いを止めようとしなかった4人は、口を押さえて顔を背け、震えている。あれは笑ってるな。

 

 

「それから!分別のある(・・・・・)大人(・・)、の皆さんは、自分以外の誰かが喧嘩をしていたら、ちゃんと止めてくれるだろうと信じてますから、ね?」

 

 

 その4人に対しても、満面の笑みでぐさりと釘を刺してやった。彼らは揃って、顔を引きつらせる。

 

 

「さて、六車さん。お待たせしました。行きましょう」

 

「はい、園原様!!」

 

「様??」

 

「アッ、失礼いたしました。行きましょう、園原さん」

 

「お、おう」

 

 

 シェパード、じゃなくて六車さんの目が超キラキラしていた。

 

 

「お久しぶりです、三谷さん」

 

「遅いぞ、園原。何やってたんだ?」

 

「すみません、ちょっとしたトラブルがあったんですが、もう解決したので大丈夫です」

 

「……まぁ、いい。さっそく働いてもらうぞ」

 

「はい!」

 

 

 全員で旧図書館の前に行くと、相も変わらずしかめっ面をした三谷さんが待っていた。電話では最近もやり取りしていたが、直接顔を合わせるのは久々だ。

 

 俺が旧図書館組以外の人達を彼に紹介し、それから三谷さんの指示で作業を開始する事に。

 最初に、本棚から本を出していく人達と、その本を段ボールに詰め込む人達とで、二手に別れる事になったのだが……

 

 

「……シド。お前は、段ボールに本を詰め込む方にいけ」

 

「え?」

 

「お前に本を出す方はやらせねえ、いいな?」

 

「それは構わないが……何で?」

 

 

 承太郎が真っ先に、怖い顔をしながら俺にそう言ったので、思わず首を傾げる。

 

 

「もう忘れたのか、てめー!高2の時に、この図書館の梯子が壊れて上から落ちた時があっただろ!?」

 

「あっ、」

 

「何ィッ!?」

 

「それは聞き捨てならない。どういう事だ、承太郎」

 

 

 承太郎に言われるまで忘れていた。そういえば、そんな事もあったなぁ、と頷く俺の周りに、前世持ちの仲間達全員が集まって来る。

 

 10年以上前、まだ俺のスタンドが目覚めていなかった時。梯子がかなり脆くなっている事に気づかず天辺まで上がり、本を棚に戻してから下りようとしたら、踏み場が折れて落下。

 そこに偶然居合わせた承太郎が、スタンド能力を使って俺を受け止めた……

 

 という話を、承太郎が皆に説明。あの時は、腰を痛めた三谷さんの代わりに本を戻したんだったかな?

 ちなみに。その問題の梯子は、他の梯子も揃って既に新しい物に変えられている。

 

 それなら梯子はもう安全だし、今の俺にはイージスがいるんだから、万が一また落ちたとしても着地は失敗しない。そんなに心配するな……と、皆に言ったら、

 

 

「「「そういう問題じゃないッ!!」」」

 

「アッ、ハイ、スイマセン」

 

 

 承太郎と同じく怖い顔をした皆に、怒鳴られてしまった。鼓膜が痛い。

 そんな訳で、俺だけは本を詰め込む係に固定された。それどころか、今日だけは梯子に近づくなと、皆から厳命された。解せぬ。

 

 その後、さっそく二手に分かれて作業を始めた。どいつもこいつも、無駄なお喋りをするタイプでは無いため、静かに、そして速やかに行動する。

 そのおかげなのか、午前中だけで半分以上詰め込みが終わった。あと少しだな。

 

 

 ただ。俺個人としては、皆には読書仲間としてもう少しだけ仲良くなってもらいたい。そこで、昼飯を食べるための休憩時間中に、ちょっとだけ仕掛けてみる事にした。

 

 

「ジョルノ」

 

「何です?志人さん」

 

「リゾットさんの事なんだが――実はその人、ライトノベル好きだぜ」

 

「おい園原、」

 

「何ですって!?リゾット、あなたの今一推しのラノベは!?」

 

「は?…………○○シリーズだが」

 

「同志よ!!」

 

「!?」

 

 

 まずはジョルノに、リゾットの意外な一面を教えてあげた。俺も初めて知った時は驚いたなぁ。

 しかも彼が好んで読むラノベの大体が、ジョルノの好みと被っている。きっと仲良くなれるはずだ。

 

 

「ンドゥールさん、ダニエルさん。承太郎は○○シリーズ愛読者ですよ」

 

「ほう?それはそれは……」

 

「ふっ……良い趣味をしているじゃないか。承太郎、シリーズの中ではどの話が好みだ?」

 

「……○○。最初は助手役1人で謎の手掛かりを探り、最後の辺りで探偵役が合流している、あの話だ」

 

「いいな。俺も、あれは好きだぞ」

 

「解決までの道のりは長いが、その分読み応えがある。助手役だけで手掛かりを探るという展開も、新鮮で良かった」

 

「…………ダービーに同意するのは癪だが、確かにそうだな」

 

 

 次に。ンドゥールとダービー兄に、承太郎が○○シリーズ――承太郎がAbsolutely(もちろん)で覚えていた例のシリーズ――を読んでいる事を教える。

 

 高校生の時に、そのシリーズの存在を教えて以来。承太郎はいつの間にか、愛読者になっていたようだ。

 今では、既に読み終わった物を何度も読み返す程に、はまっているらしい。ンドゥール達もそれは同じだから、そのシリーズに関しては気が合うと思う。

 

 

 さて、次はカーズとツェペリ男爵のところに、ジョナサンとディオを――

 

 

「貴様ら、ポ○ロの良さが分からないのか?ホー○ズも悪くないが、やはり探偵といえば○アロだろう」

 

「カーズの言う通り、ホーム○よりはポア○の方が勝っているぞ」

 

「ウィルさんには悪いですけど、こればっかりは譲れませんよ。探偵といえば○ームズです。ねえ?ディオ」

 

「ああ。ポ○ロよりも、ホ○ムズだ」

 

 

 ――って、ホー○ズ派か○アロ派かで論争してる!?しかもカーズとツェペリ男爵がポア○派!?

 何だ、あそこ。楽しそうじゃねぇか!と言っても、混ざるつもりは無いけどな。カーズ達は、このまま放置で大丈夫だろう。

 

 

 この分なら全員、午後からは仲良くやっていけそうだ。……そう考えながら、六車さんと三谷さんの隣に移動して昼飯を食べる。

 

 

「…………園原さん。もしや、あれは狙ってやったんですか?」

 

「えぇー?何の事ですかー?別に読書好き同士でもっと仲良くなって欲しいとか、考えてませんよー?」

 

「わざとらしい惚け方だな……」

 

「というか、もう答え言っちゃってるじゃないですか……」

 

「あの人達には、内緒でお願いしまーす」

 

 

 呆れ顔の三谷さんと、苦笑いをする六車さんに向けて、俺は悪戯っぽく笑った。

 

 

 

 

 午後からの作業は、午前中よりも皆の会話が増えた。心なしか、雰囲気も柔らかくなった気がする。やったぜ、計画通り。

 

 この仕事が終わったら交流が途絶える奴もいるだろうが、次に顔を合わせた時に険悪な空気にならなければ、それで良い。

 別に、これ以上仲良くなる事を強制するつもりは無いのだ。せめて、本が関係している時だけは和やかに会話する、ぐらいのレベルまで緩和してくれたら嬉しい。

 

 

 日が高いうちに、全ての本の詰め込みが終わり、数多くの段ボールを、学校の敷地内に停めた小型トラックの中へと積み上げた。

 次は、このトラックで私設図書館まで本を運び、向こうの本棚に再び本を並べる作業が待っている。

 

 トラックは、その免許を持っている六車さんが運転し、三谷さんもその助手席へ乗るようだ。

 俺達旧図書館組はジョナサンが運転する車に乗り、それ以外の5人は別の車に乗って、私設図書館へ向かう事になった。

 

 

「園原」

 

「はい?……これは?」

 

 

 トラックに乗る前。三谷さんが俺に、ある鍵を手渡す。……かなり古い鍵だな。

 

 

「旧図書館の鍵だ。……俺は拓海と一緒に先に行って、私設図書館の鍵を開けないといけない。だから俺の代わりに、最後の戸締まりを頼む」

 

「――最後の、戸締まり」

 

「……どうした?」

 

「いえ、何でもないです!……鍵は職員室に返せばいいんですか?」

 

「あぁ。高等部の職員室に持っていけ」

 

「分かりました」

 

 

 一足先にトラックで学校から出た六車さん達を見送り、手の中にある古い鍵に目を落とす。……最後、かぁ。

 作業中は意識して考えないようにしていたが、旧図書館は、……俺達の思い出の場所は、もうすぐ消えてしまう。

 

 

「すみません。俺、旧図書館の戸締まりして、鍵も職員室に返して来るので、皆さんには先に駐車場で待っててもらってもいいですか?」

 

「ああ、いいよ」

 

「……1人で平気か?」

 

「大丈夫です!いってきます」

 

 

 ジョナサン達に声掛けてから、旧図書館を目指す。……最後に、思い出の場所との別れを済ませるとしよう。

 

 

 

 

 

 

「…………ジョナサン、ジョルノ、ディオ、」

 

「うん、承太郎もいいよ。いってらっしゃい!」

 

「志人さんの事、任せましたよFratello(兄さん)

 

「早く追い掛けろ」

 

「……まだ何も言ってねーぞ」

 

「志人が心配なんだろう?」

 

「あの人、ちょっと落ち込んでる様子でしたよね?承太郎さんが行ってくれたら、僕達も安心できます」

 

「本人は大丈夫、と言っていたが……元々、あの子を1人で行かせるつもりは無かった。だからお前が行ってこい、承太郎」

 

「…………行って来る」

 

 

 

 

「……ン?おい、貴様らまで待つ必要は無いぞ?」

 

「いえ、ディオ様。恐れながら、俺とダービーも志人が心配なので……」

 

「差し支えなければ、ここで共に待たせてもらえませんか?」

 

「……俺も同じく、できればここで待たせて欲しい」

 

「志人の憂いが晴れたかどうかをこの目で確かめるまでは、ここから動くつもりは無い」

 

「私も、彼が心配なのでな。ここで待たせてもらうとするよ」

 

「…………ンドゥールさんとダービーさんとリゾットはともかく、カーズさんとウィルさんは、僕達に何を言われても動くつもりは無いようですね」

 

「もう……しょうがないなあ。じゃあ僕が全員を代表して、ちょっと遅れる事を三谷さん達に連絡しておくよ」

 

「すまないね、ジョナサン」

 

「師匠、本当に悪いって思ってます??」

 

「ははは」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 旧図書館の前に到着し、入り口から中に入った。当然だが、物はほとんど残っておらず、ガラガラだ。それを見るだけで、物寂しい気持ちにさせられる。

 

 空っぽの本棚の間を通り過ぎ、最奥にある読書スペースへ向かうと……古いテーブルと、いくつかの椅子が残されていた。

 これらは後日、学校の職員達によって処分される予定だという。

 

 その中の、一番端にある4人席の前に向かい、椅子の一つひとつに手を置く。

 

 

(ここがジョルノの席で、その正面の席に俺……その隣が、承太郎)

 

 

 高校生の時。たまに位置が変わる事もあったが、基本はそれが定位置だった。

 三谷さんに怒られないように、こそこそと会話を楽しむ事もあれば、それぞれ無言で自由に本を読む事もあった。……居心地が良かったし、楽しかったなぁ。

 

 テーブルを撫でて、ぎゅっと目を閉じた。旧図書館での出来事を思い出し、心中で今までの感謝と別れを告げる。

 ……やがて満足した俺は、目を開けて本棚の方へ振り向き――

 

 

「――うおぉう!?お、お前、いつからいた!?」

 

「ついさっき来たばかりだ」

 

 

 いつの間にかそこにいた親友を見て、すっとんきょうな声を上げる。全っ然気づかなかった!油断し過ぎだろ、俺!?

 

 

「……で?」

 

「えっ?」

 

「"お別れ"は済んだのか?」

 

 

 読まれてやがる。

 

 

 ……もしかして、それを察していたからすぐに声を掛け無かったのか?俺の心の整理がつくまで、待っていてくれた?

 俺に対して甘くなった今の承太郎なら、それもあり得る。

 

 

「あぁ、終わった。……お前はいいのか?」

 

「俺は……別にいい。お前には悪いと思うし、旧図書館自体を侮辱するつもりは無いが、俺にとってこの場所は、そこまで重要じゃねえんだ。

 お前と出会うきっかけになった事には、心から感謝しているがな」

 

「…………ふーん。なんだ、こんなに寂しいと思ってんのは俺だけかよ……」

 

「……志人が"いる"旧図書館は重要だが、志人が"いない"旧図書館は重要ではない」

 

「んん……?」

 

「高校の時だって、最初は旧図書館の本が目当てだったが、お前が目当てでここに通うようになるのに、それほど時間は掛からなかった」

 

「はっ?」

 

「志人さえ、そこに存在していれば、俺にとっては旧図書館だろうが私設図書館だろうが、どっちでもいい。

 だから、ここが取り壊しになっても、お前のように落胆する程ではない」

 

「――――」

 

 

 唖然。……唖然とするしかなかった。

 

 

「…………まるで、俺だけが存在していれば何処でも、いや、何でもいい……みたいな口振りだな?」

 

「――事実、そう言っている」

 

 

 開いた口が塞がらねぇ。物理的に。

 

 

「"お別れ"は済んだようだし、やり残した事はもう無いな?」

 

「えっ、あ、……あぁ。無い」

 

「よし、行くぞ。ジョナサン達が待ってる」

 

「…………おう」

 

 

 かろうじて返事を返し、先に歩き出した承太郎の後を追う。……たまに唐突に話を変えるところは、相変わらずだな。

 おかげで、突っ込みを入れるタイミングを逃してしまったが、せめてこれだけは聞いておく。

 

 

「承太郎」

 

「ん?」

 

「お前の友愛って、もしかして俺が思ってる以上に重いのか?」

 

 

 すると。足を止めた承太郎が振り向き、俺を見て目をぱちくりさせる。

 

 そして次の瞬間、悪い顔でニヤリと笑った。

 

 

「てめえが自分で言ってたじゃねえか。――前世でも今世でも、俺以上に愛情深い男を知らない、ってな」

 

 

 あー、そういえば確かに自分で言ったなぁ、俺。納得した。

 

 

「今さら気づいたところで、もう遅い。逃がさねえよ?ダーリン」

 

「勘弁してくれよ、ハニー……」

 

「くくく……っ!そいつは無理な相談だ」

 

「できれば、その友愛はちょっっと軽くして欲し、」

 

「無理」

 

「即答!?」

 

「むしろ、もっと重くなるぜ」

 

「またまたそんな冗談、」

 

「いや、マジだ」

 

「なんてこった」

 

 

 もう笑うしかねぇな。……実際、何故か笑いが込み上げて来たし、承太郎も笑ってたし。

 

 

(こんなに笑えるって事は――俺はきっと、こいつからの重い友愛が、嫌いじゃないんだな)

 

 

 いつの間にか、旧図書館が無くなる事への寂しさは、綺麗さっぱり消えていた。

 

 

 

 

 

 

 旧図書館の戸締まりを終えて、職員室まで鍵を返しに行き、承太郎共にジョナサン達の下へ戻って来た。……あれ?何でカーズ達まで残ってるんだ?

 

 

「お待たせしました……って、何ですか?」

 

 

 俺達を待っていた全員が、じいっと俺を見つめてくる。

 

 

「……よし。もう大丈夫そうだな」

 

「いつもの志人だね。良かった良かった」

 

「やはり、承太郎さんに任せて正解でした」

 

 

 そう言ったジョナサン達3人だけでなく、カーズ達まで何やら満足そうに頷いている。あれぇ?俺が沈んでた事がバレてる?何で??

 

 

「……承太郎、俺って顔に出やすいのか?」

 

 

 顔に触れながら親友にそう聞いてみると、何も言わずにぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。やめて。俺もお前も30過ぎてんだぞ!?

 

 

 その後。車で私設図書館まで向かい、本棚に配列する作業を開始する。……なお、俺は下の段に本を並べるのは許されたが、やはり梯子には近づく事すら許されなかった。解せぬ。

 そして作業が終わると、三谷さんが俺達旧図書館組に、ある物を配った。

 

 

「これって――」

 

「――図書カード、だな……」

 

 

 ここの本、貸し出し禁止じゃないの?

 

 

「……お前ら5人には特別に、ここの本を借りて行く事を許す」

 

「マジですか!?よっしゃ!」

 

「やった!」

 

 

 承太郎、ジョルノと3人で思わずロータッチ。これは嬉しい!

 

 

「……管理人。その図書カード、私も貰う事はできないのか?」

 

「ここに何度か通って、俺から信頼を得られたら渡してやってもいい」

 

「ほう?……いいだろう。では明日以降から、さっそく通わせてもらう」

 

 

 三谷さんとカーズがそんな会話をしていると、他4人もそれに便乗してここに通うと言い出した。

 ここにある珍しい本の数々を、詰め込み作業中に目撃していたんだろうな。その中に、彼らが借りたい本もあったんだろう。

 

 

「……ところで、園原」

 

「何ですか?リゾットさん」

 

「……お前も、ここに通うんだな?」

 

「それはもちろん、そうしますよ。もっとも、仕事優先ですけど」

 

「……なら、良い」

 

「?」

 

 

 リゾットの質問の意図が読めない。……何やら視線を感じて周りを見ると、旧図書館組以外の奴らが目を逸らす。

 

 

「おい。……てめーらの本当の目的が透けて見えるから、今のうちに言っておく。この図書館の存在を、誰にも教えるんじゃねえぞ。

 ましてや、シドがここに通っている事をバラすのはもっての外だぜ。いいな?」

 

 

 と、承太郎がカーズ達に睨みを利かせる。……カーズ達は、神妙な面持ちで頷いた。

 

 

「何の話?」

 

「お前が余計な保護者を量産してるって話だ」

 

 

 あれ?デジャブ??

 

 

 

 

 

 

 

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