空条承太郎の親友   作:herz

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・今回はあくまでもIFの話で、特殊設定。承太郎の友人シリーズの世界と、作者が書いたもう1つのシリーズ、忠犬と飼い主シリーズの世界が混ざっています!注意!!

・舞台は、日本の兵庫県神戸市。観光中に起こった小さな事件がきっかけで、親友組と忠犬と飼い主が出会います。

・承太郎の友人側は、「空条承太郎の親友は、己の親友以上に愛情深い男を知らない」の前。忠犬と飼い主側は、黒の組織壊滅から数年後。

・書きたい場面を書いただけ。似非神戸弁や、オリキャラが出ます。承太郎の友人シリーズ側、男主視点。

・後書きに親友組と忠犬と飼い主の設定を置いておきますので、気になる方はそちらを先にご覧ください。




 ――純粋な友人関係……かと思いきや、実は片方の友愛が非常に重苦しいのに、もう片方はそれに全く気づいていない、親友組。

 ――師弟兼飼い主と犬、そんな不思議な関係……かと思いきや、実はそれだけではなく互いにクソデカ感情を抱いて依存し合っている、忠犬と飼い主。


 ――――さて、あなたはどちらの関係がお好みでしょうか?




【特殊IF設定】親友組、忠犬と飼い主に遭遇する~前編~

 

 

「――○月○日未明。日本の公安警察とアメリカのFBIによる合同捜査が行われ、国際的な大規模犯罪組織……仮名"黒の組織"が一斉摘発されました」

 

 

 ある日の朝。一人暮らしをしている自宅で寛いでいた俺は、そんなニュースを聞いた瞬間。飲んでいたコーヒーを思い切り噴き出してしまった。

 

 

 この世界にジョジョ要素だけでなく、コナン要素も混ざっている事を知ったのは、前々世の記憶を取り戻してすぐの事だ。

 米花町やら杯戸町の名前を今世で初めて耳にした時は、マジで目眩を起こした。

 

 今世の世界、ヤバ過ぎる。

 

 だってスタンドとそれ以外の超自然現象だけでも腹一杯なのに日本のヨハネスブルグまで一緒とか、それなんてカオス!?

 前々世の俺はジョジョシリーズ程ではないが、名探偵コナンのシリーズの事も知っていた。だから分かる。

 

 ジョジョ世界とコナン世界は所謂、"混ぜるな、危険"ってやつだ。

 

 万が一。コナン側の主要キャラとどっかのスタンド使いが遭遇して、うっかり彼らの前でスタンド能力を使ってしまったら?

 めちゃくちゃ怪しまれるだろうな。その末にSPW財団の存在まで突き止められてもおかしくないと、俺は思う。

 

 逆に。観察力高めの奴らや、正義感の強い奴らが多いジョジョ側のキャラ達が、某少年探偵が演技でポカやるのを目にしたり、黒の組織の人間を目にしたら?

 こっちも怪しむだろうな。そして余計な事に首突っ込んで、結果的に財団の人間や他のスタンド使いが巻き込まれるかもしれない。

 

 そして何よりも、ジョジョ要素とコナン要素の掛け合わせで、死亡率がとんでもなく高くなりそう。

 

 

 ……そう、思っていたんだが。黒の組織が壊滅したのであれば、コナン側は原作終了?それなら多少は落ち着く、か?きっと小学生探偵も高校生探偵に戻るだろう。

 前々世で俺が死ぬ前は、まだ原作終わって無かったし。どんな終わりだったのか知らないんだよなぁ……

 

 

(とりあえず、米花町とその周辺には今後も近づかないようにしよう)

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――ゴールデンウィーク中の予定?一応、有給も使って何日か休もうかなと考えてはいたが」

 

 

 黒の組織壊滅から数年後の、ある日。承太郎から電話が掛かって来て、ゴールデンウィーク中の予定について聞かれた。

 

 俺が司書として働いている図書館は……というかどの図書館も大体が月曜のみ定休日で、それ以外は建物の点検日や年末年始など、いくつかの例外を除いていつでも開いている。

 って訳で、ゴールデンウィーク中に休暇を取りたいなら、有給も上手く使わないといけない。

 

 

「3日連続で休めるか?」

 

「そうだな…………うん、いけるぞ」

 

「なら、俺が今から指定する日で休暇を取ってくれ。――兵庫に行くぞ。俺の仕事のついでに旅行だ」

 

「はぁ??」

 

 

 ひょうご。……兵庫県!?何で?

 

 

「本来なら、俺と教授の2人で行く予定だったんだが……」

 

 

 承太郎は、大学も休みになるゴールデンウィーク中。職場の上司である教授と共に、仕事で兵庫県のとある海洋研究所に行く予定だったらしい。

 その時はあくまでも、承太郎はただの付き添い。助手役だった。……しかし。教授はその日にどうしても外せない用事が入ってしまったため、承太郎に自分の代理を任せたそうだ。

 

 

 ――既に兵庫県で泊まるペンションに、2人分の予約を入れてしまっている。だから自分の代わりに、友人でも誘って行ってくればいい。

 幸いな事に、ペンションを経営しているオーナーは自分の友人だから、いろいろ融通が利く。向こうに事情は説明しておくし、金は自分が出すから、友人と2人で行って来なさい――

 

 

 ……と。教授にそう言われたため、俺を誘ったのだという。誘ったというか、承太郎の中で俺が行く事はもう決まっているようだけど。

 

 

「その教授には申し訳ないな……何かお礼が出来れば良いんだが」

 

「……そのうち、お前に会わせろと言われている。礼ならそれでチャラだと」

 

「え?何で俺?」

 

「…………シドの事は、教授には以前からいろいろ話してるからな。それで興味を持ったんだろう」

 

「いろいろって何?何言ったのお前」

 

「さあな。……とにかく、準備しとけ。待ち合わせ場所や時間については、当日が近づいた時に決めれば良いだろ。じゃあな」

 

「あ、ちょっと待っ、…………切りやがった、あの野郎」

 

 

 教授に何言ったのか追及されたくなくて逃げたんだな?それなら言葉で言えばいいのに電話ぶち切るとか、全くあいつは……

 まぁ、それも不器用な承太郎らしいところかと、受け入れる。10年以上あいつの親友をやっている身としては、これぐらい慣れっこだ。

 

 

 ……さて。それから時が流れて、ゴールデンウィーク真っ只中。承太郎と共に新幹線に乗って、兵庫県の神戸市にやって来た。2泊3日の旅行開始である。

 今日はペンションに行って荷物を置いたら、周辺の観光に出る予定だ。承太郎の仕事は明日1日だけだというから、初日と最終日は一緒に観光に行ける。

 

 まずは、到着したペンションのオーナー……教授さんの友人である男性、中村さんにご挨拶。

 

 

「おぉ。君らが、あいつが言ってた人達やね?あいつの部下はどっちや?」

 

「私です。……空条承太郎と申します。短い間ですが、お世話になります」

 

「、友人の園原志人です。お世話になります」

 

 

 承太郎の口から敬語を聞くのは、実はこれが初めてだったのでちょっと驚いた。……教授さんに対してもちゃんと敬語使ってるんだろうか?全然イメージできない。

 

 

「え、き、君!?てっきり園原さん?の方やないかと……」

 

「あー、やっぱりそう思いますか?こいつの怖い見た目からは想像できないかもしれませんけど、ちゃんとした海洋学者で大学の先生なんですよ。

 

 しかし外見が怖くても、中身は海が大好きな男の子なのでご安心を、っ、痛い」

 

「……余計な紹介してんじゃねえぜ。……友人が失礼しました」

 

「あはは!いやいや、仲が良さそうで何よりやん」

 

 

 親友を面白おかしく紹介していたら、気まずそうな顔をした本人から軽くどつかれた。酷い。俺は承太郎が怖いだけの奴じゃないと知って欲しくて、わざとやったのに。

 

 ちょっとふざけた甲斐はあったようで、中村さんは緊張を解いて承太郎の事も受け入れてくれた。

 なんとなく、向こうが承太郎の威圧感に気圧されている気がしてたんだよなぁ。

 

 その後、オーナーの妻……緑さんとも顔を合わせた。こちらは中村さんとは異なり肝が据わっているようで、承太郎の姿を見ても動揺しない。

 

 

「それにしても、今日は凄いわぁ。いい男が4人も来るなんて。……実はあんたらが来る少し前に、私より年上の幼馴染みの息子と、その部下の人が来てなぁ。

 仕事の休暇中で、観光のために泊まりに来たみたいやね。あの人らもあんたらみたいに、綺麗な顔してたんよ。

 

 特に幼馴染みの息子さんなんてほんまに美形、というか美人さんで……うーん、さすがあの人の息子や」

 

「母さん、あかん。長話はそのへんにして、その人らを部屋に案内してやらんと。……ほら、お前もお客さんらに見惚れてへんで、仕事しろやぁ」

 

「あら、ごめんなぁ」

 

「兄さんだってさっき、その美人な息子さんを見て一瞬ぼーっとしてたやん?」

 

「なっ、い、いらんこと言わんでええから、さっさと行け!」

 

「はーい。……じゃあ、お兄さんら!お部屋はこっちですわぁ。ついて来てください」

 

 

 どうやら、このペンションはオーナー夫妻と、その子供である兄妹の4人家族で経営しているようだ。……家族仲はかなり良さそうで、正直羨ましい。

 

 

 娘さんの案内で宿泊する客室まで行き、荷物を置いてから外に出た。

 

 

「……ところで、緑さんが言ってた"美人な息子さん"とは何者なんだろうな?男なのに美人とは一体……」

 

「……ディオみたいな男じゃねえか?」

 

「あぁ、なるほど。男とは思えない程の美形、あるいは色気がある人って事か」

 

「そいつは俺よりも(・・・・)顔が整っているのか、否か……どう思う?シド」

 

「さぁ?知らねー」

 

「つれねえな、ハニー」

 

「茶化すな、ダーリン」

 

 

 いつもの悪ふざけを交えつつ、神戸市内で借りたレンタカーに乗って観光地を巡る。

 明石海峡大橋や神戸港を見に行ったり、ポートタワー内に入ったり、承太郎の希望で水族館に行ったり……そして夕方、その日の観光の最後に南京町と呼ばれる中華街へ向かった。

 

 あんまり食べ過ぎるとペンションで出される夕飯が入らなくなるから、食い道楽は控え目に。

 ……観光する順番、間違えたな。最初にここに来れば、多めに食べても観光が終わる頃には消化されただろうに。

 

 承太郎もそう考えたのか、ちょっと物足りないという顔をしていた。

 

 

「……最終日にもう一回ここに来るか?」

 

「ん、そうしようぜ」

 

 

 よし、最終日は今日よりも食い道楽やるぞー。

 

 

 

 

 

 

「――きゃあっ!?」

 

「お母さん!!」

 

「アカン!誰かそのダボを捕まえるんや!」

 

 

 その時、背後からそんな騒ぎが聞こえた。振り向くと、女物のバックを持った男がこちらに逃げて来る。

 引ったくり犯の後ろには、それを追い掛ける男1人。さらにその後ろでは、女性を助け起こす男1人と……その女性にすがり付いて泣いている、幼い男の子の姿が。

 

 

「…………あ、良さげな武器発見」

 

「おい、シド」

 

「何だよ」

 

「…………やれやれだぜ。無理はするなよ」

 

「おう、ありがとう。ちょっと行って来る」

 

 

 きっと、俺の家庭事情も含めて気遣ってくれたのだろう。だから心配しつつも、俺を止めなかった。良い親友に恵まれてるよ、本当に。

 

 

「おじさん。これ、少しだけお借りします」

 

「えっ!?」

 

 

 ある店の前に立て掛けてあった天井箒を借りて、逃げて来る男の前に出て構えた。久々に、独学で習得した棒術の出番だ。

 

 こいつにとって、子供と手を繋いで歩いている女性は狙い易かった。おそらく、それだけだったんだろう。だがしかし――

 

 

「――子連れの母親狙うとか、人として最低な野郎だな!!」

 

 

 箒の持ち手の先で男が女性のバックを持っている手を思い切り突き、その先を手放されたバックの持ち手に引っ掛けて回収。

 

 

「承太郎、頼む!」

 

「うお!?」

 

 

 そのまま、女性のバックを承太郎の方へ放り投げた。よし、ナイスキャッチ!

 

 

「っ、この、何する――ぎゃあっ!?」

 

「…………うわぁ」

 

 

 そして、俺が追撃しようとした次の瞬間。引ったくり犯を追い掛けていた男が、その背中に容赦なく蹴りを浴びせた。

 引ったくり犯がうつ伏せで地面に倒れたところで、男はさらにその背を片足で踏みつける。マジで容赦ない。思わずドン引きの声が漏れた。

 

 一体どんな顔してるんだ?そう思って男の顔を見た俺は――固まる。

 

 

「……ふっ。なかなかの棒捌きだったな。君が足止めしてくれたおかげで、仕留めるのが楽だったぞ。礼を言う」

 

「ど……どうも」

 

「さて、悪いがバックの方はそちらに任せて良いか?俺はこいつを持って行く」

 

「はっ、はい」

 

 

 黒髪の癖毛に眼鏡を掛けた、承太郎ほどではないが身長の高い、顔の整った男。……その眼鏡の下には、特徴的な隈が見える。

 承太郎には"いきなりこっちに投げるな"と小突かれたけど、それどころじゃない。

 

 

 男は引ったくり犯の上着を使い、その腕を縛った。手際が良い。

 

 天井箒を元あった場所に返し、引ったくり犯を引きずる男の後をついて行く。

 先ほど女性を助け起こしていた男は、今は泣いている男の子を慰めていた。その男がこちらに振り向き……う、わ、

 

 

(美人……)

 

 

 一瞬美女かと思ったが、よく見れば男だ。切れ長の目、右目の下に泣き黒子。少し長めの黒髪で、女顔。

 

 

「……和哉さん、取って来ました」

 

「ん。よくやった、大」

 

「はい」

 

 

 ダイと呼ばれた男が、カズヤと呼ばれた男に向かって頷き、それから引ったくり犯を地面に放り投げた。やっぱり容赦ない。

 

 というかダイって……大、だよな?そうだよな??

 

 

 バックを女性に返した後。引ったくり犯は周囲の人間が呼んでくれた交番の警官に引き渡された。……いろいろあったが、とりあえず承太郎と共にその場を後にする。

 道を歩きながらも、俺の頭の中はあの男の存在で一杯になっていた。

 

 

(――アイエエエ!?赤井さん!?赤井さんナンデ!?)

 

 

 伊達眼鏡つけたりニット帽被ってなかったりと、軽く変装してたし偽名の諸星大を使ってたけど、あの顔立ちと声は間違いなく赤井秀一だろ!?

 

 おい、FBIの銀の弾丸(シルバーブレット)。こんなとこで何やってんだ!

 何かの捜査中か?もう黒の組織壊滅した後なのに何でまた日本に来てるんだよ?しかも米花町ならともかく何で兵庫!?

 

 つか一緒にいた美女、じゃなくて美人は誰だ!?声なんて某海賊団某緑頭の三刀流剣士だったし!

 え、あの人もコナン側のメインキャラだったりする?俺が前々世で死んだ後から登場したとか??いやいやいやいや、まさかな?

 

 

「……シド」

 

「え、あ、うん。何だ?」

 

「どうした?さっきから何かずっと考えてるだろ」

 

 

 しまった、承太郎にバレた。……あー、どうしよう?コナンの原作云々の話をこいつに言う訳にはいかないし……仕方ない。嘘はつかずに隠す方向でいこう。

 

 

「……あの、引ったくり犯を蹴り飛ばした男の人の事、なんだけどさ」

 

「ああ、あいつか。良い蹴りだったな」

 

「そうそう、その人。……何回かテレビのニュースで見た人に、似てた気がした」

 

「何?」

 

 

 嘘は言ってない。この世界の赤井秀一は、何故そうなったのかは知らんがFBIの英雄と呼ばれ、アメリカでは結構有名になっているらしい。日本でも一時期、ニュースで顔写真が出ていた時がある。

 

 

「まぁ、気のせいだと思うぜ。多分」

 

 

 と言いつつ、俺は確信してるけどな。だって某海賊団某赤髪船長と同じ声の人が、その辺に転がってる訳ないだろ?

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 初日の観光を終えてペンションに戻り、しばらくして夕食の時間になった。

 食堂として使われている部屋に入ると、既に席がほとんど埋まっている。ぱっと見で、女性客と男性客が半々ってところか。

 

 

「すまんなぁ。テーブルはもう埋まってるから、相席してもらうんやけど……ええかな?」

 

「もし嫌なら、席が空くまで部屋で待っとって。空いたら呼びに行くわぁ」

 

「承太郎、どうする?」

 

「……そうだな、」

 

「あのー、良かったらここに来ませんかぁ?」

 

「あたし達、お兄さん達みたいにカッコいい人達となら、全然相席大丈夫ですよぉ!」

 

「…………ちっ」

 

「こら、承太郎。舌打ち止めなさい」

 

 

 オーナー夫妻の話を聞いてさっそく、女性客達が猫なで声で話し掛けて来た。面食いだなぁ。

 承太郎は、言わずもがな。俺も素は睨むだけで人を殺しそうな目付きをしているが、今はディオ様コーディネートの髪型と伊達眼鏡のおかげで、涼しげな美形()だからな。

 

 ……さて。承太郎がキレる前に、部屋に戻るか。

 

 

「――失礼。もしよろしければ、我々と相席しませんか?」

 

「!?……あ、」

 

「……さっき、中華街にいた奴か」

 

「こんばんは。先ほど振りですね」

 

 

 そこへ話し掛けて来たのが、南京町で出会った美人な男。

 彼が示すテーブルにはやはり赤井さんがいて、ひらひらと軽く手を振って来た。なんてこった。同じ場所に泊まってたのかよ!

 

 

「あらぁ、和哉くん。知り合いだったん?」

 

「知り合いというか……今日、南京町で引ったくり事件があった時。犯人を捕まえるのに彼らが協力してくれたんです」

 

「へぇ、そうだったんか!やるやないか、園原さん達」

 

「中村さん達は、この方とお知り合いなんですか?」

 

「せや。昼間に話したやろ?この子が私の幼馴染みの息子さんで、荒垣和哉くん」

 

 

 なるほど、この人が例の"美人さん"か!って事はこの人の部下が赤井さんで……つまり、この人もFBI?あとは仕事の休暇中に観光、だったか?何かの任務で来ていた訳では無かったらしい。

 

 

「それで……どうでしょう?もちろん、無理強いはしませんが」

 

「……いい加減、腹も減ってるしな。部屋で待つよりはその方が良いか。……シド」

 

「んん、分かった。……お誘いありがとうございます。ぜひ、ご一緒させてください」

 

 

 赤井さんと一緒ってのが無駄に緊張するが、承太郎の言う通り腹が減っている。空腹に負けて相席を受け入れる事にした。

 

 

「ホー……図書館司書と、海洋学の大学講師か。面白い組み合わせだな」

 

「ちなみに、お二人のご職業は?」

 

「俺達はしがない公務員さ。今は休暇中だけどね。……そちらも休暇かな?」

 

「……友人はそうだが、俺は元々仕事で来ている。ある海洋研究所に用があってな。明日1日は仕事だ」

 

 

 オーナー家族が作ってくれた夕食を食べながら、流れで彼らと自己紹介――赤井さんはやはり、諸星大と名乗った――をし合い、それから雑談を続けている。

 荒垣さんの年齢が40前半だと聞いた時は、承太郎と揃って驚愕した。どう見ても、20後半……俺達と同年代ぐらいにしか見えなかったのに!

 

 そういう事なら敬語はいらないと言えば、荒垣さんは敬語を使うのを止めた。……なお、俺は敬語のままでいつもの猫被り。承太郎と赤井さんは、そもそも敬語を使っていない。

 ただ、2人共敬語が使えない訳じゃないもんな。承太郎はオーナー夫妻に対して、赤井さんも荒垣さんに対しては敬語だ。

 

 

「……ところで、園原君。あの棒術は何処で学んだ?」

 

「あれは独学ですよ。護身術代わりに身に付けました」

 

「ホー?……何故わざわざ棒術を?柔道や空手という選択もあっただろう?」

 

 

 と、赤井さんがそう聞いてきた。

 

 スタンド……イージスホワイトが持つ杖を、完全同化した時に武器として使うため。そんな本当の理由は言えないので、もう1つの理由を話そう。

 

 

「……俺が棒術を磨き始めたのは、高校生の時からなんですが」

 

「高校生……ふむ、それで?」

 

「――棒術って、カッコいいと思いません?」

 

 

 内緒話をするように、こそっと口にする。……赤井さんは珍しく微笑んだ。それから子供を見るような、柔らかい眼差し。その目は止めてください秀兄さん。

 

 ……だが、その目を見て思った。俺は赤井さんに対して、警戒し過ぎたのかもしれない。

 今の承太郎が現実で生きている人間であるように、彼もまた原作のキャラではなく、"赤井秀一"という1人の人間なんだ。

 

 前々世や前世の事さえ口を滑らせなければ、上手く付き合えるだろう。きっとこの先、そう何度も出くわす訳が無いし。この旅行中だけなら何とかなりそうだな。

 

 

 ただ……ある意味赤井さんよりも気になるのが、荒垣さんの存在だ。

 

 

「空条君。海洋生物学とは、具体的にどういったものなんだ?確か、それと似ている名前で生物海洋学という学問も別にあると聞いた事があるんだが」

 

「……よく知っているな、あんた。……海洋生物学と生物海洋学の違いは、海洋生物そのものを研究するか、海洋生物を通して海そのものを研究するか、だ」

 

「なるほど。海洋生物学は海に住む哺乳類や魚類などを研究し、生物海洋学は……プランクトン、かな?そういった微生物を通して、海全体を研究する……」

 

「……大体そんなところだな。で、俺はその海洋生物学を中心に研究を進めているのだが……今は海鳥、特にウミネコを研究している」

 

「ホー……」

 

 

 荒垣さんは今、承太郎の話を興味津々といった様子で聞いている。

 彼が聞き上手であるおかげなのか、普段は初対面の人間が相手だとあまり喋らないはずの承太郎が、楽しげに語っていた。

 

 彼の存在は……よく分からん。おそらくFBIで、原作には登場していない人。

 もしかして、俺と同じく転生者ではないか?とも思ったが……それは別に、確かめなくてもいいな。俺は前々世の事も、4部時代の前世の事も、今世には持ち込みたくないし。

 

 会話をしていると、ただの勘だがなんとなく違和感を感じる。穏やかそうに見えて、実はそうでもないような……?

 うん、あれだ。食わせ者の気配。ジョナサンのような腹黒さは無さそうだが、それとは別の誰かと雰囲気が似ている気がする。

 

 

 それにしてもこの人は本当に、

 

 

「なぁ、園原君?」

 

「はい?」

 

「先程から、俺の上司をちらちらと見ているようだが――彼に、何か用か?」

 

「っ!?」

 

 

 あれれー?秀兄さん、さっきの柔らかい眼差しどこにやったんですか?口は笑ってるけど目が笑ってません。怖い。

 先程とは打って変わり、俺は赤井さんに警戒されているようだ。何で!?

 

 

「い、いや、あの、」

 

「おい。……てめえこそ、俺の親友を睨むんじゃねえ」

 

「!?ちょっと、承太郎落ち着いて……!」

 

 

 すると、承太郎まで赤井さんに眼飛ばし始めた。止めて。お前と赤井さんが喧嘩したら絶対収拾つかなくなる!

 

 

「大、よせ。……園原君が困っているだろう?」

 

「しかし和哉さん、」

 

「大」

 

「…………申し訳ありませんでした」

 

「彼らにも謝罪しろ」

 

「はい。……すまなかった」

 

「うぇっ!?あっ、はい……」

 

「…………やけに素直だな」

 

 

 あの(・・)赤井秀一が、年下相手に頭を下げた、だと……!?そして赤井さんを言葉1つで制する荒垣さん、すげぇ。

 承太郎もこれには毒気を抜かれたらしく、こちらも素直に矛を収めた。危ない危ない。

 

 

「……だが。大の言う園原君の視線については、俺も気になっていたんだ。良かったら、その理由を教えて欲しいな」

 

「あ、あー、えっとですね……」

 

「うん?」

 

 

 そこは流してくれなかったかぁ……なら、仕方ない。本音を打ち明けよう。

 

 

「――綺麗な人だな、と。そう思って見ていたんです」

 

「…………はぁ?」

 

 

 そう。この人、めちゃくちゃ綺麗なんだよ。

 

 

「荒垣さんは容姿もそうですが、何よりも姿勢と所作が綺麗です。食べている時も背筋がピンと立ってますし、箸の持ち方だってそうですし。

 所作も一つひとつが上品なんですよね……笑う時に、さりげなく口を片手で隠していたりとか。話の相槌を打つタイミングの良さとか。頷く仕草そのものとか。他にもいろいろ。

 

 その全てが、ご両親の教育の賜物なのかな?と思うと……本当に、凄いですよね。俺は荒垣さんのご両親の事を尊敬します。あなたはきっと、とても愛されて育ったんでしょう。

 

 荒垣さんのように、容姿も姿勢も所作も全てが綺麗な人をもう1人知っているんですが……その人と同じくらい、いやそれ以上に綺麗かもしれないです」

 

「――――」

 

 

 ちなみに、そのもう1人とはディオの事である。あっちは両親の教育ではなく、自分の努力の賜物による美しさだが。

 ……気がつくと、荒垣さんも赤井さんも目を点にして俺を見つめていた。承太郎は……呆れ顔だ。あれ??

 

 

「……あの、どうかしましたか?」

 

「っふ、――はははははっ!何だそれは!?そんな事初めて言われたぞ!?」

 

 

 おぉ!?美人が豪快に笑ってる!何だ何だ?

 

 

「おい、大!今の聞いたか?」

 

「えぇ……非常に珍しいですね。初対面の人間は、誰もが和哉さんの美しいお顔を褒めるのが当たり前でしたが、そちらではなく姿勢や所作に注目するとは」

 

「しかも、そこから発想を飛ばして俺の両親まで褒めた!……園原青年。君、良いな。興味深い」

 

「……和哉さんが興味を示した相手なら、俺にとっても興味の対象だな」

 

 

 何だろう?この獲物になったような気分は。荒垣さんなんて何故か雰囲気変わったし、俺の名前の呼び方や口調まで変わってるし。

 

 赤井さんと荒垣さんって、狼っぽいんだよなぁ。で、どっちも群れのリーダータイプ。今の状態は例えるなら、玩具か獲物を前にして揃って尻尾を振っているようなイメージだ。

 

 

「……やれやれ。また厄介そうな奴らに気に入られやがったな……」

 

 

 承太郎がさらに呆れ顔になった。何で??

 

 

「にしても……てっきり口説かれているんじゃないかと思ったんだが、その様子では違うようだな?」

 

「違いますって。……そんな目で見ないでください」

 

 

 と、荒垣さんが俺に流し目を送って来た。止めてーそんな色気出さないでー……って、そういう揶揄する類いの流し目にはディオで慣れてるんだけどな。

 

 

 …………んん?

 

 

(――あ、そうか!ディオだ!?)

 

 

 誰かと雰囲気が似てると思っていたが、荒垣さんはディオとよく似たタイプの人間か!ようやくすっきりした。

 

 顔も姿勢も所作も綺麗で、落ち着いた性格。あの赤井さんを言葉1つで制する程の威厳があり、人心掌握術に長けていそう。

 男とは思えない程の色気。あと、声も色気たっぷり。腹黒では無さそうだが食わせ者の気配……

 

 

 うん。ディオ様だ。……つか荒垣様だ、荒垣様。心の中で拝んでおこう。

 

 

「そんな目とは、どんな目だ?うん?」

 

「その流し目です!急にアダルトになるの止めてください、男相手にドキッとかしたくないので」

 

「和哉さんが相手なら、それも仕方ない事だぞ園原君。彼は色気の塊だからな」

 

「それを同じく色気の塊である諸星さんが言いますか?というかあなたもニヤニヤするの止めて」

 

「園原青年はいちいち反応が面白、おっと、可愛いなぁ?」

 

「可愛……っ!?いや、ちょっと待ってください荒垣さん。あんた今、面白いって言いかけたな?」

 

「くくっ……!!」

 

 

 その後も何故か話の途中で定期的に俺をからかって来る、荒垣さんと赤井さん。結局俺は夕食を食べ終わるまで、2人に振り回され続けた。

 実際に狼さん達の玩具か獲物にされていると気づいたのは、夕食を食べ終わって早々に、承太郎が俺を引きずるようにして食堂から出た時だ。

 

 

「シドてめえ、なに簡単に遊ばれてんだ。もっと警戒しろ……!!」

 

「いたたたた!?止めろ!止めろそれ痛い!!」

 

「ったく、マジで厄介な野郎共に好かれやがって!!」

 

「痛いって!!」

 

 

 久々に梅干しされた頭は、終わった後もしばらく痛みが残りました。くそう、あの馬鹿力太郎め!!

 

 

 

 

 

 

 






 拙作の忠犬と飼い主シリーズは、こちらhttps://www.pixiv.net/novel/series/1352857
 本作を読んで忠犬と飼い主シリーズが気になった方は、もしよろしければご覧ください。

 以下は、親友組と忠犬と飼い主の設定です。


※人物設定

・園原志人(そのはら ゆきと)
 承太郎の友人シリーズの男主。転生者。あだ名はシド。スタンドは防御特化の力を持つ、イージスホワイト。イメージCV:緑○光。
 三次元(40代で死亡)→ジョジョ4部時空(原作開始前に例の弓と矢で死亡)→混部時空(今ココ)という、特殊な転生履歴を持つ。

 承太郎の親友であり、高校時代から現在の社会人(職業は図書館司書)に至るまでに、強固な信頼関係を築き上げて来た。
 ジョースター家のお気に入りと呼ばれているが、それ以外のジョジョキャラの保護者&弟分妹分を無自覚に増やし続けたため、人脈はかなり広い。

・空条承太郎
 ジョジョの奇妙な冒険3部主人公。ジョジョの原作6部で死に、そこから混部時空へ転生している。承太郎の友人シリーズでは独身。
 高校時代に園原と出会って以来交流を深め、社会人(職業は海洋学者で大学講師)になった現在もそれが続いている親友同士。

 自分を"最強のスタンド使い"ではなく、"普通の人間"として見てくれる園原に救われており、実はその友愛は相当重い。とにかく、重い。
 園原の事は、大事な大事な親友として一生逃がさない所存。

・荒垣和哉(あらがき かずや)
 忠犬と飼い主シリーズのオリ主。転生者ではない。FBI捜査官。ジェイムズチームの参謀役。イメージCV:中○○哉。
 赤井の師匠であり、彼が現れるまではFBIのエースと呼ばれていた事もある。能力は赤井に劣るが、それでも充分ハイスペック人間。

 忠犬、赤井秀一の飼い主であり、その手綱をしっかり握っている。自覚は無いが強いカリスマ性を持っており、男女問わず落とした人間は数知れず。
 赤井の事は自身の唯一無二、愛弟子兼愛犬として密かに可愛がっている。

・赤井秀一
 名探偵コナンの登場人物。忠犬と飼い主シリーズでは"FBIの英雄"と呼ばれ、アメリカでは有名人。
 荒垣と出会い、ある出来事がきっかけで彼の忠犬へと変貌した。現在では自他共に認める飼い主と忠犬の関係。

 飼い主の事を崇拝しており、彼に害を為す相手に対しては容赦なく牙を剥く狂犬となる。こうなると、荒垣以外には誰も暴走を止める事ができない。
 荒垣は赤井にとって敬愛する師匠、崇拝する飼い主、自身の唯一無二であり、もはや実の家族よりも大切な存在。

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