・今回はあくまでもIFの話で、特殊設定。承太郎の友人シリーズの世界と、作者が書いたもう1つのシリーズ、忠犬と飼い主シリーズの世界が混ざっています!注意!!
・承太郎の友人側は、「空条承太郎の親友は、己の親友以上に愛情深い男を知らない」の前。忠犬と飼い主側は、黒の組織壊滅から数年後。
・書きたい場面を書いただけ。似非神戸弁や、オリキャラが出ます。ご都合主義、捏造過多。
・最初、男主視点。途中から承太郎視点。その後、再び男主視点。最後に第三者視点も入ります。
翌朝。朝食中も荒垣さん、赤井さんと同席する事になった。承太郎が警戒心Maxで2人を見張っていたので、また玩具にされる事は無かったが……
2人共、昨日からかい過ぎた事を最初に謝って来たんだよな……それでも承太郎が警戒しているから、彼らは苦笑いを浮かべていた。
なんというか、向こうの方が大人の余裕で軽く流してくれた感じがする。俺達、前世持ちの立つ瀬がないな。
「……じゃあ、行って来るが……あの野郎共には気をつけろよ」
「子供じゃねぇんだから、分かってるって。ほら、いってらっしゃい」
「…………はいはい、いってきます」
朝食後、承太郎は俺を心配しながらもレンタカーに乗って仕事に向かった。
「……さて。俺も1人で歩いて行ける範囲で、のんびり観光でも――」
「――では、俺もそれに同行させてもらおうか」
「うおおうっ!?」
背後から突然聞こえた、某赤い彗星ボイス。思わずすっとんきょうな声を上げて振り向くと、彼……赤井さんは口を抑えてそっぽを向いていた。
「く、っ、ふは!君、何だ、その声は……!」
笑いを耐えているようだ。珍しい。……というか、いつからいた?全然気配が無かったんだが。
「急に背後から声を掛けたあなたが悪いんですよ!」
「分かった、分かった。すまなかった。……それで?最初は何処に行く?」
「えっ、本当について来るの?荒垣さんはどうしたんですか?」
「……緑さんから彼の親についての昔話を聞いたり、逆に現在彼の親がどうしているのかを話したり……まぁ、今頃話に花が咲いているところだろう。
俺がその場にいては、邪魔かと思ってな。……だから、今日だけは別行動だ」
あぁ、そういえば荒垣さんの親と緑さんが幼馴染み同士、だったな?そういう事か。
「俺達もレンタカーを借りていてな。和哉さんは今日は車を使わないだろうから、俺が使って良い事になっている。運転手として使ってくれ」
「うーん……」
どうしようかなぁ。承太郎にはもっと警戒しろって言われてるけど……なぁ?
(――なんかこの人、寂しそう……?)
なんとなく、元気が無い気がする。……まだ出会って間もない俺について来ようとするのも、変だな。今はとにかく誰かと一緒にいたい気分、なのかもしれない。
「……じゃあ、お言葉に甘えて。運転は任せましたよ」
「あぁ、任された」
承太郎には後で怒られそうだが、その時はその時だ。だってこの人特徴からして承太郎に似てるから放って置けなくて、つい……
「…………それにしても、本当に
「諸星さん?今何か、」
「いや、……何でもない」
「?」
―――
――――――
―――――――――
「――あ"あ?……諸星と一緒にいる、だと?」
「まぁ、はい……」
「……おい、シド。俺が仕事に行く前に何と言ったか、覚えてるよなあ?」
「…………"あの野郎共には気をつけろ"と」
「分かってるじゃねえか。そうだよなあ?てめえは
「いや、本当に、ごめん……」
「…………はあ……」
仕事が終わった直後。シドに電話を掛けると、あいつはあの油断ならない野郎共の片割れと2人で観光していたらしい。
電話越しに聞こえる沈んだ声音から、シドが深く反省している事は読み取れた。……実を言うと、俺もこうなる事はなんとなく予測していたし、この辺りで許してやろう。
シドは一度でも気を許すと、その相手に対して激甘になる。
逆に。一度信用できないと判断した他人に対しては、それ以降は心を閉ざしてしまうが……気を許した相手に対するお人好しは、相変わらずだ。
昨日出会った、あの野郎共……荒垣和哉と諸星大は、とんだ食わせ者だった。
夕食時、最初はまだ良かったんだ。向こうも俺達も一線を引き、初対面の相手に対して適切な距離感を保っていた。
荒垣は聞き上手で、俺も話していて不快にならなかったし、シドも諸星と普通に会話していた。……その流れが変わったのは、あいつが荒垣を気にし始めた時だった。
過剰に反応した諸星と、それに動揺したシドを俺が庇い、荒垣が諸星を止めた。そこまでは、まだ良い。
問題は、あいつがいつもの無自覚砲撃を放った事だ。あれのせいで、シドはあの野郎共に気に入られちまった。奴らはそれ以降、会話の途中に連携してあいつで遊ぶようになった。
あの野郎共は、まるでディオとジョナサンのようだ。あいつらも、稀に2人で連携して揃ってシドをからかう時がある。
ディオとジョナサンは前世を持つ仲間で、さらには身内だから多少はシドをからかっても良い。許す。
だがしかし、荒垣と諸星は許さん。まだ出会ったばかりの他人だからな!
……とはいえ、相手はシドが気を許した奴らだ。あいつは何だかんだ人を見る目がある。
そんなあいつが気を許したのだから、悪い奴らでは無いのだろう。……頭ではそれを分かっていても、感情では納得できていないのだが。
シドとの電話を終えて、レンタカーを走らせる。……ペンションの近くまで来たところ、すぐ横の歩道で見知った顔の2人を見つけた。
中村さんの妻である緑さんと、荒垣だ。奴の両手に買い物袋があるという事は、おそらく緑さんの買い物に付き合って荷物持ちになったんだろう。
その荒垣が、若い女共に囲まれている。荒垣の後ろにいる緑さんは苛立った様子で前に出ようとしているが、それを荒垣が押し留めつつ、女共に対応しているようだ。……やれやれだぜ。
「……荒垣はともかく、教授の友人の妻を見捨てる訳にはいかねえな」
仕方なく、近くに車を停めてからそちらへ救出に向かう。……シドのお人好しが移ったのかもしれない。
しかし、少々遅かったようだ。緑さんはついに荒垣の前に出て、若い女共に何やら文句を言っている。……そんな彼女を、女共のうちの1人が突き飛ばした!
(――スタープラチナ・ザ・ワールド!)
咄嗟に時を止めて彼女の下へ駆け寄り、その体を支え、立たせる。
倒れる方向的に、危うく防護柵に後頭部が直撃するところだった。万が一、当たり所が悪かったらどうなっていた事か……
緑さんや喧しい女共はさておき、頭の回転が早い荒垣にスタンド能力を見せる事になってしまった。厄介な事になりそうだが、人命救助のためだ。どうしようもない。
もしも追及されたら、しらばっくれるか……いっそ、軽く脅すか?
(――時は動き出す)
その場にいた奴らは、突然現れた俺の存在に目を白黒させている。だが、荒垣だけはすぐに立ち直り、目付きを鋭くさせた。やはり厄介な事になりそうだ。
「あ、あらぁ?空条さん、あんた、いつからそこに……!?」
「……さあ?いつからでしょうか。……で、てめえら。まだこの人に何か用か?」
女共を本気で睨むと、小さく悲鳴を上げてすぐに立ち去って行った。怒鳴らないだけ、ありがたいと思え。
「……近くに、私が使っているレンタカーを停めてあります。ペンションまで送りますよ」
「ほんまに?それは嬉しいわぁ。また和哉くんがさっきの子達みたいな女の子に捕まっても困るし、お言葉に甘えよか。ねぇ?和哉くん」
「……そう、ですね。すまない、空条君。よろしく頼むよ」
ついでに2人を車に乗せて、ペンションに戻った。……ちょうど、シドと諸星も帰って来たようだ。彼らも別の車から降りている。
「……空条君。君に聞きたい事があるんだが、時間をもらえないか?」
「…………断る」
「では悪いが、勝手に聞かせてもらうよ。――あの妙な力は何だ?瞬間移動か何かか?」
「和哉さん……?」
緑さんが荷物を持って立ち去り、外には俺達4人だけが残された。するとさっそく、荒垣が追及を始める。諸星は訝しげな表情で、彼を見つめていた。
「おい、承太郎……」
「……悪い、シド。使わざるを得ない状況だった」
シドに先程の状況を説明すると、納得はしてくれたらしく、咎めるような視線はなくなった。
それから、彼は無言でイージスを呼び出して周辺にバリアを張る。おそらく、防音バリアだろう。……念のため、か。さすが、用心深い奴だな。
「……あれを見た事は、狐につままれたとでも思って、忘れておけ」
「無理だな。……実際に見てしまった以上、忘れられる訳が無い。それに、俺にはどうしても君から話を聞きたい理由が、」
「面倒くせえ野郎だな」
「っ!!承太郎、待っ――」
「――スタープラチナ」
シドには止められたが、手っ取り早く軽く脅してしまった方が良い。……昨日、俺の親友を散々からかった事への恨みもあるしな。
時を止めて荒垣の背後に立ち、その頭に手を置いたところで、再び時が動き始める。
「なっ……!?」
「……世の中には、知らない方が良い事もある。長生きしたいなら、それ以上踏み込むのは止め――っ!?」
次の瞬間、背筋が震える程の殺気を背後から感じた。
「イージス、バリア展開!!」
そして、シドとイージスのバリアによって護られる。……振り向くと、恐ろしい形相をした諸星がバリアに蹴りを入れていた。
バリア越しに相当な衝撃が伝わって来た。あれがもしも、俺に直撃していたらと思うと……ぞっとする。冷や汗が流れた。
「得体の知れないクズ共が……!!俺の和哉から離れろ!!その人に手を出せば殺――」
「――諸星大!!」
「っ、」
「
「…………
そんな豹変した諸星を、荒垣は言葉のみで落ち着かせる。……犬のような扱いをされていた事が少し気になるが、この男の手腕は本物だな。本当に厄介な……
「うちの駄け、ゴホン!……部下が失礼した。元はと言えば俺のせいだ。すまなかった」
「何故和哉さんが頭を下げるんですか!?あなたは何も悪くな、」
「
「……
「
諸星がマジで犬じゃねえか。つか、荒垣も駄犬って言いかけたな?俺もそうだが、向こう側ではシドも限界まで目を見開いて驚愕していた。
しかも俺達の反応とは逆に、荒垣は平然と話を進める。諸星も当たり前のように犬扱いを受け入れていた。……何なんだ、てめえらは。こっちは訳が分からん。
「どうやら、最初の聞き方を間違えてしまったようだ。俺は、君達のその妙な力の秘密を暴きたい訳ではない。……ある人物に心当たりはないか、と。そう聞きたかっただけだ」
「……ある人物?」
「10年以上……いや、あと数年で20年近く経つか?とにかくそれほど前に、俺はその人に命を救われたんだ。
当時の俺は、君達のような妙な力を使う人間に襲われて、見えない何かで首を絞められて危うく窒息死するところだった。
そうなる前に助けてくれた人は、自身の姿を透明にする力……あるいは迷彩能力を持っていたのだろう。最後まで姿が全く見えなかった。
――それに加え、俺を襲った人間が何故か突然口から剃刀を吐いたりしてたから……それも、俺の命の恩人が持つ能力の1つだったのかもしれない」
迷彩?口から剃刀?……それは、まさか。
(――リゾット・ネエロの、メタリカ)
数年前に一度だけ、財団から依頼された任務で行動を共にした事があった。その時に見た、あいつのスタンド能力の特徴と一致している……
確かシドも、かなり前の護衛任務中に救援要請を出したら、その時に駆け付けてくれたのがリゾットとその仲間達だったと、そんな話をしていた事もあったか?
シドと目を合わせると、彼は俺を見て頷き、口を開く。
「その人の事は、心当たりがあります」
「っ、本当か!?」
「ですが、その人からの許可が無い現状、その個人情報を明かす訳にはいきません」
「……あぁ、もちろん分かっている。だから、たった1つだけで良い。教えてくれ、園原青年。……俺の命の恩人は、元気にしているか?」
「はい。今も気の合う仲間達と一緒に、ある職場で生き生きと働いています」
「そうか……良かった」
荒垣は、安心した様子で微笑んだ。
「……気が向いたらで構わないんだが、もし良かったらその人に伝言を伝えて欲しい。
"あなたに助けられ、生き残ったおかげで、俺は今も仕事を続ける事が出来ている。それに……大切な唯一無二とも出会えた。心から感謝している"と」
すると。荒垣の命令通りずっと黙っていた諸星が、目を見開き――荒垣を見て、満面の笑み。…………てめー、そんな顔もできたのかよ。
「俺の話は、これで終わりだ。……空条君」
「……何だ?」
「踏み込み過ぎて、悪かったね」
「…………いや。俺も無駄に脅し過ぎたようだ。すまない」
殊勝な態度を取られたせいか、罪悪感を感じる。俺も大人げ無かったか……
シドが再び咎めるような視線を送って来た。分かっている。ちゃんと反省しているから、そんな目で見ないでくれ。
「……和哉さんがそう言うなら、俺も文句は飲み込むが……次は無いぞ」
「……分かっている。俺も、あんた達の事は敵に回したくねえ。そちらが余計な事に首を突っ込まないのであれば、こちらからも何もしない」
シドとイージスがいなかったら、危なかったな。諸星の事も、その諸星を易々と制御する荒垣の事も、敵に回せば面倒だ。
「俺の友人が、本っ当に失礼しました……」
「こっちも俺の部下が多大な迷惑を掛けた。申し訳ない……」
「…………そちらも大変ですねぇ」
「…………君も、大変だな」
一方、シドと荒垣は何故か握手を交わしていた。
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―――――――――
――旅行の最終日。今日は少しだけ観光した後、地元へ帰る予定だ。
にしても昨日はマジで焦ったぞ。承太郎の気が短過ぎて、荒垣さん達との関係が悪化するところだった。現役FBIを敵に回さないでください、親友様。
緑さんを助けるために、荒垣さんの前でスタンドを使ってしまった事は仕方ない。だが、その後にスタンド使って脅したのはアウト!
お前、普段はもっと冷静なはずだろ!何で昨日に限ってそんなに短気だったんだ!?
そして承太郎以上にヤバかったのが、赤井秀一。あの人は原作でも見た事が無いくらいブチ切れていた。何だよあの鬼の形相は!?
あれであの人が荒垣さんを超大事にしている事は、よく分かったが。それにしたってキレ過ぎだろ。本当に何だったんだ?あれ……
で、そんな赤井さんを犬扱いしていた荒垣さんも、ある意味ヤバイ。あんなにキレてた赤井さんが、たった一言の命令でいつもの冷静さを取り戻していたし。
しかもまさかのリゾットとエンカウント済み!?
……とまぁ、脳内で一通りツッコミを入れてみたが。心境は未だに複雑だ。
一体何がどうして赤井さんが犬化したのか?荒垣さんと赤井さんはどういう関係なのか?リゾットと出会った時の詳しい状況は?などなど、あの2人に聞きたい事は山程ある。
だがしかし聞けない。それを教える代わりにスタンドの事も教えろ、とか言われても困るしなぁ。
オーナー家族に別れを告げ、承太郎と共にペンションを出ると……荒垣さん達が車に荷物を詰め込んでいた。
「うん?……君達も今日帰るのか?」
「そうですよ。ちょっとだけ観光したら、レンタカーを返して新幹線で地元に帰る予定です。荒垣さん達は?」
「俺達も、もう少し観光できれば良かったんだが……時間にあまり余裕が無い。こちらは早めに兵庫から出る必要があるんだ。
日常的に使っている車ならまだいいが、普段あまり使わない乗り物に長時間乗り続けるのはきついな……」
あー、そりゃそうか。FBIの本拠地は当然、アメリカだし。飛行機の時間に間に合うようにしないと。
「大変ですよね、新幹線や飛行機に長時間乗るのは」
「…………そうだな。大変だぞ」
んん?今、何か妙に間が空いたような?
「ところで、俺達の地元はアメリカなんだが」
「はっ?アメリカ?日本じゃねえのか?」
「すまない。
「――――」
しまった、と思った時にはもう遅かった。両肩をそれぞれ、荒垣さんと赤井さんにガッと掴まれる。
「さーて、園原青年?何故、今の会話で新幹線だけでなく飛行機という単語がすぐに出て来たんだ?」
「……普通は新幹線だけだと思わないか?俺はともかく、和哉さんはどう見ても日本人だからな。……それに俺がアメリカと言った時も、空条君よりも反応が薄かった」
「…………っ、」
「知っていたんだろう?俺達の正体を。……正確に言えば、大の顔を見て何者なのかを見抜き、その流れで俺の正体にも気づいたのではないか?」
はい、大正解です。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ現役FBI怖い!!観察&洞察力:Aかよ!?ちょっと口を滑らせただけなのにすぐ追及して来やがった!
「……そういや、お前は2日前。南京町で荒垣達と初めて会った時に、諸星がテレビで何回か見た人に似ていた気がした、と。そう言っていたな?……どういう事か、ちゃんと説明してもらおうか」
ちょっと待ってくれ親友。お前まで尋問側に回らないで。
「――園原志人」
「っ!?」
「俺の目を見て、よく聞け」
と、その時。荒垣さんが俺の顎に手を掛けて、目を合わせて来た。所謂、顎クイだ。美の暴力なので顔を近づけないでください本当に止めて!!
「お前は、何も気づかなかった。……故に、何も知らない」
「え、」
「大の顔を見てもその正体を見抜けなかったし、俺の正体にも辿り着いていない……そうだよな?」
「あ、あの、」
「――なぁ?」
「アッ、ハイ。
荒垣さんの言いたい事を理解してそう聞くと、彼はニヤリと笑って俺を見下す。ひぃ、ディオ様違った荒垣様……!!
「もっと、具体的に」
「
「――よし。いい子だ」
「――――」
俺が必死にそう断言すると、荒垣様は妖艶な微笑みで俺の頭を撫でた。思わず固まると、彼は赤井さんと共に離れていく。
「さて、そろそろ行くか」
「はい、和哉さん。……君達とは機会があれば、また会いたいところだな」
「そうだな、大。……では、園原青年。空条君。また、何処かで」
そう言い残した後。彼らは車に乗り、颯爽と走り去って行った。
「……シド」
「――――」
「おい、志人!!」
「はっ!?」
承太郎に呼ばれて、ようやく我に返る。
「で、どういう事なんだ?あいつらの正体ってのは?」
「…………何の事だ?」
「はあ?」
「俺は何も気づかなかった、だから何も知らない!!」
「……それが俺に通用するとでも思ってんのか?あ"あ?」
「知らないったら知らねぇんだよ!言ったら後で荒垣様が怖いだろ!?」
「荒垣様って何だ」
「荒垣様は荒垣様だ!ディオ様と同タイプの荒垣様!!あれは怒らせたら駄目な人!だから言わない、絶っ対に言いたくない、ごめん……!!」
「…………あー……確かに、あれはディオと同タイプだな」
そこまで言うと、承太郎もやっと納得してくれたようで、渋々といった様子だが引き下がってくれた。
「…………でも、」
「ん?」
「やられっ放しは嫌だから、ほんのちょっっとだけ仕返しがしたい」
「……ほう?そう言うって事は、何か方法があるんだな?」
「まぁ、駄目で元々の方法なんだが――」
俺がその方法を説明すると、承太郎はニヤリと笑った。
「心配するな。それなら、実行される可能性は高いぜ」
本当かなぁ?
―――
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―――――――――
――その日。ある男が、米国の土を踏んだ。
男は1つの目的のために、ある場所へ向かう。……彼が向かった先にあったのは、横広がりのビル。その柱の上部には、アメリカの国旗がいくつも設置されている。
ビルの入口の上に――FBIという文字が刻まれていた。男はそれを確認し、その入口から中に入る。
そんな男の姿を見咎めた者は、誰もいなかった。
「やぁ、おはよう。今日も可愛いね」
「はいはい、口説く暇があったらさっさと事務室に行きなさい」
「つれないなぁ。……ねぇ、今日の夜に食事でも、」
「却下。……あら?こんな包み、今までここに置いてあったかしら?」
FBI本部の受付にて。ある捜査官の男に口説かれていた受付嬢が、疑問の声を上げた。彼女はいつの間にかカウンターに置いてあった、四角くて小さな、平べったい包みを手に取る。
「…………えっ?」
「どうした?」
「……ちょ、ちょっと見てこれ!」
「ん?…………は?」
焦った様子の受付嬢が、捜査官の男に包みの宛名と差出人が書かれた部分を見せる。
「
「ど、どういう事かしら、これ……」
「オレにも分からないが、とりあえずジェイムズさんに連絡するよ!
カズヤの上司はあの人だからね。それと、中身を見る前にいろいろ調べた方が良い。各方面に連絡を入れてくれ!」
「分かったわ!」
受付の周りが、徐々に騒がしくなっていく。……その騒ぎの中。1人の男が立ち去る姿を見咎めた者は、やはりいなかった。
――何故なら、その男こそが
(……任務完了。……相手の反応を直接見る事ができないのは残念だが、これで俺の目的も、園原の目的も。達成できるはず……)
彼が何故、こんな行動を取ったのか。……それは数日前。彼と彼の仲間が経営するレストランに、園原志人と空条承太郎が訪れた事が、きっかけとなっている。
園原と承太郎は、兵庫から帰って来たその足でリゾット達のレストランへやって来た。彼らにいくつかのお土産を渡した後、園原が用件を口にする。
彼から語られたのは、20年近く前にリゾットがある任務のついでに助けた男の話だ。その男から預かったという伝言も明かされた。
リゾットは、その男の事を覚えていた。
男の整った容姿も、彼の事を覚えていた理由の1つだが……何よりも、彼を助けた後の出来事が印象的だったもので。
当時の出来事を思い出したリゾットは、目を細めて思う。――あの男は、今目の前にいる園原のように、心優しい男だったな、と。
しかしどうやら、その心優しい男が園原を困らせたらしい。
「――そんな訳で。俺はその人の正体をあなたには言えないんですけど……
俺が言えないだけで、あなたが
……というサプライズを、ちょっっとした仕返し代わりに実行してもらうのは"あり"なんじゃないかなー、と。思いまして。
あ、もちろん無理強いはしませんよ!?俺は駄目で元々のつもりで提案しているだけですから、リゾットさんに迷惑を掛けるつもりは全く、」
「よっしゃ、話は分かった!やってやろうじゃねぇか!」
「しょうがねえなァ、俺達の
「ソルベ。その男の事、オレ達で調べてみよう」
「そうだな、ジェラート。……場合によっては、財団の力も頼るか」
「……あ、あの、皆さん?ちょっと??」
「そのサプライズ、オレのベイビィも使う?」
「それは止めろッ!!というか何するつもりだテメー!?」
「さすがにそれは駄目だ、止めとけ」
「お、俺もギアッチョと兄貴に賛成……!」
「いやっ、ちょっと待ってください!ちゃんとリゾットさんの意思を確かめてから、」
「手に入れた情報は全て俺に渡せ。居場所が分かり次第、行って来る」
「マジですかリゾットさん!?」
「……やれやれだな。シド、だから言っただろ?実行される可能性は高い、と」
……という流れの結果、リゾット達はその男――FBI捜査官、荒垣和哉の情報を掴んだ。
なお。得られた情報は必要な部分のみ記憶した上で、その場で全て消去されている。これは園原からの希望だった。
荒垣に迷惑を掛けないためにも、情報が悪用される可能性はすぐに潰しておきたい、との事だった。
それにはリゾットも同意見だ。……自分達の
しかし。荒垣の情報を調べる過程で、ソルベとジェラートには少々気になる事があったそうだ。
FBI本部にハッキングを仕掛けるという無茶をやらかしたソルベ達によると――"何故か、彼の情報は他の捜査官の情報よりもハッキングが容易だった"。
それがどうしても気になって、改めて調査したところ。……荒垣の個人情報のみ、セキュリティレベルが異様に下げられていたらしい。
ソルベ達から話を聞いた園原とリゾットは、その事を怪しんで財団に調査を依頼した。すると芋づる式に、FBI上層部が"真っ黒"だった事が判明。
"SPW財団の本部や、財団創設者の石油会社がある国の警察機関の1つがこれでは駄目だろう"と。財団内部でもその問題が取り上げられた。
そして結果的に。現在のFBI上層部を排除し、もっとまともな人間が上に就けるよう、裏から手を回す事になった。
(……園原の提案に乗って、ちょっとしたサプライズをするだけのはずが……とんだ大事になったな……)
アメリカの街中を歩いているリゾットは、遠い目になりながらそう思考する。いずれFBIはいろんな意味でひっくり返り、アメリカ中が大騒ぎになるだろう、とも考えた。
(とはいえ……ソルベとジェラートは、FBI上層部についての情報を掴むきっかけを作ったとして、財団側から莫大な報酬を貰っていた……
俺を含めたそれ以外の仲間達も、その分け前をいくらか貰えたし……確か日本では、こういう事を棚から牡丹餅と言うのだったか?)
リゾットはそう考え、全ての始まりであるサプライズの提案を持って来た園原に、内心で感謝した。
(さて……日本で待っている園原と仲間達のために、何か土産でも買って帰るか……)
……後日。リゾットの予想通り、FBIはいろんな意味でひっくり返り、アメリカ中が大騒ぎになったという。
また、さらに後日。園原の自宅に、一体どうやって住所を調べたのか荒垣からの手紙が届き、園原は酷く驚愕したそうだ。
「承太郎承太郎承太郎っ!」
「どうした?何があった?」
「荒垣さんから手紙が届いた!あの人どうやってうちの住所調べたんだ!?」
「何だと?」
「と、とにかく1人で見るの怖いから一緒に中身見てくれ、本当に怖い……」
「分かった分かった、よしよし、落ち着け」
ちなみに。その中身は例のサプライズや"真っ黒"上層部を排除した事に対する、純粋な感謝の言葉が綴られた手紙であり、園原が怖がるような内容では無かった。
続編シリーズの連続更新は、これで終了です!今後の更新はpixiv先行投稿、そして不定期となります。ここまでご覧いただき、ありがとうございました!
最後に。もしも、この話の忠犬と飼い主視点が気になった方がいらっしゃった場合は、こちらをご覧くださいhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18965211
こちらでは、親友組サイドでは明かされなかった、飼い主と透明人間(リゾット)の出会い&リゾットがFBI本部に届けた物の中身についてなども書いてあります。