「なぁ、やっぱり納得いかないんだけどさ」
そう前置きをして師匠がまた麻雀の話を蒸し返す。
俺は最後師匠に直撃食らわせて勝った話をするけど、師匠は俺が最後に役満直撃食らって撃沈したのだという。
おかしい。これが師匠の狂言じゃないのだとすると……
「……どうやら僕たち二人の認識にズレが生じているようだ」
心底困ったように師匠がため息をつく。
「これが綾の作り出した夢の世界だとして、この夢は何を伝えたいのだろう」
綾さんの予知夢は、危険を事前に知るためのものが多いのだという。
俺も身に覚えがある。
「まだこれは俺の見ている夢で、師匠は俺が作り出した師匠という説も残ってはいますけどね」
一応師匠に断っておく。
できれば面倒くさいことを抜きにして、夢と言うことにしておきたかった。
「お前の夢で大暴れしてやろうか?」
不穏な笑みを浮かべる師匠。この人なら本当にやりかねない。
「いや、いいです。やめてください」
師匠をなだめようと俺は更に会話を続ける。
「これが綾さんの夢だとして、やっぱり京介さんも巻き込まれてるんでしょうか……」
言いながら思い出す。
京介さんは自分の部屋でしか眠らないと前に話してくれたことを。
「あの
それは師匠も知っていたようで、売店からくすねてきたであろうチョコレートを頬張り始めた。
なにしてんだ、この人は。
しかし、せっかくのメルヘンな遊園地も、女性陣が居ないのでは勿体ない。
京介さんがいれば、このバカを放って遊園地デートができたかもしれないのに。
「ダブルデートでもしたいですねぇ。なんなら旅行でも」
思わず口をついて出た言葉に、「馬鹿かお前は」と意味合いの目線が返ってくる。
こほん、とわざとらしい咳払いをして、
「歩くさんを探しますか?」と俺は仕切りなおす。
「ここは人の気配がなさすぎる。
さっきも言ったけど、別の場所にでもいるんじゃないか?」
師匠が改めて周囲を見渡しながら首を振った。
彼女の住むマンションにでも行けば会えるのかもしれないけど、これだけの炎天下でその行動をするのは非常に億劫だ。
……それに、電車や街の中でさえ誰にも会うことがなかったらと考えると恐ろしくて、それを実行する気にはなれなかった。
「なんにせよ、吸血鬼や殺人鬼が出てくるようなやつよりはマシだろ」
師匠が能天気に笑う。
その単語に思い当たりのある俺は、笑い事じゃないと師匠を小突く。
「せっかくタダで楽しめるんだ。とりあえずジェットコースターにでも乗ろうぜ」
日陰で休んで元気になったからか、師匠が園内を散策しようと腰を上げた。
「ええーっ」
「野郎二人で観覧車とかメリーゴーラウンドに乗ってもしょうがないだろ」
嫌がる俺に、師匠がきょとんとした顔で聞いてくる。
「それはそうなんでしょうけど」
「なんだ、怖いのか?」
「そ、そんなわけないじゃないですか」
あまりそういうのに乗った経験がないだけで……。
「決まりだな」
師匠が案内図を眺めながら先行して歩いていく。
その後姿を追いかけながら、俺の心臓はドクンドクンとうるさいほどに高鳴っていた。