ギフテッドAnother   作:龍翠

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帰宅して気づきました。時間設定間違えた……。
というわけで、今から一番近い時間(11時)にぶち込んでおきます……。


第四話

「あ」

「え」

「……っ」

 なのはが小さな声を漏らし、シュウが間抜けな声を漏らし、そしてシュウの影にいたことで見つからなかったシュテルはなのはに見つからないように隠れた。

 シュウとシュテルがいたのは小さな書店で、たまにはと立ち読みをしていたところだ。なのはの方は小さな荷物を持っている。どこかに出かけるところなのだろう。シュウを見つけたのは本当にただの偶然のようだ。

「なのは。知り合いか?」

 なのはの隣の青年が声をかける。高町恭也、なのはの兄だと記憶している。

「うん。この間、サッカーの試合を見学してた子」

「ああ、父さんが言っていたな……」

 なるほど、と恭也は一人で納得して何度か頷いている。シュウは曖昧な笑顔を浮かべることしかできない。視線だけを店内の奥へと向けると、シュテルがこちらの様子をうかがい見ていた。

「そうだ。シュウ君は今日は忙しい?」

「え? いや、暇だけど……」

 後になって思う。どうしてここで忙しい、予定があると言わなかったのかと。シュウが戸惑っている前で、なのはは満面の笑顔を浮かべた。

「これからすずかちゃんのところに遊びに行くんだけど、良かったらシュウ君もどうかな? 二人とも、もっと話してみたかったって言ってたから」

「いや、僕は……」

「暇なんじゃなかったのか?」

 恭也の言葉に、シュウの表情が引きつる。早くも発言を後悔し始める。これ以上の繋がりを作るつもりはなかったのだが、これはさすがに避けられそうにない。シュウは苦笑しつつため息をつくと、

「僕も行っていいの?」

「もちろん!」

 シュウの問いに、なのはは笑顔で頷いただけだった。

 

 

 なのはと歩き去って行くシュウの姿を見送り、シュテルはやれやれと小さくかぶりを振った。店を出て、裏路地に入りバリアジャケットを展開する。浮かび上がりながら、ディアーチェたちに念話で経緯を報告しておく。ディアーチェはため息、レヴィは楽しげに笑い、ユーリは苦笑、といった反応だった。

『念のためシュウを追います』

『うむ。気をつけて行ってこい』

 ディアーチェの言葉に了解を送り、シュテルは空からシュウの追跡を開始した。

 

 

「大きな家……じゃないね。屋敷だね」

 なのはたちに案内されたのは、巨大な屋敷だった。なのはの自宅も大きな家だったと思っていたが、やはりすずかの家は比較にならない。どういった仕事をしているのかは聞いたことはないが、こうして見ているとやはり興味が出てきてしまう。

「お待ちしておりました」

 屋敷から現れたのはメイドだ。確かノエル、という名前だったはずだ。

「貴方が西崎様ですね。お嬢様からお伺いしています。どうぞこちらへ」

 どうやらなのははすでにすずかの方にも連絡を回していたらしい。シュウは少し緊張しながらも、なのはと恭也の後に続いた。

 そして案内された部屋には、アリサがいた。シュウを見つけるなり、不機嫌そうに目を細めてくる。シュウは思わず顔を逸らしていた。

「アリサまでいるって聞いてないんだけど……」

「あれ、言ってなかったけ……。え? アリサちゃんには会いたくなかったの?」

 なのはが悲しげな表情を見せる。シュウは一瞬だけ言葉に詰まり、だがすぐにいや、と首を振った。ちょっと驚いただけだよ、と。それを聞いたなのはは、安心したように表情を綻ばせた。

 恭也がすずかの姉、忍と部屋を出て行ってから。シュウはなのはたちと同じテーブルにつき、居心地悪そうにカップを傾けていた。飲み慣れていない紅茶を少しずつ飲みながら、シュウは時折アリサへと視線を投げる。そのたびに、こちらを睨んでくるアリサと目が合ってしまう。

「アリサちゃん、どうしたの?」

 思わずすずかが聞いて、しかしアリサは返事をしない。まだシュウを睨んでいる。だが、唐突に立ち上がって、反対側に座るシュウへと歩いてくる。逃げたい衝動に駆られるが、怪しいだけなので内心で緊張しながらアリサを待つ。

 やがて隣に立ったアリサが、シュウにだけ聞こえる声で、

「この前のことは、聞かない方がいいわよね」

 そんな問いかけ、シュウが驚きながらもなんとか頷くと、アリサは、そう、と言っただけで席に戻ってしまった。いすに座り直し、そして、シュウに笑顔を向ける。

「改めて、久しぶりね。シュウ」

 この間のことは一先ず忘れてやる、と言われたような気がして、シュウは胸をなで下ろした。喧嘩でも始まるのではと警戒していたのだろう、なのはとすずかもほっと安堵のため息をついていた。

 

 

「どうやら無事に乗り切ったようですね」

 屋敷の外、一際大きな木の上で、シュテルはサーチャーから送られてくる映像を見つめていた。映るのはシュウとなのは、アリサ、すずかの四人だ。先日、大きな異変の日になのはたちに会っていたことはシュウから聞いている。そしてもちろん、その後にアリサと会い、少しばかり魔法を使うところを見られたことも。

 もしアリサがそのことをこの場で言うつもりであったのなら、最悪の場合シュウを拉致する形で連れ出そうとも思っていた。それも杞憂に終わっているが。

 一先ずは安心していいだろう。シュテルは木の枝に腰掛け、サーチャーからの映像を眺め続ける。そうしてすぐに、シュテルはその存在に気がついた。

 

 

「……っ!」

 なのははジュエルシードの発動を感じて、息を呑んだ。表情が強ばってしまうが、すぐに平静を取り繕う。幸い友人たちは猫の相手をしていて、どうやら自分の様子に気がついていないらしい。そのことになのはは安堵のため息をつき、

「どうかした? なのは」

 シュウの声に、再び表情が凍り付いてしまった。どうやらシュウには気づかれてしまっていたらしい。なのははシュウに笑顔を向けて、何でもないよと答えておいた。

 念話でユーノと相談し、ユーノが林の方へと飛び出し、走って行く。驚いて狼狽えるアリサとすずかに、ちょっと行ってくるね、と断りを入れてなのははユーノの後を追った。ユーノを探しに行く振りをすれば怪しまれないだろう、そう判断しての行動だ。

 少し唐突ではあったが、ある程度自然な流れでその場を抜け出せたことになのはは胸をなで下ろした。

 それ故に、シュウがなのはを真剣な眼差しで見つめていたことに気がつかなかった。

 

「これは……大きくなりたいっていう願い、かな……」

「あ、あはは……」

 なのはとユーノが見つめる先にいるのは、一匹の子猫だ。ただし、周囲の木々よりも巨大ではあるが。猫はなのはたちを見つけると、こちらへと歩いてくる。

「できるだけ痛くないように封印するからね……」

 そう優しくなのはが語りかけ、杖を構える。その直後に、なのはのものとは違う別の魔法が猫に降り注いだ。猫が悲痛な叫び声をあげる。なのはは表情を引きつらせ、すぐに使用者を探して周囲を見回す。そして、すぐにその少女を見つけた。

 

 

「シュテル!」

 シュウの声に、シュテルは眼前で繰り広げられている戦闘から目を逸らし、足下へと視線を落とした。シュウがこちらへと手を振っている。シュテルは周囲を警戒しながら、シュウの側へと降り立った。

「どうしたのですか、シュウ。あちらはいいのですか?」

 問われたシュウは、今なお続く二人の魔導師の戦いに目を向けた。頷きを一つ、答える。

「なのはがなかなか戻ってこないから様子を見てくる、てことにして抜け出した」

「なるほど。嘘は言っていませんね」

「うん。あれはやっぱり……フェイト、だよね?」

 シュウの視線を辿ってみれば、どうやら戦い全体を見ているのではなく、なのはと相対しているもう一人の魔導師を見ているらしい。少し距離があるので視認はできないだろうが、おそろくはフェイトで間違いないだろう。

 ふと隣を見ると、シュウがこちらを見つめていた。何かを問いたげな表情だ。その瞳に込められた問いを察して、しかしシュテルは首を振った。

「手出しはしません。無論どちらかの命に関わるような事態になれば介入しますが、その心配はないようです」

「でも、なのはと仲良くなったんじゃないの?」

「少し話をしただけですよ。それに、もう終わったようです」

 え、とシュウが間抜けな声を漏らし、慌てて視線を正面へと向ける。いつの間にか戦いは終わっていたようで、すでに静かになっている。

「おそらく結界もすぐに解かれるでしょう。シュウ、なのはをお願いします」

「それはいいけど、シュテルは?」

「すみませんが、待機させていただきます。何かありましたらいつでも」

 シュテルの言葉にシュウはわずかに怪訝な表情を見せたが、しかし何も言わなかった。了解、と言ってなのはの元へと向かう。その後ろ姿を見送っていると、程なくして結界も解除された。

「では、任せました」

 シュテルは誰にも届かない言葉を告げて、その場を後にした。

 

 

 気を失っているなのはを見つけたシュウは、彼女の体を背負って屋敷へと戻った。シュウは力があるわけではないので、屋敷に到着した頃にはすでに嫌な汗を流して限界が近くなってはいたが。

 恭也になのはを引き取ってもらったシュウは、自身もその場で横になった。平気な顔などできていれば格好もついたものだろうが、現実はそんなに甘くはない。メイドから冷たいジュースを受け取ったシュウは、すぐにそれを飲み干していた。

「あ、ついでに一つお願いしたいことが」

 ジュースを持ってきてくれたメイドに声をかける。メイドは振り返ると、何でしょうかとシュウの言葉を待ってくれる。シュウは声が届く範囲にメイド以外誰もいないことを確認して、言った。

「紙とペンを貸してもらえますか? メモ用紙程度でいいので」

 メイドは怪訝そうな表情をしながらも、すぐにシュウが頼んだものを持ってきてくれた。シュウは屋敷には上がらずに、その場で用件を書いてしまう。屋敷内を見ると、皆が気を失っているなのはを心配そうに見ていた。

 シュウは部屋の入り口にペンとメモを置いて、メイドへと笑顔を向けた。

「ありがとうございました。では、失礼します」

「いえ、他に何か……。は?」

 こちらもなのはの方を見ていたメイドがシュウの言葉に驚いて勢いよく振り返る。しかし、そこにはすでにシュウの姿はなかった。

 

「疑われてしまいますよ」

「まあ、仕方がないよ。根掘り葉掘り聞かれると隠し通せないだろうし」

 シュウはシュテルの腕に捕まって、空をゆっくりと飛んでいた。

 屋敷からこっそりと離れたシュウは、改めてシュテルへと連絡を入れた。このまま抜け出したいから手伝ってほしい、と。それを聞いたシュテルは、何かを聞いてくることもなくシュウの元へと来てくれていた。

「一応、挨拶なしで帰ってごめん、とは書き置きしたけど」

「そう、ですか」

 それきり、二人は黙り込む。ゆっくりとアパートへと向かって飛び続ける。

「ねえ、シュテル」

「はい」

「ちょっとやりたいことがあって少し離れるって言ったら……。だめ?」

 シュテルが目を細め、シュウを見る。不安そうなシュウの瞳と目が合ったシュテルは、小さくため息をついた。

「いつでも連絡を取れるようにしてください」

「うん。分かった。その時はまた改めて言うよ」

 お願いします、というシュテルの言葉を最後にして、その話はそれきり触れられなかった。

 




ちょっとだけ本腰を入れての介入が、始まる……のですか?

誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。
ではでは。
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