第一話「始まりの転移」
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【ヴツー地方】は大国以外は国という意識が低い。どちらかといえば、村や街などの都市単位で物事を考えている。近い考えは
つまるところヴツー地方には、
これはそんな世界に落ちてしまった元社会人の男の、日本人の男がヴツー地方を冒険する…ヴツー地方の中の一つの物語である。
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●ヴツー地方●
●スパルタンムラ●
「ーーーす、スパルタンムラっすか?」
スーツ姿の14.5歳くらいの青年が、軽く頭をかきながら困惑の表情を浮かべている。
「ああ、ここはヴツー地方の辺境のスパルタンムラだよ」
彼の目の前で老婆が笑顔で答える。
「す、すみません、ありがとうございました」
「構わんよ。しかし、海に投げ出されて生きてるとは運がいいね。打ち上げられてたところを見つけた時は、もう死んでるかと思ったよ‼︎」
バシバシと老婆が彼の肩を叩く。
そう、青年は漂流者であった。気が付いたらスパルタンムラ近くの海岸に流れ着いていたのだ。
「(どういう事だ?色々と訳分からん)」
青年は考え込む。彼の最後の記憶は、仕事の関係で貨物船に乗っていて、ソマリア海域で海賊に襲われて…うっ、そうだ…海に投げ出されてーーーと、死に際の記憶を思い出す。
「(そうだ。俺はその後で撃ち殺されて…死んだ、筈だ)」
青年の体は若返っており、若い頃の青年そのままであった。服装はそのままであるが、荷物は見慣れない巨大なリュックサックのみであった。不思議とリュックサックは濡れた形跡がなかった。
「あ、そういえば、あんたポケモン使いなんだね?傭兵かい?」
「え?」
「ポケットにボールが入ってたよ。一先ずこんな情勢だったから預かってたけど、あんたは大丈夫そうだし、返しておくよ。傭兵の仕事道具だろう?たしか【モンスターボール】とかいうのだろ?」
「え、あ、どうも」
青年がゲームで見慣れた道具であるモンスターボールを、老婆から受け取ったその瞬間…青年の頭の中に情報が流れ込む。
それは、ポケモン達の情報…そう、最後にプレイした【ポケットモンスター ヴァイオレット】の手持ちポケモン達の情報であった。
「(成程、誰かは分からないが、ただこの世界に放り込んだという訳ではないらしい。これが異世界トリップ?転生?の特典ってやつだな)」
情報の中には手持ちの他にも、今までプレイしてきたゲームで、捕まえ育てたポケモン達のものもあった。どうやら今までプレイしてきたポケモンゲームのポケモン全てを使えるようである。
少し心の余裕ができてくると、疑問点も浮かんでくる。
「ところでこの情勢というのは?傭兵は珍しくないんですか?」
「ああ、それはね…」
〜老婆説明中〜
「(戦国乱世やんけ)」
老婆の説明では、このヴツー地方は各都市が国家として成立しており、国家間の対立による紛争も絶えず起きており、治安の悪化により賊の類も多くなってるらしい。まさに乱世乱世である。
そして、フリーの兵士である傭兵の需要は鰻登りであり、かなりの数の傭兵が現在も活動中とのことであった。
「他の地方で傭兵してたんなら、ヴツー地方の傭兵ギルドに登録しておきな。依頼の斡旋を受けられるよ。といっても、一番近いギルドのある街まで数日はかかるがね」
「成程。ありがとうございます」
「んじゃ、私は夕飯の用意してくるよ。あんたも、今日はもう遅いから泊まっていきな」
「す、すみません…」
老婆が立ち去った後、青年は考え込む。
「(どうやらゲーム世界よりも過去の時代。どちらかといえば、レジェンドアルセウスの時代に近い世界に飛ばされたか)」
ポケモン世界にはポケモンを使って戦争をしていた時代がある。どうやらこのヴツー地方はそんな時代の地方であるようだ。
「(手っ取り早く金も欲しいし、何かと交換に少し食料を分けてもらって、近くの都市で傭兵ギルドに登録してくるか)」
早速とばかりに青年は荷物を漁る。
「(うーん、財布の中身が知らない金になってる。もしかしてこの地方の金か?後で確認するとして…交換に使えそうなのは、これくらいか?)」
それはライターである。誕生日に初給料でいいやつを買ったはいいが、タバコが苦手だったと発覚。結局捨てられずに携帯していたものだ。
「(…いや、待てよ?ポケモン世界ならこっちの方が需要あるか?)」
ガサゴソと漁ると、いくつかのアイテムが出てくる。どうやらこのリュックサックは4次元ポケット的なシステムのようで、ゲーム時代のアイテムは全て入っているようである。
「(これなら逆に交換してもらわなくても、何とかなりそうだな)」
「ーーーそういえば」
老婆が突如として戻ってくる。
「あんたの名前を聞き忘れてたよ。あんたの名前は?」
「ああ、失礼しました。自分の名前は…【カイト】と申します」
青年は、歴代ポケットモンスターで使っていたアバター名を名乗った。
「カイトかい。短い間だけどよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
再び老婆が立ち去る。
「ん?何か騒がしいな」
カイトが縁側から外に出ると、村人達が武装していた。何やら真剣に話し合っている。
「山賊共だ‼︎」
「クソこんな時に‼︎」
「いや、奴らこっちの自警団がいないのを狙ってきやがったに違いねぇ‼︎」
武装した村人達が村の外へと走っていく。
「山賊…?」
「カイト‼︎」
泡を食ったような慌てようで、老婆が部屋に戻ってくる。
「山賊が攻めてきた‼︎あんた傭兵なんだろ⁉︎報酬は用意するから、追い返しておくれ‼︎」
「え、ちょ…」
老婆に引きずられ、カイトは村の外まで連れていかれる。村の外にはすでに多くの村人がいた。その前に立つのは、明らかに山賊のような武装の男達。
「ちっ、ポケモン使い…傭兵か?」
「だが1人だ。やっちまえ‼︎」
「囲め囲め‼︎」
山賊達がポケモンを繰り出す。【キャタピー】に【ビードル】や【ケムッソ】がカイトを囲む。
「…舐めてるのか?」
「何?」
カイトがモンスターボールを空へ投げる。そこから現れるのは【ムクホーク】。むしポケモン相手には弱点をつけるひこうタイプのポケモンである。
「(見える。相手のポケモンのレベルとHPが)」
カイトの目には、ポケモン達の頭上にレベルと残りHPが表示されていた。まあ、そもそもムクホークvs進化前のむしポケモンという時点で、死亡フラグが乱立しているのだが。
「ムクホーク‼︎≪かぜおこし≫で全て吹き飛ばせ‼︎」
『ーーー‼︎』
ムクホークの起こした≪かぜおこし≫が、むしポケモン達を飲み込む。効果は抜群の上、ムクホークのレベルは…100である。
「まだやるか?」
戦闘不能に陥ったむしポケモン達が降り注ぐ中、カイトが問いかける。それは最後通牒であった。
「い、一撃で俺たちのポケモンを…⁉︎」
「なんでこんな高ランク傭兵がいるんだよ⁉︎」
「ひ、ひぃ…⁉︎」
山賊達がカイトのポケモンの強さに怯え、一歩二歩と後ずさる。
「全員捕えろ‼︎」
「こっちにはあの傭兵殿がついてる‼︎抵抗するなよ‼︎」
武装した村人達が、降伏状態の山賊たちを縄で捕縛していく。
「いや、助かった。君は確か海に打ち上げられていた少年だったな。傭兵だったのか」
「ええ、といってもこの地方では登録してませんが…」
話しかけてきた若い男に、さも自分は歴戦の傭兵だというように、カイトが答える。
「登録してないのか。まあ、漂流してきたのなら、傭兵ギルドに登録してないのも当たり前か」
若い男は考え込んだ後に話を続ける。
「今後金も必要になるだろう。危ないところを助けてもらったし、相場よりは少ないが、村から報奨金を出そう」
「いえ、こちらも助けていただいたので」
「いや、君のおかげで多くの村人が助かったのだ。ぜひ受け取ってくれ」
「そこまで言っていただけるのでしたら」
あまり断るのも悪いかと、カイトは受け取ることにした。
「さて、こうなると山賊達を大きな都市に連行しないといけないな。一番近くだと首都【ジェンバシティ】だが…うむ」
「何か問題でも?」
「ん?ああ、実はジェンバシティへ続く、大きな森を突っ切る道があるんだが、むしポケモンの群れが住み着いてな。今は通れないんだ。しかしこのまま山賊を村に置くのも…」
若い男がため息を吐き出す。そして提案をする。
「良ければなんだが、群れの討伐を依頼できないか?どちらにしても通行禁止のままだと、ジェンバシティに行くのも一苦労だからな。報酬はそうだな…武装を失っているようだし、うちの武具一式でどうだ?昔従軍した時に使ったヤツだ。若い頃のだから、サイズもぴったりのはずだ」
「分かりました。依頼を受けさせていただきます」
「すまない、助かる。明日には出発するから、今日のところは休んでくれ」
村人達と村に戻る。
「カイト、あんた凄腕の傭兵だったんだね…」
出迎えた老婆が驚いた表情で、カイトを見る。
「まあ、あのレベル相手なら問題はありませんね。というか、あのレベルのポケモンで山賊というのに驚いたんですが」
「あのレベルって…」
「前のところがどうか知らないが…この地方じゃあ、ポケモンを使役してるだけでも十分脅威だ。村の自警団もあのレベルのポケモンを数匹使役してるだけだ」
どうやらカイトのレベル価値観とこの地方のレベル価値観は合わないらしい。カイトの価値観によると、ゲーム序盤も序盤の街のレベルである。
「(この村で通行できないレベルのポケモンとなると…群れという習性からして【スピアー】あたりか?)」
スピアー。ビードルが最終進化した蜂のようなポケモンである。
「(まあ、まだこの地方の情報は少ない。知らないポケモンもいるかもしれないから、断定は危険か)」
そう、ゲームに存在しないこの地方は、カイトにとって未知。知らないポケモンが存在する可能性もあった。
「明日の朝早く村を出る。起こすまではゆっくりしててくれ」
「ありがとうございます」
「こっちこそだ」
若い男が立ち去る。
「一先ず今日はあたしんところで休みな。夕飯は鍋だよ」
「ありがとうございます」
こうして、カイトの1日目が終わろうとしていた。
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