第二話「大物喰らい」
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結果から言えば、森に住み着いたむしポケモンの群れは、カイトの予想通りスピアーの群れであった。レベルも低く、高くても12程度であった。
群れを鎧袖一触したカイトと護送団一行は、【ジェンバ海洋王国】の首都ジェンバシティの目の前にまで来ていた。
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●ジェンバシティ●
●検問所●
「成程、山賊か」
検問所の兵士が、馬車に乗せられているこうそく拘束済みの山賊達を確認する。人数は6人である。
「はい、自警団が従軍中で留守にしてるところを狙われまして。幸いにも傭兵がいたので助かりました」
「西の連中との戦争か。まさに不幸中の幸いだな。で、その傭兵は?」
「自分です」
カイトは前に出る。その姿はスーツから革鎧の武装した姿に変わっている。更には腰に片手剣がある。
「その歳でこれほどの武力とは…将来有望だな」
「山賊だけじゃなく、森のむしポケモンの群れも討伐してくれたんです」
「何⁉︎あの群れをか⁉︎」
兵士が驚きの表情を浮かべる。
「騎士団が戻るまで対応できないと思っていたが、群れを討伐するとは…もはや強者の域だな」
「ええ、これでジェンバシティとの行き来ができます」
兵士と若い男が安堵の息を吐き出す。
「一先ず、山賊共はこちらで引き取ろう。山賊のポケモンに関してはこちらに引き渡してもらうが、構わないな?」
「もちろんです」
「報奨金は群れの件もあるから、多めに出すよう伝えておこう。代表者は私と来てくれ。調書を作らねばならん」
「かしこまりました」
若い男がカイトの側にくる。
「護衛してくれて助かった。礼を言わせてくれ。無事に着いたのも君のおかげだ」
「いえ、こちらこそ、ここまで運んでいただき、ありがとうございます」
「我々は山賊の受け渡し手続きをするが、君はどうする?」
「ジェンバシティで傭兵登録をしようかと」
「そうか。なら入場手続きをしておこう。皆と挨拶でもしててくれ」
「はい、ありがとうございます」
若い男が立ち去る。
「カイトさんも、ようやくこの地方で正式な傭兵っすね‼︎」
「カイトさんなら、すぐ名前が売れますよ‼︎」
「あ、ありがとう…」
山賊護送団の村人達が、カイトと言葉を交わす。
「挨拶は済んだか?思ったより早く手続きが終わったから、すぐに入場できるぞ。それと、これは入場許可証と山賊討伐及びスピアーの群れの討伐証明書だ。無くすなよ?」
若い男からカイトが書類を受け取る。
「色々とありがとうございました」
「いや、我々こそ色々と世話になった。また時間ができたら遊びに来てくれ。歓迎する」
「はい、その時はまた」
村人達と別れ、カイトは城門をくぐり抜け…ジェンバシティに入った。
「(…中世のヨーロッパみたいな風景だな)」
カイトがジェンバシティの中を歩き回りながら確認すると、少し歩いたところに知っている看板を発見する。
「確かこれが傭兵ギルドの看板…だったな」
盾に剣が2本交わったマーク。村で習った通りの傭兵ギルドのマークであった。
「ふぅ…よし‼︎」
深く呼吸したカイトは、ギルドの建物の中に入る。まず感じるのは鼻につくタバコの匂い。次に感じたのは静けさだった。
「(…誰もいない?まあ、真昼間だし仕事中か?)」
カイトは受付らしき場所へ向かう。
「…何の用だ?」
「傭兵登録に」
受付の男にカイトが簡潔に用件を告げる。男はフンと鼻を鳴らすと、書類を取り出してくる。
「名前は?年齢は?」
「カイト、歳は…16です」
「戦闘経験は?」
「従軍経験はないですが、ポケモンとの戦闘経験はそれなりにです。それと少し前に山賊を討伐して、森の中を棲家にしていたスピアーの群れを討伐しました。討伐証明書はこれです」
「…分かった。傭兵ランクを決める試験がちょうど明日ある。明日の朝ここに集合だ。登録証はその後に発行する」
「分かりました」
カイトが立ち去ろうとした瞬間、ギルドのドアが勢い良く開く。開けたのは焦った様子の老人であった。
「た、大変じゃあ‼︎港の近くに【ギャラドス】の群れが出たんじゃあ‼︎」
「なに⁉︎規模は⁉︎」
「10はおるぞ‼︎」
老人の話を聞いた受付の男が、頭が痛いとでも言うかのように頭を抑える。
「今は西の連中との戦争で、軍も傭兵も主力部隊は不在だ…‼︎このままでは船に大きな被害が出る‼︎とはいえ、︎現有戦力ではギャラドスの群れに対応なんて…いや、待て」
受付の男がカイトの顔を見る。
「確か、カイトといったな?山賊とスピアーの群れを討伐したなら、ギャラドスとも戦えるか?最悪追い返すだけでもいい」
「ええ、問題なく」
「…よし、上には俺が話をつけておく。お前を一時的に傭兵ギルド所属の傭兵とする。そしてギルドから依頼として『ギャラドスの群れ討伐または撃退』を正式に依頼させてもらう。成功した時はそれなりの報酬と傭兵ランクの判断に上乗せさせてもらう」
「分かりました。では案内を頼めますか?」
「も、もちろんじゃ‼︎」
カイトは依頼を快諾し、老人の案内で海へと向かった。
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●港●
「なんてことじゃ‼︎あやつらもう港の中に…‼︎」
老人の言う通り、ギャラドスの群れは港の中に入り込んでいた。不幸中の幸いは船が直接襲われていないことだろう。
「確かに10体。そして…」
群れの中心。青いギャラドスではなく"赤いギャラドス"。
「あれは、他の奴よりレベルが上だな」
カイトが2つのモンスターボールを取り出す。
「(くさタイプかでんきタイプを使いたいが、浮遊ユニットなんて便利なものはないからな)」
カイトが繰り出したのは、空中で戦えるひこうタイプのムクホークと討伐対象と同じギャラドス。
「レベルが高いとはいえ、俺のポケモンと比べるまでもない‼︎蹴散らせ‼︎」
『『ーーー‼︎』』
ムクホークとギャラドスが、ギャラドスの群れに突撃する。そこからは鎧袖一触であった。次々とギャラドス達がわざの前に倒れ、海に消えていく。
「おお‼︎軍ですら相手の難しいギャラドス達を、あんなにも容易く‼︎」
「(問題はあの赤いギャラドスだが…)」
通常、【コイキング】のレベルが20になるとギャラドスに進化する。そしてギャラドス達のレベルも大体20である。しかし、赤いギャラドスはレベル35であった。
そして、もう一つ問題があった。
「(つ、捕まえてぇ…)」
カイトはエンジョイ勢と呼ばれるタイプのゲーマーである。廃人ほどやり込まないが、偶然色違いポケモンを発見したら、なんとしてでも捕まえたいと思う程には、ポケモンゲーマーであった。
「ギャラドスは他のギャラドスを鎮めろ‼︎ムクホークは赤いやつを弱らせろ‼︎」
ギャラドスが通常のギャラドスを倒す間に、ムクホークが手加減しながら赤いギャラドスと戦う。
「ーーー今だ‼︎【ハイパーボール】‼︎」
モンスターボールの上位ボールであるハイパーボールを、カイトがギャラドスに投げつける。
『ーーー⁉︎』
ボールに当たったギャラドスが、ボールの中へ吸収される。海に浮かぶボールが揺れた後に、カチッと音を鳴らす。
「ムクホーク‼︎」
カイトがムクホークを呼ぶと、ムクホークが嘴でボールを回収してくる。
「色違いギャラドスゲット…と」
ギャラドス達を全滅させた2匹のポケモンを回収したカイトが、案内してきた老人に振り返る。老人がぴくりと震える。
「これで依頼完了…で、大丈夫ですか?」
「あ、ああ…た、助かった、わい」
「では、ギルドへの報告に同行してもらっても?」
「も、もちろんじゃ…こんなん、見てないと信じられんからな」
カイトと老人は傭兵ギルドへと歩き始める。周囲の野次馬達がカイトに驚愕の視線を向けている。
「(さて、ここから俺の傭兵生活が…異世界生活が始まるのか)」
ーーー結果から言えば、カイトの武功はこれほどかというほど評価された。
海の中でも凶暴さで知られるギャラドスの群れを容易く屠り、多くの船を沈めて賞金首となった赤いギャラドスを捕獲した実績は、ジェンバシティに轟いた。
この功績をもって、カイトは傭兵試験を免除され、破格の傭兵ランクと2つ名が与えられることとなった。
ーーー5ツ星傭兵、<大物喰らい>。それがカイトに与えられたものであった。
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