〜レジェンドウォー〜
第四話「ガイの密林」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新人傭兵候補を3人仲間にしたカイトは、傭兵ランク試験の対策のために、ポケモンが多く出る森の前にいた。
森の名前は【ガイの密林】。あまりにポケモンが多いため、一般人は近付きもしない危険地帯である。
*********
*********
●ガイの密林●
「というわけで、これから傭兵ランク試験のための強化合宿を行う、まあ、とにかく戦ってもらうだけなんだが」
そういって、カイトは木の切り株に腰掛ける。
「戦うだけって…」
ジョルジュが不安そうな声をあげるが、カイトは笑みを浮かべたまま答える。
「この森はポケモン自体の数こそ多いが、ポケモンの平均レベルは低い。それこそお前達の相棒よりもだ」
「えっと、つまり…」
「つまり、ここは君らからすれば危険度の低い戦場だ」
答えたカイトが、手荷物を漁り、ある荷物を取り出す。それはモンスターボールであった。
「お前達には最低でも、この森の群れを討伐できるレベルになってもらう。なに、ずっと戦闘を繰り返せば、問題なくそのレベルになる」
「…入る傭兵団間違えたかしら?」
ユピテルが思わずといった様子で呟く。
「悪いが俺はお前達をただの傭兵で済ませる気はない。傭兵団の団長クラスの実力は身につけてもらう。最終的にはこの傭兵団の下部組織としてそれぞれの傭兵団を持ってもらいたいと思ってる。
ーーー気張れよ」
「俺らが、傭兵団を…?」
3人が顔を見合わせる。
「そのためにも、まずは1時間ほど3人で森の中を探索。発見したポケモン全てを倒すか捕獲しろ。ポケモンが負傷したら俺が治してやるから戻ってくればいい」
「「「はい‼︎」」」
3人が森の中に消える。
「…さて」
切り株に腰掛けたまま、考え込む。
「(新人3人か。せめてこの乱世でも生き残れるくらいには育てたいな)」
この世界において人の命は実に軽い。それこそ、子供向けのゲームであったはずのポケモンの世界とは思えないほどだ。
戦争にポケモンの襲撃…死はこの世界では隣人なのだ。
「(渡した御三家は、卵から孵したレベル5…底辺傭兵相手なら、1対1なら問題なく勝てるレベルだ。ただしゲームならだが)」
ここは現実である。レベルや個体値だけが、勝利のファクターでは無い。
「(経験を積むしか無い。俺もそうだった)」
カイトも傭兵になってから、多くのポケモン相手に戦闘をこなした。時には山賊相手にもだ。
「(この世界において、強いことは何よりも正義。強くあることこそが生きる手段なんだ)」
この世界。最低でもジェンバでの傭兵達のポケモンの平均レベルは6〜8。新人達が戦闘を行い続ければ、容易く越えられるレベルであると、カイトは考えていた。
「(戻ってくるまで、新聞にでも目を通しておくか)」
この世界において、新聞は中々金がかかるが、情報収集としては悪くはない選択肢である。
「(ふむ…【カッル公国】の内戦が集結し、公王が変更。【共和制ローム】が隣国【クル=テスラ】を併合か。戦争が終わって平和になるなら構わないが…)」
勿論きな臭いニュースもあった。
「(【バウマン公国】において公王が死去。次代公王は指名されておらず、王族の争いになるか?か。傭兵の需要は減らないと見える)」
カイトが新聞を読み込んでいると、3人が戻ってくる。丁度1時間程度であった。
「どうだ?少しは戦い慣れたか?」
ポケモン達の治療をしつつ、カイトは3人に問いかける。
「な、何とか…」
「虫はもういや…」
1時間に及ぶ戦闘行為で、3人ともヘトヘトの様子である。
「なんだなんだ?そんなに戦ったのか?」
「俺が10匹倒して、ユピテルが11匹…んで、相棒が18匹です」
「え?マジで言ってる?」
「群れに突っ込めば、それはそれだけ倒せるわよね。私は絶対拒否するわ」
「成程」
理由にカイトが納得する。
「お前は早死にするか、または大物になるかの2択になりそうだな。生き急ぎ過ぎるなよ?」
初っ端の戦果じゃねぇと思いつつ、カイトはポケモン達の回復を終える。
「よし、それじゃあ今から1時間休憩だ。これからこれを繰り返すぞ(進化1回くらいはしておきたいところだが…果たしてそこまで行けるか?)」
「それと相棒がポケモンをモンスターボールで捕獲しました」
「何?随分早いな。何を捕まえた?」
「相棒‼︎見せてやれよ‼︎」
モンスターボールから【ラルトス】が現れる。
「ラルトスの♀のようだな(♀ってことは、進化先は【サーナイト】だな)」
ラルトスを確認したカイトは、ボールに戻すように指示を出す。
「ラルトスの進化系のサーナイトは、俺も使うポケモンだ。いいポケモンを捕まえたな」
カイトは立ち上がる。
「さて、一応は問題なさそうだし、俺は昼飯の用意でもしてこよう。お前達はもう少ししたらまた戦闘訓練だ」
「「「はい‼︎」」」
こうして、3泊4日にも及ぶ戦闘訓練合宿が始まったのであった。
*********
*********
◆試験日当日◆
●試験場●
会場となる草原には、多くの新人傭兵候補とその付き添いの傭兵達がいた。
「ーーーこれより、傭兵試験を行う‼︎」
傭兵ギルドの職員が、試験の開始を告げる。
「(戦闘能力的には問題ないが…さて、どうかな?)」
カイトは試験を受けていないため、傭兵ランク試験の内容は知らない。つまり、脳筋的な考え方で、とにかく新人達を鍛えまくったのが実情である。
「おい、<大物喰らい>だ」
「新人連れてるぞ」
「傭兵団立ち上げたって本当なんだな」
「教育能力が試されるが…」
傭兵達の話がカイトの耳に入る。
「だ、団長」
「今のお前らなら問題ない。かまして行け」
「「「はい‼︎」」」
カイトの前にギルド職員がやって来る。
「【太陽傭兵団】団長の<大物喰らい>カイト殿ですね?皆さんの試験を開始しますので会場へどうぞ」
「はい、分かりました」
カイトが3人を見ると、不思議そうなというか困惑した表情をしている。そして気がつく。
ーーー傭兵団の名前、伝えてなかったと。
「あー、俺の故郷じゃあ、太陽が大きな意味があってな。それをいただいた。って訳で、お前らは太陽傭兵団の一員ってわけだ‼︎しっかりと結果を残してこい‼︎」
「「「は、はい‼︎」」」
3人が試験官のもとへ向かう。
「<大物喰らい>。まさかお前が傭兵団を立ち上げるとはな」
「ああ、<両断>殿ですか。お久しぶりですね」
「いつも敬語はいらんって言ってるだろうに」
現れたのは、比較的カイトと話をする傭兵である、5ツ星傭兵の<両断>【ケッペス】であった。
「で、新人どもは使えそうなのか?」
「まあまあ、ですかね?これからですよ」
「お前はたまーに脳筋なことやるから心配なんだが…まあいい」
ケッペスがため息を吐き出す。
「しかし、お前本当に戦場に出る気か?今まで通りに、大物の賞金首ポケモンやら山賊やらでも問題はないだろうに…」
「多少思うところがありましてね」
「…相変わらず、変に内心が読めないやつだな」
達者でなとケッペスが立ち去る。
「…理由はないこともないのさ」
太陽傭兵団の立ち上げ。それは明確な理由があっての行動である。それはもちろん…元の世界への帰還である。
「(このジェンバだけなら情報は限られる。だが、傭兵団として大きくなりながら、各地を転戦すれば、多少は手に入る情報が増えるはずだ)」
各地を旅することで情報を集め、大きな傭兵団という武力を持つ。それこそが元の世界への帰還のための計画であった。
「(その第一歩…そう簡単に躓く訳にはいかない)」
カイトは試験をじっと見つめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エンド