桐葉「ほーれほれ(ガリガリガリガリガリ!!!)」
橋本「ぎぃぃいいやああぁぁあああぁぁ!?」
真澄「……ねえ、何あれ?」
有栖「私が桐葉におねだりして作ってもらった、かき氷機を改造して作られた拷問器具です」
鬼頭「それ、絵面大丈夫なのか?一応この小説全年齢対象なんだが……」
有栖「ご安心を、決して氷の代わりに人肉を削るようなスプラッタな機能ではありません。コンセプトとしては氷を設置する場所に金属の板が差し込まれており、氷を削る刃と激しく削り合うことで生じる極めて不快な金属音を、超至近距離で聴かせるというものです」
真澄「確かにグロくはないけど、それはそれで想像するのも嫌なやつね……」
【side:桐葉】
有栖に(色んな意味で)こてんぱんにされ傷心中の俺は、追い討ちとばかりに愛する妹にポイントを巻き上げられに1年Bクラスの教室まで赴いていた。……有栖と恋人繋ぎしながら。
こらこら少年少女達ワーキャー騒がない。気持ちはわかるけど見せ物じゃないんだよ君達。
「ほんじょーとーかちゃん出ておいでー♪ でないと目玉をほじくるぞー♪」
「まっくろくろすけみたいな呼び出し方やめいっ」
鋭い切れ味のツッコミと共に教室から桐花ちゃんが、それはもうげんなりした表情を浮かべながら出てきた。愛する妹のあまりにもあんまりな塩対応に桐葉君悲しくて泣いちゃう。泣かねーけど。
「やほーマイラブリーシスター桐花ちゃん、ご機嫌麗しゅう─」
「愛しいお兄様のせいで絶賛急降下中でございますが何か?」
「ありゃりゃ、こりゃまた鋭い切れ味だね」
「あのさ、今日は馬鹿兄貴の馬鹿話にも惚気話にも付き合ってる暇は無いからさっさと本題に入るよ。……ほら、さっさと200万耳揃えて払わんかいコラ」
「闇金の取り立てかな?」
「こういうところはしっかり兄妹ですね」
疲れてるからか妙に悪ノリした桐花ちゃんに胸ぐらを掴まれ恫喝を受けながら、俺は携帯を操作し彼女へ200万ポイントを送金する。
「にしても随分とお疲れだね。何か嫌なことでもあったの?」
「現在進行形で私のストレス製造機たる愚兄の相手をしてるからじゃないかなー?」
「
「……ああもう、相変わらず何でもホイホイ見抜いてくるなあ」
「桐花さんの交友関係から推測しますと、ご友人の
「ああ、あの子達学力がちょっとばかし残念だからねえ。責任感が強くて面倒見の良い桐花ちゃんのことだし、ペアを組んだウチのクラスの子達がペナルティで退学したら寝覚めが悪いからと、付きっきりでテスト勉強を手伝ったんだろうね。そりゃしんどいよね」
「南雲会長に関しては、生徒会に入ったものの女性関係にだらしないと評判のあの方とは、根本的に性格が合わないでしょうし気疲れするのも無理はありません」
「おぼこな桐花ちゃんには荷が重いよね」
「なんで私の近況完璧に把握されてんだよ怖いからやめてくんない!? あと誰がおぼこだコラァッ!」
ああ、なんか懐かしいなあ。こう、隙あらば桐花ちゃんが俺達に弄り倒される流れ。きっとこうなることを見越して人払いを済ませていたのだろう、1年Bクラスの教室には人っ子1人いやしない。
「さーてと、用事も済んだし帰るとしますか。……ああそうそう、これからペア組んでくれたシューちゃんに焼肉奢ったげる約束があるんだけど、二人も来る?」
「シューちゃん……生憎とこれからBクラスの皆と特別試験終了を祝して打ち上げする予定なんで、とっても残念だけど辞退しておくよ。いやあ残念残念」
「うむ、1
「すみませんが、私もこれから少々野暮用があるので辞退します。それに、松任谷君も見知らぬ先輩……それも今回の試験で負けたペアの片割れが同席してたんじゃ、居心地も悪くなるでしょうし」
「あの子も大概図太い子だからそんなこといちいち気しないだろうけど、用事があるんじゃあ仕方ないね。……となると護衛を誰かに頼まなきゃ─」
「ああ、その点についてはご安心を。真澄さんを校門前でお待たせしていますので」
「ありゃりゃ、そうなの」
相変わらずマスミンは馬車馬のように働かされてて気の毒だなあ……。
「それじゃあまた後でね有栖」
「ええ、貴方の部屋で待ってますね」
「……二人とも、ようやく交際したからって羽目外し過ぎないようにね。あと避妊はしっかりすること」
「はいはいおぼこの癖に下衆な勘繰りはしないの」
「だからおぼこ言うなっ!」
俺と有栖にまだそういうのは早いから。学生の内はぷらとにっくな関係でいるつもりだから。……なんか有栖が意味深に含み笑いしてるのすげー気になるけど気の所為だと信じよう。
【side:有栖】
現在の時刻はちょうど午後6時半。桐葉と別れ校門前で真澄さんと合流してから、私は待ち合わせに指定した場所……ケヤキモールの入り口まで来ました。
「待ち合わせ時刻までまだ少し時間がありますね。どのようにして時間を潰しましょうか真澄さん」
「そこで私に振られてもね……というかアンタそもそも誰と待ち合わせしてんのよ?」
「ふふ、それはお会いしてからのお楽しみです」
「なんでかしらね、嫌な予感しかしないんだけど……」
流石は真澄さん、正解ですその予感。
……おや? これはこれは、面白い組み合わせですね。
「こんばんは。綾小路君に一之瀬さん、それに神崎君も」
「坂柳と神室か、こんばんは」
「あ、こんばんは坂柳さんに神室さん」
「……」
「ん」
私が声をかけますと綾小路は無難に挨拶、一之瀬さんは愛想良く挨拶、神崎君は素っ気なく会釈するのみに留まり、真澄さんは平仮名1文字で返事と、バラエティに富んだ反応を見せてくれました。社交性の差が顕著に現れていますね。
「そういえば、見たよテスト結果。綾小路君も坂柳さんも、あのテストで満点を取るなんて凄いね」
「本条と並び絶対的トップだった坂柳はともかく綾小路、去年までのお前にあのテストで満点を取る実力は無かった筈だがな」
「おや、貴方らしくもない不躾な言い方ですね。……もしや綾小路君が不正をしたと考えているのですか?」
だとすれば興醒めもいいところですが、私は神崎君をそこまで過小評価していません。案の定彼は首を振ってそれを否定しました。
「そこまでは言っていない。だが少なくとも、能力を隠していたことは間違いないだろう?」
「色々と事情があるんだ。数学ができることを隠していたのも、仲間と相談して決めたことだ」
なまじ頭の良い相手にそれらしい説明をすることで、話の内容を自己補完させて煙に巻くやり口、桐葉とそっくりですね。大概の相手はそれだけで勝手に納得してくれるでしょうが、神崎君は依然として鋭い視線を綾小路君に向けたままですね。
「クラスの指示でこれまで隠していた……か。以前まで同盟関係を結んでいた俺達にまで伏せていたとは、随分と周到なことだ」
「神崎君、その言い方はちょっと……この学校のシステムからして同盟関係はずっと続けられないんだし、そういう戦略を取るのは責められることじゃないよ」
「そうだな、現に同盟は既に解消されている。Dクラスは紛れもなく俺達の敵だ。相手の正しい戦力は知っておく必要がある」
そこまで言い切ると神崎君は一歩、綾小路君との距離を詰めました。
「これまで数学が得意なことを伏せていたというなら、それ以外にも伏せているものがあると考えるべきだ。数学が突出して優れているのに、それ以外の教科は凡庸というのは不自然過ぎる。……綾小路、お前もしかして他の教科もそうなんじゃないか?」
「そうだとしてもテストの点数には限りがあるよ。どれたけ勉強ができても100点が上限で、査定はA+までしか無い。たとえ綾小路が全部満点を取れたとしても、坂柳さんや本条君との差は小さなものでしかないんじゃないかな」
1点の重みを常に背負わされながら桐葉と鎬を削ってきた私としては、正直あまり共感したくない意見ですね。おそらく個人で敵わないなら、クラス全体でカバーすればいいというのが一之瀬さんの考えなのでしょうが……。
「確かに筆記試験だけならそうかもしれない……だが─」
「これ以上はやめようよ神崎君。今、ここで激しく言い合うようなことじゃないのはわかってるよね?」
「一之瀬……いや、確かに少し冷静さを欠いていたか」
これ以上口論を続けても無駄だと判断したのか綾小路君から視線を外し、先に行くと伝えてから神崎君は足早にケヤキモールの中へ消えていきました。……見間違えかもしれないですが、一之瀬さんに対して何かを諦めたような視線を向けましたね。この場に桐葉を同伴させなかったことが少し悔やまれます。
「ごめんね。状況が状況だから、神崎君も余裕をなくしてるんだ」
「今回の特別試験で龍園君達からBクラスを奪還したところですし、そう悲観するほどの状況でもないのでは?」
「あ、あはは。私達だけの力で奪還できてたなら、もう少し素直に喜べてたんだけどね」
我ながら少々意地悪な問いかけにも、一之瀬さんは苦笑いで返答してくれました。しかし別に気まぐれでこんな話を切り出した訳ではありません。私達がこのようなやり取りをすれば、その場に居合わせた綾小路君は当然切り込んでくるでしょう。
「今回の試験の結果や、組んだペアを1つ1つ確認してもしやとは思っていたが……坂柳達と一之瀬達は同盟を結んだのか?」
「ええ、そのように捉えてもらって概ね相違ありません」
「同盟、にしては随分と奇妙な試験結果になったな。ペアの人選からして、明らかにAクラスはBクラスを勝たせようと戦力を集中させていた。まるで去年の葛城と龍園達のように」
去年私が参加することのできなかった無人島での特別試験にて、龍園君達CクラスはAクラスが勝利すべく貢献する代わりに、毎月80万近くのプライベートポイントを支払うという契約を結んでいました。狡猾な龍園君はその特別試験でもAクラスを出し抜こうと画策していたようですが、綾小路君の策略によりその野望は跡形も無く打ち砕かれ……っと、過去の振り返りはこのくらいでやめておきましょう。桐葉に嫌われてしまいます。
「なるほど、つまり綾小路君は気になるのですね。Bクラスが今回の試験を勝たせてもらう代償に何を支払ったのかを」
「気にならないと言えば嘘になる」
「ふふ。勿論私もクラスを預かる身として、意味も無く勝ちを譲るような無責任な真似はできません」
綾小路君以外の二人、特に真澄さんから何か言いたげな視線を向けられましたが今は無視します。
「当然それ相応の見返りを受け取りました。しかし申し訳ありません、その内容は伏せさせてもらいます。……ですよね、一之瀬さん」
「う、うん。ごめんね綾小路」
「……そうか。いや、確かに部外者であるオレが軽々しく踏み込んでいい内容じゃないな。すまない、少々図々しかった」
「いや図々しいとまでは言わないし……大丈夫、全然気にしてないよ」
……さて、そろそろ頃合いですね。
「それでは私達はそろそろ失礼しますね」
「ああ、じゃあな」
「またね、坂柳さん、神室さん」
「ねえ、あのやり取り何の意味あったの?」
綾小路君達と別れて一分ほどしてから、殻に閉じこもっていた真澄さんが私にそう尋ねてきました。
「あのやり取り、とは?」
何を聞きたいのかはだいたい想像できますが、ここでは誰に盗み聞きされているかもわからないので私が事前に取り決めたハンドサインを見せますと、真澄さんは面倒そうに溜息を吐きつつ、私の耳元まで近づき誰にも聞こえないよう声音を下げて尋ねてきました。
「なんか見返りがどうのこうの言ってたけど、あんた
「ええ、確かに今回の試験で私達のクラスが得た物は何もありません。ですが、それを伏せていくことに意味があるのです」
「は? どういう意味よ?」
「現状私達が一番避けたいのは、三クラスに結託され集中攻撃を受けることです。それは脳筋の真澄さんにもわかりますね?」
「誰が脳筋よコラ。まあ確かにそうだけどさ、三クラスの結託なんて口で言うほど簡単なことじゃないでしょ。BとDはつい先日同盟解消したばかりらしいし、Cなんて考えるまでもなく論外だし」
真澄さんの指摘する通り、お互いを心から信頼し背中を預けられるくらいでなければ同盟関係は十分な効果を発揮しません。むしろ裏切られるのではないかと余計なことに気が散り、戦力を低下させてしまうリスクさえ孕んでいます。
「ええ、同盟を結ぶにあたって求められるのは能力ではなく人徳です。去年散々やらかした龍園君は勿論、他者に対して社交的でも友好的でもない堀北さんでも三クラスをまとめるのは不可能でしょう。ですが一之瀬さんなら?」
「……あー。絶対にできる、とは言わないまでも他二人よりは全然可能性ありそうね。逆転のチャンスも無限にあるわけじゃないし、追い込まれていよいよとなれば結託する見込みはある、と」
「それを封じるための布石を打っておきました。今回の特別試験での勝利を約束する代わりに、Bクラスの方全員には他クラスに私達との同盟関係を仄めかすことと、見返りとして私達に何を差し出したのかを決して明かさないことを約束させました」
これは真嶋先生と星ノ宮先生二人の教師立ち会いのもと結んだ契約ですので、もし破ればBクラスは二度と再起できないほどのペナルティを背負い込むことになります。
Bクラスに肩入れしている節のある星ノ宮先生は苦々しげな表情をしていましたので、この契約の意図に気づいてるようですね。
「いやだから、受け取ってもない見返りを隠して何の意味があんのよ?」
「では想像してみてください。真澄さんがもし龍園君や堀北さんだとして、Aクラスと何らかの裏取引をしたらしきクラスのリーダーに同盟を結びましょうと話を持ちかけられたら、心から信頼することができますか?」
「……そういうこと。あんた、相変わらず性格悪いわ」
「それほどでもありません」
「褒めてないっつの」
同盟を結ぶ為に重要なのは信頼と人徳ならば、一之瀬さんほどの適任はいません。
あの方は私の知る限り最も心の清い女性です。過去に行った万引き行為にしても、元を辿れば誰かの為を想っての行動。以前はただ単に愉快だから責め立てただけで、彼女の行いは褒められたことでなくとも人格を貶められることではないと断言できます。以前のゴタゴタを乗り越えたこともあり、彼女の信頼を失墜させることは私でもほとんど不可能でしょう。
ですので一之瀬さんではなく、Bクラスそのものの信頼性にヒビを入れました。
私が親切心でBクラスを助けたなどとは誰も思いません。ならばいったいBクラスは何を対価に支払ったのか? そう疑問に思い探りを入れてもBクラスの方々は契約上頑として口を割れず、また私達と手を組んでることを否定もしません。
そのような要素を無視して手を取り合うことを、警戒心の強い堀北さんと龍園君は決して許容できません。よしんば無理矢理手を結んだとして、必ずどこかしらに小さくない綻びが生じます。それを突き崩すことは、私や桐葉にとって難しいことではありません。
さて、これで三クラスの結託は不可能になったと言えるでしょう。
……とまあ、ここまでは表向きの理由です。
綾小路君ならこの程度の策略を看過し、対策を立てることなど造作も無いでしょう。でなければ私は土などつけられていません。
では何故彼の前でわざわざ茶番を演じたのか? ……私の真の狙いと彼が企んでるであろう筋書きは、利害が一致していると伝えるためです。このまま上手く行けば、やや退屈になってきたクラス間闘争は一気にヒートアップすることでしょう。
「他愛もないお喋りをしている内に、ようやく目的のお相手がいらっしゃったようですね」
「……あんたさ、よりによってあいつ?今度はどんな悪巧みをするつもりよ?」
「ふふ、どうでしょうね? ……こんばんは、龍園君。今日は楽しいお話し合いをしましょうね」
「こちとら多忙だってのにわざわざ呼びつけやがって。つまんねえ話だったらわかってんだろうな」
待ち合わせに指定した場所にて、予定より十分ほど遅れて龍園君が、不機嫌そうな台詞とともに獰猛な笑みを浮かべながらやってきました。
……さて、桐葉の方は上手くいっているでしょうか?
【side:秀司】
ケヤキモール内の高級焼肉店にて、ただ今俺は本条先輩の奢りで肉を貪り食っとる。やっぱりこの世で一番美味いのは人の金で食う焼肉やな、間違いない。
勿論メニューの高いもんを優先して食べる、なんて意地汚い真似はしてへん。たぶん本条先輩器でかそうやけどもし万が一下手に不興でも買うてしもたらもう誘ってれなくなるやもしれんし、何よりそもそも肉の美味しさは別に値段と比例してるわけやないしな。焼肉はそんな単純に出来とらん。
「しっかしよく食べるねぇ。綺麗な顔立ちしてる分ギャップが凄いや」
「別に食う量と顔は関係無いでしょ。むしろ先輩結構少食やないですか?」
「今日は色々あったからあまり食欲が無くてねー……まあ必要な栄養分はちゃんと摂取したから大丈夫大丈夫」
「発言がもう人類の食事やのうてロボットの補給ですやん。肉不味ぅなるんでやめてもろてええですか」
「相変わらず君はちゃんと敬語も使ってる割にふてぶてしい性格してるね。ところでシューちゃん、一つ聞きたいんだけどさ」
「……何ですか?」
やっぱホワイトルームについて色々聞かれるんかな? けど生憎と答えられることは何もあらへんよ、背信行為と判断されて拓也に殺されたないしな─
「八神拓也君に用があるんで連絡取り付けてくれない? あの子、君達のお仲間でしょ?」
……ゑ?
俺の命日、今日?
この肉、もしかして最後の晩餐?
お久ぶりです皆さん、お待たせしてしまい申し訳ない……。
原作で有栖ちゃんが脱落してしまったことでだだ下がりしたモチベーションをようやく多少は取り戻せたので、不定期にはなりますがちょっとずつ投稿を再開します。